1年ストレート合格は順序で決まる。7科目の並べ方と時間配分の実績を全部公開します
リレー連載にお邪魔します、たけと申します。29歳の会社員で、電機メーカーの経営企画部にいます。新規事業の企画と投資判断が今の仕事です。もともとは工場側で生産管理をやっていて、「経営企画に行きたい」という理由だけで中小企業診断士の勉強を始めました。予備校には通わず独学で1年、1次と2次を同じ年に受けて通りました。資格を取ったあとに異動希望が通って、いま書いているこの席にいます。
この記事では、その1年を「順序」という切り口で分解します。精神論はほとんど出てきません。私は生産管理の出身なので、うまくいかないときは人ではなく手順を疑う癖がついています。学習も同じで、同じ総時間を投下しても、並べ方を間違えると成果は落ちます。そこだけを丁寧に書きます。
そもそもストレートを狙うべきだったのか
先に結論
私の場合は妥当でした。ただし、これは「私の条件では」という限定つきです。万人に勧められる戦略ではありません。
私がストレートを選んだ理由は3つあります。
- 異動の希望を出せるタイミングが決まっていた。社内の異動希望調査が年1回で、そこに「診断士取得」と書けるかどうかで通り方が変わると踏んでいました。ゴールに期限があったので、逆算すると1年しか選択肢がありませんでした。
- 可処分時間が読めた。当時は繁忙期でも月30時間程度の残業で、独身、通勤が片道50分。平日2時間、休日6時間を1年続ければ1,000時間前後は積める、という計算が最初に立ちました。
- 理系出身で運営管理と経営情報システムに土地勘があった。7科目のうち2科目を「ほぼ稼ぐだけの科目」として扱えたので、他科目に時間を寄せられました。
逆に、この3つのどれかが崩れていたら私は科目合格制度を使ったと思います。1次には科目合格制度があり、合格した科目は翌年・翌々年の2年間、受験を免除できます。2年計画で1年目に重い科目を落としきる進め方は、時間が読めない人にとってはむしろ合理的です。
ストレートの本当のきつさは1次のあと
意外に思われるかもしれませんが、しんどいのは1次の勉強そのものではありません。1次試験が8月上旬の2日間で終わってから、10月の2次筆記までの期間です。ここで初めて2次の事例に本格的に取り組む人は、記述という別の能力をほぼゼロから立ち上げることになります。私が「1次の学習中に2次を意識してやっておいたこと」を後半で長めに書くのは、この期間の短さが理由です。
7科目をどの順番で回したか
全体の設計
私が組んだ順序はこうです。
- 企業経営理論
- 財務・会計(ここから最後まで毎日継続)
- 運営管理
- 経済学・経済政策
- 経営情報システム
- 経営法務
- 中小企業経営・中小企業政策
考え方はシンプルで、「後続科目の土台になるもの」と「2次に直結するもの」を前に、「忘れやすくて直前に効くもの」を後ろに置いただけです。
企業経営理論を最初に置いた理由
企業経営理論は、他の科目で出てくる言葉の意味を決めてくれる科目です。組織構造、動機づけ、競争戦略、マーケティングの4Pといった語彙が入っていると、運営管理の店舗・販売管理も、中小企業政策の施策の狙いも、初見の情報量が減ります。最初にここを通しておくと、あとの科目の「読み込みコスト」が下がります。
もうひとつ、2次の事例Iと事例IIは企業経営理論の言葉で書く試験です。最初に学んで最後まで触り続ける科目として置きました。
財務・会計は開始2か月目から毎日枠に入れた
財務・会計だけは、他の科目と並列ではなく常設にしました。1日30分でいいので必ず触る。理由は2つあります。
- 積み上げ科目なので、間が空くと再起動に時間がかかる。仕訳と原価計算が抜けると、あとのファイナンスがまるごと止まります。
- 2次の事例IVがそのまま財務・会計の延長にあります。1次で計算スピードを作っておかないと、8月以降にNPVと経営分析を同時に立ち上げることになります。
私は「毎日1テーマ、電卓を叩いて5問」を固定枠にしていました。総時間で見るとこれが一番効きました。
運営管理を3番目にした理由
企業経営理論の生産・オペレーション観点を受け継ぎ、かつ事例IIIに直結します。私は前職が生産管理だったので回転が速く、ここで時間を「貯金」して経営法務に回す設計にしていました。
経営法務と中小企業経営・中小企業政策を後ろに置いた理由
この2つは私にとって純粋な暗記負荷が高い科目でした。特に経営法務は最後まで苦手でした。会社法の機関設計、知的財産権の存続期間や手続の違いなど、理屈で減らせない量があります。忘却との勝負になる科目は、試験日から逆算して後ろに置くのが定石だと考えました。
中小企業経営・中小企業政策も同様で、施策の目的と対象を整理して覚える科目です。前半に置いても、8月までに一度きれいに抜けます。
計画した時間と、実際にかかった時間
これが一番参考になると思うので、実績をそのまま出します。学習記録アプリで秒単位まで取っていた数字です。
| 科目 | 計画(h) | 実績(h) | 差 | 何が起きたか |
|---|---|---|---|---|
| 企業経営理論 | 130 | 145 | +15 | 論点は軽いが、問題文の言い回しに慣れるまで正答率が上がらなかった |
| 財務・会計 | 180 | 210 | +30 | 毎日枠が積み上がった。意図的な超過なので想定内 |
| 運営管理 | 110 | 95 | −15 | 実務知識で前倒しできた唯一の科目 |
| 経済学・経済政策 | 120 | 130 | +10 | グラフの意味を言葉で説明できるまでやると時間がかかる |
| 経営情報システム | 80 | 65 | −15 | 得意科目。用語整理に徹して深追いしなかった |
| 経営法務 | 90 | 130 | +40 | 最大の誤算。暗記が定着せず3周目まで必要だった |
| 中小企業経営・中小企業政策 | 70 | 85 | +15 | 直前に詰める前提だったが、量を見誤った |
| 1次 小計 | 780 | 860 | +80 | |
| 2次対策 | 220 | 190 | −30 | 削らざるを得なかった |
| 合計 | 1,000 | 1,050 | +50 |
この表から言えること
- 超過は苦手科目に集中する。経営法務ひとつで40時間、計画超過の半分を占めています。得意科目の貯金(運営管理と経営情報システムで30時間)では埋まりませんでした。
- しわ寄せは必ず2次に行く。1次が終わらないと2次に進めない構造なので、遅れは全部後ろに押し出されます。私は2次を30時間削る形で帳尻を合わせました。これは危ない橋でした。
- したがって、計画時点で苦手科目に1.3倍の係数をかけておくべきでした。自分の得意不得意は勉強を始めた1か月で概ね見えます。そこで一度、全体計画を引き直すのが正解です。
インプットとアウトプットの比率
最終的な私の比率はインプット3:アウトプット7でした。ただし最初からこの比率だったわけではありません。
- 科目の1周目:インプット7:アウトプット3。テキストを読み、章末問題を解く程度。
- 2周目以降:反転して3:7。過去問を先に解き、間違えた論点だけテキストに戻る。
過去問にいつ手を付けたか
各科目のテキストを1周した直後です。仕上がっていなくても構わず着手しました。理由は、過去問が「どの深さまで問われるか」を教えてくれる唯一の資料だからです。テキストは網羅的に書いてありますが、試験は網羅的には出ません。早く過去問に触るほど、読む必要のない部分を捨てられます。
具体的な運用は次のとおりです。
- 過去問は年度単位ではなく論点単位で解く(1次の間は年度別に解く意味が薄い)。
- 1問ごとに、正解した理由を1行書く。「消去法で残った」なのか「正面から正しいと判断した」なのかを区別する。後者になるまでその論点は未完成とみなす。
- 選択肢の誤りは、どこが誤りかを指摘できて初めて「解けた」とする。
この3つ目が重要で、これをやると1問あたりの学習密度が4倍になります。5肢のうち4肢が誤りなら、誤り箇所の指摘を4回できるからです。
1次の学習中に2次へ仕込んだこと
ストレート合格の成否は、正直ここで8割決まると思っています。私が1次期間中にやったのは次の4つだけです。多くはやっていません。
1. 事例IVの計算だけ先に始めた
6月の時点で、経営分析、CVP、NPVの3つは2次の過去問形式で解き始めました。財務・会計の1次学習と内容が重なるので、追加コストがほぼゼロで済みます。2次対策のうち、1次と同時並行しても損しない唯一の領域が事例IVです。
2. 2次の過去問を「読み物」として3年分読んだ
解きません。設問と与件文と、解答例を眺めるだけです。目的は「どういう文章が求められるか」の相場観を作ること。これを4月ごろに1回やっておくと、8月以降の立ち上がりが明らかに速くなります。私は2時間しかかけていません。
3. 企業経営理論と運営管理を、2次の言葉で復習した
たとえば運営管理で「セル生産方式」を学んだら、テキストの説明を覚えるだけでなく、**「この方式を提案する理由を60字で書くと?」**という形に変換してノートに書きました。2次は知識を説明する試験ではなく、知識を使って助言する試験です。この変換を1次のうちに数十個ためておくと、そのまま2次の解答部品になります。
4. 与件文から根拠を拾う癖を作った
1次の問題文でも、正解の根拠になる語句に線を引く練習をしていました。2次は与件文に書いてあることから外れると点が伸びません。「自分の意見を書かない」という感覚は、早めに体に入れておいて損がありませんでした。
ストレートを狙う人が最初に決めるべき3つのこと
最後に、これから1年計画を組む人へ。開始前に決めておくべきことは、教材でも順序でもなく、次の3つだと思います。
1つ目、総投下時間の上限を先に決めること。 「できるだけやる」は計画ではありません。平日◯時間、休日◯時間を先に固定し、そこから逆算して科目に配分します。上限が決まっていないと、苦手科目に無限に時間が吸われて2次が消えます。
2つ目、財務・会計を毎日枠にするかを決めること。 私は毎日枠にしました。7科目の中で唯一、2次まで一直線に効く科目です。ここを「他と同じ1科目」として扱うと、8月以降に必ず苦しみます。
3つ目、撤退ラインを決めること。 これが一番書きにくいのですが、大事です。私は「6月末の模擬的な通し演習で1次が総点数55%に届かなければ、2次対策を捨てて1次に全振りし、科目合格を取りに行く」と決めていました。1次の合格基準は総点数の60%以上かつ40%未満の科目がないことなので、判定は自分でもできます。結果的にこのラインは使いませんでしたが、先に決めておいたおかげで、途中の悪い点数に動揺しなくて済みました。撤退ラインは諦めるための線ではなく、迷わないための線です。
ストレート合格は根性の量で決まるものではないと思っています。決めるべきことを先に決めて、順序を間違えないこと。それだけで、同じ1,000時間の価値はかなり変わります。
よくある質問
Q1. 独学とスクール、どちらが有利ですか。
どちらでも合格できます。判断基準は「教材選びと進度管理に自分で時間を使えるか」だと思います。私は仕組みを作るのが好きなタイプだったので独学を選びましたが、その分、最初の1か月は教材の比較と計画作りに時間を取られました。その1か月を惜しいと感じる人は、進度が用意されている環境のほうが総合的に速いはずです。
Q2. 1年で7科目は無理だと感じます。2年計画のほうがよいでしょうか。
可処分時間が読めない人、繁忙期の波が大きい人、簿記や経済に初めて触れる人は、2年計画のほうが安全だと考えます。1次には科目合格制度があり、合格科目は翌年・翌々年の2年間有効なので、1年目に重い科目(財務・会計、企業経営理論、経済学・経済政策など)を確実に取り、2年目に暗記科目と2次を寄せる組み方は十分に合理的です。ストレートは「期限がある人の戦略」であって、優れた戦略という意味ではありません。
Q3. 学習順序は必ずこのとおりにすべきですか。
いいえ。守るべきなのは順番そのものではなく、2つの原則です。ひとつは、他科目の土台になる企業経営理論を早めに通すこと。もうひとつは、忘れやすい暗記科目を試験日の近くに置くこと。この2つさえ守れば、間の並びは自分の得意不得意で入れ替えて構いません。
Q4. 過去問はいつから解き始めればよいですか。
テキストを1周した直後で十分です。完璧に理解してからと考えると着手が遅れ、「試験がどの深さまで問うか」を知らないまま広く浅くテキストを読み続けることになります。解けなくても構いません。過去問は実力を測る道具である前に、学習範囲を絞るための地図です。
次回はごろーさんです。私とはまた違う進め方をされている方なので、比べながら読むと自分に合う型が見つかると思います。ごろーさん、よろしくお願いします。