令和5年度 第6問 設問2 解説
問題文
以下の会話は、X株式会社の代表取締役である甲氏と、中小企業診断士であるあ なたとの間で行われたものである。この会話を読んで、下記の設問に答えよ。 なお、本問における吸収合併の手続においては、X 株式会社を消滅会社とするこ とを念頭に置いている。 甲 氏:「このたび、X株式会社の事業の全部を譲渡することを考えており、譲渡 先を探していたところ、取引先であるY株式会社から、X株式会社の事業 の全部を譲り受けてもよいという話がありました。知人に聞いたところ、 X株式会社の事業の全部をY株式会社に移管する方法としては、事業譲渡 の他に吸収合併という方法もあるという話をしていました。取引先への商 品代金の支払債務について、事業譲渡と吸収合併によって違いはあるので しょうか。」 あなた:「 A 。」 甲 氏:「なるほど。ありがとうございます。では、吸収合併と事業譲渡で、Y株 式会社から受け取る対価に違いはあるのでしょうか。」 あなた:「 B 。」 甲 氏:「では、Y株式会社に吸収合併又は事業譲渡ですべての事業を移管した場 合、X株式会社はどうなるのでしょうか。」 あなた:「 C 。」 甲 氏:「なかなか悩ましいですね。実は、Y株式会社の他に、私の知人である乙 氏からX株式会社の事業の全部を承継してもよいという話も聞いていま す。乙氏は会社を設立しておらず、個人で事業を行っているのですが、事 業譲渡や吸収合併は、相手先が会社でなくてもすることができるのでしょ うか。」 あなた:「 D 。」 甲 氏:「分かりました。今日のお話を踏まえ、スキームを検討します。また、ご 相談させてください。」 あなた:「必要があれば、弁護士を紹介しますので、お気軽にご相談ください。」 会話の中の空欄CとDに入る記述の組み合わせとして、最も適切なものはどれ か。
解説
正解はエです。吸収合併では消滅会社は合併の効力発生と同時に清算手続を経ることなく当然に解散し、権利義務の一切が存続会社に包括承継されます。これに対し事業譲渡は個別の資産・負債・契約を移転する取引行為にすぎず、譲渡会社であるX株式会社は事業を譲渡した後も法人格を維持し、解散するか存続するかは別途の意思決定次第です。また吸収合併は会社法上の組織再編行為であるため相手方は会社でなければなりませんが、事業譲渡は通常の売買契約と同様の性質を持つため、個人事業主である乙氏のように会社でない相手とも行うことができます。 アは、Cで事業譲渡でも当然に解散するとしている点と、Dで事業譲渡の相手先も会社である必要があるとしている点の両方が誤りです。イは、Dは正しいものの、Cで事業譲渡でも当然に解散するとしている点が誤りです。ウは、Cで吸収合併でも当然には解散しないとしている点と、Dで事業譲渡の相手先も会社である必要があるとしている点の両方が誤りです。 覚え方として、吸収合併は「組織法上の行為=包括承継・当然解散・相手方は会社限定」、事業譲渡は「取引法上の行為=個別承継・当然解散なし・相手方は個人も可」と対比させて整理すると混同を防げます。
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