国民経済計算と主要経済指標
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プレミアムで見る「景気が良い」「景気が悪い」という言い方は日常でも使いますが、では今が良いのか悪いのかを、誰が、どんな数字で決めているのでしょうか。答えが景気動向指数です。内閣府が毎月公表している総合的な景気指標で、景気の現状をつかむこと、先行きを読むこと、そして後から局面を確定することを目的としています。
この節ではまず景気循環という考え方を押さえ、そのうえでDI(ディフュージョン・インデックス)とCI(コンポジット・インデックス)という2つの指数の役割分担、最後に先行系列・一致系列・遅行系列という3つのグループを見ていきます。試験では採用系列の分類がそのまま問われます(令和5年第6問など)。丸暗記ではなく「なぜその系列に入るのか」の理屈まで持っておくと、初見の指標でも判断できます。
簡単にいうと
景気は良くなったり悪くなったりをくり返してるの。その波の頂上が「山」、底が「谷」。その波のどこにいるかを教えてくれるのが景気動向指数だよ!
経済は、ずっと同じ調子で成長していくわけではありません。生産や雇用が伸びていく時期と、
縮んでいく時期が交互にやってきます。この上下のくり返しを景気循環(景気変動)といいます。
① 山・谷・拡張局面・後退局面
景気循環を波として描くと、4つの言葉で位置を言い表せます。
注意したいのは、山は「一番景気が良い時点」であって「これから良くなる時点」ではないことです。
「山=好況のピーク=ここから悪くなる」と、向きまでセットで覚えてください。
谷はその逆で、「一番悪い時点=ここから良くなる」です。
そして、谷から次の谷までの一周を1循環と数えます。
② 景気動向指数の3つの目的
景気動向指数は、この波のどこにいるのかを数字でつかむための道具です。目的は3つあります。
| 目的 |
|---|
具体例
日本の景気循環を、実際の出来事にあてはめて眺めてみましょう。
谷から拡張局面へ
2009年3月ごろ、日本経済はリーマン・ショック後の底を打ちました。この時点が「谷」です。
このころの実感としては「街の景気はまだ最悪」だったはずです。
それでも谷と認定されるのは、ここから先は上向きに転じたという意味だからです。
谷は「悪さの底」であって「悪さが終わった実感」ではありません。
拡張局面のなか
そこから生産が持ち直し、輸出が増え、求人が増えていきます。これが拡張局面です。
この間ずっと景気が良い実感があるわけではなく、途中で足踏みする月もあります。
だからこそ、1つの指標ではなく複数の指標を束ねた指数が必要になります。
山から後退局面へ
やがて生産の伸びが鈍り、在庫が積み上がり、どこかの月が「山」になります。
ここで大事なのは、山の月は景気がもっとも良い月だということです。
「山=悪い知らせ」と感じるのは、そこから後退局面に入るからであって、
山そのものは好況のピークを指しています。
事後的な認定

景気循環の山・谷と拡張/後退局面
試験のポイント
簡単にいうと
DIは「良くなってる指標が何割あるか」を数えるだけの指数なの。50%を超えてたら拡張、下回ってたら後退。すごくシンプル!
DI(ディフュージョン・インデックス、Diffusion Index)は、
採用されている指標のうち、改善している指標が全体の何%を占めるかを表した指数です。
diffusion は「普及・広がり」という意味で、
景気の良さが経済のどこまで広がっているかを測る、という発想の指数です。
簡単にいうと
CIは「どれくらい良くなったか」まで測る指数だよ。2008年4月からは、こっちが景気動向指数の主役になったの!
CI(コンポジット・インデックス、Composite Index)は、
採用系列の変化率を合成して作る指数です。composite は「合成の」という意味です。
DIが「良くなった系列の数」を数えるのに対し、
CIは変化の大きさまで取り込むため、景気の量感(テンポの強さ)を測れます。
① CIの読み方
CIは水準そのものではなく、動く向きで読みます。
| CIの動き | 景気の局面 |
|---|---|
簡単にいうと
指標を、景気より先に動く/同時に動く/遅れて動くの3つに仕分けるよ。「見通し」「株価」「在庫率」は先行、「失業率」は遅行。ここは覚えるところ!
DIとCIは、それぞれ先行系列・一致系列・遅行系列という3つのグループから作られます。
景気の波に対して、その指標がどのタイミングで動くかによる分類です。
| 系列 | 動くタイミング | 使いみち | 系列数 |
|---|---|---|---|
| 先行系列 | 景気に先立って動く | 将来予測 |
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| 主に使う系列 |
|---|
| 現状把握 | 今は拡張局面か、後退局面か | 一致系列 |
| 将来予測 | 数か月先はどうなるか | 先行系列 |
| 事後確認 | あの時期は本当に拡張だったのか | 遅行系列 |
1つの指標だけを見て景気を語ると、その業界特有の事情に振り回されます。
そこで内閣府は、生産・雇用・消費・投資・金融など複数の経済指標を束ねて指数にしています。
これが「総合的な景気指標」といわれる理由です。
③ 景気基準日付
山と谷が具体的にいつだったのかは、内閣府が事後的に認定します。これを景気基準日付といいます。
「事後的に」というのがポイントです。景気の山や谷は、その時点では確定できません。
数か月分のデータがそろい、後からさかのぼって「あの月が山だった」と判定されます。
つまり、私たちがリアルタイムで見ている景気動向指数は、
あくまで「今のところこう見える」という暫定的な情報にすぎません。
なお、基準日付の判定にはヒストリカルDIという、
各系列の山・谷を個別に特定してから作り直したDIが使われます。
毎月公表される速報のDIとは別物であることに注意してください。
生産・雇用・所得などのデータが出そろい、有識者の検討を経て、
1年以上あとに「◯年◯月が山でした」と公表されます。
試験でこの流れが問われたら、確認したいのは次の3点です。
1. 谷→山が拡張、山→谷が後退(向きを取り違えない)
2. 1循環は谷から谷まで
3. 山・谷の認定は事後的(リアルタイムでは確定しない)
① 50%が分かれ目
DIの読み方は、50%という1本の線で決まります。
| DIの水準 | 意味 | 景気の局面 |
|---|---|---|
| 50%超 | 過半数の指標が改善している | 拡張局面 |
| 50%未満 | 過半数の指標が悪化している | 後退局面 |
| 50% | 改善と悪化がちょうど半々 | 転換点(山または谷) |
拡張局面ではDIは50%を上回って推移し、山を迎えると50%を下から上に……ではなく、
上から下に突き抜けます。そこからは後退局面です。
逆に谷では50%を下から上に抜けていきます。
② DIが示すのは「方向」だけ
DIは、それぞれの指標が「良くなったか、悪くなったか」だけを数えます。
どれだけ良くなったかという大きさは一切見ていません。
ここがDIの性格であり、同時に弱点でもあります。
たとえば、10個の指標のうち6個が0.1%だけ改善し、4個が10%も悪化したとします。
このときDIは60%で「拡張局面」と読めてしまいますが、
経済全体としては明らかに落ち込んでいます。
DIは景気の方向(テンポ)は教えてくれても、勢い(量感)までは教えてくれないのです。
③ 一致指数のDIを見る
景気の局面判断に使うのは、原則として一致系列から作ったDIです。
一致系列は景気とほぼ同時に動くので、「今どちらを向いているか」を素直に映すからです。
先行系列のDIは数か月先の予測に、遅行系列のDIは後からの確認に使います。
具体例
DIの計算を、手を動かして確かめてみましょう。
例題1: 基本の計算
一致系列が10系列あり、そのうち7系列が前月より改善、3系列が悪化しました。DIはいくつでしょうか。
70%は50%を超えているので、拡張局面と判断します。
例題2: 「逆サイクル」の系列に注意
採用系列のなかには、景気が良くなると数値が下がる指標があります。
在庫率指数や完全失業率がその代表で、系列名のうしろに「(逆)」「逆サイクル」と書かれています。
こうした系列は、数値が下がったときに「改善した」と数えます。
うっかり数値の上下だけで数えてしまうと、DIが逆向きに出てしまうので注意してください。
一致系列10系列のうち、
数値が上がったのが6系列、下がったのが4系列で、
下がった4系列のうち1つが「逆サイクル」の在庫率指数だったとします。
このとき改善したと数えるのは、上がった6系列+逆サイクルで下がった1系列=7系列です。
例題3: DIの弱点が出るケース
10系列のうち、6系列がわずか0.2%の改善、4系列が8%の大幅悪化だったとします。
DIは60%なので、形のうえでは拡張局面です。
しかし、伸びた6系列の伸び幅はごくわずかで、落ちた4系列の落ち幅は大きい。
実感としては明らかに景気は弱まっています。
この「数だけ見て大きさを見ない」というDIの限界を埋めるために、次のテーマで扱うCIが用意されています。
試験のポイント
| 拡張局面 |
| 下降している | 後退局面 |
| 上昇の幅が大きい | 拡張のテンポが速い |
| 下降の幅が大きい | 後退のテンポが速い |
「CIが100を超えたら好景気」ではありません。
CIの数値は基準年を100とした指数にすぎず、変化の向きと幅を見るものです。
② 2008年4月からCIが中心に
日本の景気動向指数は、長らくDIを主役として公表されてきましたが、
2008年(平成20年)4月分から、CIを中心とする公表形式に変わりました。
理由は、前のテーマで見たDIの限界です。
バブル崩壊後の長い停滞期に、「良くなっている指標の数」は増えているのに
実感としての回復は弱い、という場面がくり返されました。
「良くなっているかどうか」だけでなく「どれくらい良くなっているか」を伝える必要があったのです。
ただし、DIが廃止されたわけではありません。
CIとDIは同じ採用系列から作られ、並行して公表されています。
景気の山・谷の判定にはヒストリカルDIが使われ続けており、DIの役割は今も残っています。
③ DIとCIの関係を整理する
| DI | CI | |
|---|---|---|
| 測るもの | 改善系列の割合 | 変化率の合成 |
| 分かること | 景気の方向(局面) | 景気の量感(テンポ) |
| 読み方 | 50%が分かれ目 | 上昇なら拡張、下降なら後退 |
| 位置づけ | 2008年3月まで中心 | 2008年4月以降が中心 |
| 採用系列 | 先行・一致・遅行の3種類 | 先行・一致・遅行の3種類 |
大事なのは、DIとCIは対立する指数ではなく、見ている角度が違うだけということです。
同じ系列から、片方は「何割が良くなったか」、もう片方は「どれだけ良くなったか」を取り出しています。
具体例
DIとCIが食い違う場面を、数字で作ってみましょう。
設定
一致系列が5つあるとして、今月の変化率が次のようだったとします。
| 系列 | 変化率 |
|---|---|
| 生産指数 | +0.1% |
| 出荷指数 | +0.1% |
| 商業販売額 | +0.2% |
| 有効求人倍率 | −3.0% |
| 輸出数量指数 | −4.0% |
DIで見ると
改善したのは3系列、悪化したのは2系列です。
50%超なので、DIの読みは「拡張局面」です。
CIで見ると
変化率を合計すると、
大きくマイナスです。CIは下降し、「後退局面」と読めます。
(実際のCIは、系列ごとのばらつきをそろえてから合成するなど、
もう少し込み入った手順を踏みます。ここでは考え方を見るための単純化です。)
どちらが正しいのか
この場面では、CIの読みのほうが実感に近いといえます。
伸びている3系列はほんのわずかで、落ちている2系列は大きく落ちています。
経済全体としては縮んでいるのに、DIは「数の多数決」で拡張と答えてしまいました。
こうしたずれが実際にくり返されたため、2008年4月からCIが中心指標に切り替わったのです。
逆のケースもある
逆に、1つの系列だけが極端に大きく動き、残りは横ばい、ということもあります。
このときCIは大きく振れますが、景気の広がりとしては限定的です。
そこでDIを併せて見れば、「動いているのは一部だけだ」と分かります。
だからこそ2つとも公表されているのであって、どちらか一方で十分ということはありません。

DIとCIの読み分け
試験のポイント
| 一致系列 | 景気とほぼ同時に動く | 現状把握 | 10 |
| 遅行系列 | 景気に遅れて動く | 事後的な確認 | 9 |
(系列数は改定のたびに見直されます。2026年時点では先行11・一致10・遅行9です。)
① 先行系列(11系列)
② 一致系列(10系列)
③ 遅行系列(9系列)
(逆)とあるものは、指標の数値が減少したときに景気に対してプラス要因となるものです。
在庫率指数と完全失業率の3つが該当します。
DIを数えるときは、これらが下がったときに「改善した」と数えることになります。
④ 丸暗記しないための手がかり
全部を覚え込むのは現実的ではありません。次の考え方で仕分けると、初見の指標でも判断がつきます。
先行になるもの
一致になるもの
遅行になるもの
⑤ 引っかかりやすい対比
| 先行 | 遅行 | 見分け方 |
|---|---|---|
| 最終需要財在庫率指数 | 最終需要財在庫指数 | 「率」が付けば先行 |
| 新規求人数 | 常用雇用指数 | 募集段階は先行、雇った後は遅行 |
| 消費者態度指数 | 家計消費支出 | 気持ちは先行、実際の支出は遅行 |
一致系列の有効求人倍率と遅行系列の完全失業率の対比も、試験の定番です。
どちらも雇用の数字ですが、求人と求職の比は今の需給を映し(一致)、
失業という結果が数字に出るまでには時間がかかります(遅行)。
具体例
景気が谷を打って回復に向かうとき、指標がどの順で動くかを追ってみましょう。
第1波: 先行系列が動く(回復の数か月前)
まだ生産も雇用も冷えたままの時期に、株価が上がり始めます。
投資家が「そろそろ底だろう」と先回りして買うからです。
同じころ、企業の設備投資の意思決定が動き出し、機械受注が増えます。
消費者態度指数も「これから良くなりそうだ」という気分を拾って上向きます。
在庫率指数も、注文が戻り始めたことで下がります(逆サイクルなので「改善」です)。
第2波: 一致系列が動く(回復と同時)
在庫を出し尽くすと、いよいよ工場が動き出します。生産指数と出荷指数が上がります。
有効求人倍率も改善します。商業販売額も伸び、企業の営業利益が回復します。
この時点で「景気は回復局面に入った」と言えるようになります。
第3波: 遅行系列が動く(回復の数か月後)
企業はまず残業や非正規で対応するため、完全失業率はしばらく下がりません。
やがて正社員の採用が本格化して常用雇用指数が上がり、
業績が固まって給与が改定され、法人税収入が増えます。
家計消費支出が伸びるのは、その所得が手元に届いてからです。
設例(令和5年 第6問)
内閣府の景気動向指数における一致系列の経済指標として、最も適切なものはどれか。
解答: オ
この設問の組み立て
正解以外の4つは、遅行3つと先行1つです。
つまり、「一致系列はどれか」と聞きながら、遅行系列を並べて迷わせるという作りになっています。
消費・物価・税収はどれも「景気の結果が反映されるまで時間がかかるもの」でひとまとまりです。
このグループを遅行だと即断できれば、残るのは株価と有効求人倍率の2つ。
株価が先行であることは覚えやすいので、消去法でオにたどり着けます。
このように、選択肢を1つずつ「先に動くか、同時か、後か」で考えれば、
全系列を暗記していなくても答えを絞り込めます。

景気動向指数の3系列とDI・CI

先行・一致・遅行の3系列の時間差
試験のポイント
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