生産物市場(財市場)の分析
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プレミアムで見るここからマクロ経済学に入ります。第6章まではGDPや物価指数という「測り方」の話でしたが、第7章からはその水準がなぜその高さに決まるのかを考えていきます。
最初に立ちはだかるのが、ミクロ経済学との頭の切り替えです。ミクロでは1人の消費者、1つの企業、1つの財を見ていました。マクロでは国全体をひとかたまりに見ます。消費者は「家計部門」、企業は「企業部門」、財・サービスはすべてまとめて「生産物市場」で取引される1つの財のように扱います。この乱暴とも思える単純化こそが、一国の景気や政策を語るための道具になります。
この節では、マクロ経済学が何を見ているのか、どんな市場と経済主体を置いているのか、そして第7章から第10章までがどうつながっていくのかという全体の地図を先に描いておきます。個々の分析に入ってから迷子にならないための準備運動だと思ってください。
簡単にいうと
ミクロは1人・1社・1つの財を虫めがねで見る学問。マクロは国全体を上から俯瞰する学問だよ。同じ経済学でも見ている高さが違うの!
マクロ経済学は、一国全体の集計量を分析の対象にします。
集計量とは、個々の家計や企業の数字を全部足し合わせた数字のことです。
① マクロ経済学が扱う数字
| 種類 | 具体例 |
|---|---|
| 集計量(金額そのもの) | GDP、総消費、総貯蓄、総投資、国際収支 |
| 比率・水準を表す数値 | 物価水準、失業率、経済成長率、利子率 |
これらを手がかりに、**景気循環はなぜ起きるのか、失業はなぜ生まれるのか、
経済はどうすれば成長するのか**、そしてそれぞれに対してどんな政策をとるべきかを考えます。
② ミクロ経済学との違い
| ミクロ経済学 | マクロ経済学 | |
|---|---|---|
| 分析の対象 |
具体例
ミクロとマクロで、同じ出来事の見え方がどう変わるかを比べてみましょう。
出来事: ある自動車メーカーが従業員の賃金を10%下げた
ミクロ経済学の見方
そのメーカーにとっては、労働という生産要素の価格(賃金)が下がったということです。
費用曲線が下にずれ、同じ価格でもより多く生産したほうが利潤が大きくなります。
供給曲線が右にシフトし、生産量が増えます。このメーカーにとっては良いことです。
マクロ経済学の見方
賃金は、企業にとっては費用ですが、家計にとっては所得です。
国全体で賃金が下がれば、家計の所得が減ります。
所得が減れば消費が減り、消費が減れば売上が減り、売上が減れば企業はさらに人を減らす……。
つまり、一社にとって正しいことが、全体で同時に起きると逆の結果を生むことがあります。
これを合成の誤謬といいます。
もうひとつの例: 貯蓄
個人にとって、貯蓄を増やすのは賢い行動です。将来に備えられます。
しかし、国民全員が同時に貯蓄を増やしたらどうなるでしょうか。

有効需要の原理(古典派とケインズの違い)
試験のポイント
簡単にいうと
マクロでは市場を3つだけ考えるの。モノを売り買いする生産物市場、お金の市場である貨幣市場、人を雇う労働市場。この3つだけ!
マクロ経済学がとくに重視する市場は、次の3つです。
① 生産物市場(財市場)
財・サービスを取引する市場です。
ミクロでは「自動車の市場」「米の市場」と個別に分けましたが、
マクロでは一国全体のモノ・サービスをひとまとめにして1つの市場として扱います。
ここで決まるのは、一国の国民所得(GDP)の水準です。
第7章で扱う45度線分析とIS曲線は、この市場の分析です。
② 貨幣市場
マクロ経済学では、資産を「貨幣」と「貨幣以外の資産(債券など)」の
簡単にいうと
登場人物は家計・企業・政府・海外・金融の5つ。この5人のあいだをお金とモノがぐるぐる回っているのが一国の経済だよ!
経済主体とは、経済活動を行う基本的な単位のことです。
マクロ経済学では、次の5つのグループに分けて考えます。
① 家計部門
私たち一人ひとりの世帯です。
企業に労働を提供して賃金を受け取り、そのお金で財・サービスを消費します。
残った分は貯蓄として金融機関に預け、利子を受け取ります。
また、政府に納税します。
② 企業部門
財・サービスを生産する主体です。
簡単にいうと
生産物市場の分析でやりたいのはただ1つ。「国民所得(GDP)の水準はどこに決まるのか」を突き止めることだよ!
生産物市場の分析とは、一国の国民所得(総生産、GDP)の水準がどのように決まるのか、
そしてそれが政府の政策からどんな影響を受けるのかを明らかにすることです。
① 国民所得はGDPと同じものと考える
「国民所得」という言葉には広い意味と狭い意味があります。
第7章から先では、国民所得を広い意味でとらえ、GDP(国内総生産)と同じものとして扱います。
記号は
簡単にいうと
45度線分析 → IS曲線 → IS-LM分析 → AD-AS分析。この順に道具が組み合わさっていくの。先に地図を見ておくと迷わないよ!
マクロ経済学の分析は、扱う市場を1つずつ増やしていくという順序で組み立てられています。
先に全体の地図を見ておきましょう。
① 生産物市場だけを見る(第7章)
まず45度線分析で、生産物市場の需要と供給が一致する国民所得を求めます。
このモデルでは利子率も物価も考えません。
次に、投資が利子率によって変わることを組み込み、
生産物市場を均衡させる利子率と国民所得の組合せを描きます。これがIS曲線です。
② 貨幣市場だけを見る(第8章前半)
貨幣の需要と供給を考え、
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| 一国全体の集計量 |
| 中心の問い | 資源が効率よく配分されているか | 国民所得の水準がどう決まるか |
| 主な道具 | 需要曲線・供給曲線・無差別曲線 | 45度線分析・IS-LM分析・AD-AS分析 |
| 財の扱い | 財Xと財Yを区別する | すべての財・サービスをひとまとめ |
| 価格 | 個々の財の価格 | 物価水準(全体の平均) |
ミクロで学んだ「価格が需要と供給を調整する」という発想は、マクロでも一部で使われます。
ただしマクロには、ミクロにはなかった大きな主張が加わります。それが次の点です。
③ 「需要が主導する」というケインズの発想
第7章から第9章までで学ぶ分析の多くは、J.M.ケインズの考え方に基づいています。
ケインズの主張を一言でいえば、需要が増えれば、それに応じて供給(=国民所得)も増える、
つまり需要の側が国民所得の水準を決めるというものです。
この考え方が生まれた背景には、1929年に始まった世界大恐慌があります。
街には失業者があふれ、工場は止まり、モノは売れませんでした。
当時の主流だった考え方では、賃金や価格が下がれば需給は自然に調整され、
失業はいずれ解消されるはずでした。しかし現実には解消されません。
ケインズは、その原因を有効需要の不足に求めました。
人々が消費せず、企業が投資しないから、作っても売れず、
売れないから雇わず、雇われないからさらに消費が減る、という悪循環です。
そして「それなら政府がダムを造るなどして、需要そのものをつくればよい」と主張しました。
この考え方は、F.ルーズベルト大統領のニューディール政策を理論の面から支えることになります。
マクロ経済学の多くの結論が「需要を増やせば国民所得が増える」という形になるのは、
この出発点があるからです。
所得が減った結果、貯蓄の総額はかえって減ってしまうことがあります。
これを貯蓄のパラドックス(節約のパラドックス)といいます。
ミクロの積み上げでマクロを語れないのは、こうした理由からです。
だからマクロ経済学は、最初から国全体を1つのまとまりとして見ます。
試験での意味
この発想の違いを押さえておくと、たとえば次のような選択肢の正誤が判断できます。
→ ミクロの発想をそのままマクロに持ち込んだ誤りです。
ケインズ理論では、賃金の低下は所得の低下を通じて消費を減らし、国民所得を減らします。
ここで決まるのは利子率です。
第8章で扱う貨幣需要・貨幣供給とLM曲線は、この市場の分析です。
③ 労働市場
労働力の需要と供給が出会う市場です。
ここで決まるのは雇用量と賃金率、そして裏返しとしての失業です。
第9章で扱うAS曲線と失業の理論は、この市場の分析です。
| 市場 | 取引されるもの | そこで決まるもの | 学ぶ章 |
|---|---|---|---|
| 生産物市場 | 財・サービス | 国民所得(GDP) | 第7章 |
| 貨幣市場 | 貨幣 | 利子率 | 第8章 |
| 労働市場 | 労働力 | 雇用量・賃金率 | 第9章 |
④ 3つは切り離せない
ここがマクロ経済学のおもしろいところであり、ややこしいところでもあります。
3つの市場はそれぞれ独立して存在するわけではなく、互いに影響を与え合っています。
だからこそ、第8章では生産物市場と貨幣市場を同時に見るIS-LM分析へ、
第9章では労働市場まで加えたAD-AS分析へと話が広がっていきます。
最初は1つの市場だけを見て、あとから他の市場を加えていく。この順序で学んでいきます。
具体例
日本銀行が金融緩和をして、利子率が下がったとします。
3つの市場を順番にたどってみましょう。
第1段階: 貨幣市場
日本銀行が市中銀行から国債を買い上げると(買いオペレーション)、
市中に出回るお金の量が増えます。
お金が余れば、お金を借りるときの値段、つまり利子率が下がります。
第2段階: 生産物市場
利子率が下がると、企業にとって借入れの負担が軽くなります。
「今まで採算に乗らなかった工場の建設が、この金利ならやれる」という判断が増え、
設備投資(I)が増加します。
投資は総需要の一部ですから、総需要が増えます。
ケインズの発想では需要が国民所得を決めるので、国民所得(GDP)が増加します。
第3段階: 労働市場
生産を増やすには人手が要ります。企業は採用を増やします。
雇用量が増え、失業が減ります。
そして生産物市場へ戻る
雇用が増えれば家計の所得が増え、所得が増えれば消費が増え、
消費が増えればまた生産物市場の需要が増える……。
このように、3つの市場はぐるぐると影響を及ぼし合います。
逆の流れもある
生産物市場で国民所得が増えると、
人々はより多くの取引をするために手元により多くの現金を持ちたくなります。
貨幣の需要が増えるので、利子率は上がる方向に押し戻されます。
すると投資が抑えられ、最初の効果は一部打ち消されます。
この打ち消しが、第8章のIS-LM分析で学ぶクラウディング・アウトの正体です。
1つの市場だけを見ていては見えなかった効果が、市場をつなげると見えてくるわけです。

マクロ経済学が扱う3つの市場
試験のポイント
将来のために設備投資を行い、その資金を金融機関から借入れます。
利益に対して政府に納税します。
③ 政府部門
家計と企業から租税を集め、それを財源として政府支出を行います。
道路や橋を造り、公務員を雇い、社会保障を給付します。
この支出の増減を通じて景気を調整することを財政政策といいます。
④ 海外部門
国境の外の経済です。
国内から財を買ってくれれば輸出、国内が国外から買えば輸入になります。
海外部門を考えに入れた経済を開放経済、考えない経済を閉鎖経済といいます。
⑤ 金融部門
家計から預金を集め、企業に貸付けを行う市中銀行と、
その市中銀行を相手に取引する中央銀行(日本銀行)からなります。
中央銀行は、市中銀行との間で国債などを売買することで、
世の中に出回るお金の量を調節します。
市中銀行から債券を買えば買いオペレーション(お金が世の中に出ていく)、
市中銀行に債券を売れば売りオペレーション(お金を吸い上げる)です。
これを金融政策といいます。
⑥ 主体と政策の対応
| 主体 | 主な行動 | 関わる政策 |
|---|---|---|
| 家計部門 | 消費・貯蓄・労働の提供・納税 | ― |
| 企業部門 | 生産・設備投資・借入れ・納税 | ― |
| 政府部門 | 租税の徴収・政府支出 | 財政政策 |
| 海外部門 | 輸出入 | (為替・貿易政策) |
| 金融部門 | 預金・貸付け・公開市場操作 | 金融政策 |
マクロ経済学で「政策」といえば、原則として政府による財政政策と
中央銀行による金融政策の2つを指します。
この2つがどの経路で国民所得に届くのかを追いかけるのが、第7章から第10章の中身です。
具体例
1万円が経済のなかをどう巡るか、追いかけてみましょう。
① 企業 → 家計(賃金)
ある企業が、従業員に賃金として1万円を支払いました。
企業から見れば費用、家計から見れば所得です。
② 家計 → 政府(納税)
受け取った1万円のうち、2,000円は所得税として政府に納めます。
残りの8,000円が可処分所得です。
③ 家計 → 企業(消費)/家計 → 金融機関(貯蓄)
可処分所得8,000円のうち、限界消費性向が0.8だとすると、
6,400円を消費に回し、1,600円を貯蓄に回します。
消費された6,400円は企業の売上になります。
貯蓄された1,600円は銀行に預けられます。
④ 金融機関 → 企業(貸付け)
銀行は、預かった1,600円を企業に貸し付けます。
企業はそれを元手に設備投資をします。
投資として支出された分もまた、別の企業の売上になります。
⑤ 政府 → 企業・家計(政府支出)
政府は集めた2,000円で道路工事を発注します。
建設会社の売上になり、そこで働く人の賃金になります。
⑥ 海外との取引
企業が製品を海外に売れば輸出で、国内に代金が入ってきます。
逆に原材料を海外から買えば輸入で、代金が国外に出ていきます。
ここから見えること
誰かの支出は、必ず誰かの所得です。
家計の消費は企業の売上、企業の賃金は家計の所得、政府の支出は民間の所得。
だからこそ、誰かが支出を減らせば、別の誰かの所得が減ります。
ケインズが「需要が不足すると国民所得が減る」と言ったのは、この循環を見ていたからです。
そして、政府支出を増やすとその分が誰かの所得になり、
その人がまた一部を消費に回し、それがまた別の誰かの所得になる……
という連鎖が起きます。これが第4節で学ぶ乗数効果です。

5つの経済主体とお金の流れ
試験のポイント
つまり、これから何度も出てくる は、
国民所得であり、GDPであり、一国の総生産でもある、という理解でかまいません。
② 分析の骨格
生産物市場の均衡を考えるとき、登場するのは次の2つです。
| 記号 | 名前 | 中身 |
|---|---|---|
| 総供給 | 一国全体で生産された財・サービスの総額 | |
| 総需要 | 一国全体の財・サービスに対する需要の総額 |
そして、この2つが一致する国民所得を均衡国民所得(均衡GDP)とよびます。
となる を求める
これが第3節で学ぶ45度線分析です。
利子率や物価を考えに入れない、もっとも基本的なモデルになります。
③ なぜ均衡GDPを求めたいのか
より豊かな国になる(経済成長する)ためには、GDPを大きくする必要があります。
そのためには、財・サービスの需要と供給を増やし、
両者が一致する水準そのものを高い位置に持っていかなければなりません。
では、どうすればその水準は上がるのか。
ケインズの答えは明快で、需要を増やせばよいというものでした。
投資を増やす、政府支出を増やす、減税して消費を増やす。
これらがどれだけの効果を持つかを測るのが、第4節の乗数理論です。
④ 需要を増やすべきか、減らすべきか
ただし、需要を増やせばいつでも良いわけではありません。
経済には、働きたい人が全員働いている状態(完全雇用)で達成できる
完全雇用国民所得という天井があります。
この判定と、ギャップを埋めるための政策を扱うのが第5節です。
具体例
第7章で何をするのかを、具体的な数字の流れで先取りしてみましょう。
ステップ1: 総供給を書く(第3節)
総供給は、生産した金額そのものなので、国民所得と等しくなります。
グラフに描くと、傾き1、つまり45度の直線になります。
「45度線分析」という名前はここから来ています。
ステップ2: 総需要を書く(第2節・第3節)
総需要は、消費 、投資 、政府支出 の合計です(閉鎖経済の場合)。
このうち消費は、可処分所得に応じて決まります(第2節の消費関数)。
ステップ3: 均衡を解く(第3節)
とおいて について解けば、均衡国民所得が求まります。
ステップ4: 政策の効果を測る(第4節)
この式を見ると、 や が1増えたとき は
なら 倍です。これが乗数効果です。
ステップ5: 天井と比べる(第5節)
求めた を完全雇用国民所得と比べて、
足りなければデフレギャップ、多すぎればインフレギャップと判定します。
ステップ6: 利子率を組み込む(第6節)
ここまでの分析では、投資 を「与えられた数字」として扱ってきました。
しかし実際の投資は利子率によって変わります。
利子率を組み込んで、生産物市場を均衡させる利子率と国民所得の組合せを描いたものがIS曲線です。
そしてIS曲線は、第8章で貨幣市場から導かれるLM曲線と組み合わされ、
IS-LM分析へと発展していきます。
第7章は、この長い道のりの第一歩にあたります。
試験のポイント
貨幣市場を均衡させる国民所得と利子率の組合せを描きます。これがLM曲線です。
③ 2つの市場を同時に見る(第8章後半)
IS曲線とLM曲線を1枚の図に重ねると、
生産物市場と貨幣市場の両方を均衡させる国民所得と利子率が交点として求まります。
これがIS-LM分析です。
ここで初めて、財政政策と金融政策の効果を同じ土俵で比較できるようになります。
④ 海外取引まで広げる(第8章の応用)
IS-LM分析に国際収支の均衡(BP曲線)を加えると、
IS-LM-BP分析(マンデル=フレミング・モデル)になります。
為替相場制度の違いによって政策の効き方が変わる、という結論が導かれます。
⑤ 物価を動かす(第9章)
IS-LM分析では物価を一定としていました。
物価を変動させ、生産物市場と貨幣市場の両方を均衡させる
国民所得と物価の組合せを描いたものが総需要(AD)曲線です。
一方、労働市場の分析から、与えられた物価水準に対して
どれだけの国民所得が実現するかを描いたものが総供給(AS)曲線です。
この2つを重ねたものがAD-AS分析です。
| 分析 | 均衡させる市場 | 図の縦軸・横軸 | 学ぶ章 |
|---|---|---|---|
| 45度線分析 | 生産物市場 | 総需要・総供給/国民所得 | 第7章 |
| IS曲線 | 生産物市場 | 利子率/国民所得 | 第7章 |
| LM曲線 | 貨幣市場 | 利子率/国民所得 | 第8章 |
| IS-LM分析 | 生産物市場+貨幣市場 | 利子率/国民所得 | 第8章 |
| IS-LM-BP分析 | +国際収支 | 利子率/国民所得 | 第8章 |
| AD-AS分析 | +労働市場 | 物価/国民所得 | 第9章 |
⑥ どの学派の考え方か
ここは混同しやすいところなので、先に整理しておきます。
第9章でAS曲線の形が2通り出てくるのは、
ケインズ派と古典派で労働市場の見方が違うからです。
「なぜ2つあるのか」と戸惑ったら、この地図に戻ってきてください。
具体例
「政府支出を10兆円増やしたら国民所得はどうなるか」という同じ問いに、
それぞれの分析がどう答えるかを並べてみましょう。
45度線分析の答え(第7章)
限界消費性向が0.8なら、政府支出乗数は 。
国民所得は 兆円増えます。
このモデルでは利子率も物価も動かないので、効果は満額そのまま出ます。
IS-LM分析の答え(第8章)
政府支出を増やすとIS曲線が右にシフトし、国民所得が増えます。
ところが国民所得が増えると、取引のために貨幣がより多く必要になり、
利子率が上がります。
利子率が上がると民間の設備投資が減ってしまうため、
最初の効果の一部が打ち消されます。これがクラウディング・アウトです。
国民所得の増加は50兆円より小さくなります。
AD-AS分析の答え(第9章)
さらに物価の変動まで考えると、
需要の増加は物価を押し上げ、物価の上昇は実質的な貨幣の量を減らし、
利子率をさらに押し上げます。
その結果、国民所得の増加はIS-LM分析のときよりもさらに小さくなります。
古典派の考え方(AS曲線が垂直)に立てば、
国民所得はまったく増えず、物価だけが上がるという結論にもなります。
この順序の意味
同じ政策でも、考えに入れる市場を増やすほど効果は小さく評価されます。
45度線分析はもっとも単純で、もっとも効果を大きく見積もるモデルです。
だからといって45度線分析が間違っているわけではありません。
複雑なモデルをいきなり扱うことはできないので、
まず単純なモデルで骨格をつかみ、そこに1つずつ現実の要素を足していく。
これがマクロ経済学の学び方です。
試験でも、「どの分析の枠組みで聞かれているのか」を最初に確認すれば、
同じ政策について異なる結論が出ていても混乱しません。

マクロ分析の全体像
試験のポイント
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