市場の失敗と政府の役割
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プレミアムで見る通信、ガス、水道といった産業では、非常に大きな資本設備が必要となり、それを維持するのには巨額のコストがかかります。一方で、財の大量生産が可能であるため、平均費用 (1単位あたりのコスト)を低く抑えることができます(規模の経済)。その結果、放っておくと自然に1社の独占に行き着いてしまう。これが費用逓減産業であり、自然独占です。この節では、なぜ独占になってしまうのか、そして独占的な行動を防ぐためにどんな価格規制が用いられるのかを学びます。限界費用価格規制と平均費用価格規制。この2つの長所と短所の対比が、この節の要点です。
簡単にいうと
水道管を2本引くなんてムダだよね。だから1社しか残らない。これが自然独占!巨額の固定費用と規模の経済が原因だよ。第1章で学んだ平均費用曲線の形が、ここでそのまま効いてくるんだ。
① 費用逓減産業とは
費用逓減産業とは、通信、ガス、鉄道などのように、莫大な額の固定費用が必要となるため、実際に実現し得る需要規模のもとでは平均費用が右下がり(逓減)になるような産業をいいます。
この場合、自然独占となりやすく、効率的な資源配分が実現しないため、各種の規制が設けられることが一般的です。
② なぜ平均費用が下がり続けるのか
第1章第2節で学んだとおり、平均費用は
具体例
費用逓減産業の費用構造を数値で確かめてみましょう。
設定 ある水道事業について、固定費用が年間100億円、1立方メートルあたりの可変費用が10円だとします。
ステップ1: 供給量ごとの平均費用を計算する
| 年間供給量 | 固定費用 | 可変費用 | 総費用 | 平均費用 |
|---|---|---|---|---|
| 1億m³ | 100億円 | 10億円 | 110億円 | 110円 |
| 2億m³ | 100億円 | 20億円 |

費用逓減産業の費用曲線
試験のポイント
簡単にいうと
規制のいちばん単純な形は「政府が自分でやる」こと。日本でも鉄道や電話は国有企業が供給していた時代があるんだ。でも非効率になりやすいという欠点があって、80年代以降は民営化が進んだよ。
① 公営企業とは
これは、ある産業を公営企業の独占とする方法です。
たとえば日本では、鉄道、電話などは国有企業の独占によって供給されていました。
② 長所と短所
| 内容 | |
|---|---|
| 長所 | 企業の行動を政府が統治しやすい |
| 短所 |
簡単にいうと
「完全競争と同じ価格にしなさい」というのが限界費用価格規制!社会的総余剰は最大になるけど、実は大問題があるんだ。企業が赤字になってしまうんだよ。だから補助金が必要になる。
① 分析の設定
ある自然独占産業(独占企業)における需要曲線 、限界収入曲線 、平均費用曲線
簡単にいうと
赤字が出るなら、トントンになる価格にすればいい。それが平均費用価格規制!補助金は要らなくなるけど、その代わり生産量は望ましい水準より少なくなる。2つの規制の長所と短所は、ちょうど裏返しの関係になっているよ。
① 平均費用価格規制とは
平均費用価格規制は、「価格 = 平均費用」となる水準に価格規制を行うものです。平均費用曲線と需要曲線の交点 F に対応する価格()と取引量(
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と分解できました。固定費用 が巨額であれば、 の項が非常に大きく、生産量を増やすほどこの項が急速に小さくなります。
通常であれば、生産量が増えると平均可変費用 が上昇して平均費用はU字型になります。しかし固定費用が莫大な産業では、実際に実現し得る需要規模の範囲内では の低下が勝ち続け、平均費用曲線は右下がりのままになります。
③ 費用逓減産業の問題
費用逓減産業では次の2つの問題が生じます。
1)自然独占が生じる
生産量を増加させるほど、他の企業より有利な費用条件(平均費用逓減)で生産できるため、参入した企業は規模を拡大する誘因をもち、市場の寡占化、独占化が進みます。このような要因で生じる独占を自然独占とよびます。
2)複数企業に生産させるのが非効率である
このように規模の経済が大きく働いている場合には、そもそも複数の企業に生産を行わせることが非効率であり、供給企業を限定させたほうが効率的です。
④ なぜ1社に絞ったほうが効率的なのか
水道事業を考えてみましょう。2社が競争するとすれば、水道管を二重に敷設しなければなりません。その費用は膨大です。
1社に任せれば水道管は1系統で済みます。同じサービスを、はるかに少ない費用で供給できます。
このように、規模の経済が強く働く産業では、競争させること自体が社会的な無駄になるのです。
⑤ とはいえ独占は問題を生む
しかし、1社に任せれば独占の弊害が出ます。第4章で学んだとおり、独占企業は
という行動をとります。
⑥ 対策の方向
以上のような理由から、費用逓減産業では参入を1社だけ(あるいは少数)に抑えると同時に、独占的な行動(高価格、過少供給)をしないように規制を行うという対策がとられることが多くなります。
つまり、
1. 競争させない(1社に絞る)
2. その代わりに価格を規制する
という2段構えです。競争政策の考え方(第4章)とは逆の対応になる点が特徴的です。
⑦ 他の市場の失敗との違い
| 市場の失敗 | 政府の対応 |
|---|---|
| 不完全競争(第4章) | 競争を促進する(独占禁止法) |
| 費用逓減産業(この節) | あえて独占を認めたうえで価格を規制する |
同じ「独占」でも、自然独占の場合は独占を解消しようとしません。解消すること自体が非効率だからです。この違いは試験でも問われます。
⑧ 身近な例
| 産業 | 巨額の固定費用 |
|---|---|
| 水道 | 浄水場、水道管網 |
| 電力(送配電) | 発電所、送電網 |
| 鉄道 | 線路、駅、車両 |
| 都市ガス | ガス管網 |
| 固定通信 | 通信回線網 |
いずれも「二重に設備を作るのは無駄」という共通点があります。第1章第1節で学んだサンクコストが大きい産業でもあります。
| 60円 |
| 5億m³ | 100億円 | 50億円 | 150億円 | 30円 |
| 10億m³ | 100億円 | 100億円 | 200億円 | 20円 |
| 20億m³ | 100億円 | 200億円 | 300億円 | 15円 |
平均費用が と下がり続けています。これが費用逓減です。
ステップ2: 限界費用と比べる
限界費用は可変費用の増加分なので、常に10円です。
| 供給量 | 平均費用 | 限界費用 |
|---|---|---|
| 1億m³ | 110円 | 10円 |
| 10億m³ | 20円 | 10円 |
| 20億m³ | 15円 | 10円 |
平均費用が常に限界費用を上回っている点に注目してください。平均費用が右下がりのときは必ず になります(第1章第2節)。この関係が、後の価格規制の議論で決定的に効いてきます。
ステップ3: 2社で競争させた場合を考える
同じ地域に2社が参入し、水道管を二重に敷設したとしましょう。各社の固定費用は100億円ずつ、合計200億円です。
需要が合計10億m³で、5億m³ずつ分け合うとすると
| 1社独占 | 2社競争 | |
|---|---|---|
| 固定費用 | 100億円 | 200億円 |
| 可変費用 | 100億円 | 100億円 |
| 総費用 | 200億円 | 300億円 |
| 平均費用 | 20円 | 30円 |
同じ10億m³を供給するのに、2社だと100億円も余計にかかります。競争させること自体が無駄だ、ということが数値で確認できました。
ステップ4: なぜ自然に1社になるのか
2社が競争している状態から出発しましょう。
A社のほうが安く供給できるので、価格競争でA社が有利になります。するとA社のシェアがさらに増え、平均費用がさらに下がる。この繰り返しで、最終的にA社が市場を独占します。
規模を拡大した企業がますます有利になるという構造が、自然独占を生みます。
ステップ5: 独占後に何が起きるか
A社が独占したあと、規制がなければ独占企業として行動します。 となる水準まで供給を絞り、高い価格をつけるでしょう。
だからこそ、参入を1社に絞ると同時に価格を規制する、という2段構えの対応が必要になるのです。
ステップ6: 規制緩和との関係
なお、技術の進歩によって自然独占の条件が崩れることもあります。
| 産業 | かつて | 現在 |
|---|---|---|
| 固定電話 | 回線網が必須 → 自然独占 | 携帯・光回線で競争可能に |
| 電力 | 発電・送電が一体 → 自然独占 | 発送電分離で発電は競争可能に |
送電網のように自然独占性が残る部分と、発電のように競争可能な部分を切り分ける(アンバンドリング)という手法が使われています。
「自然独占だから規制する」という結論は、技術の前提に依存している。この点も押さえておくと、規制緩和の議論が理解しやすくなります。
| 同時にきわめて非効率な運営をもたらすことが多い |
政府が直接経営しているので、高価格や過少供給といった独占的行動を防ぐことは容易です。しかしその一方で、競争圧力がないため、費用削減やサービス改善の誘因が働きにくくなります。
③ なぜ非効率になりやすいのか
理由はいくつか挙げられます。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 倒産しない | 赤字が出ても税金で補填されるので、費用削減の圧力が弱い |
| 経営者の誘因 | 利潤を増やしても自分の報酬が増えるわけではない |
| 政治的な影響 | 採算に合わない路線やサービスを維持せざるを得ない |
| 情報の非対称性 | 政府が実際の費用構造を正確に把握できない |
第4節で学んだモラルハザードの問題とも重なります。政府(依頼人)が公営企業(代理人)の努力を監視できないため、努力しない誘因が生まれるわけです。
④ 民営化の流れ
80年代以降、アメリカ、イギリス、日本などでは、公営企業の民営化、規制緩和が促進されてきています。日本では、電話、鉄道などの公営企業が民営化されました。
日本の代表的な例を挙げておきます。
| 年 | 民営化されたもの |
|---|---|
| 1985年 | 日本電信電話公社 → NTT |
| 1985年 | 日本専売公社 → 日本たばこ産業(JT) |
| 1987年 | 日本国有鉄道 → JR各社 |
| 2005年〜 | 日本道路公団 → 高速道路会社 |
| 2007年〜 | 日本郵政公社 → 日本郵政グループ |
⑤ 民営化の後も規制は残る
民営化したからといって、規制がなくなるわけではありません。自然独占の性質が残っている部分については、価格規制や参入規制が続きます。
たとえばNTTの固定電話網や、電力会社の送配電網については、料金や接続条件が規制されています。民営化しても市場の失敗が消えるわけではないからです。
⑥ 3つの対応の整理
費用逓減産業への対応を整理しておきましょう。
| 対応 | 内容 | 課題 |
|---|---|---|
| 公営企業 | 政府が直接供給する | 非効率になりやすい |
| 民営化 + 価格規制 | 民間に任せて価格を規制する | 適切な価格水準の判断が難しい |
| 競争可能な部分の分離 | 自然独占部分だけ規制する | 分離の設計が難しい |
次のテーマ以降では、2番目の「価格規制」について、その具体的な方法を学びます。
⑦ 中小企業への示唆
なお、規制緩和は中小企業にとって機会でもあります。
かつて公営企業が独占していた分野が開放されれば、新規参入の余地が生まれます。電力小売の自由化、旅客運送の規制緩和などがその例です。
一方で、既存の規制に守られていた事業者にとっては競争の激化を意味します。中小企業経営・中小企業政策で扱われる規制緩和の議論も、この枠組みで理解できます。
具体例
公営企業と民営化の効果を、費用の面から考えてみましょう。
設定 ある鉄道事業について、次の状況を想定します。
| 公営時代 | 民営化後 | |
|---|---|---|
| 年間の固定費用 | 500億円 | 500億円 |
| 年間の人件費 | 400億円 | 280億円 |
| その他の可変費用 | 200億円 | 180億円 |
| 年間の輸送量 | 10億人キロ | 12億人キロ |
ステップ1: 平均費用を比べる
公営時代
民営化後
平均費用が110円から80円へ、約27%下がりました。
ステップ2: なぜ下がったのかを分解する
| 要因 | 効果 |
|---|---|
| 人件費の削減 | 400億円 → 280億円(120億円の削減) |
| その他費用の削減 | 200億円 → 180億円(20億円の削減) |
| 輸送量の増加 | 10億 → 12億(固定費用を多く分け合える) |
費用削減の誘因が働いたことと、サービス改善で利用者が増えたことの両方が効いています。
ステップ3: 民営化の課題も見ておく
ただし、民営化には副作用もあります。
| 課題 | 内容 |
|---|---|
| 不採算路線の廃止 | 赤字路線を維持する誘因がなくなる |
| 地域格差 | 都市部は改善、地方は悪化ということが起こりうる |
| 安全投資の抑制 | 目に見えにくい安全対策への投資が削られる懸念 |
このため、民営化後も一定の規制や、赤字路線への補助が併用されることが多くなります。
ステップ4: 価格規制の必要性を確かめる
民営化した事業者が独占企業として行動したらどうなるでしょうか。
需要曲線を ( は億人キロ)、限界費用を10円とします。
規制がない場合(独占)
| 公営企業 | 民営化のみ | 民営化 + 価格規制 | |
|---|---|---|---|
| 費用削減の誘因 | 弱い | 強い | 強い |
| 独占的行動 | 起きにくい | 起きる | 起きない |
| 評価 | 非効率 | 高価格・過少供給 | 望ましい |
公営企業と民営化のそれぞれの長所を組み合わせるのが「民営化 + 価格規制」であり、現在の主流の考え方だといえます。
試験のポイント
先に学習したように、需要曲線と切片が同じで傾きが2倍の限界収入曲線が描かれ、独占企業として行動した場合の価格は 、供給量は となります。一方、完全競争下では、価格 = 限界費用 となるような点 A で均衡し、価格は 、供給量は となります。
② 独占企業として行動した場合
独占企業の利潤最大化行動(限界収入 = 限界費用 )に従って、生産量()と価格()が決定されます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 収入 | 四角形 |
| 総費用 | 四角形 |
| 利潤 | 四角形 (プラス)※補助金不要 |
| 価格と生産量 | 価格 、生産量 ※価格は高く、生産量は過少 |
③ 限界費用価格規制とは
限界費用価格規制は、「価格 = 限界費用」となる水準に価格規制を行うものです。限界費用曲線と需要曲線の交点 A に対応する価格()と取引量()に決定されます。
限界費用価格規制 → 完全競争市場で成立するような価格と生産量に規制する方法(価格 = 限界費用。社会的総余剰が最大化される)
④ 長所: 社会的総余剰が最大になる
第3章で学んだとおり、 となる水準では社会的総余剰が最大になります。したがって、限界費用価格規制は社会的に望ましい生産量を実現します。
需要曲線の高さ(消費者の評価)と限界費用(追加の費用)が一致するところまで生産するので、取り逃がす余剰も、無駄な生産もありません。
⑤ 短所: 企業が赤字になる
ところが、ここに大きな問題があります。
費用逓減産業では平均費用曲線が右下がりです。第1章第2節で学んだとおり、平均費用が右下がりのときは
が成り立ちます。したがって、価格を の水準に規制すると
となり、価格が平均費用を下回ってしまいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 収入 | 四角形 |
| 総費用 | 四角形 |
| 利潤 | 四角形 (マイナス)※補助金が必要 |
| 価格と生産量 | 価格 、生産量 ※社会的に望ましい生産量が実現、社会的総余剰が最大化する価格と生産量が実現 |
⑥ 赤字への対応
企業が赤字のままでは事業を続けられません。そのため、政府からの補助金が必要になります。
補助金の財源は税金です。したがって、限界費用価格規制を採用する場合には
というトレードオフが生じます。
⑦ なぜ赤字になるのかを直感的に
費用逓減産業では、固定費用が莫大です。限界費用は追加1単位の費用なので、固定費用をまったく含みません。
価格を限界費用に合わせるということは、固定費用の回収をあきらめるということです。だから固定費用の分だけ赤字になります。
水道でいえば、水を1立方メートル多く送るのにかかる電気代や薬品代だけを料金にして、水道管の建設費は料金に含めない、という発想です。当然、建設費は回収できません。
⑧ 補助金の財源をめぐる問題
補助金には別の問題も伴います。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 財源の確保 | 税金を集める必要があり、その課税自体が死荷重を生む |
| 公平性 | サービスを使わない人も税を負担する |
| 効率性の低下 | 赤字を補填してもらえるので、費用削減の誘因が弱まる |
とくに最後の点は、第4節で学んだモラルハザードそのものです。「赤字は補填される」とわかっていれば、経営努力の誘因は弱まります。
これらの問題があるため、次のテーマで扱う平均費用価格規制が採用されることもあります。
具体例
限界費用価格規制を数値で確かめてみましょう。
設定 ある自然独占企業について
ステップ1: 平均費用を求める
が増えるほど が小さくなるので、平均費用は右下がりです。費用逓減産業にあたります。
ステップ2: 規制がない場合(独占)を求める
価格は です。
ステップ3: 限界費用価格規制を適用する
とします。
ステップ4: 企業の損益を計算する
2,000の赤字です。この額は固定費用とちょうど同じになっています。価格を限界費用に合わせると、固定費用がまるごと回収できなくなるためです。
ステップ5: 平均費用と比べる
における平均費用は
価格20は平均費用40を大きく下回っています。1単位あたり20の赤字が100単位分で、合計2,000の赤字です。計算が一致しました。
ステップ6: 社会的総余剰を計算する
規制がない場合(独占)
(生産者余剰は収入から可変費用を引いたもの。固定費用は引かないことに注意)
限界費用価格規制の場合
社会的総余剰が3,750から5,000へ増えました。限界費用価格規制によって社会的総余剰が最大になることが確認できます。
ステップ7: 補助金を考慮する
企業の赤字2,000を政府が補填するとしましょう。
第3章で学んだとおり、補助金はマイナスの余剰として計上します。すると差引は3,000となり、規制がない場合の3,750を下回ってしまいます。
ただし、この計算には注意が必要です。補助金2,000は生産者余剰として企業に残るので、社会の中を移転しているだけとも考えられます。
どう数えるかは前提しだいですが、試験では「限界費用価格規制では社会的総余剰が最大化されるが、企業は赤字となり補助金が必要」という結論を押さえておけば十分です。
ステップ8: 独占との比較表
| 独占(規制なし) | 限界費用価格規制 | |
|---|---|---|
| 価格 | 70 | 20 |
| 生産量 | 50 | 100 |
| 企業の利潤 | ||
| 補助金 |
社会的総余剰は最大になるが企業は赤字になる、というのが限界費用価格規制の特徴です。

費用逓減産業の価格規制
試験のポイント
平均費用価格規制 → 平均費用と価格が等しくなるような生産量に規制する方法
② 平均費用価格規制の結果
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 収入 | 四角形 |
| 総費用 | 四角形 (収入と同じ) |
| 利潤 | なし ※独立採算が実現し、補助金不要 |
| 価格と生産量 | 価格 、生産量 ※望ましい生産量より少ない |
価格 = 平均費用ということは、収入 = 総費用ということです(どちらも「価格 × 数量」と「平均費用 × 数量」で、数量が同じだから)。したがって利潤はちょうどゼロになり、独立採算が実現します。
③ 長所と短所
| 限界費用価格規制 | 平均費用価格規制 | |
|---|---|---|
| 価格 | (低い) | (やや高い) |
| 生産量 | (多い) | (やや少ない) |
| 企業の利潤 | マイナス | ゼロ |
| 補助金 | 必要 | 不要 |
| 社会的総余剰 | 最大 | 最大にならない |
2つの規制は、長所と短所がちょうど裏返しの関係になっています。
④ 3つの水準を並べる
規制がない場合も含めて、3つの水準を並べてみましょう。
| 独占(規制なし) | 平均費用価格規制 | 限界費用価格規制 | |
|---|---|---|---|
| 条件 | |||
| 価格 | (最も高い) | ||
| 生産量 | (最も少ない) | ||
| 利潤 | プラス | ゼロ | マイナス |
、 という関係になります。平均費用価格規制は、ちょうど独占と限界費用価格規制の中間に位置します。
⑤ なぜ平均費用価格規制では生産量が少なくなるのか
費用逓減産業では です。したがって
となり、平均費用価格規制のほうが価格が高くなります。価格が高ければ需要量は少なくなるので、生産量も少なくなります。
社会的に望ましい水準は のところなので、平均費用価格規制では望ましい水準より少ない生産量にとどまります。その分だけ死荷重が生じます。
⑥ どちらを採用すべきか
理論的には限界費用価格規制のほうが望ましいのですが、現実には次の問題があります。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 財源 | 補助金の財源を税金で賄う必要があり、その課税自体が死荷重を生む |
| 公平性 | サービスを使わない人にも負担が及ぶ |
| 誘因 | 赤字が補填されるので、費用削減の誘因が弱まる |
| 政治的な難しさ | 特定企業への補助金は批判を受けやすい |
このため、現実の規制では平均費用価格規制に近い考え方が使われることが多くなります。日本の公共料金の多くは、原価に適正な利潤を上乗せして料金を決める総括原価方式で算定されており、これは平均費用価格規制の一種と考えられます。
⑦ 総括原価方式の問題点
ただし、総括原価方式にも問題があります。かかった費用を料金に転嫁できるので、費用を削減する誘因が乏しいのです。
さらに、報酬が資産額に比例して決まる場合には、必要以上に設備投資をする誘因が生まれます。これをアバーチ・ジョンソン効果と呼びます。診断士試験で問われることはまれですが、規制には必ず副作用が伴う、という例として知っておくとよいでしょう。
⑧ この章のまとめ
第5章で扱った4つの市場の失敗を整理しておきます。
| 市場の失敗 | 何が起きるか | 対策 |
|---|---|---|
| 外部効果 | 供給が過大(外部不経済)または過少(外部経済) | ピグー税、補助金、排出権取引、所有権の設定 |
| 公共財 | 供給が過少(フリーライダー問題) | 政府による供給 |
| 情報の不完全性 | 逆選択、モラルハザード | シグナリング、スクリーニング、インセンティブ契約 |
| 費用逓減産業 | 自然独占、高価格・過少供給 | 参入規制 + 価格規制 |
いずれも「市場に任せると社会的総余剰が最大にならない」という共通点をもち、政府の介入が正当化される場面です。第3章の「介入は死荷重を生む」という結論と合わせて、両方の側面を理解しておきましょう。
具体例
前のテーマと同じ設定で、平均費用価格規制を適用してみましょう。
設定 需要曲線 、費用関数 。
ステップ1: 平均費用を確認する
ステップ2: 平均費用価格規制の条件を立てる
なので
ステップ3: 方程式を解く
両辺に を掛けます。
解の公式を使うと
または
需要曲線と平均費用曲線の交点は2つありますが、生産量が多いほうを採用します(そちらのほうが社会的総余剰が大きいため)。
価格は です。
ステップ4: 独立採算を確認する
確かに利潤がゼロになり、補助金は不要です。
ステップ5: 3つの水準を並べる
| 独占 | 平均費用価格規制 | 限界費用価格規制 | |
|---|---|---|---|
| 価格 | 70 | 47.6 | 20 |
| 生産量 | 50 | 72.4 | 100 |
| 企業の利潤 | 0 |
価格は 、生産量は となり、平均費用価格規制がちょうど中間に位置していることが確認できます。
ステップ6: 社会的総余剰を比べる
平均費用価格規制の場合
| 独占 | 平均費用価格規制 | 限界費用価格規制 | |
|---|---|---|---|
| 社会的総余剰 | 3,750 | 4,619 | 5,000 |
限界費用価格規制が最も大きく、次いで平均費用価格規制、独占が最小です。
ステップ7: 死荷重を求める
平均費用価格規制では、社会的に望ましい水準()より少ない72.4しか生産されません。その差による死荷重は
図でいえば、
| 観点 | 限界費用価格規制 | 平均費用価格規制 |
|---|---|---|
| 社会的総余剰 | 5,000(最大) | 4,619 |
| 必要な補助金 | 2,000 | 0 |
| 補助金の財源確保に伴う死荷重 | 発生する | なし |
補助金2,000を集めるための課税にも死荷重が伴います。仮にその死荷重が400を超えるなら、平均費用価格規制のほうが望ましいことになります。
理論上は限界費用価格規制が優れているが、財源の確保まで含めて考えると平均費用価格規制が選ばれることもある。現実の公共料金が平均費用に近い考え方で決められているのは、こうした事情によります。

限界費用価格規制と平均費用価格規制
試験のポイント
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規制がある場合(後述の限界費用価格規制)
規制がなければ価格は105円、供給量は19。規制すれば価格10円、供給量38です。
民営化しただけでは独占の弊害が残るので、価格規制が必要になる。この点が次のテーマにつながります。
ステップ5: 整理する
| 不要 |
| 必要 |
| 社会的総余剰 | 3,750 | 5,000(最大) |
| 補助金 | 不要 | 不要 | 必要 |
3つを並べる
計算が一致しました。
ステップ8: どちらを選ぶかを考える