システム構成技術
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プレミアムで見る1台の機械ではなく、何台かが組になったシステムを丸ごと評価するとき、見る角度は2つあります。どれだけ働けるか(性能)と、どれだけ当てにできるか(信頼性)です。この節では前者、つまり「システムが処理結果を返す能力」を測る物差しを扱います。帯域幅・レイテンシ・スループットの3つは似ているようで測っているものが違い、レスポンスタイムとターンアラウンドタイムは測る区間が違います。いずれも令和4年度・5年度・7年度と繰り返し出題されており、説明を入れ替えた選択肢が定番になっています。最後に、その性能を高めるためのスケールアウトとスケールアップを比べます。
簡単にいうと
帯域幅は「道の広さ」、レイテンシは「出発から到着までの遅れ」、スループットは「実際に運べた量」!道が広くても、混んでいれば実際に運べる量は減るよね。
① システムの評価には2つの視点がある
単一のコンピュータではなく、複数コンピュータから成るシステム全体を評価する視点には、性能評価と信頼性評価があります。
| 視点 | 何を評価するか | 学ぶ節 |
|---|---|---|
| 性能評価 | システムが処理結果を返す能力 | 本節 |
| 信頼性評価 | 一定の条件下で安定して処理を行う能力 | 次節(RASIS) |
速さを測るのが性能評価、止まらなさを測るのが信頼性評価——この区別を押さえてください。
② 性能評価とは
システムの性能評価とは、システムが処理結果を返す能力についての評価です。
代表的な性能評価の指標として、次の5つがあります。
具体例
設例 帯域幅・スループット・レイテンシ
> 次の記述の正誤を判定せよ。(令和5年度第13問 改題)
> ア 単位時間当たりに伝送可能なデータの最大容量をスループットという。
> イ 輻輳(ふくそう)などが原因で、単位時間当たりの実際のデータ伝送量である帯域幅が低下する。
> ウ 伝送の速さはスループットだけでは決まらず、転送要求を出してから実際にデータが送られてくるまでに生じる通信の遅延時間であるレイテンシが影響する。
解答 ア:× イ:× ウ:○
アとイがきれいに入れ替わっている
| 選択肢 | 書かれている定義 | 使われている語 |
|---|---|---|
| ア | 伝送可能な最大容量(=帯域幅) |

性能評価の指標(1/2)

性能評価の指標(2/2)
試験のポイント
簡単にいうと
この2つは「測る区間」が違うだけ!入力を終えてから応答が始まるまでがレスポンスタイム、入力を始めてから出力が終わるまでがターンアラウンドタイム。図で覚えよう。
① レスポンスタイム(応答時間)
コンピュータシステムに対して、端末からある処理の要求を出し終えた時点から、その応答が始まるまでの時間のことです。
主に、リアルタイム処理(OLTP)で用いられる性能指標です。
「コンピュータシステムに対する問い合わせの[終了]を指示してから、応答が[開始]するまでの経過時間」と表現することができます。
たとえば、銀行の端末に「残高照会」の指示を入力し終わってから、残高が出力されはじめるまでの時間を指します。
② ターンアラウンドタイム
コンピュータシステムに処理要求を送ってから結果の出力が終了するまでの時間のことです。
主に、バッチ処理で用いられる性能指標です。
簡単にいうと
処理能力を上げる方法は2つ。台数を増やすか、1台を強くするか!増やすのがスケールアウト、強くするのがスケールアップ。そして、どちらが向くかはサーバの種類で決まるんだ。
① 2つの方向
ここでは、スループットやレスポンスタイムなどの性能評価の指標を高める技術について見ていきます。
| 技術 | やること |
|---|---|
| スケールアウト | 台数を増やす |
| スケールアップ | 1台を高性能にする |
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| 指標 |
|---|
| 帯域幅 |
| レイテンシ |
| スループット |
| レスポンスタイム |
| ターンアラウンドタイム |
このテーマでは前3つを、次のテーマで後2つを扱います。
③ 帯域幅
単位時間あたりに伝送可能なデータの最大容量のことです。平易な表現にすると、回線の太さです。
一般的には、1秒あたりのビット数(bps:bits per second)で表します。
④ レイテンシ
伝送要求を出してから実際にデータが送られてくるまでに生じる通信の遅延時間のことです。一般的には、ミリ秒(ms)単位で表します。
レイテンシは、通信の品質や応答性を評価する指標で、通信の距離、ネットワークにアクセスが集中することを意味する輻輳(ふくそう)、ルーティングの効率などの要因に影響を受けます。
⑤ スループット
スループットは、単位時間あたりの実際のデータ伝送量や単位時間あたりに処理できる処理件数を表す用語であり、文脈により示す内容が異なります。
| 文脈 | スループットが指すもの |
|---|---|
| ネットワーク | 単位時間あたりにネットワーク上で実際に伝送されるデータ量 |
| コンピュータシステムやデータベース | 単位時間あたりに処理できるトランザクション数など |
⑥ 3つの関係を道路にたとえる
| 指標 | 道路でいえば |
|---|---|
| 帯域幅 | 車線の数(道の太さ) |
| レイテンシ | 出発してから到着するまでの時間 |
| スループット | 実際に通過した車の台数 |
⑦ 帯域幅とスループットの違い
ここが試験で問われる最重要点です。
| 帯域幅 | スループット | |
|---|---|---|
| 何を表すか | 最大容量(理論値) | 実際の伝送量(実測値) |
| たとえ | 道の太さ | 実際に通った量 |
道が広くても、混んでいれば実際に通る量は減ります。契約している回線が1Gbpsでも、実際の通信が100Mbpsしか出ないということは珍しくありません。
| 語 | どちらか |
|---|---|
| 伝送可能な最大容量 | 帯域幅 |
| 実際のデータ伝送量 | スループット |
「可能な」「最大」があれば帯域幅、「実際の」があればスループット——この読み分けで判定できます。
⑧ 輻輳(ふくそう)
ネットワークにアクセスが集中することを指します。
道路でいえば渋滞にあたります。輻輳が起きると、
| 起きること | どの指標に影響するか |
|---|---|
| 待ち時間が増える | レイテンシが増加する |
| 実際に運べる量が減る | スループットが低下する |
| 道の太さは変わらない | 帯域幅は変わらない |
輻輳で低下するのはスループットであって、帯域幅ではありません。令和5年度の本試験では、この点が問われました。
⑨ 帯域幅とレイテンシは別物
第1章で学んだ「速い」という言葉には、2つの意味がありました。
| 意味 | 対応する指標 | |
|---|---|---|
| 一度に多く運べる | 量 | 帯域幅 |
| すぐ届く | 時間 | レイテンシ |
太い回線でも、遠ければレイテンシは大きくなります。逆に、細い回線でも近ければレイテンシは小さくなります。
| 用途 | 重視する指標 |
|---|---|
| 大きなファイルの転送 | 帯域幅 |
| オンラインゲーム、Web会議 | レイテンシ |
| 大量の取引処理 | スループット |
第5章で学んだUDPがリアルタイム性を重視するのは、レイテンシを小さく保つためでした。ここでつながります。
| イ | 実際のデータ伝送量(=スループット) | 帯域幅 |
2つの語が入れ替えられています。
確実に判定する方法
「可能な最大容量」なら帯域幅、「実際の伝送量」ならスループット——この1行を握っておけば、両方まとめて切れます。
ウが正しい理由
「伝送の速さはスループットだけでは決まらない」——これは実務的にも重要な指摘です。
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| スループットは大きいが、レイテンシも大きい | 大量に運べるが、届き始めるまで時間がかかる |
| スループットは小さいが、レイテンシも小さい | 少しずつだが、すぐ反応が返る |
Web会議で「映像は綺麗だが、会話がかみ合わない」という状況は、スループットは十分でもレイテンシが大きい状態です。
実務での切り分け
「ネットワークが遅い」という相談を受けたとき、何を測るべきかを整理します。
| 症状 | 測るもの | 考えられる原因 |
|---|---|---|
| 大きなファイルの転送に時間がかかる | スループット | 回線の帯域不足、輻輳 |
| クリックしてからの反応が鈍い | レイテンシ | 距離、経路、輻輳 |
| 特定の時間帯だけ遅い | スループットの時間変化 | 輻輳 |
ping で測れるのはレイテンシ
第5章で学んだpingコマンドは、応答時間を表示します。これがレイテンシの目安になります。
| pingの結果 | 評価 |
|---|---|
| 数ミリ秒 | 社内LAN。良好 |
| 十数〜数十ミリ秒 | 国内のサーバ。実用的 |
| 数百ミリ秒 | 海外のサーバ、または問題あり |
「遅い」を数字にできると、対策が決まる——pingという単純なコマンドが、性能評価の第一歩になります。
回線を太くしても改善しない場合
| 原因 | 太くして改善するか |
|---|---|
| 帯域不足 | する |
| 輻輳 | する(余裕が生まれる) |
| 距離によるレイテンシ | しない |
| サーバ側の処理が遅い | しない |
回線を増強したのに変わらなかったという相談では、下2つを疑います。第1章で学んだボトルネックのある場所に手を入れなければ効果は出ないという原則が、ここでも当てはまります。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a 帯域幅は、単位時間あたりに伝送可能なデータの最大容量であり、一般的にbpsで表す。
> b レイテンシは、通信の距離、輻輳、ルーティングの効率などの要因に影響を受ける。
> c スループットは、ネットワークの文脈でもコンピュータシステムの文脈でも、同じ内容を指す。
解答 a:○ b:○ c:×
レスポンスタイムに対して、ターンアラウンドタイムは「コンピュータシステムに対する問い合わせの[開始]を指示してから、応答が完全に[終了]するまでの経過時間」と表現することができます。
たとえば、銀行の端末に「銀行振込」の指示を入力しはじめてから、実際にその振込が完了するまでの経過時間を指します。
③ 時間軸で並べる
処理の流れを4つの時点に分けます。
| 時点 | 内容 |
|---|---|
| ① | データ入力の開始 |
| ② | データ入力の終了 |
| ③ | データ出力の開始 |
| ④ | データ出力の終了 |
これに対して、
| 指標 | 測る区間 |
|---|---|
| レスポンスタイム | ② → ③(入力終了 → 出力開始) |
| ターンアラウンドタイム | ① → ④(入力開始 → 出力終了) |
④ 図で押さえる
| 指標 | 含む範囲 |
|---|---|
| レスポンスタイム | コンピュータ処理の部分(入力終了から出力開始まで) |
| ターンアラウンドタイム | データ入力+コンピュータ処理+データ出力の全体 |
ターンアラウンドタイムのほうが必ず長くなります。レスポンスタイムを完全に含んでいるからです。
⑤ 覚え方
| 指標 | 英語の意味 | イメージ |
|---|---|---|
| レスポンスタイム | response=応答 | 応答が返り始めるまで |
| ターンアラウンドタイム | turn around=一周して戻る | 依頼から完了まで一周 |
turn around(一周する)という言葉が、全体を回りきるという意味を表しています。
⑥ 適用される処理形態
| 指標 | 主に使われる処理形態 |
|---|---|
| レスポンスタイム | リアルタイム処理(OLTP) |
| ターンアラウンドタイム | バッチ処理 |
⑦ なぜこの対応なのか
| 処理形態 | 利用者の関心 | 測るべきもの |
|---|---|---|
| リアルタイム処理 | 反応がすぐ返るか | レスポンスタイム |
| バッチ処理 | いつ終わるか | ターンアラウンドタイム |
リアルタイム処理では、利用者は端末の前で待っています。反応が始まれば、進んでいることが分かるので安心できます。
バッチ処理では、依頼してから結果を受け取るまでが問題です。途中で反応が始まっても意味がなく、完了して初めて使えます。
関心の違いが、測る区間の違いになっている——こう理解すると、対応が納得できます。
⑧ 第1節とのつながり
第1節で学んだ集中処理と分散処理の比較表に、レスポンスタイムという項目がありました。
| 集中処理 | 分散処理 | |
|---|---|---|
| レスポンスタイム | 速い | 比較的遅い |
分散処理では複数のコンピュータ間で通信が発生するため、その分だけ応答が遅くなります。この節で学んだレイテンシが上乗せされる、と考えると理解しやすいでしょう。
⑨ 試験での問われ方
この2つは、定義を入れ替えて出題されるのが定番です。
> 誤りの例:「レスポンスタイムとは、システムに処理要求を送ってから結果の出力が終了するまでの時間を意味する。」
これはターンアラウンドタイムの内容です。
キーワードで判別する
| 選択肢の語 | 対応する指標 |
|---|---|
| 要求を出し終えた時点から、応答が始まるまで | レスポンスタイム |
| 処理要求を送ってから、結果の出力が終了するまで | ターンアラウンドタイム |
「始まるまで」か「終了するまで」か——末尾の言葉で判定できます。
具体例
設例 スループットとレスポンスタイム
> 次の記述の正誤を判定せよ。(令和4年度第21問 改題)
> c スループットとは、単位時間当たりに処理できる処理件数を意味する。
> d レスポンスタイムとは、システムに処理要求を送ってから結果の出力が終了するまでの時間を意味する。
解答 c:○ d:×
dの誤りは「終了するまで」
レスポンスタイムは、応答が「始まる」までです。「終了するまで」はターンアラウンドタイムの定義です。
銀行の例で確かめる
| 操作 | 測る指標 | 測る区間 |
|---|---|---|
| 残高照会 | レスポンスタイム | 「照会」を押し終えてから、残高が表示され始めるまで |
| 銀行振込 | ターンアラウンドタイム | 振込の入力を始めてから、振込が完了するまで |
なぜ残高照会がレスポンスタイムなのか
残高照会は、結果が表示され始めれば目的が達成されます。1件の数字を読み取るだけなので、表示の開始と終了にほとんど差がありません。
なぜ振込がターンアラウンドタイムなのか
振込は、完了して初めて意味があります。途中で止まれば、お金が動いていません。第3章で学んだトランザクションの考え方——完全に実行されるか、まったく実行されないか——がここでも効いています。
システムの性能目標を決める
通販サイトを構築する場面で、性能目標を設定してみます。
| 機能 | 使う指標 | 目標値の例 |
|---|---|---|
| 商品ページの表示 | レスポンスタイム | 1秒以内 |
| 検索結果の表示 | レスポンスタイム | 2秒以内 |
| 注文の確定 | ターンアラウンドタイム | 5秒以内 |
| 夜間の売上集計 | ターンアラウンドタイム | 2時間以内 |
なぜ目標値を決めるのか
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 設計の指針になる | どこまで作り込むかが決まる |
| テストの合格基準になる | 第9章で学ぶ性能テストの基準 |
| 運用中の監視基準になる | 悪化したときに気づける |
| 利用者との合意になる | 第12章で学ぶSLAの内容になる |
最後の点が重要
第12章で学ぶSLA(Service Level Agreement:サービスレベル合意書)では、こうした性能指標を契約として明記します。「速いこと」では契約になりませんが、「レスポンスタイム1秒以内を95%の要求で満たすこと」なら測定できます。
測れる形で目標を定める——これは経営目標の設定全般に通じる原則です。
利用者が離脱する時間
Webサイトでは、表示が遅いと利用者が離れることが知られています。
| 表示までの時間 | 利用者の反応 |
|---|---|
| 1秒以内 | 快適と感じる |
| 3秒 | 離脱が増え始める |
| 5秒以上 | 多くが離脱する |
性能は、そのまま売上に影響します。第13章で学ぶデジタルマーケティングでも、サイトの表示速度は重要な指標とされています。
「性能評価」は技術的な話に見えて、実は事業上の論点——この視点を持っておくと、経営への助言につながります。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a レスポンスタイムは、主にリアルタイム処理(OLTP)で用いられる性能指標である。
> b ターンアラウンドタイムは、主にバッチ処理で用いられる性能指標である。
> c ターンアラウンドタイムは、レスポンスタイムより短くなることがある。
解答 a:○ b:○ c:×

レスポンスタイムとターンアラウンドタイム
試験のポイント
システムを構成するサーバの台数を増やすことでシステム全体の処理能力を高めることです。
各サーバの性能は低くても、それらを束ねることで高性能なサーバと同等の性能を発揮することができます。
一方、サーバの台数が増えるために管理のオーバヘッドや手間が増大するというデメリットがあります。
Webサーバの性能向上などに用いられます。
③ スケールアップ
サーバの台数を増やすことなく、CPU・主記憶装置・補助記憶装置を高性能なものにするなど、システムを構成するサーバを高性能なものに取り替えることでシステム全体の処理能力を高めることです。
データベースサーバの性能向上などに用いられます。
データベースサーバでは、サーバを分散させるとデータの同期に時間がかかり、直接的な性能向上が難しいためです。
④ 2つを比べる
| スケールアウト | スケールアップ | |
|---|---|---|
| やること | 台数を増やす | 1台を高性能にする |
| 向き | 横に広げる(out) | 上に伸ばす(up) |
| デメリット | 管理のオーバヘッドや手間が増大 | 1台の性能には限界がある |
| 向くサーバ | Webサーバ | データベースサーバ |
⑤ 名前から方向を覚える
| 名称 | 英語 | 方向 |
|---|---|---|
| スケールアウト | out=外へ | 横に並べる |
| スケールアップ | up=上へ | 1台を高く |
アウト=外に広げる(台数)、アップ=上に伸ばす(性能)——この対応で覚えられます。
⑥ なぜWebサーバはスケールアウトなのか
Webサーバの処理には、次の特徴があります。
| 特徴 | 結果 |
|---|---|
| 要求ごとに独立している | どのサーバが処理しても結果は同じ |
| データを持たない(DBは別) | 同期の必要がない |
| 要求の数が増減する | 台数を増減させやすいほうが便利 |
どのサーバが処理しても同じ結果になるので、単純に台数を増やせば処理能力が上がります。
⑦ なぜデータベースサーバはスケールアップなのか
データベースサーバでは、サーバを分散させるとデータの同期に時間がかかり、直接的な性能向上が難しいためです。
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| データを複数台で持つことになる | どれが最新かを合わせ続ける必要がある |
| 同期に時間がかかる | 増やした台数分の効果が出ない |
| 整合性を保つのが難しい | 第3章で学んだACID特性の維持が困難 |
分散させるほど、データを合わせる手間が増える——第1節で学んだ分散処理の「矛盾を回避する手段が必要」という短所が、ここに現れています。
⑧ 第1章とのつながり
第1章のマザーボードの節で、次のように触れました。
> 拡張の考え方は、のちに学ぶスケールアップ(1台の性能を上げる)とスケールアウト(台数を増やす)の区別にもつながります。
メモリを増設したり、CPUを交換したりするのは、スケールアップの考え方です。
⑨ 試験での問われ方
令和4年度の本試験では、2つの定義がそっくり入れ替えて出題されました。
> 誤りの例1:「サーバの台数を増やすことでシステム全体の処理能力を高めることを、スケールアップという。」
> 誤りの例2:「サーバを高性能なものに取り替えることでシステム全体の処理能力を高めることを、スケールアウトという。」
どちらも逆です。
判別のキーワード
| 選択肢の語 | 対応する技術 |
|---|---|
| 台数を増やす | スケールアウト |
| 高性能なものに取り替える | スケールアップ |
⑩ 実務では組み合わせる
多くのシステムでは、部分ごとに使い分けます。
| 層 | 選ぶ技術 | 理由 |
|---|---|---|
| Webサーバ | スケールアウト | 要求が独立しており、台数を増やせば効く |
| アプリケーションサーバ | スケールアウト | 同上 |
| データベースサーバ | スケールアップ | 分散させると同期が課題になる |
第2節で学んだ3層アーキテクチャと、きれいに対応しています。層ごとに性質が違うから、性能の高め方も変わるわけです。
⑪ クラウドとの関係
第12章で学ぶクラウドコンピューティングでは、スケールアウトが非常に簡単になります。
| 自社サーバ | クラウド | |
|---|---|---|
| 台数を増やす | サーバを買って設置する(数週間) | 設定を変えるだけ(数分) |
| 台数を減らす | 無駄になる | 費用も減る |
| 繁忙期だけ増やす | 現実的でない | できる |
必要なときだけ増やせる——この柔軟性が、クラウドの大きな利点のひとつです。この性質を活かすためにも、スケールアウトしやすい設計(第2節のマイクロサービスなど)が重視されるようになりました。
具体例
設例 スケールアウトとスケールアップ
> 次の記述の正誤を判定せよ。(令和4年度第12問 改題)
> a システムを構成するサーバの台数を増やすことでシステム全体の処理能力を高めることを、スケールアップという。
> b システムを構成するサーバを高性能なものに取り替えることでシステム全体の処理能力を高めることを、スケールアウトという。
解答 a:× b:×
きれいに入れ替えられた形
| 選択肢 | 書かれている内容 | 本来の用語 |
|---|---|---|
| スケールアップ | 台数を増やす | スケールアウト |
| スケールアウト | 高性能なものに取り替える | スケールアップ |
out(外へ)=台数、up(上へ)=性能——この対応さえ覚えていれば、両方まとめて判定できます。
通販サイトの繁忙期に備える
年末商戦でアクセスが10倍になる通販サイトを想定します。
現状
| 層 | 構成 |
|---|---|
| Webサーバ | 2台 |
| データベースサーバ | 1台 |
対策の検討
| 層 | 打つ手 | 理由 |
|---|---|---|
| Webサーバ | 10台に増やす(スケールアウト) | 台数に比例して捌ける |
| データベースサーバ | より高性能な機器に交換(スケールアップ) | 分散すると同期が課題になる |
なぜWebサーバは10台にできるのか
利用者の要求を、どのサーバに振り分けても結果は同じだからです。振り分けを行う機器をロードバランサ(負荷分散装置)といい、次節で学ぶロードシェアシステムの中核になります。
データベースが増やせない理由をもう一度
| 台数を増やすと | 何が起きるか |
|---|---|
| 2台にする | どちらに書いたかを合わせる必要がある |
| 書き込みが同時に来る | どちらが正しいかの調整が要る |
| 同期に時間がかかる | 増やしたのに遅くなることさえある |
「増やせば速くなる」とは限らない——これがデータベースの難しさです。
費用の比較
| 方法 | 費用の性格 |
|---|---|
| スケールアウト | 安価な機器を複数。追加・削除が容易 |
| スケールアップ | 高性能機は割高。段階的に上げにくい |
高性能な機器は、性能が2倍になっても価格は2倍では済まないことが多くあります。一方、安価な機器を10台買うのは、価格が読みやすくなります。
この差が、クラウド時代にスケールアウトが好まれる理由です。安価な機器を必要な数だけ、必要な期間だけ使う——という形が、費用の面でも合理的だからです。
中小企業への助言
| 状況 | 助言 |
|---|---|
| サーバが重い | まず何がボトルネックかを測る |
| CPUが常時100% | スケールアップ(CPU交換)またはスケールアウト |
| メモリ不足でスワッピング | メモリ増設(第1章のスラッシング) |
| ディスクの読み書きが遅い | SSDへの交換(第1章) |
| アクセスが集中する時間帯だけ遅い | クラウドでの一時的なスケールアウト |
「サーバを増強する」の前に、どこが詰まっているかを測る——第1章から繰り返し出てきた原則です。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a スケールアウトは、各サーバの性能が低くても、それらを束ねることで高性能なサーバと同等の性能を発揮できる。
> b スケールアウトには、サーバの台数が増えるために管理のオーバヘッドや手間が増大するというデメリットがある。
> c データベースサーバの性能向上には、一般にスケールアウトが用いられる。
解答 a:○ b:○ c:×

性能の指標と処理能力の増やし方
試験のポイント
プレミアムプラン
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