企業活動と経営戦略の全体概要
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プレミアムで見る企業は業種や規模を問わず、外の世界とやり取りしながら日々の活動を営んでいます。材料を仕入れ、お金を集め、人を雇い、商品やサービスを生み出して売る。この当たり前に見える流れを分解すると、企業という存在が「外に向かう顔」と「内に向かう顔」の2つを同時に持っていることが見えてきます。この節では、企業活動がどんな仕組みで回っているのか、それを支える資源には何があるのか、そして経営管理という働きがなぜ必要になるのかを順に押さえます。ここから先に出てくる戦略の話はすべて、この土台の上に乗っています。
簡単にいうと
会社って結局のところ、材料を買って、お金を借りて、人を雇って、商品を作って売る。このサイクルをぐるぐる回し続けている存在なんだよ!
① 企業活動を4つの市場でとらえる
企業活動とは、企業が外部の市場とやり取りしながら、財やサービスを生み出して世の中に送り出す一連の流れのことです。製造業を例にとると、その流れは次の4つの市場との関わりで説明できます。
| 市場 | 企業が何をするか | 流れの向き |
|---|---|---|
| 原材料市場 | 供給業者から原材料や部品を買う | 市場 → 企業 |
| 金融市場 | 銀行借入や増資で資金を調達する | 市場 → 企業 |
| 労働市場 | 求人を出して働き手を採用する | 市場 → 企業 |
| 製品市場 | できあがった製品を顧客に販売し、資金を回収する |
具体例
地元で行列のできるラーメン店を思い浮かべてください。
原材料市場 製麺所から麺を、精肉業者から豚骨を仕入れます。
金融市場 開業資金3,000万円を地方銀行から借り入れました。
労働市場 求人サイトで調理スタッフ2名とホールスタッフ3名を採用しました。
製品市場 一杯900円のラーメンを一日200杯売り、売上を回収します。
仕入原価が一杯あたり300円だとすれば、差額の600円が店の生み出した付加価値です。そこから人件費・家賃・借入返済をまかない、残った分が利益になります。
同時に、厨房とホールの連携が悪ければ提供が遅れて客は離れます。これが「内に向かう働きかけ」、つまり組織の協働の問題です。4つの市場との関係(外)と、スタッフの協働(内)の両輪が回ってはじめて、この店は明日も明後日も営業を続けられます。これがゴーイングコンサーンの実像です。

企業活動(4市場フロー)

経営戦略の体系図(ピラミッド)
試験のポイント
簡単にいうと
会社が持っている武器は大きく4種類。ヒト・モノ・カネ・情報。このうち「情報」だけは、買ってすぐ手に入るものじゃないのがポイントだよ!
① 経営資源の4分類
経営資源とは、企業が事業を動かすために用いる資源の全体を指します。一般にヒト・モノ・カネ・情報の4つに分類されます。
| 資源 | 中身 | 性格 |
|---|---|---|
| ヒト(人的資源) | 経営者・従業員・技術者 | 育成に時間がかかるが、他の3つを動かす原動力 |
簡単にいうと
外の市場に合わせることと、社内の人をまとめること。この2つを同時にやるのがマネジメント。経営戦略と組織論が別々にあるのはそのためだよ!
① なぜマネジメントが必要になるのか
ここまで見てきたとおり、企業活動は「外部環境に対する活動」と「内部組織に対する働きかけ」の両方で成り立っています。この2つはほうっておいても勝手に噛み合うものではありません。外の市場が求めるものと、社内でできることのあいだにはつねにズレがあり、そのズレを埋め続ける働きがマネジメント(経営管理)です。
② 外部適応と内部統合
マネジメントの仕事は、大きく次の2つに分けて理解すると見通しがよくなります。
| 向き | 何をするか | 本科目での対応領域 |
|---|---|---|
| 外部適応 |
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原材料・金融・労働の3つの市場からヒト・モノ・カネが企業に流れ込み、企業はそれらを組み合わせて付加価値を付け、製品市場へ送り出します。販売で回収した資金は、次の仕入れや借入の返済に充てられ、また調達へ戻っていきます。全体として途切れずに循環する構造になっている点が大切です。
② 付加価値とは何か
付加価値とは、外部から調達した原材料や部品に対して、企業が加工・組立・設計・サービスなどの工夫を加えることで新たに生み出す価値のことです。100円で仕入れた小麦粉からパンを焼いて300円で売れば、差額の200円が企業の生んだ付加価値です。企業が社会から存在を認められるのは、まさにこの付加価値を生み出しているからであり、経営戦略とは突き詰めれば「どうすればより大きな付加価値を、より長く生み続けられるか」を考える営みだといえます。
③ 外に向かう活動と、内に向かう活動
4つの市場を相手にする活動は、いずれも企業の外部環境に対する働きかけです。ところが、生産や販売を実際に行うのは労働市場から迎え入れた「人」であり、その人たちの集まりが組織です。したがって企業活動は、外部環境への適応だけでは完結せず、組織の中で人々がうまく力を合わせる協働が伴ってはじめて成り立ちます。
つまり企業活動には、外に向かう活動と内に向かう働きかけという2つの顔があり、その両方を意図的に舵取りすることがマネジメント(経営管理)です。本科目が「経営戦略」「組織論」「マーケティング」という3つの柱で構成されているのも、この構造を反映しています。
④ ゴーイングコンサーン
企業の活動は、決められた回数だけ行って終わるものではありません。長い年月にわたって繰り返し続いていくものです。このように、企業は将来にわたって事業を継続していくという前提をゴーイングコンサーン(継続企業の前提)といいます。会計や監査の分野でも重要な概念で、この前提が揺らぐと財務諸表に「継続企業の前提に関する注記」を付す必要が生じます。
⑤ オープンシステムとクローズドシステム
外部環境との間に相互作用があるシステムをオープンシステム、外部と遮断されて内部だけで完結するシステムをクローズドシステムといいます。企業は外部の市場と絶えずやり取りしていますから、当然オープンシステムです。この見方は、のちに学ぶコンティンジェンシー理論(環境が変われば適した組織も変わる)や資源依存モデル(外部から資源を得ざるを得ないがゆえに他組織に依存する)へとつながる、組織論全体の出発点でもあります。
| 設備・原材料・製品・土地 |
| 目に見える有形資源。お金があれば比較的早く揃う |
| カネ(財務的資源) | 自己資本・借入金・売上 | 他の資源を調達する手段。使い道の自由度が高い |
| 情報(情報的資源) | 技術・ノウハウ・ブランド・顧客データ | 目に見えないが競争力に直結する |
② 4つは別々に存在しているわけではない
この4つは独立した箱ではなく、互いに結びつきながら価値を生みます。優れた設備(モノ)があっても、使いこなす技術者(ヒト)がいなければ動きませんし、そのヒトが積み上げた段取りのコツ(情報)があってはじめて歩留まりが上がります。経営資源を並べて数えるだけでなく、どう組み合わせているかを見るのが経営の目線です。
③ 情報的資源(見えざる資産)の特別さ
4つのうち、情報だけは性格がかなり違います。ヒト・モノ・カネは市場から調達できますが、技術のノウハウや顧客からの信頼はお金を出してもその日のうちには手に入りません。日々の活動を積み重ねるなかで社内に蓄積されていくものだからです。
・同時に多重利用できる ある工場のノウハウを別の工場でも同時に使える。モノやカネにはない性質です。
・使っても減らない むしろ使うほど磨かれて増えることがあります。
・模倣されにくい 長年の蓄積の産物なので、他社が短期間では真似しにくい。
・陳腐化が早い 一方で、技術革新が起きると一夜にして価値を失うこともあります。
この「調達できず、蓄積するしかない」という性質こそが、のちに学ぶコアコンピタンスやVRIO分析、つまり「持続的な競争優位はどこから生まれるのか」という議論の土台になります。資源に競争優位の源を求める考え方をリソースベースドビューと呼びますが、その主役はたいていこの情報的資源です。
④ 経営資源をめぐる中小企業の現実
中小企業は大企業に比べてヒト・モノ・カネのいずれもが限られています。だからこそ、限られた資源をどこに集中させるかという判断が、大企業以上に業績を左右します。経営資源が乏しいこと自体は変えられませんが、蓄積型の情報的資源(職人の技、地域での信用、常連客との関係)でなら規模に関係なく勝負できる。これが中小企業診断士の視点でもあります。
具体例
開業3年目のフィットネスジムで考えてみましょう。
ヒト 国家資格を持つインストラクター4名
モノ 最新のトレーニングマシン20台とスタジオ
カネ 投資家からの出資2,000万円と日々の会費収入
情報 3年かけて磨いた独自プログラムと、会員1,200人分のトレーニング履歴データ
ここで注目したいのは、マシン(モノ)は資金さえあれば競合も明日買えるという点です。一方、会員の体組成の変化を追い続けて生まれた独自プログラムと履歴データ(情報)は、同じものを買ってくることができません。このジムが値下げ競争に巻き込まれずに済んでいる理由は、真似しにくい情報的資源を持っているからです。

経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)
試験のポイント
| 環境の変化を読み、どの市場でどう戦うかを決める |
| 経営戦略・マーケティング |
| 内部統合 | 人を配置し、動機づけ、足並みを揃える | 組織構造論・組織行動論・人的資源管理 |
企業経営理論という科目が「経営戦略」「組織論」「マーケティング」の3編に分かれているのは、偶然ではなくこの構造に対応しているからです。学習の初めに全体の地図を持っておくと、いま自分がどのあたりを歩いているのかが分かりやすくなります。
③ 戦略と組織はどちらが先か
外部適応(戦略)と内部統合(組織)のどちらが先かという問いは、経営学の古典的な論点です。
・チャンドラーは「組織は戦略に従う」と述べました。多角化という戦略をとった企業が、機能別組織では回らなくなって事業部制へ移行していった歴史的事実を丹念に調べたうえでの結論です。
・のちにアンゾフは「戦略は組織に従う」と、逆向きの指摘をしました。現に社内にある能力や体制が、選べる戦略の幅をあらかじめ決めてしまうからです。
どちらか一方が正しいというより、両方向の力が働いていると考えるのが実務的です。この論点は第2編(組織論)の「組織文化」の節で改めて詳しく扱います。
④ 活動は繰り返される
最後にもう一度、ゴーイングコンサーンを思い出してください。企業活動は一回限りではなく繰り返されるからこそ、「今回うまくいったやり方を次にどう活かすか」という管理のサイクルが意味を持ちます。この節の最後に出てくるPDCAサイクルは、まさにその繰り返しを前提にした考え方です。
具体例
創業10年の食品メーカーB社は、健康志向の高まり(外部環境の変化)を受けて、従来の菓子事業に加えて低糖質パンの事業に乗り出すことを決めました。ここまでが外部適応です。
ところが実際に動き出すと、菓子一筋でやってきた製造部門が新しい製法に馴染めず、営業部門も従来の菓子問屋にしかルートを持っていないことが分かりました。そこで社長は、製造部門に専任チームを置き、営業には成果指標を作り直し、部門間の定例会を設けました。これが内部統合です。
戦略を決めただけでは何も動かず、組織を作り替えてはじめて戦略が実行に移る。チャンドラーの「組織は戦略に従う」が、現場で起きている姿です。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
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