序章 生産管理とは
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プレミアムで見る運営管理は、ものをつくる現場(第1編 生産管理)と、ものを売る現場(第2編 店舗・販売管理)の2本立てでできている科目です。いきなり用語の暗記に入ると迷子になりやすいので、まずは「生産とはどういう営みか」「その生産を管理するとは何をすることか」という土台の部分を、工場の風景を思い浮かべながら押さえておきましょう。この節で身につけた見取り図が、このあと出てくる数十個の管理手法を置く棚になります。
簡単にいうと
生産をひとことでいえば「ものづくり」です。材料を運び込み、手と機械を加えて、価値のある製品にして送り出す。この一連の流れを、まずは食品工場の風景で具体的につかんでしまいましょう。
生産とは、原材料や部品などを工場に投入し(インプット)、加工や組立といった作業を通じて価値を加え、製品として送り出す(アウトプット)活動をいいます。投入されたものが、途中の工程を通るあいだに別のもの(より価値の高いもの)へ姿を変えるので、生産は変換プロセスだと表現されます。
ここで大事なのは、「工場=機械が並んだ特別な場所」と身構えないことです。家庭の料理を思い浮かべてください。スーパーで食材を買ってくるのが調達、冷蔵庫にしまうのが倉庫での保管、台所が工場、包丁やまな板が工具、コンロやオーブンが設備・機械にあたります。レシピを決めてから買い物に行き、手順どおりに作る。この流れは工場の生産とまったく同じ構造です。
生産活動は、おおまかに次の3段階をたどります。
| 段階 | やること | 家庭の料理でいうと |
|---|---|---|
| 設計 | 何をどういう仕様でつくるかを決め、仕様書・設計図に落とす | 献立とレシピを決める |
具体例
カット野菜(サラダ)工場を例に、流れを追いかけてみましょう。レタスが箱で運び込まれてから店頭に並ぶまで、次の順で流れていきます。
同じ食品工場でも、冷凍餃子の工場になれば流れはがらりと変わります。小麦粉に水と塩を混ぜて皮を配合し、生地を熟成させ、のし工程で薄く延ばし、ローラーで皮の厚さに整える。そこへ肉・ニラ・調味料の具を包んで成形し、できたてをそのまま出す生餃子と、蒸して中心まで火を通す蒸し工程に進むものに分かれます。蒸したものは冷却され(チルドなら10℃以下、冷凍なら−18℃以下)、壊れないようにパックされ、最後にエックス線で原料肉の骨や殻を見つけて取り除きます。
工程の中身はまるで違うのに、「材料を入れて、加工して、製品を出す」という骨格と、人・もの・機械・方法を組み合わせているという点は共通しています。この共通の骨格こそが、運営管理で扱う生産の姿です。

生産とは ── インプットを製品に変える営み
試験のポイント
簡単にいうと
工場は、ただ作れればいいわけではありません。よいものを、安く、早く。この3つを同時に成り立たせるための調整の仕事が生産管理です。そして調整は、計画して、やってみて、ずれを直す、という輪をまわして進めます。
工場の役割は材料を製品に変えることですが、変換はできるだけ効率よく行いたいものです。材料を無駄なく使い、機械や設備を活かし、できるだけ少ない人数で短い期間に作る。そうして初めて、お客様に「よいもの(品質:Quality)」を「安く(原価:Cost)」「早く・必要な量だけ(納期・数量:Delivery)」届けられ、売上や利益につながります。
この頭文字をとったQCDが、生産管理で最初に押さえるべき3つの物差しです。QCDは需要の3要素とも呼ばれ、それぞれに対応する管理活動が置かれます。
| 要素 | 内容 | 対応する管理 |
|---|
簡単にいうと
運営管理は範囲が広く、初めて読むと用語の洪水に感じます。でも、並んでいる章はどれもPDSサイクルのどこかに置かれています。先に地図を持っておけば、個々の手法が「どの場面の道具か」で頭に入ります。
運営管理は、次の2つの編でできています。どちらも「現場をうまくまわすための管理」を扱いますが、舞台が工場か店舗かで分かれます。
| 編 | 舞台 | 扱うテーマ |
|---|---|---|
| 第1編 生産管理 | 工場・製造現場 | 生産形態、生産計画、作業改善、設備保全、在庫、品質 |
| 第2編 店舗・販売管理 |
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| 決めた仕様に必要な材料・部品・設備を手に入れる |
| 食材を買ってくる |
| 作業 | 材料に加工を施し、製品の形にしていく | 実際に調理する |
この3段階の前後に「受注」と「納品」を足して、①受注 ②設計 ③調達 ④作業 ⑤納品 の5機能で生産活動をとらえる見方もあります。受注の段階では販売予測・売れ行き・店頭在庫の情報が、納品の段階では倉庫や配送といった物流のしくみが、それぞれ生産の出来に効いてきます。2次試験では、この5つの機能のうちどこに、あるいはどの機能と機能のあいだに問題が潜んでいるのかを見抜く力が問われます。なお「設計・調達・作業」を、「投入・加工・産出」という言い方で表すこともあります。
変換プロセスを回すには、次の4つの資源を組み合わせる必要があります。頭文字がすべてMなので生産の4Mと呼ばれます。
| 4M | 意味 | 具体例 |
|---|---|---|
| Man | 人(作業者) | 現場の作業者、多能工、監督者 |
| Material | もの(原材料・部品) | 鋼材、電子部品、野菜 |
| Machine | 機械・設備 | 旋盤、コンベヤ、充填機 |
| Method | 方法(作業方法) | 作業標準、工程順序、段取りの手順 |
Method(方法)のかわりにMoney(金)を入れて4Mと呼ぶ流儀もあります。また、これにInformation(情報・作業指示)を加えて4M1Iとすることもあります。生産管理とは、つまるところ、この4Mを設計・調達・作業のそれぞれの場面でいかにうまく使いこなすかという問題に帰着します。
| Q:品質 | 顧客が求める品質を満たしているか | 品質管理 |
| C:原価 | 目標の原価に収まっているか | 原価管理 |
| D:納期・数量 | 決めた量を決めた期日に出せるか | 工程管理 |
注意したいのは、QCDは3つとも上げればよいという単純な話ではないという点です。品質を追えば原価は上がり、納期を詰めれば品質が危うくなる、という引っぱり合いが常にあります。顧客の満足(CS)と自社の満足(採算)の釣り合いをどこで取るか、その落としどころを探る営みが生産管理だと考えてください。
生産管理は、生産(設計・調達・作業)をQ・C・Dの観点から管理する活動です。JIS(日本産業規格)では次のように定義されています。
> 財・サービスの生産に関する管理活動。具体的には、所定の品質Q・原価C・数量及び納期Dで生産するため、又はQ・C・Dに関する最適化を図るため、人、物、金及び情報を用いて、需要予測、生産計画、生産実施及び生産統制を行う手続及びその活動(JIS Z 8141-1215)
長い定義ですが、骨だけ抜き出せば「QCDを達成するために、4Mを使って、予測→計画→実施→統制を回す活動」ということです。
管理活動は、計画(Plan)→ 実施(Do)→ 統制(See)という輪をまわして進めます。これをPDSサイクル(管理サイクル)といいます。品質管理でよく登場するPDCA(Plan-Do-Check-Act)と発想は同じで、生産管理の分野では伝統的にPDSという言い方をします。
| 段階 | 中身 | 生産管理での具体例 |
|---|---|---|
| P:計画 | 目標と手順を決める | 需要予測、生産計画、日程計画の立案 |
| D:実施 | 計画どおりに作る | 作業指示、資材の手配、製造 |
| S:統制 | 実績と計画のずれを見つけ手を打つ | 進捗管理、現品管理、余力管理 |
統制で見つかったずれは、次の計画に反映されます。1回まわして終わりではなく、継続的にまわし続けることがPDSのねらいです。
具体例
カット野菜の工場で、ある1日に交わされている会話を並べてみると、生産管理が「広い範囲にまたがる調整活動」であることが見えてきます。
本社・工場長・各部門にまたがるこれらの判断を、QCDという共通の物差しのもとでつなぎ合わせ、計画→実施→統制の輪にのせていく。これが現場で起きている生産管理の実像です。
たとえば「来月の出荷が増えそうだ」という情報(計画)に対して、応援人員を手配して生産量を上げ(実施)、日々の生産実績が予定に届いているかを追いかけ、遅れていれば残業や工程の組み替えで取り戻す(統制)。このサイクルを止めないことで、増産の局面でも品質と納期を守れるわけです。

PDSサイクルと生産管理の全体像
試験のポイント
| 店舗・流通 |
| 店舗立地の法規、商圏、売場づくり、物流、POS・流通情報 |
生産管理側の章の並びには、はっきりした意図があります。計画を立て、実際に作業させ、ずれを直す、という流れに沿っているのです。
| 章 | 主な内容 | PDSでの位置 |
|---|---|---|
| 第1章 生産管理概論 | 管理指標、生産の4M、3S・5S・ECRS、生産形態 | 全体の共通言語 |
| 第2章 生産の管理 | JIT、製品設計、VE、生産方式、ライン編成、需要予測、MRP、日程計画、生産統制 | P と S |
| 第3章 作業の管理 | 方法研究(工程分析・動作研究)、作業測定(標準時間) | D を良くする |
| 第4章 設備の管理 | 保全、設備総合効率、レイアウト・SLP・DI分析 | D を支える |
| 第5章 物の管理 | 資材・外注、在庫と発注方式、QC7つ道具、環境法規 | Q と C |
最初に手をつけるとよいのは、計算で答えが出る論点と言葉の定義がはっきりした論点です。生産性・歩留り・編成効率・経済的発注量(EOQ)・設備総合効率といった計算問題は、式さえ手になじめば確実に点になります。一方、3S・5S・ECRS・工程図記号のように定義がJISで固まっているものは、そのまま問われるので早めに固めてしまうと後が楽です。
逆に、読んだだけでは像が結びにくいのが、方法研究やスケジューリング、SLPのように「手順」を追う論点です。これらは図や具体例と一緒に、手を動かしながら追いかけるのが結局いちばん近道になります。
また、運営管理は2次試験の事例III(生産・技術)と直結する科目です。1次のために用語を覚えるだけでなく、「この工場は受注から納品までのどこで詰まっているのか」という見方をあわせて育てておくと、2次に入ってから効いてきます。
具体例
たとえば「納期遅れが慢性化している工場」を診断する場面を思い浮かべてください。運営管理で学ぶ道具は、次のように使い分けられます。
章ごとにばらばらの知識に見えても、現場の1つの症状を前にするとこうして一本の線でつながります。学習の途中で迷子になったら、「いま読んでいる手法は、どの症状に効く薬なのか」と問い直してみてください。

運営管理の全体地図
試験のポイント
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