第7章 中小企業政策の変遷
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プレミアムで見る最後の節では、支援する側の歴史をたどります。中小企業庁が発足した当初の支援は「診断指導事業」でした。国や都道府県が企業を診断し、指導する。そういう上下関係から出発したのです。
ところが平成に入り、地方分権や行政改革の流れのなかで診断指導制度は縮小・廃止されていきます。「中小企業指導法」が「中小企業支援法」に改正された(2000年)ことが、その象徴です。「指導」から「支援」へ──言葉が変わったことは、関係が変わったことを意味します。
その後の展開は、担い手を増やし、窓口を一つにまとめる方向に進みます。2012年に認定経営革新等支援機関制度、2014年によろず支援拠点。金融機関や士業を支援の担い手として取り込み、「どこに相談すればいいかわからない」という声にワンストップで応える窓口をつくる。
そして2017年の中間整理で示された支援機関が果たす3つの役割。気付きやきっかけを与える/ネットワークを形成する/能力を向上する。第3章で学んだ経営力再構築伴走支援の「気づき」という言葉が、ここにすでに現れています。
簡単にいうと
「指導」から「支援」へ。2000年の中小企業指導法→中小企業支援法の改正が転換点。その後は担い手を増やし、窓口を一つにまとめる方向に進んだよ!
中小企業庁発足当初における中小企業支援は、診断指導事業として展開され、「中小企業指導法」(1963年)を制定し、都道府県などの「中小企業総合指導所」と中小企業振興事業団(現在の(独)中小企業基盤整備機構)を両輪とする政策手法を構築するとともに、診断指導事業費補助や高度化資金による助成を行ってきました。
その後、平成に入ると、地方分権や行政改革といった国の役割の見直しの中で、診断指導制度は縮小・廃止されていきました。
中小企業指導法の「中小企業支援法」への改正(2000年)に加え、地方分権が進む中、国は広域的支援の観点から「地域力連携拠点」を整備しました。さらに、リーマン・ショックを受けて、中小企業支援の重要性が一層高まったことから、「中小企業応援センター」を整備してきましたが、その後の行政効率化の観点から、認定経営革新等支援機関制度および専門家派遣事業の創設に至りました。
流れを年表にすると次のようになります。
| 時期 | できごと |
|---|---|
| 1948年 |
簡単にいうと
入口を広く、奥を深く、その間をつなぐ。2017年の中間整理が示した3つの役割は、この形で覚えよう!
2017年6月にとりまとめられた「中小企業政策審議会中小企業経営支援分科会中間整理」では、それぞれの中小企業支援機関が果たす役割として、次の3点がポイントであると述べられています。
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| ① 気付きやきっかけを与え、悩みを気軽に受け止めること | まず受け止める場所が要ります。商工会・商工会議所、士業などの専門家、金融機関といった身近な支援機関が各地にあり、どんな悩みでも持ち込める。場合によっては支援を受けるよう強く背中を押し、手に余るものはより専門的な機関へつなぐ。そのためには、つなぐ先の機関と顔の見える関係を日ごろから築いておくこと、そして相談に乗ったあとも放置せず追いかけることが欠かせない、とされています |
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| 中小企業庁発足。診断指導事業として支援を展開 |
| 1963年 | 中小企業指導法を制定。中小企業総合指導所(都道府県など)と中小企業振興事業団を両輪とする |
| 平成〜 | 地方分権・行政改革の中で診断指導制度は縮小・廃止 |
| 2000年 | 中小企業指導法 → 中小企業支援法へ改正 |
| ― | 広域的支援の観点から地域力連携拠点を整備 |
| ― | リーマン・ショックを受けて中小企業応援センターを整備 |
| ― | 行政効率化の観点から認定経営革新等支援機関制度および専門家派遣事業の創設へ |
中小企業振興事業団が現在の中小企業基盤整備機構である、という系譜も押さえどころです。
そして「指導」から「支援」への改称(2000年)。これは第7章第1節で学んだ1999年の中小企業基本法改正の翌年にあたります。
| 年 | できごと | 思想の転換 |
|---|---|---|
| 1999年 | 中小企業基本法の改正 | 「画一的な弱者」→「我が国経済の基盤を形成するもの」 |
| 2000年 | 中小企業指導法 → 中小企業支援法 | 「指導」→「支援」 |
企業観が変われば、関わり方も変わる。弱者を指導するのではなく、自主的に努力する企業を支援する。この2つの改正が1年違いで行われたことは、偶然ではありません。
1)認定経営革新等支援機関制度の創設(2012年)
経営支援の担い手の多様化・活性化のため、中小企業者などの新たなニーズに対応し、高度かつ専門的な経営支援を行う金融機関や各種士業を取り込むため、2012年に「認定経営革新等支援機関制度」が創設されました。
キーワードは「経営支援の担い手の多様化・活性化」です。国や都道府県だけでは足りないので、金融機関や士業を担い手として取り込むという発想の転換でした。
2)よろず支援拠点の創設(2014年)
さまざまな支援機関が存在することで、中小企業者などからは、どこに相談すべきかわからないという声が増え、「中小企業・小規模事業者ワンストップ総合支援事業」の一環で、2014年にさまざまな経営課題にワンストップ対応する相談窓口として「よろず支援拠点」を各都道府県に設置しました。
担い手を増やした結果、今度は「どこに相談すればいいかわからない」という問題が生まれたという因果に注目してください。その解決策がワンストップ窓口です。2012年に多様化し、2014年に集約する。この2年の流れはセットで覚えましょう。
3)小規模事業者支援法の改正(2014年)
身近な中小企業支援機関である商工会・商工会議所が伴走型支援を強化して、小規模事業者の経営戦略に踏み込み、経営の改善発達を支援する経営発達支援事業を促進する観点から、「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(小規模事業者支援法)の一部を改正する法律」が制定されました。具体的には、商工会・商工会議所が「経営発達支援計画」を策定し、国がこれを認定する仕組みを設け、商工会・商工会議所による経営発達支援事業の実施を促すこととしています。
「伴走型支援」という言葉がここで登場します。第3章で学んだ経営力再構築伴走支援(2023年6月にガイドライン公表)は、この2014年の流れをさらに発展させたものです。
4)小規模企業振興基本計画の改定(2019年)
小規模基本法を受けて、小規模事業者の振興策をまとめて計画的に進めるために作られたのが「小規模企業振興基本計画」で、定められたのは2014年10月でした。そこから5年ほどが経ったところで内容を見直し、2019年6月に改め、新しい5年間を担う「小規模企業振興基本計画(第Ⅱ期)」が始まっています。
第Ⅱ期で重点施策が2つ増えました。背景は3つです。ITの道具が発達したこと。働き方改革が進んでフリーランスのような働き手が増え、副業する人も多くなったこと。そして大きな災害が相次いでいること。これを受けて、もとの4つの目標・10の重点施策に「多様な小規模事業者(フリーランスなど)の支援」と「事業継続リスクへの対応能力の強化」が加わりました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 第Ⅰ期の策定 | 2014年10月 |
| 第Ⅱ期の開始 | 2019年6月(おおむね5年経過を踏まえて変更) |
| 第Ⅱ期で追加された重点施策 | 「多様な小規模事業者(フリーランスなど)の支援」/「事業継続リスクへの対応能力の強化」 |
| 追加前の構成 | 4つの目標、10の重点施策 |
第5章で学んだ基本計画の4つの目標(需要を見据えた経営の促進/新陳代謝の促進/地域経済の活性化に資する事業活動の推進/地域ぐるみで総力を挙げた支援体制の整備)に、重点施策として2つが追加されたという関係です。目標が増えたのではなく、重点施策が増えたという点に注意してください。
追加された2つの背景も押さえておきましょう。
後者は、同じ2019年に成立した中小企業強靱化法(事業継続力強化計画の創設)と同じ問題意識です。

中小企業支援体制の変遷
試験のポイント
| 支援機関間でネットワークを形成することで、広く面でニーズの掘り起こしや気付きの付与を行えることが効果的。ネットワークが形成されていれば、どこの中小企業支援機関を訪れても、支援機関全体で悩みに対応でき、支援策を必要な事業者に円滑に届けることもできる |
| ③ それぞれの中小企業支援機関が能力を向上すること | 特に「分野専攻型」の支援機関においては、窓口機関から取り次がれた場合も含めて、的確に経営課題に対応できるよう、自らの専門性の向上に努めることが重要 |
この3つは、支援機関を2つのタイプに分けて考えると理解しやすくなります。
| タイプ | 役割 | 例 |
|---|---|---|
| 窓口機関(身近な支援機関) | ①気付きやきっかけを与え、取り次ぐ | 商工会・商工会議所、士業等専門家、金融機関 |
| 分野専攻型の支援機関 | ③専門性を高めて的確に対応する | 専門的な支援機関 |
| 両者をつなぐもの | ②ネットワークの形成 | ― |
入口を広く(①)、奥を深く(③)、その間をつなぐ(②)。これが中小企業支援体制の設計思想です。
「分野専攻型」という用語はこの中間整理に固有の表現なので、字面ごと覚えておきましょう。
①の「気付き」という言葉に注目してください。第3章で学んだ経営力再構築伴走支援の定義は、「経営者等との対話と傾聴を通じて、事業者の本質的課題に対する経営者の気付き・腹落ちを促すことにより内発的動機づけを行い、…自己変革・自走化を目指す支援方法」でした。
2017年の中間整理で示された「気付きを与える」という役割が、2023年の伴走支援ガイドラインで方法論として体系化された、という流れで読むことができます。
同時に、第3章で見た支援機関の課題──「支援人員の不足」61.9%、「支援ノウハウ・知見の不足」56.6%──は、この中間整理が指摘した③能力の向上が、いまなお課題であり続けていることを示しています。
支援する側もまた、人とノウハウが足りない。だからこそ②ネットワークの形成によって、一つの機関で抱え込まず、全体で対応する体制が求められているのです。

中小企業支援機関が果たす3つの役割
試験のポイント
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