第7章 中小企業政策の変遷
下の動画はこの節の解説ではありません。 解説動画の雰囲気を知っていただくための見本として、「中小企業の定義」の動画を再生します。
この節の解説動画はプレミアム限定です。プレミアムなら全科目・全節が見放題!
プレミアムで見る最後の章では、これまで学んできた制度がどういう順番で生まれてきたのかを時間軸で整理します。中小企業政策は、中小企業庁を司令塔として、関連するさまざまな組織が協力して実施されます。
この章の主題は中小企業基本法の3つの節目です。
| 年 | できごと | 理念 |
|---|---|---|
| 1963年(昭和38年) | 中小企業基本法 制定 | 二重構造問題の解消 |
| 1999年(平成11年) | 中小企業基本法 改正 | 多様で活力ある中小企業の成長発展 |
| 2014年(平成26年) | 小規模企業振興基本法 制定 | 小規模企業の事業の持続的発展 |
「格差を直す」→「成長させる」→「続けさせる」という3段階の変化。この流れを言葉で言えるようになれば、この章の骨格は押さえたことになります。
そしてもう一つの柱が主要な法律の制定年です。すべてを暗記する必要はありませんが、どの法律が古くてどの法律が新しいかという前後関係は、並べ替え問題として繰り返し出題されます。制度の内容と年号を結びつけて覚えていきましょう。
簡単にいうと
1963年は「過小過多」「画一的な弱者」。1999年で「我が国経済の基盤を形成するもの」へ。2014年で「事業の持続的発展」が加わったよ!
中小企業政策の重点は、中小企業、小規模事業者を巡る事業環境の変化の変遷を経て、「成長」と「持続的発展」の両面を視野に入れ、全方位的な支援政策体系に至っています。
| 時期 | 高度成長期 | 転換期 | 現在 |
|---|---|---|---|
| できごと | 1963年 中小企業基本法 制定 | 1999年 中小企業基本法 改正 |
簡単にいうと
全部覚えるのは大変だから、「どっちが古いか」で覚えよう。昭和は組合と金融、平成は支援と連携、令和は強靱化と成長だよ!
| 年 | 法律 |
|---|---|
| 昭和23年(1948年) | 中小企業庁設置法 |
| 昭和24年(1949年) | 中小企業等協同組合法 |
| 昭和25年(1950年) | 中小企業信用保険法 |
動画・テキスト・過去問・AI添削まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
| 理念 | 二重構造問題の解消 | 多様で活力ある中小企業の成長発展 | 小規模企業の事業の持続的発展 |
| 支援方針 | 国や自治体の経営指導・診断等による中小企業の経営改善 | 意欲と能力のある中小企業に対して、経営資源の確保の円滑化等を支援 | 販路開拓・新事業展開、経営資源の有効活用等の支援 |
今後は、中小企業の成長志向・変革者・挑戦者といった側面に改めてフォーカスすることが示されています。また現在から今後にかけては事業継続支援が横断的な軸として位置づけられています。
この整理は、中小企業庁が2022年6月22日に公表した「激変する世界・日本における今後の中小企業政策の方向性」に示された考え方に沿ったものです。
理念と支援方針がセットで変わっていることに注目してください。
国が引き上げる → 意欲ある企業を後押しする → 続けられるように支えるという、国と企業の関係の変化として読むことができます。
中小企業庁が置かれたのが1948年。その15年後にあたる1963年に、中小企業基本法が作られました。
当時の見方を一言でいえば「過小過多」です。一社一社の規模が小さく、そのわりに数だけは多い。そういう状態にある、ひとまとめに気の毒な存在として中小企業は捉えられていました。また、中小企業で働く労働者は社会的弱者であり、こうした者に対して社会的な施策を講ずるべきとのスタンスで政策が講じられてきました。
このような認識の下、同法は、中小企業と大企業との間の生産性・賃金などに存在する「諸格差の是正」の解消を図ることを政策理念としていました。
同法では、「生産性の向上」と「取引条件の向上」を、諸格差を是正するための具体的な目標としており、この目標を達成するための政策手段を規定し、具体的に実現を図ることとしていました。
キーワードは4つです。
| 語句 | 意味 |
|---|---|
| 過小過多 | 企業規模が小さく、企業数が多すぎる |
| 画一的な弱者 | 一律でかわいそうな存在 |
| 諸格差の是正 | 中小企業と大企業の生産性・賃金などの格差をなくす(政策理念) |
| 生産性の向上・取引条件の向上 | 諸格差を是正するための具体的な目標 |
「生産性の向上」と「取引条件の向上」の2つがセットである点が最重要です。「自己資本の充実」や「競争力の強化」といった、もっともらしい語句と入れ替えた選択肢が作られます。
また中小企業庁の設置は1948年(昭和23年)、基本法の制定は1963年(昭和38年)で15年の開きがある、という時系列も押さえておきましょう。
1999年12月に公布された改正中小企業基本法では、中小企業を次のように位置づけました。
「多様な事業の分野において特色ある事業活動を行い、多様な就業の機会を提供し、個人がその能力を発揮しつつ事業を行う機会を提供することにより我が国経済の基盤を形成するもの」
ここで、どの会社も同じように弱いという一枚岩の中小企業像は捨てられました。
代わりに置かれたのが、4つの役割を担う存在という位置づけです。①新たな産業を生む、②働く場を増やす、③市場に競争を起こす、④地域の経済を活気づける。そして政策の理念も入れ替わりました。それまでの「二重構造の格差是正」が退き、「多様で活力ある中小企業の成長発展」が前に出ます。
この新たな政策理念を実現するため、独立した中小企業の自主的な努力を前提としつつ、①経営の革新および創業の促進、②経営基盤の強化、③経済的社会的環境の変化への適応の円滑化、の3つを政策の柱としています。
第5章で学んだ内容がそのまま出てきています。あわせて確認しておきましょう。
| 項目 | 1999年改正前(旧法) | 1999年改正後(新法) |
|---|---|---|
| 中小企業像 | 画一的な弱者(過小過多) | 我が国経済の基盤を形成するもの |
| 政策理念 | 諸格差の是正(二重構造問題の解消) | 多様で活力ある中小企業の成長発展 |
| 具体的な目標/政策の柱 | 生産性の向上・取引条件の向上 | ①経営の革新および創業の促進 ②経営基盤の強化 ③経済的社会的環境の変化への適応の円滑化 |
| 前提 | 国による指導・保護 | 独立した中小企業の自主的な努力 |
(設問1) 1963年の中小企業基本法では、【A】を、諸格差を是正するための具体的な目標としていた。
ア 「自己資本の充実」と「競争力の強化」
イ 「自己資本の充実」と「取引条件の向上」
ウ 「生産性の向上」と「競争力の強化」
エ 「生産性の向上」と「取引条件の向上」
答え:エ
1999年改正前の(旧)中小企業基本法では、「生産性の向上」と「取引条件の向上」を政策目標としていました。
(設問2) 1999年改正後の政策の柱は、(1)【B】、(2)【C】、(3)経済的社会的環境の変化への適応の円滑化の3つである。
ア B:経営の革新及び創業の促進 C:経営基盤の強化
イ B:経営の革新及び創業の促進 C:事業承継の円滑化
ウ B:公正な市場環境の整備 C:経営基盤の強化
エ B:公正な市場環境の整備 C:事業承継の円滑化
答え:ア
1999年改正後の(新)中小企業基本法では、「経営の革新及び創業の促進」「経営基盤の強化」「経済的社会的環境の変化への適応の円滑化」の3つを政策の柱としています。
「公正な市場環境の整備」は中小企業憲章の基本原則(④)に出てくる語句、「事業承継の円滑化」は経営承継円滑化法に関わる語句です。別の文書の言葉が選択肢に紛れ込んでいる、という構造を見抜けるようにしておきましょう。
2013年、中小企業基本法がふたたび改められます(通称は小規模企業活性化法)。ここで「小規模企業に対して中小企業施策をどう向けるか」という方針が、法律のなかにはっきり位置づけられました。
その流れをもう一段進めたのが翌年です。2014年6月、「小規模企業振興基本法(小規模基本法)」と、「商工会及び商工会議所による小規模事業者の支援に関する法律(小規模事業者支援法)の一部を改正する法律」が成立しました。
1999年の中小企業基本法は、成長発展を理念に掲げ、自分で努力する企業を後押しするために経営革新・創業促進・経営基盤強化への支援を定めていました。小規模基本法はここに一つ足します。伸びることだけを求めるのではなく、小規模事業者が「事業を持続的に発展させる」こともまた基本原則だ、という位置づけです。
小規模事業者支援法のほうは、この基本原則を受けて体制の話をしています。地域に根を張る各地の商工会・商工会議所が、小規模事業者のもつ力を引き出しきれるよう、総がかりで支える体制をつくる。そこを掲げました。
2013年と2014年で何が起きたかを整理します。
| 年 | 法律 | 内容 |
|---|---|---|
| 2013年 | 小規模企業活性化法(中小企業基本法等の改正) | 「小規模企業に対する中小企業施策の方針」を位置づけ(基本法第8条) |
| 2014年6月 | 小規模企業振興基本法(小規模基本法) | 「事業の持続的発展」を基本原則として位置づけ |
| 2014年6月 | 小規模事業者支援法の一部改正 | 商工会・商工会議所が総力をあげて支援する体制の構築 |
2013年は「基本法の改正」、2014年は「新法の制定+支援法の改正」という違いを押さえてください。
そして「成長発展」だけでは小規模事業者をカバーしきれないから「事業の持続的発展」を加えた、という流れが、この時期の政策転換の本質です。

中小企業政策の変遷と主要法律
試験のポイント
| 商工会議所法 |
| 昭和28年(1953年) | 信用保証協会法 |
| 昭和31年(1956年) | 下請代金支払遅延等防止法(令和8年1月1日から中小受託取引適正化法) |
| 昭和32年(1957年) | 中小企業団体の組織に関する法律 |
| 昭和34年(1959年) | 中小企業退職金共済法 |
| 昭和35年(1960年) | 商工会法 |
| 昭和37年(1962年) | 商店街振興組合法 |
| 昭和38年(1963年) | 中小企業投資育成株式会社法 |
| 昭和38年(1963年) | 中小企業基本法 |
| 昭和40年(1965年) | 小規模企業共済法 |
| 昭和45年(1970年) | 下請中小企業振興法(令和8年1月1日から受託中小企業振興法) |
| 昭和48年(1973年) | 中小小売商業振興法 |
| 昭和52年(1977年) | 中小企業倒産防止共済法 |
| 平成3年(1991年) | 中小企業労働力確保法 |
| 平成5年(1993年) | 小規模事業者支援法 |
| 平成10年(1998年) | 投資事業有限責任組合契約に関する法律 |
| 平成10年(1998年) | 中心市街地活性化法 |
| 平成11年(1999年) | 中小企業基本法改正 |
| 平成12年(2000年) | 中小企業支援法(旧中小企業指導法:昭和38年) |
| 平成14年(2002年) | 独立行政法人中小企業基盤整備機構法(同法人の設立は平成16年(2004年)) |
| 平成17年(2005年) | 中小企業新事業活動促進法(旧中小企業創造活動促進法・新事業創出促進法・中小企業経営革新支援法の統合) |
| 平成19年(2007年) | 株式会社日本政策金融公庫法 |
| 平成20年(2008年) | 農商工等連携促進法 |
| 平成20年(2008年) | 経営承継円滑化法 |
| 平成21年(2009年) | 地域商店街活性化法 |
| 平成22年(2010年) | 中小企業憲章(閣議決定) |
| 平成25年(2013年) | 小規模企業活性化法(中小企業基本法等の改正) |
| 平成26年(2014年) | 小規模基本法 |
| 平成28年(2016年) | 中小企業等経営強化法(中小企業新事業活動促進法の改正) |
| 平成29年(2017年) | 地域未来投資促進法 |
| 令和元年(2019年) | 中小企業強靱化法(中小企業等経営強化法等の改正) |
| 令和2年(2020年) | 中小企業成長促進法(中小企業等経営強化法等の改正) |
すべて丸暗記するのは現実的ではありません。次の3つの塊で捉えてください。
① 昭和20〜30年代=「器」をつくった時期
中小企業庁設置法(1948年)を皮切りに、組合(協同組合法1949年・団体組織法1957年・商店街振興組合法1962年)、金融(信用保険法1950年・信用保証協会法1953年)、支援団体(商工会議所法1953年・商工会法1960年)といった、いまも使われている制度の骨格がこの時期に出そろいます。
注目:商工会議所法(1953年)のほうが商工会法(1960年)より7年古い。市部の商工会議所が先、町村部の商工会が後、という順番です。
② 昭和30〜50年代=「共済」と「振興」の時期
3つの共済法が順に成立します。
| 年 | 共済法 |
|---|---|
| 1959年 | 中小企業退職金共済法 |
| 1965年 | 小規模企業共済法 |
| 1977年 | 中小企業倒産防止共済法 |
第6章で学んだ3類型の共済制度の制定年と一致します。退職金 → 小規模 → 倒産防止の順です。
③ 平成以降=「支援」と「統合」の時期
平成に入ると、法律は統合と改正を繰り返して名前を変えていきます。
```
中小企業創造活動促進法 ┐
新事業創出促進法 ├→ 中小企業新事業活動促進法(2005年)
中小企業経営革新支援法 ┘ ↓ 改正
中小企業等経営強化法(2016年)
↓ 改正
中小企業強靱化法(2019年)/中小企業成長促進法(2020年)
```
この系譜は第6章で学んだとおりです。3法統合(2005年)→ 経営強化法へ改正(2016年)→ さらに2度の改正(2019年・2020年)という流れを、年号とセットで押さえておきましょう。
同様に、中小企業支援法(2000年)は旧・中小企業指導法(昭和38年)の改正です。「指導」から「支援」へという名称の変化自体が、政策思想の転換を表しています。
本試験では、3つの法律を古い順に並べる形式が定番です。
商業に関連する中小企業施策は、時代に応じて拡充されてきた。下記のa〜cの法律に関する記述について、制定の古いものから順に正しく並べたものを選べ。
a 地域住民の生活の向上や交流の促進に寄与してきた商店街の活性化を図るために、「地域商店街活性化法」が制定された。
b 商店街の整備、店舗の集団化、共同店舗等の整備等の事業の実施を円滑にし、中小小売商業者の経営の近代化を促進するために、「中小小売商業振興法」が制定された。
c 消費生活の変化等の社会経済情勢の変化に対応し、中心市街地における都市機能の増進や経済活力の向上を推進するために、いわゆる「まちづくり三法」のひとつとして「中心市街地活性化法」が制定された。
答え:エ(b-c-a)
b「中小小売商業振興法」(昭和48年制定)- c「中心市街地活性化法」(平成10年制定)- a「地域商店街活性化法」(平成21年制定)という順に古いとなります。
この3つは商業関連の3法としてセットで覚えておくと便利です。
| 法律 | 制定年 | 対象 |
|---|---|---|
| 中小小売商業振興法 | 昭和48年(1973年) | 小売業(高度化事業計画・連鎖化事業) |
| 中心市街地活性化法 | 平成10年(1998年) | 中心市街地(まちづくり三法の一つ) |
| 地域商店街活性化法 | 平成21年(2009年) | 商店街(商店街活性化事業計画) |
「小売業 → 中心市街地 → 商店街」と、対象が変わっていく順番でもあります。個店の近代化から、まち全体の機能へ、そして商店街という単位へ。政策の焦点が移り変わってきた歴史として読むと、順番が記憶に残ります。
最後に、紛らわしい2つを確認しておきます。
| 事項 | 年 | 注意点 |
|---|---|---|
| 中小企業憲章 | 平成22年(2010年) | 法律ではなく閣議決定 |
| 独立行政法人中小企業基盤整備機構法 | 平成14年(2002年) | 法人の設立は平成16年(2004年)で2年のずれがある |
法律の制定年と法人の設立年が違うという注記は、そのまま出題されうるポイントです。

主要な法律の制定年(昭和〜令和)

覚えておきたい法律の前後関係
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。