産業財産権以外の知的財産権
下の動画はこの節の解説ではありません。 解説動画の雰囲気を知っていただくための見本として、「知的財産権の基礎知識」の動画を再生します。
この節の解説動画はプレミアム限定です。プレミアムなら全科目・全節が見放題!
プレミアムで見る不正競争防止法は、登録された権利を守る法律ではありません。ブランドへのただ乗り、そっくり商品、営業秘密の持ち出しといった「ずるい行為」そのものを名指しして禁じる法律です。登録がなくても守られる代わりに、行為ごとに要件が細かく決められています。目の前の出来事がどの類型にあたるのかを見分けられるようにしておく。それがこの節の要点です。
簡単にいうと
ざっくりいうと、事業者どうしの競争を公正に保ち、消費者を惑わせないための法律です。まず「守られる目印とは何か」から押さえます。
目的(不正競争防止法第1条)
事業者の間の公正な競争と、それに関する国際約束をきちんと実施することを確保するため、不正競争を防ぎ、不正競争による損害賠償について必要な手立てを定め、国民経済の健全な発展に役立てる。これが目的です。
つまり、事業者の間の競争を公正に保ち、あわせて消費者を困惑させないために、不正競争に対する民事の救済と刑事の罰則を定めた法律だということです。
ここでいう国際約束とは、パリ条約、マドリッド協定(「虚偽の又は誤認を生じさせる原産地表示の防止に関するマドリッド協定」を指します)、TRIPs協定、国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約(OECD外国公務員贈賄防止条約)などです。
なお不正競争防止法では、「物」にプログラムが含まれることを条文ではっきりさせています(第2条11項)。
商品等表示(不正競争防止法第2条1項1号)
この法律でいう商品等表示とは、次のものです。
1. 氏名(人の業務にかかるもの。以下同じです)
2. 商号
3. 商標(商標法にいう商標)
4. 標章(マーク)(商標法にいう標章)
5. 商品の容器や包装
6. そのほか商品または営業(非営利の事業も含みます)を表すもの
容器や包装、そして人の業務にかかる氏名まで入るところが、繰り返し問われています。登録した商標だけが目印ではない、というのがこの法律の立ち位置です。
具体例
飲料メーカーが長年使ってきた独特のボトルの形は、商標登録をしていなくても「商品の容器」として商品等表示にあたります。他社がそっくりの容器で似た飲料を売り出せば、不正競争防止法で止められる余地があります。登録がなくても積み上げた信用は守られる、というところがこの法律の値打ちです。

不正競争防止法の目的と商品等表示
試験のポイント
簡単にいうと
ざっくりいうと、他人の看板を借りる行為と、他人の商品をまるごと真似する行為です。要件の違いが試験の山になります。
周知表示混同惹起行為(第2条1項1号)
他人の商品等表示として需要者の間に広く知られている(周知の)ものと同一または類似の商品等表示を使い、あるいはそれを使った商品を譲り渡したり、インターネットなどを通じて提供したりして、他人の商品や営業と混同を生じさせる行為です。
「混同を生じさせる」といっても、実際に取り違えが起きている必要はありません。混同するおそれがあれば足ります。
なお「周知」は一地方で知られている程度でかまいませんが、同一や類似の表示を使っている者の営業地域を含んでいなければなりません。相手の土地で知られていなければ、そもそも取り違えようがないからです。
著名表示冒用行為(第2条1項2号)
他人の著名な商品等表示と同一または類似のものを、自分の商品等表示として使い、あるいはそれを使った商品を譲り渡したり、インターネットなどを通じて提供したりする行為です。周知表示の場合と違って、
簡単にいうと
ざっくりいうと、社外に出していない大事な情報を盗まれたときに使える条文です。ただし「秘密として扱っていた」という跡が残っていないと守ってもらえません。
営業秘密(トレードシークレット)の3要件(第2条6項)
営業秘密とは、秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に役立つ技術上または営業上の情報であって、公然と知られていないものをいいます。定義から分かるとおり、営業上の情報だけでなく技術上の情報も入ります。
守られるには、次の3つをすべて満たす必要があります。
1. 秘密管理性…秘密である旨の表示(マル秘の印)を付ける、鍵やパスワードで触れられる人を絞るといった手立てによって、情報に接する従業員などから見て「これは秘密として扱われている」と分かる状態にあること
2. 有用性…その情報を使うことで経費が減る、経営の効率が上がるなど、客観的に見て役立つこと。実際に使っていなくてもかまいません。失敗した実験データのような一見マイナスの情報でも、それによって研究費の無駄を省けるのなら有用です。いっぽう有害物質の垂れ流し、詐欺、公務員への贈賄といった違法行為に関する情報は、法律が守るべき正当な事業の情報ではないので有用性が認められません
簡単にいうと
ざっくりいうと、コピーガード破り、ドメイン名の先取り、産地の偽装、ライバルの悪口、といった残りの類型です。数は多いのですが、それぞれ一言で覚えられます。
技術的制限手段に対する不正行為
音楽、映画、写真、ゲームなどの無断コピーや無断視聴を防ぐために提供側が施した技術的制限手段によって、視聴や複製が制限されているコンテンツについて、それを見たり記録したり複製したりできるようにする(制限を無効にする)装置やプログラムを譲り渡す行為を禁じるものです。
守られるのは製造業者だけではありません。技術的制限手段で守られている影像、音、プログラム、データを提供する者(放送局、著作権者など)も含まれます。なお個人が自分で制限を外す行為そのものは、この規制の対象になりません。禁じられているのは、その道具を世に出す側です。
例として、ビデオソフトやプログラムのコピーガードを外す装置や方法を提供する行為が挙がります。
ドメイン名にかかる不正行為
図利加害目的で、他人の業務にかかる氏名、商号、商標、標章その他の商品や役務を表すもの(特定商品等表示)と同一または類似のドメイン名を使う権利を取得したり保有したり、そのドメイン名を使ったりする行為です。
簡単にいうと
ざっくりいうと、打てる手はほかの知的財産権とほぼ同じです。ただし過失は推定されません。最後に、半導体と植物の品種を守る2つの法律も押さえます。
民事の手立て(不正競争防止法第3条〜5条、14条)
ほかの知的財産権と同じく、不正競争によって営業上の利益を侵された者には、差止請求、損害賠償請求、信用回復措置請求が認められています。損害額の推定はありますが、過失の推定はありません。登録された権利ではないので、相手に調べようがないからです。
ここで民法の不法行為と、知的財産権における救済の組み立ての違いを整理しておきます。
刑事の手立て(不正競争防止法第21条)
動画・テキスト・過去問・AI添削まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
著名表示は周知表示よりさらに強い力(全国に知られているものを想定します)をもち、大きな集客力や良い品質のイメージと結びついています。ですから需要者が取り違えていなくても、次の3つの害が生じるため規制されます。
1. フリーライド(ただ乗り)…著名表示の集客力や財産としての値打ちにただ乗りすること
2. ダイリューション(希釈化)…希少な著名表示とその使用者との結びつきが、冒用によって薄められること
3. ポリューション(汚染)…高級なイメージの表示を、そうとはいえない店名などに使われて、イメージが汚れること
3つすべてを満たす必要はなく、どれか1つにあたれば著名表示冒用行為になります。
周知表示・著名表示に共通する例外(第19条1項2号〜4号、19条2項)
どちらについても、不正の目的がなく、自分の氏名を使う行為や、周知性や著名性を得る前から同一・類似の表示を使っていた行為(先使用)は、不正競争になりません。この場合、周知表示や著名表示の側は、相手に混同防止表示請求ができます。
裏を返せば、先に使っていたとしても、不正の目的で使っていれば不正競争にあたります。先に使っていた事実だけで守られるわけではありません。
商品形態模倣行為(デッドコピー)(第2条1項3号)
他人の商品の形(その商品の機能を確保するために欠かせない形を除きます)を真似た商品を譲り渡す行為です。
商品の形とは、需要者がふつうの使い方をするときに知覚(視覚と触覚)で分かる、商品の外側と内側の形、そしてその形と結びついた模様、色彩、光沢、質感をいいます(第2条4項)。手ざわりまで入るところが特徴です。
具体例
ある玩具メーカーの人気商品とそっくりな液晶ゲーム機を作って売る行為は、商品形態模倣行為にあたります。ただし守られるのは日本国内で最初に売られた日から3年です。それを過ぎれば形を真似られただけでは止められず、周知性や著名性があるかという別の土俵に移ることになります。

不正競争防止法

周知表示・著名表示の規制対象範囲
試験のポイント
創作性も独創性も新規性も要件ではありません。ここが特許との大きな違いです。
営業秘密にかかる不正競争の類型(第2条1項4号〜9号)
1. 窃取、詐欺、強迫その他の不正な手段で営業秘密を取得し、使い、開示する行為
2. 保有者から正当に示された営業秘密を、不正の利益を得る目的で、または保有者に損害を与える目的で使い、開示する行為
3. 上の1や2の不正な手段が間に挟まっていることを知りながら、または重い落ち度で知らないまま、営業秘密を取得し、使い、開示する行為
4. 上の1や2の不正な手段が間に挟まっていることを、取得したあとで知りながら、または重い落ち度で知らないまま、取得した営業秘密を使い、開示する行為
なお、営業秘密にかかる不正行為の消滅時効(侵害の事実とその行為者を知った時から3年、または侵害が始まった時から20年)が過ぎたあとは、その不正使用から生まれた侵害品を譲り渡す行為は不正競争にあたりません(第19条1項7号)。
限定提供データ(第2条1項11号〜16号、2条7項)
限定提供データとは、業として特定の相手に提供する情報として電磁的な方法で相当な量が蓄積され、管理されている技術上または営業上の情報です。ただし営業秘密と同じもの、および政府の統計データのようにオープンなものは除かれます。
守られるには、次の3つをすべて満たす必要があります。
1. 限定提供性…「業として」とは繰り返し提供している場合(実際には提供していなくても、繰り返し提供する意思が認められる場合を含みます)、「特定の者」とは一定の条件のもとでデータを受け取る者を指します
2. 相当蓄積性…社会通念に照らして、電磁的に蓄積されることで値打ちが生じていること。管理しているデータの一部であっても、集めたり解析したりするのに手間と時間と費用がかかり、その部分に値打ちが生じていれば足ります
3. 電磁的管理性…特定の相手にだけ提供するものとして管理する意思が、外から見て分かる形になっていること。IDやパスワードで触れられる範囲を絞る、といった技術が必要です
自動走行用の地図データや、POSシステムで集めた売上データが典型です。
営業秘密が除かれているのは、営業秘密が社外に出さずに囲い込む情報であるのに対し、限定提供データは条件を満たした外部の相手に渡すことを前提とする情報だからです。向いている方向が逆なので重ならないよう整理されています。したがって同じ情報が営業秘密と限定提供データの両方にあたることはありません。
不正競争の類型は、基本的に営業秘密の場合と同じです。
具体例
退職した従業員が、在職中に触れられた顧客名簿を転職先で使うために持ち出したなら、正当に示された営業秘密を不正の利益を得る目的で使う行為にあたります。ところがその名簿にマル秘の表示もパスワードもなく、誰でも見られる状態だったとしたら、秘密管理性を欠くので営業秘密として守られません。守ってほしければ、守っていた跡を残しておくことです。

営業秘密と限定提供データ
試験のポイント
なお守られるドメイン名に周知性や著名性は要りません。
誤認惹起行為
商品や役務、あるいはその広告や取引に使う書類・通信に、その商品の原産地、品質、製造方法、内容、または役務の質、内容、用途、数量などについて取り違えさせる表示をし、あるいはその表示をした商品を譲り渡したり、インターネットを通じて提供したり、その表示をして役務を提供したりする行為です。
買う側が判断を誤るような表示を禁じるもので、原産地や品質を偽る行為が代表です。この行為は同時に、景品表示法の「優良誤認表示」「有利誤認表示」にあたることが多くあります。
信用毀損行為
競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告げたり、言いふらしたりする行為です。相手の信用を落として自分が優位に立とうとする行為を禁じています。
競争関係にない相手への誹謗は、この法律ではなく民法の不法行為(第709条)として扱われます。ここは条文の振り分けとして問われます。
例として、客観的な裏づけもないまま、競争関係にある他社について「あそこはもう倒産しそうだ」と言いふらす行為が挙がります。
代理人などによる商標の冒用
パリ条約の同盟国などで商標の権利をもつ者の代理人などが、正当な理由なく、その権利者の承諾も得ずに、その商標と同一または類似の商標を、同一または類似の商品や役務に使い、あるいはその商標を使った商品を譲り渡したり、役務を提供したりする行為です。商標を国際的に守るという観点から、輸入代理人などによる不正な使用を禁じています。
具体例
有名企業の社名とそっくりのドメイン名を先に取っておき、その企業に高値で買い取らせようとする行為はサイバースクワッティングにあたり、その社名が周知でも著名でなくても不正競争になります。商標法では届かない場面を、この法律が拾っているわけです。

不正競争行為のその他の類型
試験のポイント
一定の場合には、次の不正競争に刑事罰が科されます。
1. 周知表示混同惹起行為
2. 著名表示冒用行為
3. 商品形態模倣行為
4. 営業秘密にかかる不正行為
5. 技術的制限手段に対する不正行為
6. 誤認惹起行為(虚偽表示を含みます)
半導体集積回路の回路配置に関する法律(半導体チップ法)
集積回路は開発に莫大な費用がかかるのに、真似るのは簡単です。そこで先に開発した者の回路配置を守るために作られました。経済産業大臣に申請し、設定登録されると、独占して使える回路配置利用権が生まれます。存続期間は設定登録の日から10年です(第10条2項)。
種苗法
植物の新しい品種も、開発に莫大な費用がかかるのに増やすのは簡単です。そこで育成した者が開発した農林水産植物の品種を守るために作られました。農林水産大臣への出願、出願公表、審査を経て登録され、独占的な育成者権が生まれます。存続期間は品種登録の日から原則25年です(第19条2項)。
申請先が経済産業大臣なのか農林水産大臣なのか、ここが入れ替えて問われます。
具体例
そっくり商品を売られた会社は、まず販売の差止めを求め、あわせて損害賠償を請求します。このとき相手の過失は推定されないので、会社の側で相手の故意や過失を示さなければなりません。特許を侵害されたケースと比べて、ひと手間多くかかることになります。

不正競争に対する手段と関連する法律
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。