産業財産権
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プレミアムで見る権利を取っただけでは何も起きません。真似されたときに何ができるのかまで知って、はじめて知的財産が武器になります。この節では、どこからが侵害なのか、侵された側が打てる手は何か、逆に警告を受けた側はどう構えるのか、という3つの向きから整理します。診断士としては、助言する立場で問われる場面です。
簡単にいうと
ざっくりいうと、権利者の許しを得ていない人が、権利者だけができるはずの行為を「業として」やってしまうことが侵害です。
産業財産権(および知的財産権)の侵害とは、正当な権原(法律上の裏づけ)のない者、つまり権利者の許諾も得ておらず、法定通常実施権ももたない者などが、権利者の独占的な権利を「実施」(商標権なら「使用」)することをいいます。
直接侵害
正当な権原のない第三者が、特許発明を業として実施することです(特許法第68条)。出願した「特許請求の範囲」の請求項に書かれた構成要素を侵す行為にあたります。
間接侵害
直接侵害にあたる行為に加担したり手を貸したりする行為です(民法第719条)。基本は民法の共同不法行為の考え方に乗っています。
「業として」の読み方
どの知的財産権についても、「私的な利用にあたらないもの」が「業として」になります。私的な利用とは、個人が家庭の中で行うごく狭い範囲のことです。
ですから私的な利用にあたらなければ、
「業として」にあたります。「商売でやっていないから侵害ではない」とはかぎらない、ということです。
権利ごとに侵害の範囲が違う
具体例
町工場が、自社の研究のためではなく取引先に納める部品を1個だけ無償で試作したとします。それは家庭の中の私的な利用ではないので「業として」にあたり、他社の特許を使っていれば侵害です。「1個だけ」も「ただで」も、言い訳にはなりません。

産業財産権の侵害とは
試験のポイント
簡単にいうと
ざっくりいうと、まず警告、それでも止めなければ差止め、そして損害の回収、という流れです。立証の負担を軽くする仕掛けも用意されています。
次の手を打てるのは特許権者と専用実施権者です。通常実施権者は原則としてこれらをできません。
警告
侵害を見つけたら、まず内容証明郵便などの書面で、やめるよう求めるのがふつうです。ただし特許法は警告を要件としていません。相手に悪意がなければ、話し合いからライセンス契約へ進む道もあります。なお補償金請求権を使う場合は、原則として警告が要ります(第65条1項)。
差止請求(特許法第100条)
相手が自分からやめなければ、仮処分(民事保全法第23条)などの法的な手段で差止めを求めます。侵害している者だけでなく、侵害するおそれのある者に対しても求められます。あわせて、侵害によってできた物の廃棄、侵害に使った設備の除却など、侵害を防ぐのに必要な行為も請求できます。
損害賠償請求(民法第709条)
簡単にいうと
ざっくりいうと、慌てて止めるのでも無視するのでもなく、まず相手の権利がどこまで届くのかを正しく調べるのが先です。
まず調べて、それから答える
特許権を侵害しているという警告を受けたり、訴訟や仮処分を起こされたりしたときは、まず相手の特許発明の技術的範囲を正確に調べます。専門家の意見を仰ぐことが大切で、特許庁の判定を求めることもできます(特許法第71条)。調べた結果、侵害にあたらないと判断できれば、その旨を内容証明郵便などの書面で回答します。
慌てて生産を止めれば、本来払う必要のない損失を自分で招くことになります。逆に無視すれば差止めを食らいます。まず調べる、という順番が肝心です。
先使用権がないかを確かめる
形のうえでは侵害にあたりそうな場合でも、自分に先使用権がないかを検討します。相手の出願より前から、その発明の中身を知らないまま自分でも発明し、日本国内でその事業や事業の準備をしていたのであれば、先使用権が認められます。先使用権は、侵害の主張に対する有効な抗弁になります。
相手の権利そのものを争う道
簡単にいうと
ざっくりいうと、自分の権利どうしがぶつかることもあります。そのときは先に出願したほうが勝ち、あとから出願した側は協議か裁定で道を探ります。
産業財産権どうしがぶつかることがあります。たとえば物(プログラムなどを除きます)にかかる特許権が、その物と同じまたは似た形をもつ他人の意匠権や商標権(立体商標)とぶつかる場合です。
このときは先に出願したほうが優先し、あとから出願した者は自分の権利を実施したり使用したりできません(特許法第72条、実用新案法第17条、意匠法第26条、商標法第29条)。自分の権利なのに使えない、という状態が起きるわけです。なお著作権(および著作隣接権)とぶつかる場合は、著作権が生まれた日と出願の先後で判断します。
この場合、あとから出願した特許権者、実用新案権者、意匠権者、それぞれの専用実施権者は、自分が実施するための裁定通常実施権を使えます(特許法第92条、実用新案法第22条、意匠法第33条)。まず先願の権利者に通常実施権の許諾について協議を求め、まとまらないか協議そのものができないときに、特許庁長官へ裁定を請求します。
ただし商標法に裁定の仕組みはありません。
具体例
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そこで特許法は、権利者の負担を軽くする手当てを置いています。
不当利得返還請求(民法第703条・704条)
相手が実施によって得た利益の返還を求められます。こちらは相手の故意や過失を問わず(無過失責任)、消滅時効の期間も不法行為より長いので、損害賠償請求を補う働きをします。
信用回復措置請求(特許法第106条)
損害賠償に代えて、あるいは損害賠償とあわせて、業務上の信用を取り戻すのに必要な措置を求められます。新聞に謝罪広告を出させるのが典型です。
刑事告訴
相手が故意(刑法第38条1項)で侵害している場合には、刑事の処分を求めることも考えられます。特許権の侵害罪(特許法第196条)は非親告罪です。それでも厳正な処分を求めて積極的に刑事告訴(刑事訴訟法第230条)をし、捜査を促すことは有効な一手になります。
権利の種類による違い
具体例
他社が自社の特許技術を使った製品を売っているのを見つけたら、まず内容証明で警告します。止まらなければ仮処分で差止めを求め、あわせて賠償を請求します。このとき相手の過失は推定されるので、相手の側が「過失はなかった」と示さなければなりません。ところが同じことを実用新案権でやろうとすると、先に技術評価書を取って示す必要があり、しかも過失の推定も効きません。同じ模倣品でも、持っている権利によって戦い方がまるで変わります。

産業財産権の侵害に対する手段
試験のポイント
具体例
大手メーカーから「御社の製品は当社の特許を侵害している」という警告書が届いたとします。まず弁理士に頼んで特許請求の範囲を読み解き、自社の製品がその技術的範囲に入るかを調べます。入らないと判断できれば書面で回答し、入りそうであれば、自社がその特許の出願前から同じ技術で作っていなかったか(先使用権)を確かめる。この順番で動きます。

警告を受けた場合の対応
試験のポイント
ある会社が独自のボトル形状で特許を取ったものの、その形が別の会社の先に登録された立体商標とそっくりだった、という場面です。先に出願していた立体商標が優先するので、特許権者は自分の特許を実施できません。まずは先願の商標権者に使用の許諾を求めて協議し、まとまらなければ特許庁長官に裁定を請求することになります。

産業財産権の抵触
試験のポイント
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