生産物市場(財市場)の分析
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プレミアムで見るいよいよマクロ経済学の看板メニュー、45度線分析です。名前だけ聞くと構えてしまいますが、やることは中学校で習った連立方程式と変わりません。総供給の式と総需要の式を書いて、等号で結んで、 について解く。それだけです。
この節では、閉鎖経済(海外との取引がない)で、政府部門と定額税を考えるケースを扱います。総供給がなぜ45度線になるのか、総需要がなぜ緩やかな右上がりの直線になるのか、そして2本が交わる点がなぜ「均衡」とよべるのかを、順に押さえていきましょう。
均衡GDPを求める計算は、令和7年第7問をはじめとして繰り返し出題されています。式の導出まで自分の手で追えるようにしておくと、第4節の乗数理論が驚くほど楽になります。
簡単にいうと
作った金額が、そのまま誰かの所得になる。だから総供給と国民所得はいつも同じ額。グラフに描けば、傾き1のまっすぐな線 ― これが45度線だよ!
総供給 は、一国全体における財・サービスの供給(生産)の総額です。
① 総供給=国民所得
前節で確認したとおり、広義の国民所得は国内総生産(GDP)と同じものとして扱います。
そして、生産された金額はそのまま供給される金額ですから、
具体例
45度線の読み方を、具体的な数字で確かめましょう。
45度線上の点を読む
| 横軸(国民所得 ) | 縦軸(総供給 ) |
|---|---|
| 200兆円 | 200兆円 |
| 500兆円 |

総供給曲線は45度線になる
試験のポイント
簡単にいうと
総需要は、みんなの買い物の合計。消費+投資+政府支出+輸出−輸入。ここでは海外を考えないので、C+I+G だけでいくよ!
総需要 は、生産された付加価値の合計額(=GDP)に対する一国全体の需要です。
記号として AD(Aggregate Demand)が使われることもあります。
① 総需要の中身
簡単にいうと
総供給の式と総需要の式を「=」で結んで、Yについて解くだけ。出てきた答えが均衡国民所得=均衡GDPだよ!
生産物市場の均衡とは、総供給 =総需要
簡単にいうと
需要が多ければ企業は増産、売れ残れば減産。この調整を繰り返すうちに、いつのまにか均衡点に落ち着くの!
実際の経済では、総供給 (生産量)と総需要
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たとえばGDPが500兆円なら、生産された500兆円分の財・サービスが供給されます。
だからGDPと総供給 は等しくなります。
当たり前すぎて拍子抜けするかもしれませんが、これがモデルの出発点です。
② グラフに描くと45度線
縦軸に 、横軸に をとって を描くと、
原点を通る傾き1の直線になります。
傾きが1の直線は、横軸となす角度が45度です。
だからこの直線を45度線とよび、この図を使った分析を45度線分析とよびます。
45度線上の点は、必ず縦軸の値と横軸の値が等しくなります。
縦軸から総供給の大きさを読み、横軸から国民所得の大きさを読む、という使い方をします。
③ なぜこんな一見あたりまえの線を引くのか
45度線分析の目的は、総供給と総需要が一致する国民所得を見つけることです。
総需要の式も同じ図に描いて、45度線と交わる点を探せば、
そこが「総供給=総需要」となる国民所得です。
45度線は、そのためのものさしの役割を果たします。
④ ケインズ的な前提が隠れている
ここには、見落としやすい前提が1つ隠れています。
と書けるのは、
需要さえあれば、企業はいくらでも供給できると考えているからです。
遊休設備も失業者もたっぷりあって、注文が来れば生産を増やせる、という状態です。
これは、大恐慌のような不況期を念頭に置いた仮定です。
「供給する能力は余っている。足りないのは需要のほうだ」というケインズの見立てが、
という1本の式に込められています。
供給側に制約がある場合(完全雇用に達している場合)については、
第5節のインフレギャップと第9章のAS曲線で改めて扱います。
| 750兆円 | 750兆円 |
縦と横がいつも同じ値です。
45度線から外れるとどうなるか
45度線より上にある点は、縦軸の値が横軸の値より大きい点です。
この図では縦軸に総需要も一緒に描くので、
「総需要が国民所得(=総供給)を上回っている」=超過需要の状態を表します。
45度線より下にある点は逆で、超過供給の状態を表します。
つまり45度線は、需要が多すぎるか、供給が多すぎるかを分ける境界線でもあります。
なぜ「45度」と呼ぶのか
数学的には傾き1の直線です。
ですから、横軸から45度の角度で立ち上がる直線になります。
ただし、これは縦軸と横軸の目盛りの幅が同じ場合の話です。
試験の図では目盛りが省略されていることが多いので、
「45度に見えるかどうか」ではなく「 という式の線だ」と理解しておくほうが安全です。
消費曲線と比べる
前節の消費曲線 の傾きは で、
45度線の傾きは1です。
ですから、消費曲線は必ず45度線より緩やかな傾きになります。
このあと総需要曲線を描くときも同じで、
総需要曲線の傾きは なので、必ず45度線より緩やかです。
だからこそ、2本の線はどこかで必ず1回だけ交わります。
交点が1つに定まるというこの性質が、均衡国民所得が一意に決まることを保証しています。
| 記号 | 名前 | 誰の需要か |
|---|---|---|
| 消費 | 民間(家計) | |
| 投資 | 民間(企業) | |
| 政府支出 | 政府による消費や投資 | |
| 輸出 | 海外からの需要 | |
| 輸入 | 国内から海外への支出(差し引く) |
② 三面等価の原則との違いに注意
第6章で学んだ三面等価の原則では、
支出面から見たGDP=民間・政府最終消費支出+国内総固定資本形成+在庫品増加+輸出−輸入
でした。ここには在庫品増加が入っていました。
在庫品増加とは、作ったけれどまだ売れていない分です。
これを含めるからこそ「生産面から見たGDP=支出面から見たGDP」が常に成り立ったのです。
しかし、総需要と総供給の均衡を考えるときに、
売れ残りを「需要」に含めるのは適切ではありません。
本当の意味での需要を見たいので、総需要には在庫品増加を含めません。
だからこそ、総需要と総供給は一致しないことがありうるのです。
(三面等価の原則が常に成り立つのに、総需要≠総供給がありうるのは、この違いによります。)
③ この節での前提
この節では次の前提を置きます。
したがって総需要は、
消費には、前節で学んだ定額税ありの消費関数を使います。
展開すると、
④ グラフの形
でくくり直すと、
切片には、所得と関係なく決まる需要がすべて詰まっています。
独立消費 、投資 、政府支出 はプラスの向き、租税 は 倍してマイナスの向きです。
⑤ 総需要曲線が動くとき
切片に入っているものが変われば、総需要曲線は上下に平行移動します。
| 変化 | 総需要曲線 |
|---|---|
| 投資 の増加 | 上方シフト |
| 政府支出 の増加 | 上方シフト |
| 減税( の減少) | 上方シフト |
| 独立消費 の増加 | 上方シフト |
| 増税( の増加) | 下方シフト |
減税で上方シフトするのは、可処分所得 が増えて消費が増えるからです。
ただし上がる幅は の減少分そのものではなく、その 倍であることに注意してください。
一方、限界消費性向 が変われば傾きが変わります。
シフト(平行移動)と傾きの変化は別物なので、区別しておきましょう。
具体例
総需要の式を、具体的な数字で組み立ててみましょう。
設定(次のテーマで解く設例と同じ条件)
(単位はすべて兆円)
総需要の式を書く
傾きは0.8、切片は150です。
切片の中身を確かめる
式のとおりです。
国民所得ごとの総需要
でぴったり一致しています。これが均衡国民所得です(次のテーマで解きます)。
政府支出を増やしたら
を30から50に増やすと、切片が20増えます。

総需要曲線と切片の内訳
試験のポイント
これを満たす国民所得を均衡国民所得(均衡GDP)といいます。
① 解き方の手順
やることは方程式を解くだけです。
手順1: 左辺の総供給 に を代入する
手順2: 右辺の総需要 に を代入する
手順3: について解く
を左辺に集めます。
両辺を で割って、
これが均衡国民所得の公式です。
② 公式の読み方
この式は2つの部分に分かれています。
| 部分 | 名前 | 意味 |
|---|---|---|
| 乗数 | 需要が1増えると国民所得が何倍増えるか | |
| 独立需要 | 国民所得に依存せずに決まる需要の合計 |
独立需要は、総需要曲線の切片そのものです。
つまり、
均衡国民所得 = 乗数 × 総需要曲線の切片
という構造になっています。
切片が大きいほど、そして乗数が大きいほど、均衡国民所得は大きくなります。
③ グラフで見る
45度線 と、総需要曲線 を1枚の図に描きます。
したがって、総需要曲線は45度線より上から出発して、45度線より緩やかに上がっていきます。
どこかで必ず1回だけ45度線と交わり、その交点の横軸の値が均衡国民所得 です。
④ 均衡国民所得が動くとき
公式を見れば、何が均衡国民所得を動かすかが分かります。
| 変化 | 均衡国民所得 |
|---|---|
| 投資 の増加 | 増加( 倍) |
| 政府支出 の増加 | 増加( 倍) |
| 減税( の減少) | 増加( 倍) |
| 独立消費 の増加 | 増加( 倍) |
| 限界消費性向 の上昇 | 増加(乗数そのものが大きくなる) |
グラフでいえば、前の4つは総需要曲線の上方シフト、
最後の1つは総需要曲線の傾きが急になることに対応します。
どちらの場合も交点は右へ移り、均衡国民所得は増えます。
この「何倍増えるか」を体系的に整理したのが、次節の乗数理論です。
具体例
均衡GDPを求める設例を、最初から最後まで解いてみましょう。
問題
家計、企業、政府から構成される経済モデルを考える。
記号は : GDP、: 消費支出、: 民間投資支出、: 政府支出、
: 租税収入、: 独立消費、: 限界消費性向で、単位は兆円とする。
| 項目 | 条件 |
|---|---|
| 生産物市場の均衡条件 | |
| 消費関数 |
このモデルから導かれる均衡GDPはいくらか。
解答: 750兆円
手順1: 均衡条件に代入する

45度線分析と均衡国民所得
試験のポイント
常に等しくなるとは限りません。
① なぜ一致しないことがあるのか
第6章の三面等価の原則では「生産(総供給)=支出(総需要)」が必ず成り立ちました。
しかしあの「支出」には在庫(まだ販売されていない分)が含まれていたのです。
45度線分析でいう総需要には在庫品増加を含めません。
本当に売れた分だけを需要と数えるので、
作った量と売れた量がずれることがありえます。
② 超過需要のケース
均衡国民所得より低い水準の国民所得 が実現しているとします。
このとき、
つまり総需要のほうが大きい状態で、これを超過需要といいます。
グラフでは、総需要曲線が45度線より上にある領域です。
作った分では足りず、在庫が減っていきます。
企業はこれを見て「もっと作らなければ」と判断し、生産を増やします。
生産が増えるということは国民所得が増えるということなので、
は右へ、均衡国民所得 に向かって動きます。
③ 超過供給のケース
均衡国民所得より高い水準の国民所得 が実現しているとします。
総供給のほうが大きい状態で、これを超過供給といいます。
グラフでは、総需要曲線が45度線より下にある領域です。
作ったものに売れ残りが生じ、在庫が積み上がります。
企業は「作りすぎた」と判断して生産を縮小します。
国民所得は減少し、 は左へ、均衡国民所得 に向かって動きます。
④ 安定性
超過需要のときも超過供給のときも、調整は均衡点 に向かう向きに働きます。
このようにある点に収まることを安定的といいます。
45度線分析では、こうした生産調整が行われた結果として
均衡国民所得が実現する、と想定しています。
⑤ ミクロの市場調整との違い
ここは比べておくと理解が深まります。
| ミクロ(1つの財の市場) | マクロ(45度線分析) | |
|---|---|---|
| 調整するもの | 価格 | 生産量(国民所得) |
| 超過需要のとき | 価格が上がる | 生産が増える |
| 超過供給のとき | 価格が下がる | 生産が減る |
| 呼び名 | ワルラス的調整 | 数量調整 |
ミクロでは価格が動いて需給を一致させました(ワルラス的調整過程)。
45度線分析では価格(物価)は動かないと仮定し、数量のほうが動いて調整されます。
これはケインズの考え方の特徴です。
「価格はそう簡単には下がらない(価格の硬直性)。
だから数量、つまり生産と雇用のほうが調整されてしまう。
その結果として失業が生まれるのだ」という見立てです。
物価を動かす分析は、第9章のAD-AS分析まで待つことになります。
具体例
前のテーマと同じ設例()で、
均衡から外れた状態がどう調整されるかを追ってみましょう。
総需要の式:
総供給の式:
ケース1: が実現している場合
なので超過需要が50あります。
500兆円分しか作っていないのに、550兆円分の注文が来ている状態です。
差の50兆円分は在庫を取り崩して対応することになり、在庫が減ります。
企業は増産します。 は500から増えていきます。
調整の途中: になったら
まだ超過需要が20残っています。さらに増産が続きます。
に到達すると
一致しました。増産も減産も必要がなくなり、ここで止まります。
ケース2: が実現している場合
なので超過供給が50あります。
1,000兆円分作ったのに950兆円分しか売れず、50兆円分が売れ残ります。
在庫が積み上がるので、企業は減産します。 は1,000から減っていきます。
で止まる
やはり750で一致し、調整が止まります。
なぜ必ず戻ってくるのか
総需要曲線の傾き が、45度線の傾き1より小さいからです。
が1増えたとき、総供給は1増えますが、総需要は0.8しか増えません。
つまり、 が増えるほど供給のほうが需要を追い越していくので、
超過需要はやがて解消され、超過供給に転じます。
逆に が減れば、総供給のほうが速く減るので、超過供給は解消されます。
という条件が、均衡の安定性を保証しているわけです。
もし だったら
総需要曲線のほうが45度線より急になり、
均衡から離れるほど不均衡が拡大していく(不安定な)モデルになります。
限界消費性向が1未満であることには、こういう意味もあります。

超過需要・超過供給と生産調整
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
| どちらが大きいか |
|---|
| 500 | 550 | 500 | 需要が上回る(超過需要) |
| 700 | 710 | 700 | 需要が上回る(超過需要) |
| 750 | 750 | 750 | 一致(均衡) |
| 800 | 790 | 800 | 供給が上回る(超過供給) |
| 1,000 | 950 | 1,000 | 供給が上回る(超過供給) |
総需要曲線が20だけ上に平行移動します。傾きは0.8のままです。
減税したら
を50から30に減らすと、切片は 。
150から166へ、16だけ上がりました。
減税の幅は20(50→30)でしたが、切片の上昇は16です。
ですから、減税額の 倍しか上がっていません。
同じ20兆円を使うなら
政府支出を20増やせば切片は20上がり、
減税で20返せば切片は16しか上がりません。
同じ金額なら、政府支出を増やすほうが効くわけです。
これが第4節の「政府支出乗数>租税乗数」の正体です。
| 民間投資支出 |
| 政府支出 |
| 租税収入 |
手順2: 展開する
手順3: を左辺に集める
手順4: について解く
手順5: 数値を代入する
まず括弧のなかを計算します。
次に分数の部分です。
したがって、
よって、均衡GDPは750兆円です。
検算してみる
のとき、消費は、
総需要は、
総供給は 。たしかに一致しました。
計算を速くするコツ
試験では時間が限られています。次の順で機械的に処理すると速くなります。
1. 括弧のなかを先に計算する(独立需要の合計を出す)
を数値で埋めて1つの数にする
2. 乗数を計算する
を先に数にしておく
3. 掛ける
この設例なら「150 × 5 = 750」とだけ書けば済みます。
よくある間違い
の部分を としてしまう誤りです。
をそのまま引いて 、 としてしまうと、
選択肢に700が用意されていることが多く、まんまと引っかかります。
租税には必ず を掛ける、と手が覚えるまで練習してください。