乗数理論|経済学・経済政策【中小企業診断士テキスト】 | 中小企業診断士になる子ちゃん生産物市場(財市場)の分析
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プレミアムで見る乗数理論は、投資や政府支出の変化が国民所得にどれだけの効果を及ぼすかを説明する理論です。ここでの主役は、投資や政府支出を増やしたときに均衡国民所得がその何倍も増えるという現象、すなわち乗数効果です。
前節で導いた Y∗=1−c1(C0−cT+I+G) という式を、もう一度よく眺めてみてください。I や G の前にかかっている 1−c1 が、そのまま乗数になります。つまり新しい公式を覚えるのではなく、前節の式を読み替えるだけです。
投資乗数・政府支出乗数・租税乗数・均衡予算乗数の4つを順に確認し、最後に定率税や開放経済の場合まで広げます。令和3年第5問、令和5年第7問、令和7年第7問など、計算問題としてほぼ毎年のように顔を出す論点です。

1
投資乗数 ― なぜ投資額以上に国民所得が増えるのか

簡単にいうと
1,000万円の設備投資が、めぐりめぐって5,000万円の所得を生む。誰かの支出が誰かの所得になる、という連鎖が理由だよ!
需要項目である投資が増えると総需要が拡大し(それに伴って総供給も拡大し)、
均衡国民所得が増加します。
このとき乗数効果が働き、投資の増加分以上に国民所得が増えることになります。
乗数効果とは、投資などある要素が増加した場合に、その数倍だけ国民所得が増加する効果のことです。
① 投資乗数を式から読み取る
前節で導いた均衡国民所得の式を使います。
Y∗=1−c1(C0−cT+I+G)

2
政府支出乗数と租税乗数

簡単にいうと
同じ10兆円を使うなら、政府が直接使うのと減税で返すのとでは効果が違うの。直接使ったほうが効くよ!
① 政府支出乗数
政府支出乗数も、考え方は投資乗数とまったく同じです。
Y∗=1−c1(C0−cT+I+G)

3
均衡予算乗数の定理

簡単にいうと
増税して、その全額を政府支出に回す。打ち消し合ってゼロになりそうだけど、実はきっちり1倍だけ国民所得が増えるの!
政府支出を行う場合、その財源を調達しなければなりません。
国債の発行か、増税によって賄われます。
均衡予算とは、歳入と歳出が均衡している財政のことです。
そして均衡予算乗数とは、政府支出と増税を同額だけ行った場合に
(政府支出の財源を増税によって賄うイメージ)、
その何倍だけ均衡国民所得が増加するかを表すものです。
① 定理の導出
政府支出乗数は 1−c1

4
定率税・開放経済での乗数

簡単にいうと
所得が増えるたびに税金が増えたり、輸入でお金が国外に漏れたりすると、連鎖が途中で細っていくの。だから乗数は小さくなるよ!
ここまでは定額税・閉鎖経済の乗数を見てきました。
条件が変わると乗数がどう変わるかを確認します。
① 定率税がある場合
定率税は T=tY+T0


まとめ
投資乗数
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この式で I だけを変化させたとき、Y∗ がどれだけ変化するかを見ます。
I には 1−c1 が掛かっていますから、
ΔY=1−c1ΔI
この 1−c1 を投資乗数といいます(租税なし、または定額税の場合)。
0<c<1 なので、分母は 0<(1−c)<1 となります。
1−c1>1
したがって ΔY>ΔI 、つまり投資の増加分より国民所得の増加分のほうが大きくなります。
c の値ごとに乗数を計算してみると、次のようになります。
| 限界消費性向 c | 投資乗数 1−c1 |
|---|
| 0.5 | 2.0 |
| 0.6 | 2.5 |
| 0.75 | 4.0 |
| 0.8 | 5.0 |
| 0.9 | 10.0 |
限界消費性向が高いほど乗数は大きくなります。
受け取った所得を多く使う経済ほど、連鎖が長く続くからです。
③ グラフで見る
45度線の図で、投資が ΔI だけ増えたとします。
総需要曲線の切片に I が入っているので、
総需要曲線が ΔI だけ上方にシフトします(YD1→YD2)。
すると45度線との交点が右上に動き、
均衡国民所得は Y1∗ から Y2∗ へ ΔY だけ増加します。
ここで大事なのは、**縦にシフトした幅 ΔI よりも、
横に動いた幅 ΔY のほうが大きい**ことです。
総需要曲線の傾き c が45度線の傾き1より緩やかなため、
上に少し動かしただけで交点は右に大きく動きます。これが図で見た乗数効果です。
④ なぜ投資額以上に増えるのか
消費関数を思い出してください。
C=cY+C0(租税なし)または C=c(Y−T)+C0
消費には国民所得に依存する部分 cY がありました。
つまり、投資 I の増加によって国民所得 Y が拡大すれば、消費 C も増えるのです。
感覚的にも追えます。
企業が設備投資をすると、設備を製造する企業が新たな付加価値を生み出します。
その企業が得た収益は従業員や株主に還元され、
所得を得て消費をする人が連鎖的に増えていきます。
この連鎖を式で書くと、
投資の増加 ΔI → 生産増加 ΔI → 国民所得の増加 ΔI
→ 消費の増加 cΔI → 生産増加 cΔI → 国民所得の増加 cΔI
→ 消費の増加 c2ΔI → 生産増加 c2ΔI → 国民所得の増加 c2ΔI
→ ……
これを全部足し合わせたものが ΔY です。
ΔY=ΔI+cΔI+c2ΔI+c3ΔI+⋯=1−c1ΔI
初項 ΔI 、公比 c の無限等比級数の和が 1−cΔI になる、というだけの計算です。
∣c∣<1 なので、この和はきちんと有限の値に収まります。
具体例
乗数効果を、設備投資の発注から順にたどってみましょう。
設定: 限界消費性向 c=0.8 。ある企業が設備投資として工作機械を1,000万円分発注した。
第1ラウンド
① 投資により需要が1,000万円増加します。
② 受注した工作機械メーカーは1,000万円分の生産を増やします。
供給が1,000万円増え、それに伴って国民所得も1,000万円増加します。
第2ラウンド
工作機械メーカーが得た1,000万円が従業員に所得として分配されたとします。
限界消費性向が0.8なので、そのうち8割の800万円で家電製品を買うとします。
③ 800万円の消費の増加です。
④ 受注した家電メーカーは800万円分の生産を増やし、国民所得も800万円増加します。
第3ラウンド
家電メーカーが得た800万円が従業員に分配され、そのうち8割の640万円でスーツを買うとします。
⑤ 640万円の消費の増加。
⑥ スーツメーカーが640万円分の生産を増やし、国民所得も640万円増加します。
第4ラウンド以降
640×0.8=512 万円、512×0.8=409.6 万円……と続いていきます。
全部足すと
| ラウンド | 国民所得の増加 |
|---|
| 1 | 1,000万円 |
| 2 | 800万円 |
| 3 | 640万円 |
| 4 | 512万円 |
| 5 | 409.6万円 |
| ⋮ | ⋮ |
| 合計 | 5,000万円 |
1,000+800+640+512+⋯=1−0.81,000=0.21,000=5,000

乗数効果(投資増加のケース)

乗数効果の連鎖

試験のポイント
- ・要は「投資乗数=1−c1
- ・投資が1増えると国民所得は 1−c1 増える」
- ・0<c<1 より乗数は必ず1より大きく、限界消費性向が高いほど乗数も大きい
- ・「誰かの支出は誰かの所得」という連鎖が ΔI+cΔI+c2ΔI+⋯ という無限等比級数になる、という理屈まで押さえると応用が利く
G にかかっているのも 1−c1 ですから、
ΔY=1−c1ΔG
政府支出乗数 =1−c1 で、投資乗数と同じ値になります(租税なし、または定額税の場合)。
「誰かが1単位の支出をした」という点では同じだからです。
投資や政府支出は増加すると国民所得が増えましたが、
租税は減少(減税)すると国民所得が増え、増加(増税)すると国民所得が減ります。
式を見れば明らかです。T にかかっているのは −1−cc です。
ΔY=−1−ccΔT
租税乗数(定額税の場合)=−1−cc です。
符号がマイナスなので、租税が増えると 1−cc 倍だけ国民所得が減少し、
租税が減れば 1−cc 倍だけ国民所得が増加する、と読みます。
1−cc(租税乗数)<1−c1(投資乗数・政府支出乗数)
つまり、租税乗数の絶対値のほうが、投資乗数や政府支出乗数よりも小さいのです。
したがって、**減税を行うよりも、それと同額の投資や政府支出の増加のほうが、
より大きく国民所得を増加させる**ことが分かります。
| c | 政府支出乗数 1−c1 | 租税乗数 −1−cc | 差 |
|---|
| 0.5 | 2.0 | −1.0 | 1.0 |
| 0.6 | 2.5 | −1.5 | 1.0 |
| 0.75 | 4.0 | −3.0 | 1.0 |
| 0.8 | 5.0 | −4.0 | 1.0 |
どの行でも差がちょうど1になっています。これは偶然ではありません。
1−c1−1−cc=1−c1−c=1
この「差が必ず1」という性質は、次のテーマの均衡予算乗数の定理に直結します。
④ なぜ租税乗数のほうが小さいのか
投資や政府支出の増加の場合には、その規模に等しいだけの「生産の増加」がまず起こり、
それによって派生的に消費が生じました。
一方、減税の場合には、最初の「生産の増加」というプロセスがありません。
減税により増えた所得の一部(c の割合)を消費に回すというプロセスから始まるため、
生産の増加が限定的になります。
減税の連鎖を書き出すと、
減税の実施 (−ΔT)
→ 消費の増加 cΔT → 生産増加 cΔT → 国民所得の増加 cΔT
→ 消費の増加 c2ΔT → 生産増加 c2ΔT → 国民所得の増加 c2ΔT
→ ……
投資のときの連鎖と比べると、最初の1回分(ΔI)が欠けているのが分かります。
その1回分が、乗数の差「1」の正体です。
減税されたお金のうち (1−c) の割合は貯蓄に回ってしまい、
需要として経済に戻ってこないからです。
具体例
同じ10兆円の財政出動を、政府支出で行う場合と減税で行う場合で比べます。
設定: 限界消費性向 c=0.8
ケースA: 政府支出を10兆円増やす
ΔY=1−0.81×10=0.21×10=5×10=50
国民所得は50兆円増えます。
ケースB: 10兆円の減税をする
ΔY=−1−0.80.8×(−10)=−0.20.8×(−10)=−4×(−10)=40
国民所得は40兆円増えます。
差は10兆円
同じ10兆円を使っても、政府支出のほうが10兆円分だけ大きく効きました。
この10兆円は、ちょうど「最初の1回分」に当たります。
政府が10兆円使えば、その瞬間に10兆円の生産が生まれます。
10兆円減税すると、家計はそのうち8兆円しか使わず、2兆円は貯蓄に回ります。
はじめの一歩から差がつくわけです。
計算問題の形で
問: 限界消費性向が0.75の閉鎖経済において、
政府支出を20兆円増加させると同時に、租税を8兆円増加させた。均衡GDPはいくら変化するか。
解答
政府支出乗数と租税乗数を別々に計算して足し合わせます。
政府支出の効果:
1−0.751×20=0.251×20=4×20=80
租税の効果:
−1−0.750.75×8=−0.250.75×8=−3×8=−24
合計:
80−24=56
均衡GDPは56兆円増加します。
手順を整理しておく
複数の変化が同時に起きる問題では、
それぞれの乗数効果を計算して足し合わせるのが基本です。
1. 変化した項目を洗い出す(ΔI 、ΔG 、ΔT 、ΔC0)
2. それぞれの乗数を書く(T だけ −1−cc 、ほかは 1−c1
3. 乗数×変化額を計算して合計する
この3ステップで、ほとんどの計算問題は処理できます。

試験のポイント
- ・要は「政府支出乗数=1−c1 で投資乗数と同じ、租税乗数=−1−cc で符号がマイナス」
- ・租税乗数の絶対値は政府支出乗数より小さく、その差はちょうど1
- ・「同額なら減税より政府支出のほうが効く」という結論と、その理由(減税には最初の生産増加がない)はセットで覚える
- ・租税乗数の符号を落とす誤りに注意
、租税乗数は
−1−cc でした。
政府支出を行った場合の効果: 1−c1ΔG
増税を行った場合の効果: −1−ccΔT
均衡予算なので、ΔG と ΔT は同額です。その額を ΔA とおきます。
ΔG=ΔT=ΔA
ΔY=1−c1ΔA+(−1−ccΔA)
ΔY=1−c1−cΔA
ΔY=1×ΔA
歳出と歳入を均衡させるように政府支出と増税を行った場合に、
国民所得が政府支出の増加分と同額だけ増加することを
増税は消費を減らすので、一見、効果が打ち消されてしまうように感じるかもしれません。
しかし実際には、政府支出のほうが乗数が大きいため、
政府支出 G に対してその1倍だけ国民所得を拡大させることが、上の式から確認できます。
政府が10兆円使えば、10兆円まるごとが需要になります。
一方、10兆円増税されても、家計が減らす消費は8兆円(c=0.8 のとき)で、
貯蓄に回るはずだったお金が政府を経由して需要に変わるぶん、差し引きでプラスになるのです。
この均衡予算乗数の定理は、貿易を考慮せず、租税が定額税である場合のみに成立します。
- 開放経済(輸入がある)の場合 → 成立しない
- 定率税の場合 → 成立しない
理由は次のテーマで見るように、乗数の分母が変わってしまうからです。
試験ではこの条件を外した選択肢が用意されることがあるので、
閉鎖経済・定額税という前提まで覚えておいてください。
具体例
均衡予算乗数の設例を解いてみましょう。
問題
家計、企業、政府から構成される経済モデルを考える。
| 項目 | 条件 |
|---|
| 生産物市場の均衡条件 | Y=C+I+G |
| 消費関数 | C=C0+c(Y−T) 、C0=60 |
| 民間投資支出 | I=100 |
| 政府支出 | G=30 |
| 租税収入 | T=50 |
このとき、均衡予算を編成したうえで政府支出を10兆円増加させた場合、
均衡GDPはいくら増加するか。
解答: 10兆円
外国を考慮しない閉鎖経済モデルで、租税が定額税であるため、均衡予算乗数の定理が使えます。
租税と政府支出をそれぞれ10兆円増加させた場合の均衡GDP増加分は10兆円です。
式で確かめる
政府支出の効果:
1−0.81×10=5×10=50

政府支出・減税・均衡予算の効果を比べる

試験のポイント
- ・要は「政府支出と増税を同額行うと、国民所得はその同額だけ増える(均衡予算乗数=1)」
- ・1−c1−1−cc=1−c1−c=1 という計算を自分で書けるようにしておく
- ・「効果は相殺されてゼロになる」は誤り
- ・成立するのは閉鎖経済かつ定額税の場合のみ、という条件も問われる
で表されます。均衡条件に代入して解きます。
Y=c(Y−T)+C0+I+G
Y=c{Y−(tY+T0)}+C0+I+G
Y=c(Y−tY−T0)+C0+I+G
Y=cY−ctY−cT0+C0+I+G
Y−cY+ctY=−cT0+C0+I+G
(1−c+ct)Y=−cT0+C0+I+G
Y∗=1−c+ct1(−cT0+C0+I+G)
同じことですが、1−c+ct=1−c(1−t) なので、次のように書いてもかまいません。
Y∗=1−c(1−t)1(−cT0+C0+I+G)
| 乗数 | 式 |
|---|
| 投資乗数・政府支出乗数 | 1−c+ct1 |
| 租税乗数 | −1−c+ctc |
② 乗数は小さくなる
分母が、定額税のケースの 1−c から 1−c+ct(または 1−c(1−t))へと大きくなります。
分母が大きくなれば分数は小さくなるので、乗数は小さくなります。
定率税の乗数効果が定額税の乗数効果よりも小さくなるのは、
所得が多くなればなるほど、より多くの税金を支払うことになり、消費が抑制されるからです。
連鎖のイメージで言えば、
所得が増えるたびに一部が税として抜かれるので、
次のラウンドに回る消費が細っていく、ということです。
③ 開放経済の場合
海外との取引を考える場合、輸入が加わります。
輸入は国内の需要ではなく海外への支出なので、総需要から差し引かれます。
輸入関数は、消費関数とまったく同じ構成をしています。
M=mY+M0
| 記号 | 名前 | 意味 |
|---|
| m | 限界輸入性向 | 所得が1単位増加したときの輸入の増加分 |
| M0 | 独立輸入 | 所得と関係なく行われる輸入 |
国内の所得が増えると、海外で生産された財への需要も増えるため、輸入額が増加します。
これを総需要に組み込むと、乗数の分母に +m が加わります。
1−c+m1
これを外国貿易乗数(定率税を考慮しない場合)といいます。
分母が大きくなるので、やはり乗数は小さくなります。
所得が増えるたびに一部が輸入として国外に漏れ出し、国内の需要として戻ってこないからです。
④ 乗数の一覧
| 定額税のみ(投資・政府支出乗数) | 定額税のみ(租税乗数) | 定率税あり(投資・政府支出乗数) | 定率税あり(租税乗数) |
|---|
| 閉鎖経済 | 1−c1 | 1−c−c | 1−c+ct1 | 1−c+ct−c |
| 開放経済 | 1−c+m1 | 1−c+m−c |
⑤ 丸暗記しないこと
この表は覚えるためのものではありません。
与えられた問題設定に応じて自分で数式を変形し、乗数を求められるようになるのが望ましいのです。
見るべき規則性はシンプルです。
- 分母はいつも 1−c から出発する
- 定率税があれば +ct を足す
- 輸入があれば +m を足す
- 分子は、投資・政府支出なら1、租税なら −c
この4点さえ押さえていれば、どんな組合せでも書き出せます。
⑥ 解く手順は変わらない
輸入関数のような条件が加わっても、
**均衡国民所得式 YS=YD に、問題で与えられる消費関数・租税関数・輸入関数などを
総需要に代入して解く**という処理手順は変わりません。
なお、式の代入・展開・移項と乗数の算出は**アルファベットの記号のまま行い、
数値の代入は最後に行う**ほうが、効率がよい場合が多いです。
途中で小数が出てくると計算ミスの温床になるからです。
具体例
条件を変えながら、同じ問いに答えてみましょう。
共通の設定: 限界消費性向 c=0.8 、政府支出を10増やす。
ケース1: 閉鎖経済・定額税
乗数 =1−0.81=0.21=5
ΔY=5×10=50
ケース2: 閉鎖経済・定率税(t=0.25)
乗数 =1−c+ct1=1−0.8+0.8×0.251=1−0.8+0.21=0.41=2.5
ΔY=2.5×10=25
定額税のときの半分になりました。
ケース3: 開放経済・定額税(m=0.2)
乗数 =1−c+m1=1−0.8+0.21=0.41=2.5
ΔY=2.5×10=25
ケース4: 開放経済・定率税(t=0.25 、m=0.2)
乗数 =1−c+ct+m1=1−0.8+0.2+0.21=0.61≒1.67
ΔY≒1.67×10≒16.7
まとめ
| ケース | 乗数 | ΔY |
|---|
| 閉鎖経済・定額税 | 5.00 | 50.0 |
| 閉鎖経済・定率税 | 2.50 | 25.0 |
| 開放経済・定額税 | 2.50 | 25.0 |
| 開放経済・定率税 | 1.67 | 16.7 |
条件が現実に近づくほど、政策の効果は小さく見積もられることが分かります。
式の変形をきちんと追う(開放経済・定額税の場合)
丸暗記に頼らず、自分で導けるようにしておきましょう。
総需要は、輸入を差し引いて、
YD=C+I+G+EX−M

試験のポイント
- ・要は「分母は 1−c から出発し、定率税があれば +ct 、輸入があれば +m を足す」
- ・分子は投資・政府支出・輸出なら1、租税なら −c
- ・定率税や輸入があると乗数は小さくなる(消費が抑制され、需要が国外に漏れるため)
- ・1−c+m1 は外国貿易乗数とよばれる
- ・表を丸暗記せず、YS=YD に代入して自分で導けるようにしておくのが安全
増える
租税乗数
−1−cc 増税で減少、減税で増加。絶対値は政府支出乗数より小さい
均衡予算乗数
政府支出と増税を同額行うと同額だけ国民所得が増える
投資・政府支出乗数(定率税)
1−c+ct1 分母が大きくなるので乗数は小さくなる
租税乗数(定率税)
−1−c+ctc 同上
外国貿易乗数
1−c+m1 輸入で需要が国外に漏れるため乗数は小さくなる
所得が1増えたときの輸入の増加分
輸入関数 M=mY+M0 苦手な節と間違えた問題をブックマークして、弱点だけを繰り返し確認できます。
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(租税あり)
合計5,000万円の生産および国民所得の増加が実現しました。
乗数は 1−0.81=5 ですから、たしかに5倍です。
計算問題の形で(平成28年第8問 設問2と同じ形)
問: 財市場における総需要 A が A=C+I+G 、消費が C=C0+cY で表される。
限界消費性向 c=0.8 とする。
いま、I+G の値が外生的に5増加した。均衡所得の変化量はいくらか。
(選択肢: ア 4 / イ 10 / ウ 25 / エ 40)
均衡GDPでは総供給 Y =総需要 A ですから、
Y=C0+cY+I+G
Y−cY=C0+I+G
Y(1−c)=C0+I+G
Y=1−c1(C0+I+G)
Y=0.21(C0+I+G)=5(C0+I+G)
「I+G」が1単位変化すると Y は5倍変化します。
ΔY=5×5=25
- ア 4: 5×0.8 としてしまった誤り
- イ 10: 5×2 としてしまった誤り
- エ 40: 5×8 としてしまった誤り
乗数を 1−c1=5 と正しく出せれば一発です。
)
、
−1−0.80.8×10=−4×10=−40
50−40=10
たしかに10兆円です。政府支出の増加分と同額になりました。
変更前: G=30 、T=50
Y∗=0.21(60−0.8×50+100+30)=5×(60−40+130)=5×150=750
変更後: G=40 、T=60
Y∗=0.21(60−0.8×60+100+40)=5×(60−48+140)=5×152=760
760−750=10 。やはり10兆円の増加です。
C=60+0.8×(760−60)=60+0.8×700=60+560=620
変更前も C=620 でした(Y=750 、T=50 のとき 60+0.8×700=620)。
増えたのは政府支出の10兆円だけで、それがそのまま国民所得の増加になっています。
可処分所得が 750−50=700 から 760−60=700 で変わらなかったので、
消費も変わらなかったわけです。この見え方も、均衡予算乗数が1であることの別の説明になります。
「均衡予算だから財政の中立を保っており、国民所得には影響しない」
また、「均衡予算乗数の定理は開放経済でも成立する」も誤りです。
| 1−c+ct+m1 |
| 1−c+ct+m−c |
C=c(Y−T)+C0 、M=mY+M0 を代入します。
Y=c(Y−T)+C0+I+G+EX−(mY+M0)
Y=cY−cT+C0+I+G+EX−mY−M0
Y−cY+mY=−cT+C0+I+G+EX−M0
(1−c+m)Y=−cT+C0+I+G+EX−M0
Y∗=1−c+m1(C0−cT+I+G+EX−M0)
EX には 1−c+m1 がそのままかかるので、
輸出乗数も投資乗数・政府支出乗数と同じ値になります。
- 乗数を「1−c1」のような記号で答えさせる場合
- 乗数を「5」のような数値で答えさせる場合
- 国民所得の増加分を「50兆円」のような金額で答えさせる場合
どれを聞かれているかを問題文で必ず確認してから答えてください。