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AD-AS分析

雇用と物価水準

この節では、AD-AS分析を使って財政政策金融政策の効果を分析します。さらに、ケインズ理論と古典派理論の根本的な違いを整理し、インフレーションの2つの類型を理解しましょう。

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財政政策の効果

簡単にいうと

政府支出を増やすとAD曲線が右にシフト!でも効果はAS曲線の形状によって全然違うんだ!

財政政策のAD-AS分析における基本メカニズム --- 拡張的財政政策(政府支出GGの増加や減税)を行うと、IS曲線が右にシフトし、IS-LMの均衡国民所得が増加します。これはすべての物価水準のもとで総需要が増えることを意味するため、AD曲線全体が右にシフトします。逆に、緊縮的財政政策(政府支出削減や増税)はAD曲線を左にシフトさせます。

古典派のAS曲線(垂直)のもとでの財政政策 --- AS曲線が垂直な古典派のケースでは、AD曲線が右にシフトしても均衡国民所得YYは完全雇用水準YFY_Fから変化しません。変わるのは物価PPのみで、上昇します。つまり古典派の世界では財政政策は国民所得に対して無効であり、物価上昇だけを引き起こします。これは「古典派の二分法」と呼ばれる考え方と整合的です。

ケインズ派のAS曲線(右上がり)のもとでの財政政策 --- AS曲線が右上がりのケインズ派のケースでは、AD曲線の右シフトにより均衡国民所得YYが増加し、同時に物価PPも上昇します。ただし、IS-LM分析で見た効果よりも国民所得の増加幅は小さくなります。なぜなら、物価上昇により実質貨幣供給M/PM/Pが減少し、LM曲線が左にシフトして利子率が上昇するためです。この「物価上昇→実質貨幣供給減少→利子率上昇→投資減少」という経路は、財政政策の効果を一部打ち消す方向に働きます。

具体例

ケインズ派のAS曲線のもとで政府支出を増やした場合の効果を追ってみましょう。

まず政府支出GGが増加し、IS曲線が右にシフトします。これによりAD曲線が右にシフトし、新しいAD-ASの交点ではYY↑かつPP↑となります。

しかしここで注意してみましょう。物価PPが上昇したことで実質貨幣供給M/PM/Pが減少し、LM曲線が左にシフトする効果が生じます。利子率が上昇して民間投資が抑制されるため、国民所得の増加幅はIS-LM分析だけで予測した場合よりも小さくなるのです。

一方、古典派のAS曲線(垂直)のもとでは、同じ政策を行ってもYYYFY_Fのまま不変でPPのみが上昇します。

AD曲線の右シフトによる均衡国民所得と物価水準の変化

AD-AS分析(ケインズ派のケース)

古典派(AS垂直でY不変P↑のみ)とケインズ派(AS右上がりでY↑P↑)での財政政策効果の比較グラフ

AD-AS分析 財政政策の効果(古典派 vs ケインズ派)

試験のポイント

  • 要は「財政政策の効果はAS曲線の形状で決まり、古典派(AS垂直)ならYY不変・PP↑のみ、ケインズ派(AS右上がり)ならYY↑かつPP↑」
  • ケインズ派のケースでも物価上昇によるLM左シフト効果で、IS-LM分析のみの予測より国民所得の増加幅が小さくなる点が出題される
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金融政策の効果

簡単にいうと

中央銀行がマネーサプライを増やすとAD曲線が右にシフト!こっちもAS曲線の形状で結果が変わるよ!

金融政策のAD-AS分析における基本メカニズム --- 拡張的金融政策(名目貨幣供給量MMの増加)を行うと、LM曲線が右にシフトし、IS-LMの均衡利子率が低下して国民所得が増加します。すべての物価水準で均衡YYが大きくなるため、AD曲線全体が右にシフトします。逆に緊縮的金融政策(MMの減少)はAD曲線を左にシフトさせます。

古典派のAS曲線(垂直)のもとでの金融政策 --- AS曲線が垂直な場合、AD曲線が右にシフトしてもYYYFY_Fのまま不変です。MMの増加は物価PPの上昇だけをもたらし、実質的な変数(実質GDP・実質利子率・実質賃金)には影響を与えません。これが「貨幣の中立性」であり、古典派の世界では金融政策も国民所得に対して無効です。

ケインズ派のAS曲線(右上がり)のもとでの金融政策 --- AS曲線が右上がりの場合、MMの増加によりAD曲線が右にシフトし、YY↑かつPP↑となります。財政政策と同様に、物価上昇により実質貨幣供給M/PM/Pの増加幅が一部相殺されるため、IS-LM分析のみの予測よりも国民所得の増加は小さくなります。それでもMMの増加幅が大きければ、M/PM/Pは純増するため金融政策は有効です。完全雇用に近い領域ではAS曲線の傾きが急になるため、物価上昇が大きく国民所得増加は小さくなります。

具体例

中央銀行が買いオペを実施して名目貨幣供給量MMを増加させるケースを考えてみましょう。

まず買いオペにより市中銀行の準備預金が増え、マネーサプライが拡大します。LM曲線が右にシフトし、AD曲線も右にシフトします。

ケインズ派のAS曲線のもとでは、新しい均衡点でYYが増加しPPも上昇します。しかし、PPが上がったことで実質貨幣供給M/PM/Pの増加が一部打ち消されるため、IS-LM分析だけで見た場合ほどの国民所得増加にはなりません。

一方、古典派のAS曲線のもとでは、YYYFY_Fのまま変わらず、PPだけが上昇します。MMが増えた分だけPPが上がり、M/PM/Pは元の水準に戻ります。これが「貨幣の中立性」の具体例です。

試験のポイント

  • 要は「金融政策もAS曲線の形状で効果が決まり、古典派では貨幣の中立性によりYY不変・PP↑のみ、ケインズ派ではYY↑かつPP↑」
  • 貨幣の中立性(古典派の重要概念)と、物価上昇による実質貨幣供給の相殺効果を理解しておく
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ケインズ理論と古典派(新古典派)理論の比較

簡単にいうと

ケインズは「需要が大事!政府が介入すべき!」、古典派は「市場に任せれば自然と均衡する!」。6項目の対比を完璧に整理しよう!

基本的考え方と貨幣市場の違い --- ケインズ理論は有効需要の原理を基本とし、需要側が経済活動の水準を決定すると考えます。総需要が不足すれば生産も雇用も縮小するため、政府の介入が必要だという立場です。一方、古典派はセイの法則(供給はそれ自らの需要を生み出す)を前提に、供給側が経済を決定すると考えます。貨幣市場については、ケインズは取引需要と投機的需要の2つの貨幣需要を認めますが、古典派は取引需要のみを認め、投機的需要は存在しないと考えます。

労働市場と名目賃金の違い --- ケインズ理論では名目賃金に下方硬直性があるため、景気後退時にも賃金が十分に下がらず、労働市場が均衡しないことがあります。その結果、非自発的失業(現行賃金で働きたいのに仕事がない状態)が存在し得ます。古典派では名目賃金が伸縮的に変化するため、労働市場は速やかに均衡に達し、常に完全雇用が実現すると考えます。非自発的失業は一時的な現象にすぎず、市場の自動調整により解消されるという立場です。

経済政策と金融政策のスタンスの違い --- ケインズ理論では有効需要の不足を補うために裁量的経済政策(特に財政政策)が必要だと主張します。金融政策についても有効需要を積極的に管理する手段として活用します。古典派は市場の自動調整メカニズムを信頼するため、政策介入は不要だと考えます。金融政策については、恣意的な運営ではなくkk%ルール(マネーサプライを一定率で増加させるルール)を支持します。

項目
ケインズ理論
古典派(新古典派)理論
基本的考え方
有効需要の原理(需要側重視)
セイの法則(供給側重視)
貨幣市場
取引需要と投機的需要
取引需要のみ
労働市場
非自発的失業が存在(賃金の下方硬直性)
完全雇用が実現(賃金が伸縮的)
名目賃金
下方硬直的
伸縮的に変化
経済政策
財政政策(裁量的経済政策が必要)
不要(市場の自動調整)
金融政策
有効需要を積極的に管理
kk%ルール

試験のポイント

  • 要は「ケインズ=需要重視・政府介入必要・非自発的失業あり、古典派=供給重視・市場自動調整・完全雇用」
  • 6項目(基本的考え方・貨幣市場・労働市場・名目賃金・経済政策・金融政策)の対比を正確に覚えることが得点に直結する
  • 特に貨幣市場の違い(投機的需要の有無)と名目賃金の性質が出題ポイント
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インフレーションの種類

簡単にいうと

インフレは2種類!需要が多すぎて起きる「ディマンドプル」と、コスト上昇で起きる「コストプッシュ」!AD-AS分析で説明できるよ!

ディマンドプル・インフレーション --- ディマンドプル・インフレーションは需要側の要因で発生するインフレです。拡張的財政政策(政府支出増加)、拡張的金融政策(マネーサプライ増加)、消費や投資の増加などにより総需要が過大になると、AD曲線が右にシフトして物価水準が上昇します。この場合、物価PP↑かつGDPYY↑となるため、景気過熱を伴うインフレになります。いわば「需要が供給を引っ張り上げる(demand-pull)」形で物価が上がるのです。

コストプッシュ・インフレーション --- コストプッシュ・インフレーションは供給側の要因で発生するインフレです。原材料費の高騰(原油価格上昇など)、賃金の上昇、輸入コストの増加などにより企業の生産コストが上昇すると、AS曲線が左にシフトして物価水準が上昇します。この場合、物価PP↑かつGDPYY↓となり、景気後退を伴うインフレすなわちスタグフレーションが発生します。コストが供給を押し上げる(cost-push)形で物価が上がる点が特徴です。

2つのインフレの決定的な違い --- ディマンドプルとコストプッシュの最も重要な違いは、GDPの動きです。ディマンドプルではAD右シフトにより物価↑とGDP↑が同時に起こりますが、コストプッシュではAS左シフトにより物価↑とGDP↓が同時に起こります。コストプッシュの帰結がスタグフレーションであり、どちらの曲線がどちらにシフトするかの対応関係を正確に把握することが重要です。

ディマンドプルインフレ(AD右シフト)とコストプッシュインフレ(AS左シフト)の比較グラフ

ディマンドプルインフレとコストプッシュインフレ

項目
ディマンドプル
コストプッシュ
発生原因
需要の超過(総需要の増大)
生産コストの上昇(供給の減少)
シフトする曲線
AD曲線が右シフト
AS曲線が左シフト
物価
上昇
上昇
GDP
増加
減少
具体例
政府支出増加・金融緩和
原油価格高騰・賃金上昇
帰結
景気過熱型インフレ
スタグフレーション

試験のポイント

  • 要は「ディマンドプル=AD右シフト(需要過多)で物価↑GDP↑、コストプッシュ=AS左シフト(コスト上昇)で物価↑GDP↓=スタグフレーション」
  • どちらの曲線がどちらにシフトするかの対応関係が最重要
  • コストプッシュ→スタグフレーションのつながりも頻出

まとめ

概念
内容
ポイント
財政政策(古典派)
AD右シフト→YY不変・PP↑のみ
AS垂直で政策無効
財政政策(ケインズ派)
AD右シフト→YY↑かつPP
物価上昇で効果は一部相殺
金融政策(古典派)
AD右シフト→YY不変・PP↑のみ
貨幣の中立性
金融政策(ケインズ派)
AD右シフト→YY↑かつPP
実質M/PM/Pは純増で有効
ケインズvs古典派
需要重視vs供給重視
6項目の対比が頻出
ディマンドプル
AD右シフト→物価↑GDP↑
需要過多が原因
コストプッシュ
AS左シフト→物価↑GDP↓
供給減少→スタグフレーション

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