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国際貿易と開放経済

生産物市場(財市場)の分析

この節では、閉鎖経済から開放経済へと分析を拡張し、輸出入が国民所得にどのような影響を与えるかを学びます。開放経済における乗数の変化を理解したうえで、マンデル=フレミング・モデルによる為替制度ごとの政策効果の違いを把握しましょう。

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輸出入と国民所得

簡単にいうと

輸出は外国からの需要だからGDPを増やすけど、輸入は国内需要が外国に漏れちゃうからGDPを減らす方向に働くよ!輸入が所得に比例するのがポイント!

① 開放経済における総需要の構成

閉鎖経済では総需要はYD=C+I+GY_D = C + I + Gでしたが、開放経済では純輸出(輸出XX − 輸入MM)が加わります。開放経済の総需要はYD=C+I+G+(XM)Y_D = C + I + G + (X - M)です。輸出XXは外国の需要であり、自国の所得とは独立に決まる外生変数として扱います。一方、輸入MMは自国の所得が増えると海外製品への支出も増えるため、所得の増加関数としてM=M0+mYM = M_0 + mYmm限界輸入性向0<m<10 < m < 1)とモデル化します。

② 限界輸入性向の意味

限界輸入性向mmは、所得が1単位増加したときに輸入がどれだけ増えるかを表すパラメータです。m=0.2m = 0.2であれば、所得が100増えると輸入は20増加することを意味します。限界輸入性向が大きいほど、所得増加の効果が海外に漏出する割合が高くなるため、国内経済への波及効果(乗数)は小さくなります。この漏出のメカニズムこそが、開放経済と閉鎖経済で乗数が異なる根本的な理由です。

③ 純輸出と貿易収支

純輸出NX=XMNX = X - Mが正であれば貿易黒字、負であれば貿易赤字です。所得が増加すると輸入MMが増える一方で輸出XXは変わらないため、景気拡大局面では貿易収支が悪化(黒字縮小または赤字拡大)する傾向があります。逆に景気後退局面では輸入が減少し、貿易収支は改善する方向に動きます。

具体例

開放経済における均衡国民所得を具体的に求めてみましょう。

消費関数C=0.7Y+30C = 0.7Y + 30、投資I=50I = 50、政府支出G=40G = 40、輸出X=60X = 60、輸入関数M=0.1Y+10M = 0.1Y + 10とします。

ステップ1: 均衡条件を立てる

Y=C+I+G+XMY = C + I + G + X - M

Y=(0.7Y+30)+50+40+60(0.1Y+10)Y = (0.7Y + 30) + 50 + 40 + 60 - (0.1Y + 10)

ステップ2: 整理する

Y=0.7Y0.1Y+170Y = 0.7Y - 0.1Y + 170

Y0.6Y=170Y - 0.6Y = 170

0.4Y=1700.4Y = 170

Y=425Y = 425

ステップ3: 貿易収支を確認する

M=0.1×425+10=52.5M = 0.1 \times 425 + 10 = 52.5

純輸出=XM=6052.5=7.5= X - M = 60 - 52.5 = 7.5(貿易黒字)

もし所得がさらに増加してY=500Y = 500になるとM=60M = 60となり、純輸出はゼロに。国内景気が良くなるほど貿易黒字は縮小していくことがわかります。

試験のポイント

  • 要は「輸出は外生(所得に無関係)、輸入は所得の増加関数M=M0+mYM = M_0 + mYで、限界輸入性向mmが大きいほど乗数が小さくなる」
  • 開放経済の均衡所得の計算と、所得増加が貿易収支を悪化させる仕組みの理解が頻出
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開放経済の乗数

簡単にいうと

開放経済では所得が増えると一部が輸入で海外に流出しちゃうから、乗数が閉鎖経済より小さくなるよ!分母に限界輸入性向mmが加わるのがポイント!

① 開放経済の乗数の導出

閉鎖経済の乗数は11c\frac{1}{1-c}でしたが、開放経済では所得増加の一部が輸入として海外に漏出します。所得が1単位増えると消費はccだけ増えますが、同時に輸入がmmだけ増えるため、国内需要の増加はcmc - mにとどまります。この漏出効果を考慮すると、開放経済の乗数は11c+m\frac{1}{1 - c + m}(または11(cm)\frac{1}{1-(c-m)})となり、閉鎖経済の乗数よりも必ず小さくなります。

② 定率税がある場合の開放経済乗数

定率税T=tYT = tYと輸入M=mYM = mYの両方がある場合、乗数はさらに小さくなります。所得増加1単位のうち、税金でttが控除され、残りの(1t)(1-t)のうちccが消費に回り、さらにmmが輸入で漏出するため、乗数は11c(1t)+m\frac{1}{1 - c(1-t) + m}となります。定率税のビルトイン・スタビライザー効果と輸入漏出が二重に作用して、景気変動の振幅を抑えます。

③ 閉鎖経済との乗数比較

モデル乗数分母の大きさ
閉鎖・定額税11c\frac{1}{1-c}最小(乗数最大)
閉鎖・定率税11c(1t)\frac{1}{1-c(1-t)}
開放・定額税11c+m\frac{1}{1-c+m}
開放・定率税11c(1t)+m\frac{1}{1-c(1-t)+m}最大(乗数最小)

漏出要因(貯蓄・税・輸入)が多いほど分母が大きくなり、乗数は小さくなります。

具体例

限界消費性向c=0.8c = 0.8、限界輸入性向m=0.1m = 0.1の経済で、閉鎖経済と開放経済の乗数を比較してみましょう。

ステップ1: 閉鎖経済(定額税)の乗数

110.8=10.2=5\frac{1}{1 - 0.8} = \frac{1}{0.2} = 5

ステップ2: 開放経済(定額税)の乗数

110.8+0.1=10.33.33\frac{1}{1 - 0.8 + 0.1} = \frac{1}{0.3} \approx 3.33

乗数が5から約3.33に縮小しました。政府支出を10増やした場合の効果は:

  • 閉鎖経済: ΔY=5×10=50\Delta Y = 5 \times 10 = 50
  • 開放経済: ΔY=3.33×1033.3\Delta Y = 3.33 \times 10 \approx 33.3

ステップ3: さらに定率税t=0.2t = 0.2を加えた場合

110.8(10.2)+0.1=110.64+0.1=10.462.17\frac{1}{1 - 0.8(1-0.2) + 0.1} = \frac{1}{1 - 0.64 + 0.1} = \frac{1}{0.46} \approx 2.17

開放経済かつ定率税では乗数がさらに縮小し、景気変動が自動的に安定化されます。

試験のポイント

  • 要は「開放経済の乗数は11c+m\frac{1}{1-c+m}で、限界輸入性向mmの分だけ閉鎖経済より小さくなる」
  • 閉鎖/開放 × 定額税/定率税の4パターンの乗数の大小比較が頻出
  • 「漏出が多い=乗数が小さい」の直感を持っておくこと
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マンデル=フレミング・モデル

簡単にいうと

開放経済でIS-LM分析を拡張したのがマンデル=フレミング!変動相場制と固定相場制で財政政策と金融政策の効き目が正反対になるのが最大のポイント!

① マンデル=フレミング・モデルとは

マンデル=フレミング・モデルは、IS-LM分析を開放経済に拡張したモデルです。閉鎖経済のIS-LMでは生産物市場と貨幣市場の2市場均衡を分析しましたが、このモデルではさらに国際資本移動を考慮します。前提として小国開放経済(自国の政策が世界利子率に影響しない)と完全資本移動(資本が利子率差に即座に反応して国境を越える)を仮定します。完全資本移動のもとでは、自国利子率は世界利子率ii^*に等しくなります。

② 変動相場制での政策効果

変動相場制では為替レートが市場で自由に決定されます。

金融政策は有効 貨幣供給を増やすとLM曲線が右シフトし、自国利子率が一時的に低下します。すると内外金利差により資本が海外に流出し、自国通貨が減価します。通貨安は輸出増・輸入減をもたらしてIS曲線も右シフトさせるため、GDPが増加します。

財政政策は無効 政府支出を増やすとIS曲線が右シフトし、自国利子率が一時的に上昇します。すると資本が流入し、自国通貨が増価します。通貨高は輸出減・輸入増をもたらしてIS曲線を左に押し戻すため、最終的にGDPは変化しません。

③ 固定相場制での政策効果

固定相場制では中央銀行が為替レートを一定に維持するために外国為替市場に介入します。

財政政策は有効 政府支出増加でIS曲線が右シフトし、利子率が上昇すると資本が流入します。自国通貨に増価圧力がかかりますが、中央銀行は固定レートを維持するために自国通貨を売って外貨を買います。この介入により貨幣供給が増加してLM曲線も右シフトし、GDPが増加します。

金融政策は無効 貨幣供給を増やすとLM曲線が右シフトし、利子率が低下して資本が流出します。自国通貨に減価圧力がかかりますが、中央銀行は固定レート維持のため外貨を売って自国通貨を買います。この介入で貨幣供給が元に戻り、LM曲線も元の位置に戻るため、GDPは変化しません。

為替制度財政政策金融政策
変動相場制無効有効
固定相場制有効無効

具体例

変動相場制と固定相場制で、同じ金融緩和政策がどのように異なる結果をもたらすか、ステップを追って比較してみましょう。

【変動相場制で金融緩和(有効なケース)】

ステップ1 中央銀行が貨幣供給を増やし、LM曲線が右にシフトします。

ステップ2 自国利子率が世界利子率ii^*を下回り、投資家は利回りの高い海外に資金を移します(資本流出)。

ステップ3 外貨需要が増えて自国通貨が減価(円安)します。

ステップ4 円安により輸出が増加・輸入が減少し、純輸出が拡大してIS曲線が右にシフトします。

結果 i=ii = i^*に戻った時点で、GDPは増加した状態で新しい均衡に達します。

【固定相場制で金融緩和(無効なケース)】

ステップ1 中央銀行が貨幣供給を増やし、LM曲線が右にシフトします。

ステップ2 同様に自国利子率が低下し、資本が流出します。

ステップ3 自国通貨に減価圧力がかかりますが、固定相場を維持するため中央銀行が外貨準備を売って自国通貨を買います。

ステップ4 この介入で国内の貨幣供給が減少し、LM曲線が左に戻ります。

結果 すべてが元に戻り、GDPは変化しません。金融政策は為替介入に吸収されてしまいます。

変動相場制下での金融政策の波及経路(LM右シフト→円安→IS右シフト→GDP増加)を示すグラフ

マンデル=フレミング(変動相場制・金融政策有効)

試験のポイント

  • 要は「変動相場制=金融政策有効・財政政策無効、固定相場制=財政政策有効・金融政策無効」の対称性
  • この結論と、なぜそうなるかの波及メカニズム(資本移動→為替変動→IS/LMシフト)をステップで説明できるようにしておくことが必須

まとめ

概念
内容
ポイント
輸出XX
外生変数(所得に無関係)
外国の需要で決まる
輸入MM
M0+mYM_0 + mY(所得の増加関数)
mm=限界輸入性向
開放経済の乗数
11c+m\frac{1}{1-c+m}
閉鎖経済より小さい
開放・定率税の乗数
11c(1t)+m\frac{1}{1-c(1-t)+m}
最も小さい乗数
変動相場制
金融政策○ / 財政政策×
為替レートが調整弁
固定相場制
財政政策○ / 金融政策×
為替介入が効果を相殺

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