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投資に関する理論

消費、投資、金融政策に関する理論

この節では、ケインズの投資理論を発展させた投資に関する諸理論を学びます。トービンのq理論と加速度原理を理解しましょう。

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トービンのq理論

簡単にいうと

株式市場が企業の価値を実際の資産より高く評価してたら「投資するべき!」ってこと。q > 1なら投資実行!

トービンのqとは、企業の市場価値と資本の再取得費用(置換費用)の比率で、投資の判断基準となる指標です。

q=企業の株式市場価値資本の再取得費用(置換費用)q = \frac{\text{企業の株式市場価値}}{\text{資本の再取得費用(置換費用)}}

ここで「企業の株式市場価値」とは株式時価総額のことで、株式市場が「この企業にはこれだけの価値がある」と評価した金額です。一方「資本の再取得費用」とは、その企業が保有する工場や設備をいまゼロから買い直すとしたらいくらかかるか、という金額です。

q>1q > 1のとき(投資が有利) 株式市場がその企業を、実物資本の価値以上に高く評価しています。たとえば、100億円の設備を持つ企業を株式市場が150億円と評価しているなら、新たに設備を購入しても株式市場はそれ以上の価値を認めてくれるということです。したがって、新規投資を行うことが有利であり、投資が増加します。

q<1q < 1のとき(投資が不利) 株式市場がその企業を、実物資本の価値以下にしか評価していません。新たに設備を購入しても、株式市場はそれだけの価値を認めてくれません。むしろ既存の企業を株式市場で買収したほうが安上がりです。したがって、新規投資は不利であり、投資は減少します。

q=1q = 1のとき 市場評価と実物資本の価値がちょうど等しい均衡状態です。

金融政策との関連 トービンのq理論は、金融政策が株価を経由して投資に影響するルートを説明します。金融緩和が行われると市場に資金が流入し株価が上昇します。するとqqが上昇して投資が増加します。逆に金融引締めが行われると株価が下落し、qqが低下して投資が減少します。

具体例

トービンのqを実際に計算してみましょう。

ある企業の株式時価総額が150億円で、その企業が保有する設備をすべて新品で買い直すと100億円かかるとします。

q=150億円÷100億円=1.5q = 150億円 \div 100億円 = 1.5

q=1.5>1q = 1.5 > 1なので、この企業は新たに設備投資を行うことが有利です。なぜなら、100億円かけて工場を建てても、株式市場はその企業全体を150億円と評価してくれるからです。投資した金額以上の価値を市場が認めてくれるので、投資を実行すべきと判断できます。

試験のポイント

  • 要は「q > 1なら投資実行、q < 1なら投資見送り」のシンプルな判定ルール
  • qの定義(株式時価総額/資本の再取得費用)と、金融政策が株価経由で投資に影響する経路を理解する
2

加速度原理

簡単にいうと

「GDPが増えたら投資も増える」というシンプルな理論!投資はGDPの変化分(増加額)に比例するの!

加速度原理とは、投資は国民所得の水準ではなく変化分(増加額)に比例するという理論です。

I=vΔYI = v \cdot \Delta Y

ここで、IIは投資(純投資)、vvは資本係数(加速度係数)で「生産を1単位増やすのに必要な資本の量」を表します。ΔY\Delta Yは国民所得の変化分です。

この理論の重要なポイントは3つあります。

① 投資は所得の水準ではなく変化分に依存する 所得が100から200に増えたとき(増加分100)と、200から250に増えたとき(増加分50)では、後者のほうが所得水準は高いのに投資は少なくなります。投資を決めるのは「今の所得がいくらか」ではなく「所得がどれだけ増えたか」なのです。

② 増加ペースが鈍化するだけで投資は減少する 所得が増え続けていても、増加のペース(勢い)が落ちると投資は減ります。これは直感に反するかもしれませんが、加速度原理の重要な帰結です。

③ 景気変動を加速させる効果がある 景気が良いと所得が増加し投資が増え、投資の増加がさらに所得を増やすという好循環が生まれます。逆に景気が悪化すると逆の悪循環が起きます。「加速度原理」という名前は、このように景気変動を加速させる効果に由来しています。

具体例

資本係数v=3v = 3のケースで、加速度原理がどのように働くか見てみましょう。

期間1 国民所得が100増加(ΔY=100\Delta Y = 100)した場合、投資はI=3×100=300I = 3 \times 100 = 300です。

期間2 国民所得がさらに50増加(ΔY=50\Delta Y = 50)した場合、投資はI=3×50=150I = 3 \times 50 = 150です。

注目してほしいのは、所得自体はまだ増え続けているのに、増加のペースが鈍化しただけで投資は300から150へと半減してしまったことです。所得の「増え方の勢い」こそが投資を決めるという加速度原理の本質がここに表れています。

試験のポイント

  • 要は「投資は所得の水準ではなく変化分(ΔY\Delta Y)に比例する(I=vΔYI = v \cdot \Delta Y)」
  • 所得の増加ペースが落ちるだけで投資が減少する点がポイント
  • ケインズの投資理論(利子率の関数)との違いも出る
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新古典派の投資理論

簡単にいうと

企業は「もう1台機械を入れたときの儲け」と「機械のレンタルコスト」を比べて投資を決める!

新古典派の投資理論では、企業は利潤を最大化するように行動し、その結果として望ましい資本ストックの水準が決まると考えます。

① 資本の限界生産物(限界生産力) 資本ストックを1単位追加したとき、生産量がどれだけ増えるかを表します。重要なのは、資本の限界生産物は逓減するということです。最初の1台目の機械は大きな生産増加をもたらしますが、2台目、3台目と増やしていくにつれて、追加1台あたりの生産増加は次第に小さくなっていきます。

② 資本の使用者費用(レンタルコスト) 資本ストックを1単位増やすのにかかる費用のことです。具体的には、設備投資のための資金を借りる際に支払う利子、つまり実質利子率が主なコストとなります。

③ 望ましい資本ストックの決定 企業は、追加投資による収益(資本の限界生産物)と追加投資にかかるコスト(実質利子率)を比較します。資本の限界生産物が実質利子率を上回っている間は投資を増やし続け、資本の限界生産物 = 実質利子率となる水準で投資をストップします。この点が望ましい資本ストックの水準です。

④ 投資への影響

実質利子率が低下すると、コストのハードルが下がるため、望ましい資本ストックが増加し、投資が増加します。

生産技術が進歩すると、資本の限界生産物曲線が上方にシフトするため、同じ利子率でもより多くの資本が望ましくなり、投資が増加します。

具体例

新古典派の投資判断を具体的な数値で考えてみましょう。

ある企業の資本の限界生産物が5%、実質利子率が3%だとします。限界生産物(5%)が利子率(3%)を上回っているので、追加投資は有利です。投資1単位あたり2%(= 5% - 3%)の利益が出ます。

企業は投資を増やしていきますが、限界生産物は逓減するので、投資を増やすほど追加1単位あたりの収益は小さくなります。最終的に限界生産物が3%(=実質利子率)に等しくなる水準で投資がストップします。

逆に、実質利子率が7%に上昇した場合を考えてみましょう。限界生産物が7%を下回る資本は、維持するコストのほうが収益より大きくなるため、削減の対象になります。結果として投資は減少します。

試験のポイント

  • 要は「資本の限界生産物=実質利子率となる水準まで投資が行われる」
  • 利子率低下→投資増加のメカニズム、限界生産物逓減の前提が重要
  • トービンのq(株式市場経由)や加速度原理(所得変化経由)とのアプローチの違いも押さえておく

まとめ

理論
投資の決定要因
ポイント
ケインズ
利子率(投資の限界効率)
I=I(i)I = I(i)
トービンのq
株式市場価値 / 資本再取得費用
q>1q > 1で投資実行
加速度原理
国民所得の変化分ΔY\Delta Y
I=vΔYI = v \cdot \Delta Y
新古典派
資本の限界生産物 = 実質利子率
利子率低下→投資増加

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