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IS-LM分析

貨幣市場とIS-LM分析

この節では、IS曲線とLM曲線を組み合わせたIS-LM分析を学びます。2つの市場を同時に均衡させる国民所得と利子率の決定、財政政策のクラウディング・アウト効果、金融政策の波及メカニズム、そして流動性のわなや古典派ケースなどの特殊ケースでの政策効果を理解しましょう。

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IS曲線とLM曲線の同時均衡

簡単にいうと

IS曲線(財市場の均衡)とLM曲線(貨幣市場の均衡)の交点が、両方の市場を同時にバランスさせる利子率と国民所得の組み合わせ!ここがIS-LM分析のスタート地点だよ!

① IS-LM分析の枠組み

IS-LM分析は、生産物市場(財市場)と貨幣市場という2つの市場を同時に分析するマクロ経済モデルです。IS曲線は生産物市場を均衡させる利子率iiと国民所得YYの組み合わせを表し、右下がりの曲線です。LM曲線は貨幣市場を均衡させるiiYYの組み合わせを表し、右上がりの曲線です。この2つの曲線を同じii-YY平面に描くことで、両市場を同時に分析できるようになります。

② 均衡点の決定

IS曲線とLM曲線の交点Eが、両市場を同時に均衡させる唯一の点です。この交点で決まるYY^*均衡国民所得ii^*均衡利子率です。交点Eでは、生産物市場の総需要と総供給が一致すると同時に、貨幣の需要と供給も一致しています。交点以外の点では、少なくとも一方の市場が不均衡の状態にあります。

③ 均衡点の計算方法

均衡点は、IS曲線の式とLM曲線の式を連立方程式として解くことで求められます。具体的には、一方の式を他方に代入してYY^*を求め、次にそれをどちらかの式に戻してii^*を求めます。この計算手順は試験で最も頻出するパターンの一つであり、確実にマスターする必要があります。

具体例

IS曲線とLM曲線の連立方程式を実際に解いてみましょう。

IS曲線: Y=5502000iY = 550 - 2000i

LM曲線: i=0.0005Y0.2i = 0.0005Y - 0.2

ステップ1 LM曲線の式をIS曲線に代入します。

Y=5502000(0.0005Y0.2)Y = 550 - 2000(0.0005Y - 0.2)

Y=550Y+400Y = 550 - Y + 400

2Y=9502Y = 950

Y=475Y^* = 475

ステップ2 Y=475Y^* = 475をLM曲線の式に代入します。

i=0.0005×4750.2=0.23750.2=0.0375i^* = 0.0005 \times 475 - 0.2 = 0.2375 - 0.2 = 0.0375(3.75%)

つまり、均衡国民所得は475、均衡利子率は3.75%と求められました。この点で生産物市場と貨幣市場が同時に均衡しています。

財政政策(IS右シフト)と金融政策(LM右シフト)の効果を示すIS-LMグラフ

IS-LM分析と政策効果

試験のポイント

  • 要は「IS曲線とLM曲線の交点が均衡国民所得YY^*と均衡利子率ii^*を同時に決定する」
  • 連立方程式を解いて均衡点を求める計算問題が頻出
  • IS曲線は右下がり・LM曲線は右上がりという形状の違いも必ず押さえる
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財政政策の効果(クラウディングアウト)

簡単にいうと

政府支出を増やすとIS曲線が右シフトしてGDPは増えるけど、利子率も上がっちゃって民間投資が減る!せっかくの効果が一部打ち消されるのがクラウディング・アウトだよ!

① 拡張的財政政策の波及メカニズム

拡張的財政政策(政府支出の増加や減税)を実施すると、IS曲線が右にシフトします。新しい均衡点では、国民所得YYが増加すると同時に利子率iiも上昇します。45度線分析では利子率を一定と仮定するため乗数効果がフルに発揮されましたが、IS-LM分析では利子率の上昇を通じた副作用が発生するのです。

② クラウディング・アウト(押し出し効果)の仕組み

クラウディング・アウトとは、政府支出の増加が利子率を上昇させ、その結果として民間投資が減少する現象です。波及経路は「政府支出増加→国民所得増加→取引需要増加→利子率上昇→民間投資減少」というものです。政府支出の増加分が民間投資の減少分によって一部相殺されるため、45度線分析で予測されるよりもGDPの増加幅は小さくなります。

③ クラウディング・アウトの大きさを決める要因

クラウディング・アウトの大きさは、LM曲線の傾きによって変わります。LM曲線が急(垂直に近い)ほど、IS曲線の右シフトに対して利子率が大きく上昇するため、クラウディング・アウトが大きくなり、財政政策の効果は小さくなります。逆にLM曲線が緩やか(水平に近い)ほど、利子率の上昇が小さく、クラウディング・アウトも小さいため、財政政策の効果は大きくなります。

具体例

クラウディング・アウトがどの程度の影響を持つか、3つのケースで比較してみましょう。

政府支出の増加によりIS曲線が右に100だけシフトしたとします。

ケース1: LM曲線が水平(流動性のわな)

利子率が変わらないので、クラウディング・アウトはゼロ。ΔY=100\Delta Y = 100がそのまま実現します。45度線分析と同じ結果です。

ケース2: LM曲線が通常の傾き

利子率が上昇し、民間投資が一部減少します。たとえばΔY=60\Delta Y = 60にとどまり、40の分がクラウディング・アウトで相殺されます。

ケース3: LM曲線が垂直(古典派のケース)

利子率が大幅に上昇し、民間投資の減少が政府支出の増加と完全に相殺されます。ΔY=0\Delta Y = 0で、完全なクラウディング・アウトが発生し、財政政策は全く効果がありません。

IS曲線の右シフトによる財政政策の効果とクラウディング・アウトの発生メカニズムを示すグラフ

IS-LM分析 財政政策の効果(クラウディング・アウト)

試験のポイント

  • 要は「財政政策→IS右シフト→Y↑・i↑だが、利子率上昇で民間投資が減る(クラウディング・アウト)」
  • LM曲線が急なほどクラウディング・アウト大→財政政策の効果小、LM曲線がフラットなほどクラウディング・アウト小→財政政策の効果大という関係が最頻出
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金融政策の効果

簡単にいうと

マネーサプライを増やすとLM曲線が右にシフト!利子率が下がって企業が借りやすくなり、投資が増えてGDPアップ!財政政策とは利子率の動きが逆なのがポイント!

① 拡張的金融政策の波及メカニズム

拡張的金融政策(買いオペ等によるマネーサプライの増加)を実施すると、LM曲線が右(下)にシフトします。新しい均衡点では、国民所得YYが増加し、利子率iiは低下します。利子率が下がることで企業にとっての借入コストが下がり、設備投資が増加し、乗数効果を通じてGDPが拡大するという波及経路です。

② 金融政策の効果の大きさ

金融政策の効果の大きさは、IS曲線の傾きによって決まります。IS曲線が緩やか(フラット)なほど、LM曲線の右シフトによる利子率低下が投資を大きく増やすため、金融政策の効果は大きくなります。逆にIS曲線が急なほど、利子率が下がっても投資の増加が小さいため、金融政策の効果は小さくなります。

③ 金融政策の効果を大きくする条件

金融政策の効果が大きくなるのは、IS曲線がフラットになる条件が満たされるときです。具体的には、限界消費性向ccが大きいほど乗数が大きくなりIS曲線がフラットになります。また、投資の利子率弾力性が大きいほど、わずかな利子率低下でも投資が大きく増えるため、IS曲線がフラットになります。この2つの条件は、財政政策の効果の条件とは異なる点に注意が必要です。

具体例

金融政策と財政政策の違いを、同じ経済モデルで比較してみましょう。

当初の均衡: Y=475Y^* = 475i=3.75%i^* = 3.75\%

金融政策(買いオペ)を実施した場合

LM曲線が右にシフトし、新しい均衡はY=500Y^* = 500i=2.5%i^* = 2.5\%になったとします。国民所得は25増加し、利子率は1.25%低下しました。利子率の低下により投資が増加し、それが乗数効果で増幅されてGDPが拡大したのです。

財政政策(政府支出増加)を実施した場合

IS曲線が右にシフトし、新しい均衡はY=500Y^* = 500i=5.0%i^* = 5.0\%になったとします。国民所得は同じ25増加しましたが、利子率は1.25%上昇しています。

このように、同じGDP増加を達成しても、金融政策は利子率を下げ、財政政策は利子率を上げるという正反対の効果を持ちます。

LM曲線の右シフトによる金融政策の効果(利子率低下・国民所得増加)を示すグラフ

IS-LM分析 金融政策の効果

試験のポイント

  • 要は「金融政策→LM右シフト→Y↑・i↓で、IS曲線がフラットなほど効果大」
  • 財政政策との違い(IS右シフト→i↑ vs LM右シフト→i↓)を明確に区別すること
  • 効果を大きくする条件(限界消費性向cc大、投資の利子率弾力性大→ISフラット)も重要
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特殊ケースでの政策効果

簡単にいうと

流動性のわな(LM水平)では金融政策が無効で財政政策が有効!古典派ケース(LM垂直)では逆に財政政策が無効で金融政策が有効!IS垂直のケースも含めて、3つのパターンをまるごと覚えよう!

① 流動性のわな(LM曲線が水平)

流動性のわなとは、利子率が最低水準に達し、LM曲線が水平になっている状態です。この状態で財政政策(IS右シフト)を行うと、LM曲線が水平なので利子率が上がらず、クラウディング・アウトは発生しません。したがって財政政策は有効で、乗数効果が完全に発揮されます。一方、金融政策(LM右シフト)を行っても、LM曲線の水平部分が右に伸びるだけで均衡点は変わらないため、金融政策は無効です。

② 古典派のケース(LM曲線が垂直)

古典派のケースとは、貨幣需要の利子率弾力性がゼロで、LM曲線が垂直になっている状態です。この状態で財政政策(IS右シフト)を行うと、LM曲線が垂直なので国民所得は変わらず利子率だけが上昇し、完全なクラウディング・アウトが発生します。したがって財政政策は無効です。一方、金融政策(LM右シフト)を行うと、垂直のLM曲線が右にシフトして国民所得が増加するため、金融政策は有効です。

③ IS曲線が垂直(投資の利子率弾力性がゼロ)

投資が利子率に全く反応しない場合、IS曲線は垂直になります。この状態では、金融政策で利子率を下げても投資は増えないので金融政策は無効です。一方、財政政策でIS曲線を右にシフトさせると、利子率は上昇しますがクラウディング・アウトは発生しません(投資が利子率に反応しないため)。したがって財政政策は有効です。

条件財政政策金融政策
流動性のわな(LM水平)有効無効
古典派(LM垂直)無効有効
IS垂直(投資の利子率弾力性ゼロ)有効無効

具体例

3つの特殊ケースでの政策効果を、グラフのイメージとともに確認してみましょう。

ケース1: 流動性のわな

LM曲線が水平でi=1%i = 1\%に固定されています。政府支出を50増加させると、IS曲線が右にシフトします。利子率は1%のまま変わらないので、ΔY=11c×50\Delta Y = \frac{1}{1-c} \times 50がそのまま実現します。たとえばc=0.8c = 0.8ならΔY=250\Delta Y = 250です。45度線分析と完全に同じ結果になるのが特徴です。

ケース2: 古典派

LM曲線が垂直でY=500Y = 500に固定されています。政府支出を50増加させIS曲線を右にシフトさせても、国民所得は500のまま変わりません。利子率だけが上昇し、民間投資が政府支出増加分と同額だけ減少します。これが完全なクラウディング・アウトです。

ケース3: IS垂直

IS曲線が垂直で、投資は利子率に全く反応しません。買いオペでLM曲線を右にシフトさせると利子率は下がりますが、投資は増えず、GDPも変化しません。

IS垂直/水平、LM垂直/水平(流動性のわな)、通常ケースの5パターンでの財政政策・金融政策の効果比較

IS-LM分析 特殊ケース5パターン

試験のポイント

  • 要は「流動性のわな→金融無効・財政有効、古典派→財政無効・金融有効、IS垂直→金融無効・財政有効」の3パターンを暗記
  • IS-LM分析の最重要テーマで、グラフの判読問題と政策効果の有効・無効の判別問題が毎年出題される
  • 各ケースで「なぜ有効/無効なのか」をグラフの形状から説明できるようにしておくこと

まとめ

概念
IS曲線
LM曲線
効果
財政政策
右シフト
不変
YYii↑(クラウディング・アウトあり)
金融政策
不変
右シフト
YYii
流動性のわな
-
水平
金融政策無効・財政政策有効
古典派
-
垂直
財政政策無効・金融政策有効
IS垂直
垂直
-
金融政策無効・財政政策有効

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