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テキスト/経済学・経済政策/貨幣需要と利子率

貨幣需要と利子率

貨幣市場とIS-LM分析

この節では、ケインズの流動性選好理論に基づく貨幣需要を学びます。人々がお金を手元に持ちたがる理由、債券価格と利子率の関係、そして金融政策が効かなくなる流動性のわな、さらに貨幣市場の均衡を表すLM曲線の導出まで理解しましょう。

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ケインズの貨幣需要理論

簡単にいうと

お金を持ちたい理由は大きく2つ!「日常の買い物用(取引需要)」と「債券投資のタイミング待ち(投機的需要)」!この2つを分けて考えるのがケインズ流だよ!

① 債券価格と利子率の逆相関

ケインズの貨幣需要理論を理解するうえで、まず押さえるべきは債券価格と利子率の関係です。マクロ経済学では資産を貨幣債券の2種類のみと仮定します。額面1,000円・利子額100円の債券の場合、利子率は「利子額/債券価格」で計算されます。債券価格が1,000円なら利子率は100/1000=10%100/1000 = 10\%、債券価格が2,000円なら100/2000=5%100/2000 = 5\%です。このように、債券価格が上がると利子率は下がり、債券価格が下がると利子率は上がるという逆相関(シーソーの関係)があります。

② 取引需要 L1(Y)L_1(Y)

取引需要とは、日常の売買決済のためにお金を手元に置いておきたいという需要です。国民所得YYが増えると経済活動が活発になり、取引の規模も大きくなるため、必要な貨幣量も増えます。したがって取引需要は国民所得YY増加関数であり、利子率には依存しません。たとえばL1=0.5YL_1 = 0.5Yのような形で表されます。

③ 投機的需要 L2(i)L_2(i)

投機的需要とは、資産運用のタイミングを計るために貨幣を保有しておきたいという需要です。利子率が低い(=債券価格が高い)ときは「今後債券価格が下がるかもしれない」と考え、人々は貨幣で保有しようとするため投機的需要は大きくなります。逆に利子率が高い(=債券価格が安い)ときは「今が買い時」と考え、債券を購入するため投機的需要は小さくなります。したがって投機的需要は利子率ii減少関数です。

貨幣需要関数は両者の合計で、L=L1(Y)+L2(i)L = L_1(Y) + L_2(i)と表されます。

具体例

債券価格と利子率の関係を、具体的な数値で確認してみましょう。

額面1,000円、利子額100円の債券があるとします。

場面1 この債券が市場で500円で売られている場合、利子率は100/500=20%100/500 = 20\%です。利子率が高いので「今が買い時!」と考え、人々は貨幣を手放して債券を購入します。投機的需要は小さくなります。

場面2 同じ債券が2,000円で売られている場合、利子率は100/2000=5%100/2000 = 5\%です。利子率が低いので「これ以上債券価格は上がらないだろう」と考え、人々は貨幣で保有しようとします。投機的需要は大きくなります。

次に、貨幣需要関数を使った計算もしてみましょう。L1=0.5YL_1 = 0.5YL2=2001000iL_2 = 200 - 1000iとすると、L=0.5Y+2001000iL = 0.5Y + 200 - 1000iです。Y=400Y = 400i=0.05i = 0.05(5%)のとき、L=200+20050=350L = 200 + 200 - 50 = 350となります。

試験のポイント

  • 要は「取引需要は所得Yの増加関数、投機的需要は利子率iの減少関数、この2つの違いが最重要」
  • 債券価格と利子率の逆相関(利子率=利子額/債券価格)、貨幣需要関数L=L1(Y)+L2(i)L = L_1(Y) + L_2(i)がLM曲線導出の基礎となることを押さえる
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流動性のわな

簡単にいうと

利子率がもうこれ以上下がりようがないほど低いとき、みんな「債券を買っても損するだけ」と思って全部現金で持っちゃう!いくらお金を刷っても利子率が下がらない――これが流動性のわな!

① 流動性のわなとは何か

流動性のわな(liquidity trap)とは、利子率が極端に低い水準に達したとき、投機的需要が無限大になる状態のことです。利子率が最低水準にあるということは、債券価格が最高水準にあるということです。このとき人々は全員が「これ以上債券価格は上がらない(下がるだけだ)」と予想するため、誰も債券を買おうとせず、すべての資産を貨幣で保有しようとします。

② 貨幣需要曲線の形状変化

通常、貨幣需要曲線は右下がりですが、流動性のわなが発生すると、利子率の最低水準で需要曲線が水平になります。これは「利子率がこの水準を下回ることはなく、貨幣供給をいくら増やしても、増えた分はすべて人々の手元に吸収されてしまう」ということを意味します。グラフで見ると、貨幣需要曲線の左端部分が横に水平に伸びた形になります。

③ 政策効果への影響

流動性のわなの下では、政策の有効性が通常とは大きく異なります。金融政策は無効です。日銀が買いオペでマネーサプライを増やしても、利子率はすでに下限に張り付いているため下がりません。利子率が下がらなければ投資は増えず、GDPも増加しません。一方、財政政策は有効です。政府支出の増加でIS曲線が右にシフトすると、利子率が変わらないのでクラウディング・アウトが発生せず、乗数効果が完全に発揮されてGDPが増加します。

具体例

流動性のわなが発生した経済で、政策効果の違いを確認してみましょう。

利子率が0.5%(ほぼゼロ)の水平部分にある状態を考えます。

金融政策を試した場合

日銀が買いオペでマネーサプライを100兆円から120兆円に増やしたとしましょう。通常ならLM曲線が右にシフトして利子率が低下するはずですが、利子率は0.5%のまま動きません。増えた20兆円はすべて人々の手元に貨幣として保有されるだけで、投資もGDPも変化しないのです。

財政政策を試した場合

政府支出を50増加させると、IS曲線が右にシフトします。利子率は0.5%のまま変わらないので、クラウディング・アウトはゼロです。GDPは乗数11c\frac{1}{1-c}倍だけ増加します。たとえばc=0.8c = 0.8ならΔY=50×5=250\Delta Y = 50 \times 5 = 250です。

試験のポイント

  • 要は「利子率が下限に張り付いて金融政策が効かなくなる状態=流動性のわな」
  • 「金融政策無効・財政政策有効」の組み合わせが最頻出
  • LM曲線が水平になることとの対応(LMの水平部分=流動性のわな)も重要
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LM曲線の導出

簡単にいうと

LM曲線は「貨幣市場が均衡する利子率と国民所得の組み合わせ」を描いた曲線!所得が増えると取引需要が増えて利子率が上がるから、右上がりになるんだ!

① LM曲線の意味と均衡条件

LM曲線は、貨幣市場の均衡(貨幣需要=貨幣供給)を満たす利子率iiと国民所得YYの組み合わせをii-YY平面に描いた曲線です。LMとはLiquidity preference(流動性選好=貨幣需要)とMoney supply(貨幣供給)の頭文字をとったもので、均衡条件はL1(Y)+L2(i)=M/PL_1(Y) + L_2(i) = M/Pと表されます。ここでMMは名目貨幣供給量、PPは物価水準、M/PM/Pは実質貨幣供給量です。

② LM曲線が右上がりになる理由

国民所得YYが増加すると取引需要L1L_1が増えますが、実質貨幣供給量M/PM/Pは一定です。貨幣市場を均衡に保つためには、増えた取引需要の分だけ投機的需要L2L_2を減らす必要があります。L2L_2を減少させるには利子率iiが上昇しなければなりません。つまり「YYが増えるとiiも上がる」という関係があるため、LM曲線はii-YY平面で右上がりになります。

③ LM曲線の傾きとシフト

LM曲線の傾きは、投機的需要の利子率弾力性(利子率に対する感応度)によって決まります。弾力性が大きいほどLM曲線は緩やか(フラット)になり、弾力性がゼロだとLM曲線は垂直(古典派のケース)、無限大だと水平(流動性のわな)になります。LM曲線のシフトは主に実質貨幣供給量M/PM/Pの変化で起こり、MMの増加やPPの低下はM/PM/Pを増やしてLM曲線を右(下)にシフトさせます。

LM曲線の上側・下側状態調整メカニズム
LM上側貨幣の超過供給(M/P>LM/P > L債券購入→債券価格↑→利子率↓→均衡へ
LM下側貨幣の超過需要(L>M/PL > M/P債券売却→債券価格↓→利子率↑→均衡へ

具体例

LM曲線を実際に式から導出してみましょう。

貨幣需要関数がL=0.5Y+2001000iL = 0.5Y + 200 - 1000i、実質貨幣供給量がM/P=400M/P = 400だとします。

均衡条件L=M/PL = M/Pに代入すると、0.5Y+2001000i=4000.5Y + 200 - 1000i = 400です。

整理すると、1000i=0.5Y2001000i = 0.5Y - 200、つまりi=0.0005Y0.2i = 0.0005Y - 0.2がLM曲線の式です。

この式に具体的な数値を入れてみましょう。

Y=600Y = 600のとき: i=0.30.2=0.1i = 0.3 - 0.2 = 0.1(10%)

Y=800Y = 800のとき: i=0.40.2=0.2i = 0.4 - 0.2 = 0.2(20%)

国民所得が増えると利子率も上がる、右上がりの関係が確認できます。

次に、買いオペでM/PM/Pが400から500に増えたケースを考えてみましょう。

新しいLM曲線は0.5Y+2001000i=5000.5Y + 200 - 1000i = 500、つまりi=0.0005Y0.3i = 0.0005Y - 0.3です。同じY=600Y = 600でも利子率は0.10.1から0.00.0に低下しており、LM曲線が右(下)にシフトしたことがわかります。

買いオペによるマネーサプライ増加でLM曲線が右にシフトするグラフ。利子率低下と国民所得増加を表示

LM曲線の右シフト(金融緩和)

貨幣市場の均衡からLM曲線が導出される過程を示す左右2パネルグラフ

LM曲線の導出過程(貨幣市場 → LM)

試験のポイント

  • 要は「所得↑→取引需要↑→利子率↑だからLM曲線は右上がり、M増加で右シフト」
  • LM曲線の式を均衡条件L=M/PL = M/Pから導出する計算問題が頻出
  • LM上側=貨幣の超過供給、下側=超過需要の判別、流動性のわな(LM水平)と古典派(LM垂直)の特殊ケースも重要

まとめ

概念
内容
ポイント
債券価格と利子率
逆相関(シーソー)
利子率=利子額/債券価格
取引需要 L1L_1
YYの増加関数
日常取引に必要な貨幣
投機的需要 L2L_2
iiの減少関数
資産運用のタイミング待ち
流動性のわな
利子率が下限で貨幣需要が無限大
金融政策無効・財政政策有効
LM曲線
貨幣市場均衡のii-YYの軌跡
右上がり、MM増加で右シフト

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