生産物市場(財市場)の分析
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プレミアムで見る45度線分析で求めた均衡国民所得は、「需要と供給が一致する水準」でしかありません。その水準が望ましいかどうかは、また別の話です。
経済には、働きたい人が全員働けている状態(完全雇用)で達成できる国民所得という1つの目安があります。均衡国民所得がそれを下回っていれば、働けるのに働けていない人がいるということです。逆に上回っていれば、無理な残業で経済が回っているということになり、物価が上がりやすくなります。
この節では、内閣府が四半期ごとに公表している需給ギャップ(GDPギャップ)という指標と、45度線図のうえで測るデフレギャップ・インフレギャップを扱います。令和2年第5問、令和4年第6問、令和7年第7問と、グラフのどこがギャップなのかを問う出題がくり返されています。
簡単にいうと
経済の実力に対して、実際どれくらい動けているか。その差を測るのが需給ギャップだよ。内閣府が3か月ごとに発表してるの!
需給ギャップ(GDPギャップ)とは、
完全雇用国民所得水準のもとで測定した総需要と総供給との乖離のことです。
内閣府が四半期ごとに公表しています。
① 完全雇用と完全雇用国民所得
完全雇用とは、現行の賃金で働きたいと思っている人がすべて働けている状態のことです。
注意したいのは、失業者がゼロになるという意味ではないことです。
「現行の賃金では働きたくない」という人は含まれませんし、
転職の途中で一時的に職がない人もいます。
あくまで「今の条件で働きたい人が働けている」という状態です。
完全雇用国民所得とは、完全雇用のもとで実現する国民所得の水準です。
記号では (F は Full employment)と書きます。
具体例
需給ギャップを実際に計算してみましょう。
例題1: マイナスのケース
ある年の実際のGDPが540兆円、潜在GDPが560兆円だったとします。
試験のポイント
簡単にいうと
作る力はあるのに、買う人がいない。工場は止まり、失業が出る。この足りない需要の大きさがデフレギャップだよ!
① 定義
需給ギャップ(GDPギャップ)がマイナスの場合、
「実際のGDP < 潜在GDP」の関係が成り立ちます。
供給能力に対して財・サービスへの需要が少なく、
機械設備の稼働水準は低く、完全雇用が実現されていない状態です。
この場合、物価下落が生じやすくなります。
このときの、完全雇用国民所得水準下における総供給と総需要の差を
デフレギャップといいます。
簡単にいうと
注文が多すぎて工場も人も限界。作りたくても作れないから値段が上がる。この多すぎる需要の大きさがインフレギャップだよ!
① 定義
需給ギャップ(GDPギャップ)がプラスの場合、
「実際のGDP > 潜在GDP」の関係が成り立ちます。
供給能力に対して財・サービスへの需要が上回り、
機械設備の稼働水準は通常の想定以上に高く、労働者は超過労働している状態です。
この場合、物価上昇が生じやすくなります。
このときの、完全雇用国民所得水準下における総需要と総供給の差を
インフレギャップといいます。
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② 需給ギャップの式
分子が「実際のGDPが潜在GDPをどれだけ上回っている(下回っている)か」、
それを潜在GDPで割ることで比率(%)として表します。
③ 潜在GDP
潜在GDPとは、**現存の経済構造のもとで資本や労働などの生産要素が最大限に投入された場合に
実現可能な産出量のことであり、一国の経済全体の供給力を表す推計値**です。
「推計値」であることがポイントです。
実際のGDPは統計として観測できますが、
潜在GDPは「もし全部の設備と人が動いていたら」という仮定の数字なので、
推計方法によって値が変わります。
④ 符号の読み方
| 需給ギャップ | 関係 | 状態 | 生じるギャップ |
|---|---|---|---|
| マイナス | 実際のGDP < 潜在GDP | 需要が供給力に届いていない | デフレギャップ |
| プラス | 実際のGDP > 潜在GDP | 需要が供給力を上回っている | インフレギャップ |
「マイナスだから悪い、プラスだから良い」という単純な話ではありません。
プラスが大きすぎれば経済が過熱して物価が上がります。
ちょうどゼロに近いことが望ましい、というのが基本の見方です。
⑤ 45度線図で測るギャップとの関係
需給ギャップは実際の統計から計算する指標ですが、
45度線分析では同じ考え方を図のうえで測ります。
完全雇用国民所得 の位置で、総供給と総需要の差を縦に測るのです。
次の2つのテーマで、それぞれを詳しく見ていきます。
マイナスなので、実際のGDP < 潜在GDP。
供給能力に対して需要が足りておらず、デフレギャップが生じています。
例題2: プラスのケース
実際のGDPが575兆円、潜在GDPが560兆円だったとします。
プラスなので、実際のGDP > 潜在GDP。
供給能力を超えて経済が動いており、インフレギャップが生じています。
「実力以上に動く」とはどういうことか
潜在GDPが「最大限に投入した場合」の産出量なのに、
実際のGDPがそれを上回るのは矛盾しているように感じるかもしれません。
しかし潜在GDPは、あくまで通常の稼働水準を前提とした推計値です。
機械を通常の想定以上に回し、労働者が残業を重ねれば、
一時的にはその水準を超えて生産できます。
ただし、それは長続きしません。
無理が続けば、設備は傷み、人は疲弊し、賃金と物価が上がっていきます。
だからインフレギャップは物価上昇の前触れとされるのです。
分母に注意
需給ギャップの式の分母は潜在GDPです。実際のGDPではありません。
上の例題1を、誤って実際のGDPで割ると、
わずかな違いに見えますが、選択肢問題では両方の値が並べられることがあります。
分母は潜在GDPと覚えてください。
符号の向きにも注意
分子は「実際のGDP − 潜在GDP」です。
逆にすると符号が反転してしまい、デフレとインフレを取り違えます。
「実際が潜在を下回っていればマイナス=デフレギャップ」
という向きを、式ごと覚えておきましょう。
(総供給 > 総需要 の状態です。)
② 45度線図での測り方
ここが試験でもっとも問われるところです。手順を分解します。
1. 横軸で完全雇用国民所得 の位置を見つける
2. そこから真上に垂直線を引く
3. 垂直線が45度線(総供給曲線)と交わる点を見つける
4. 垂直線が総需要曲線と交わる点を見つける
5. その2点の縦の差がデフレギャップ
デフレギャップの場合、 のところでは45度線のほうが総需要曲線より上にあります。
つまり45度線上の点のほうが高い位置にあり、その差がギャップです。
注意: ギャップを測る位置は、均衡国民所得 ではなく完全雇用国民所得 です。
のところでは総需要と総供給は一致しているので、差はゼロです。
ここを取り違えると必ず間違えます。
③ ギャップと国民所得の差は別物
もう1つ大事な区別があります。
この2つは違う値です。しかも、乗数でつながっています。
デフレギャップの分だけ総需要を上に押し上げれば、
交点は乗数倍だけ右に動いて に届く、という関係です。
したがって、**デフレギャップを埋めるのに必要な政府支出は、
国民所得の不足分そのものではなく、その 分の1**で済みます。
④ 起きていること
| 項目 | デフレギャップのとき |
|---|---|
| 経済 | 不景気 |
| 雇用 | 失業が発生 |
| 物価 | デフレ(下落) |
| とるべき裁量的財政政策 | 政府支出(公共投資)の拡大、減税 |
デフレギャップやインフレギャップを解消するためには、
総需要管理政策により需要を調整する必要があります。
デフレギャップの場合は、総需要を増やす方向、
つまり拡張的財政政策や金融緩和を行います。
図でいえば、総需要曲線をギャップの分だけ上方にシフトさせることになります。
具体例
令和2年第5問の設例を解いてみましょう。
問題
下図は45度線図である。 は総需要、 は完全雇用GDP、 は現在の均衡GDPである。
この経済では、完全雇用GDPを実現するための総需要が不足している。
この総需要の不足分は「デフレ・ギャップ」と呼ばれる。
図には、次の点が示されている。
「デフレ・ギャップ」の大きさとして最も適切なものはどれか。
〔解答群〕 ア AE / イ BC / ウ BE / エ CE
解答: イ(BC)
考え方
デフレギャップは、完全雇用国民所得水準における総供給と総需要の差です。
完全雇用GDPは ですから、 の真上で測ります。
差をとると、
他の選択肢がなぜ違うのか
は横の距離、つまり (国民所得の不足分)に相当します。
これはデフレギャップそのものではなく、その乗数倍です。
比べる相手が間違っています。 での総需要は点Cであって点Eではありません。
これは所得の増加によって増えた消費の分にあたり、ギャップではありません。
この問題が教えてくれること
引っかかりやすいのはア(AE)です。
「完全雇用GDPと均衡GDPの差=足りない分」と考えると、 を選びたくなります。
しかしデフレギャップは縦の差であって、横の差ではありません。
同じ横軸の位置()で、縦に2つの値を読んで引き算する、と覚えてください。
数字でも確かめる
同じ設定を数値に置き換えて計算してみましょう。
完全雇用国民所得 、限界消費性向 、
における総需要が650だったとします。
における総供給は そのものなので700です。
必要な政府支出は
このギャップ50を埋めれば、総需要曲線が50だけ上にシフトし、
均衡国民所得は だけ右に動きます。
つまり、政府支出を50増やせば、
均衡国民所得は から250増えて に到達します。
逆算すると、もとの均衡国民所得は だったことになります。
**必要な政府支出はデフレギャップと同額(50)であり、
国民所得の不足分(250)ではない**、という点に注意してください。

デフレギャップとインフレギャップ
試験のポイント
(総供給 < 総需要 の状態です。)
② デフレギャップとの引き算の向きの違い
ここは混乱しやすいので、はっきりさせておきます。
| ギャップ | 式 | 大小関係 |
|---|---|---|
| デフレギャップ | 総供給 − 総需要 | 総供給 > 総需要 |
| インフレギャップ | 総需要 − 総供給 | 総供給 < 総需要 |
どちらも大きいほうから小さいほうを引くので、ギャップの値は正になります。
引き算の向きを覚えるのが面倒なら、
「完全雇用国民所得の位置で、総需要曲線と45度線の縦の差」
と1つだけ覚えておき、あとは図を見てどちらが上かで判断すればかまいません。
③ 45度線図での測り方
手順はデフレギャップとまったく同じです。
1. 横軸で完全雇用国民所得 の位置を見つける
2. そこから真上に垂直線を引く
3. 垂直線が45度線と交わる点(総供給)を見つける
4. 垂直線が総需要曲線と交わる点(総需要)を見つける
5. 2点の縦の差がインフレギャップ
デフレギャップとの違いは、総需要曲線のほうが45度線より上にあることだけです。
図のうえでは、均衡国民所得 が完全雇用国民所得 の右側にあります。
デフレギャップのときは が の左側でした。
④ 「実現しない均衡」であることに注意
インフレギャップのとき、図では が より右にあります。
しかし は完全雇用のもとで実現できる上限ですから、
という国民所得は実際には実現しません。
需要はそこまであるのに、供給が追いつかないのです。
その結果、数量ではなく物価が上がることで調整が起こります。
これが「インフレギャップでは物価上昇が生じやすい」ということの中身です。
(45度線分析は物価を一定と仮定しているモデルなので、
この物価上昇そのものは第9章のAD-AS分析まで扱えません。
ここでは「そうなる」とだけ理解しておけば十分です。)
⑤ 起きていること
| 項目 | インフレギャップのとき |
|---|---|
| 経済 | 好景気 |
| 雇用 | 人手が不足 |
| 物価 | インフレ(上昇) |
| とるべき裁量的財政政策 | 政府支出(公共投資)の縮小、増税 |
インフレギャップの場合は、総需要を減らす方向、
つまり緊縮的財政政策や金融引締めを行います。
図でいえば、総需要曲線をギャップの分だけ下方にシフトさせることになります。
⑥ 2つのギャップの対比
| デフレギャップ | インフレギャップ | |
|---|---|---|
| 需給ギャップの符号 | マイナス | プラス |
| 実際のGDPと潜在GDP | 実際 < 潜在 | 実際 > 潜在 |
| での大小 | 総供給 > 総需要 | 総供給 < 総需要 |
| の位置 | より左 | より右 |
| 経済 | 不景気 | 好景気 |
| 雇用 | 失業が発生 | 人手が不足 |
| 物価 | デフレ(下落) | インフレ(上昇) |
| 設備の稼働 | 低い | 通常の想定以上に高い |
| 政策 | 政府支出の拡大・減税 | 政府支出の縮小・増税 |
この表がそのまま出題されることがあります。
1行ずつ、向きを取り違えないように確認しておいてください。
具体例
インフレギャップを数字で測ってみましょう。
設定
完全雇用国民所得 、限界消費性向 。
総需要関数が だとします。
均衡国民所得を求める
なので、インフレギャップが生じています。
インフレギャップを測る
における値を計算します。
必要な政策の大きさ
総需要を50だけ減らせば、総需要曲線が50下にシフトし、
均衡国民所得は だけ左に動きます。
たしかに完全雇用国民所得に一致します。
したがって、政府支出を50減らす(または相当額の増税を行う)ことで、
インフレギャップは解消されます。
増税で対応する場合
租税乗数は です。
国民所得を250減らすには、
62.5の増税が必要です。
政府支出の削減なら50で済むのに、増税だと62.5必要になります。
乗数が小さいぶん、同じ効果を出すのにより大きな額が要るわけです。
グラフの読み取り問題への応用
令和2年第5問はデフレギャップを問うものでしたが、
インフレギャップ版も同じ構造で出題されえます。
図で点が与えられたら、次の順で機械的に処理してください。
1. 完全雇用GDPの位置を横軸で確認する( や と書かれている)
2. その真上にある点を2つ拾う(45度線上の点と総需要曲線上の点)
3. その2点を結んだ線分が答え
均衡点の高さから引いた線(横の距離)や、
均衡点そのものを含む線分は、どちらのギャップでも答えになりません。
よくある誤り
「インフレギャップがあるということは、国民所得が完全雇用水準を上回っているので、
実際に の水準の生産が行われている」→ 誤り。
は供給能力の上限なので、 は実際には実現しません。
需要が超過したまま、物価の上昇によって調整されます。

デフレギャップとインフレギャップ
試験のポイント
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