消費者行動の分析
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プレミアムで見るこの節では、所得水準の変化が需要量(消費量)に与える効果を学びます。給料が上がったとき、何の消費が増えて、何の消費が減るでしょうか。外食やレジャーは増えそうですが、インスタント麺や発泡酒はむしろ減るかもしれません。所得水準の変化によってどのように需要量が変化するかは財によって異なり、大きく上級財・中立財・下級財に分かれます。その分かれ目を測る物差しが需要の所得弾力性です。さらに上級財は、所得の伸びより消費の伸びが大きい奢侈品と、小さい必需品に分けられます。最後に、所得を動かしたときに最適消費点がたどる所得消費曲線を描き、無差別曲線の図の上でも上級財と下級財を見分けられるようにします。
簡単にいうと
「給料が1%増えたら、この商品の消費は何%増える?」を測る指標だよ。記号はη(エータ)。ギリシャ文字だけど、意味はシンプル!プラスかマイナスかで財の性格が分かれるのがおもしろいところ。
① 需要の所得弾力性の定義
需要の所得弾力性とは、所得が1%変化したときに需要量が何%変化するかを表す指標です。記号には (エータ)を使います。
具体例
問題 ある消費者の所得が月20万円から25万円に増加したとき、外食への支出が月2万円から3万円に増えた。同じ期間に、インスタント食品への支出は月8,000円から6,000円に減った。それぞれの需要の所得弾力性を求め、財の性格を判定せよ。
ステップ1: 所得の変化率を求める
試験のポイント
簡単にいうと
所得弾力性の値で財を分類するよ!所得が増えて消費が増えるのが上級財、減るのが下級財。さらに上級財は奢侈品と必需品に分かれる。この4分類は頻出だから確実に!
① 3つの分類
需要の所得弾力性の値によって、財は次のように分類されます。
| の値 | 分類 | さらに細かく |
|---|---|---|
簡単にいうと
所得だけを変えたときに、最適消費点はどう動く?その軌跡が所得消費曲線だよ。しかも同じ財でも、所得水準によって上級財から下級財に変わることがあるんだ!図から読み取る問題が出るから、軸の見方をしっかり確認しよう。
① 所得消費曲線とは
所得消費曲線(income consumption curve)とは、価格を一定に保った状態で、所得のみ変化させた場合に最適消費点がたどる曲線です。
前節の価格・消費曲線と対になる概念です。動かすものが価格か所得かだけが違います。
| 動かすもの | 一定に保つもの | |
|---|---|---|
| 価格・消費曲線 | ある財の価格 | 所得と他の財の価格 |
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第1章で学んだ供給の価格弾力性と、まったく同じ組み立て方の式です。分子に「結果の変化率」、分母に「原因の変化率」を置く、という形は弾力性に共通しています。
例 とは、所得が1%上昇したときに需要量が2%増加するということです。
② 符号が意味するもの
が正なら所得の上昇に対し需要量は増加し、逆に負なら所得の上昇に対し需要量は減少します。
| の符号 | 所得が増えたとき | 例 |
|---|---|---|
| 正() | 需要量は増える | 外食、旅行、自動車 |
| ゼロ() | 需要量は変わらない | 食塩、常備薬 |
| 負() | 需要量は減る | インスタント麺、発泡酒 |
需要の価格弾力性がほぼ必ず正の値として扱われるのに対し、所得弾力性は負にもなりうるという点が大きな違いです。だからこそ財の分類に使えるわけです。
③ 計算の手順
弾力性の計算は、次の3ステップで機械的に処理できます。
1. 所得の変化率を求める(変化分 ÷ 元の所得)
2. 需要量の変化率を求める(変化分 ÷ 元の需要量)
3. 2つ目を1つ目で割る
分母に置くのは必ず「元の値」です。変化後の値ではありません。
④ 弾力性の値と財の性格
の絶対値の大きさからは、その財が生活の中でどんな位置を占めているかも読み取れます。
診断士の実務でいえば、扱う商品の所得弾力性が高い企業は、景気変動の影響を受けやすいということになります。景気後退局面では売上が大きく落ち込む一方、回復局面では急速に伸びます。事業のリスク特性を考えるうえで使える視点です。
⑤ エンゲル係数との関係
家計に占める食費の割合をエンゲル係数と呼び、所得が高い世帯ほど低くなることが知られています。これは食料品全体の所得弾力性が1より小さいことを意味しています。
所得が2倍になっても食費は2倍にはならない。だから所得に占める割合が下がる、というわけです。次のテーマで扱う「必需品」の典型例が食料品である、という話につながります。
ステップ2: 外食の需要の所得弾力性を求める
需要量の変化率:
(50%の増加)
所得弾力性:
ステップ3: インスタント食品の需要の所得弾力性を求める
需要量の変化率:
(25%の減少)
所得弾力性:
ステップ4: 判定する
| 財 | 判定 | |
|---|---|---|
| 外食 | 2 | 正の値で1以上 → 上級財(しかも奢侈品) |
| インスタント食品 | 負の値 → 下級財 |
外食は所得が1%増えると2%増える、所得の伸び以上に消費が伸びる財です。一方、インスタント食品は所得が増えると消費が減っており、余裕ができたので別のものに置き換えられたことがわかります。
ステップ5: もう1つの式でも検算する
でも計算してみましょう。外食の場合、
同じ値になりました。どちらの式を使っても構いません。
ステップ6: 実務での読み方
この消費者のような行動が世の中全体で起きているとすれば、景気が良くなる局面では外食産業が大きく伸び、インスタント食品市場は縮小することになります。逆に景気が悪化すれば、外食は真っ先に削られ、インスタント食品が売れるようになります。
「不況になると安価な代替品が売れる」という現象は、所得弾力性が負の財が存在することの表れです。
| 上級財 |
| 奢侈品 |
| 上級財 | 必需品 |
| 中立財 | — |
| 下級財 | — |
つまり、以下の基準で分類されることになります。
② 別名を押さえる
上級財、下級財はそれぞれ正常財、劣等財とよばれることもあります。試験ではどちらの言い方も使われるので、同じものを指していると分かるようにしておいてください。
| 主な呼び方 | 別の呼び方 |
|---|---|
| 上級財 | 正常財 |
| 下級財 | 劣等財 |
③ 上級財をさらに分ける
上級財は、需要量の伸びと所得の伸びのどちらが大きいかによって、さらに次のように分類されます。
これは の値で言えば、 なら奢侈品、 なら必需品ということです。
一般に教養、娯楽、レジャーなどが奢侈品にあたり、日用品や水道光熱費が必需品にあたるといわれています。
④ なぜこう呼ぶのか
分類の名前の由来を考えておくと覚えやすくなります。
奢侈品 所得に余裕ができて初めて手を伸ばすもの。だから所得が増えると、所得の伸び以上に消費が増えます。旅行や趣味の支出を思い浮かべてください。所得が2倍になれば旅行の回数は3倍になる、ということがありえます。
必需品 所得が少なくても一定量は必要なもの。だから所得が増えても、それほど消費は伸びません。水道光熱費は所得が2倍になったからといって2倍にはなりません。
下級財 余裕ができたら、もっと良いものに乗り換えたくなるもの。所得が増えると消費が減るのは、上位の財への代替が起きるためです。
⑤ 財の分類は相対的なもの
注意しておきたいのは、どの財がどの分類にあたるかは絶対的に決まっているわけではないということです。
たとえば自動車は、所得の低い時期には奢侈品ですが、所得が十分に高い社会では必需品に近づきます。試験では図や数値から判定させる形で出題されるので、暗記ではなく定義から判断する習慣をつけておきましょう。
⑥ 注意すべき言い換え
正誤問題では次のような入れ替えが狙われます。
「上級財のうち」という前置きを落とすと誤りになる点にも注意してください。奢侈品も必需品も上級財の一種です。
具体例
ある世帯の所得が400万円から500万円に増えたときの、支出項目ごとの変化を分析してみましょう。
ステップ1: データを整理する
所得の変化率は (25%増)です。
| 支出項目 | 変化前 | 変化後 | 需要量の変化率 |
|---|---|---|---|
| 海外旅行 | 10万円 | 20万円 | |
| 外食 | 24万円 | 33万円 | |
| 米・パン | 20万円 | 21万円 | |
ステップ2: 所得弾力性を計算する
| 支出項目 | の計算 | |
|---|---|---|
| 海外旅行 | 4.0 | |
| 外食 |
ステップ3: 分類する
| 支出項目 | 分類 | |
|---|---|---|
| 海外旅行 | 4.0 | 上級財(奢侈品) |
| 外食 | 1.5 | 上級財(奢侈品) |
| 米・パン | 0.2 | 上級財(必需品) |
| 食塩 | 0 | 中立財 |
| 発泡酒 |
ステップ4: エンゲル係数の動きを確かめる
食費(外食 + 米・パン + 食塩)の合計を見てみましょう。

需要の所得弾力性による財の分類
試験のポイント
| 所得 |
| すべての財の価格 |
② 予算線の動き方
価格が一定なので、所得の増加とともに予算制約線は傾き一定のまま外側に平行移動します。所得を と増やしていくと、予算線も3本、平行に並びます。
これに対し最適な消費点も A、B、C と変化していきます。所得消費曲線はこれらの点を結んだ曲線です。
③ 図から上級財と下級財を読み取る
ここが試験で問われるところです。所得消費曲線の形から、各財が上級財か下級財かを判定できます。
判定の手順は単純です。
所得が増えるにつれてヨコ軸の値が大きくなっていれば X 財は上級財、小さくなっていれば下級財です。
④ 同じ財でも所得水準で分類が変わる
興味深いのは、所得消費曲線が途中で折れ返る場合があることです。
たとえば所得消費曲線が、所得 までは右上がりに進み、 を超えると左上がりに向きを変えるとしましょう。このとき X 財の消費量は次のように動きます。
| 所得の範囲 | X 財の消費量 | 判定 |
|---|---|---|
| 以下 | 所得の上昇とともに増加 | X 財は上級財 |
| 以上 | 所得の上昇とともに減少 | X 財は下級財 |
つまり、この消費者にとって X 財は、所得が低い段階では上級財ですが、所得が高くなると下級財に変わります。
具体例で考えてみましょう。所得が低いうちは自転車の購入が増えますが、自動車を買えるほど所得が高くなると自転車の消費はむしろ減ります。前のテーマで「財の分類は相対的」と書いたのは、こういうことです。
⑤ エンゲル曲線
所得消費曲線と関連する概念にエンゲル曲線があります。
エンゲル曲線は、横軸に所得、縦軸にその財の需要量をとったグラフです。所得消費曲線が「2財の消費量の平面」に描かれるのに対し、エンゲル曲線は「所得と1財の消費量の平面」に描かれます。
| 財の分類 | エンゲル曲線の形 |
|---|---|
| 上級財(奢侈品) | 右上がりで、原点から見て上に反る |
| 上級財(必需品) | 右上がりだが、しだいに寝ていく |
| 中立財 | 水平 |
| 下級財 | 右下がり |
エンゲル曲線の傾きが正なら上級財、負なら下級財です。所得消費曲線より直感的に読み取れるので、どちらの図が出てきても対応できるようにしておきましょう。
⑥ 図を読むときの注意点
所得消費曲線の図を読むとき、次の点に注意してください。
斜めに並んだ点を目で追うと錯覚を起こしやすいので、必ず軸に投影して比べる習慣をつけてください。
具体例
問題 下図は、2財モデルにおけるある消費者の予算線 AB と、それに点 E で接している無差別曲線である。ここで、第1財の消費量を 、第2財のそれを とする。この場合、価格が変わらないものとして、所得が 、 と増加したときの予算線と無差別曲線との接点を、それぞれ 、 とする。図では、、、 の順に右下へと並んでいる。第1財および第2財に該当する財を答えよ。
(平成15年度 第16問 改題)
ステップ1: 予算線の動きを確認する
価格が変わらないので、所得の上昇とともに予算線は傾き一定のまま右上に平行シフトします。接点も とシフトしていきます。
ステップ2: 第1財(横軸)の消費量を追う
接点が右へ移動しているので、横軸の値は と大きくなっています。
つまり第1財は所得の上昇に対し、消費量が一貫して上昇しています。よって上級財です。
ステップ3: 第2財(縦軸)の消費量を追う
接点が下へ移動しているので、縦軸の値は と小さくなっています。
つまり第2財は所得の上昇に対し、消費量が一貫して減少しています。よって下級財です。
答え 第1財: 上級財、第2財: 下級財
ステップ4: 数値でイメージをつかむ
具体的な数値を当てはめてみましょう。 円、 円とします。
| 所得 | 支出の確認 | ||
|---|---|---|---|
| 2,000円 | 8 | 6 |
は と増え続けています(上級財)。 は

所得消費曲線とエンゲル曲線
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
| 食塩 |
| 0.5万円 |
| 0.5万円 |
| 発泡酒 | 6万円 | 4.5万円 |
| 1.5 |
| 米・パン | 0.2 |
| 食塩 | 0 |
| 発泡酒 |
| 下級財 |
食費の金額そのものは増えていますが、所得に占める割合は下がっています。エンゲル係数が所得とともに下がる、という経験則が数値で確認できました。
ステップ5: 下級財が生じる理由を考える
発泡酒の支出が減っているのはなぜでしょうか。おそらくビールへの乗り換えが起きているためです。
発泡酒は「ビールが高いから選んでいた」財であり、所得に余裕ができればビールを選ぶようになります。このように、下級財は多くの場合、より高品質な上位財が存在します。
逆に言えば、上位財が存在しない財(食塩のような)は下級財になりにくい、ということでもあります。
| 2,800円 | 16 | 6 |
| 3,600円 | 28 | 4 |
ステップ5: 弾力性でも確認する
第1財について、所得が2,000円から2,800円(40%増)になったときの弾力性を求めてみましょう。
なので、上級財のうち奢侈品にあたります。
第2財について、所得が2,800円から3,600円(約28.6%増)になったときは
負の値なので下級財です。図から読み取った判定と、計算の結果が一致しました。
ステップ6: 判定の手順を固定化する
所得消費曲線の問題は、次の手順で確実に処理できます。
1. 予算線が平行に並んでいることを確認する(所得だけが変化している)
2. 接点から横軸に垂線を下ろし、値が増えているか減っているかを見る → X 財の判定
3. 接点から縦軸に垂線を下ろし、値が増えているか減っているかを見る → Y 財の判定
4. 途中で向きが変わっていれば、所得水準によって分類が変わると答える