貨幣市場とIS-LM分析
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プレミアムで見る生産物市場の需要項目である投資は利子率の影響を受けること、利子率は貨幣市場の均衡によって決定されることを学習しました。また、生産物市場で取引が増加すると、貨幣市場では貨幣の取引需要が増加し、貨幣の調達コストである利子率が上昇します。このように、生産物市場と貨幣市場は密接なかかわりがあります。
IS-LM分析は、この2つの市場を同時に分析します。IS曲線とLM曲線をもとに、生産物市場と貨幣市場を同時に均衡させる国民所得と利子率の決定について考え、財政政策および金融政策の効果(国民所得や利子率に与える影響)を考えます。
ここで登場するクラウディング・アウトは、第7章の45度線分析では見えなかった打ち消し効果です。そして、どちらの政策がよく効くかは曲線の傾きで決まります。令和3年第8問、令和5年第11問、令和6年第11問と、毎年のように問われる山場です。
簡単にいうと
右下がりのIS曲線と右上がりのLM曲線を重ねるだけ。交わったところが、2つの市場が同時に均衡する点だよ!
① 2本の曲線の復習
| 曲線 | 意味 |
|---|---|
| IS曲線 | 生産物市場(財市場)を均衡させる国民所得と利子率の組合せ |
| LM曲線 | 貨幣市場を均衡させる国民所得と利子率の組合せ |
② 均衡の定義
IS-LM分析では、国民所得と利子率は、
生産物市場と貨幣市場を同時に均衡させるように決定されると考えます。
そのように決定される国民所得と利子率をそれぞれ、
均衡国民所得、均衡利子率とよびます。
均衡国民所得
具体例
IS-LM分析の均衡を、計算で求めてみましょう。
設定
| 項目 | 式・数値 |
|---|---|
| 消費関数 | |
| 投資関数 |

IS-LM分析と政策効果
試験のポイント
簡単にいうと
政府がお金を使うと国民所得は増えるけど、金利が上がって民間投資が減っちゃうの。この打ち消しがクラウディング・アウトだよ!
① 財政政策の効果
拡張的な財政政策(政府支出 の増加、減税 )を行うと、IS曲線は右にシフトします。
よって、均衡国民所得は増加し、均衡利子率は上昇します。
緊縮的な財政政策は逆の効果をもたらします。
簡単にいうと
お金を増やせばLM曲線が右へ。金利が下がって投資が増えて、国民所得が増えるよ!財政政策とは金利の向きが逆なのがポイント!
① 金融政策とは
ここでの金融政策は、名目貨幣供給量(マネーサプライ)を操作する政策を指します。
**拡張的な金融政策(貨幣供給量の増加)のねらいは、
利子率を下げて投資(需要)をうながすこと**にあります。
② 効果
LM曲線が右にシフトすることで、国民所得は増加し利子率は低下します。
| 政策 | 結果 |
|---|---|
簡単にいうと
同じ政策でも、曲線の傾きしだいで効き方が変わるの。「相手の曲線が緩やかなら効く」と覚えよう!
① 財政政策の有効性はLM曲線の傾きで決まる
財政政策の効果の大きさは、LM曲線の傾きによって変わります。
傾きが急な(大きい)LM曲線と、傾きが緩やかな(小さい)LM曲線を比べます。
拡張的な財政政策によってIS曲線が から
簡単にいうと
金利がこれ以上下がらない状態では、財政政策だけが効くの。逆にLM曲線が垂直なら、財政政策はまったく効かないよ!
LM曲線の傾きが極端な2つのケースを整理します。
① 流動性のわな(LM曲線が水平)
流動性のわなは貨幣需要の利子率弾力性が無限大の状態です。
貨幣需要の利子率弾力性が大きいほどLM曲線の傾きは緩やかになるため、
流動性のわなの状態では、LM曲線の傾きは水平(極端に緩やか)になります。
(正確には、利子率が最低水準に達した部分だけが水平になり、
そこから上は通常の右上がりになるので、「途中から水平になる線」という形です。)
流動性のわなにおける財政政策と金融政策の効果
| 政策 |
|---|
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右下がりのIS曲線と右上がりのLM曲線の交点Eで決定されます。
③ なぜ交点が均衡なのか
IS曲線上のどの点でも生産物市場は均衡しています。
LM曲線上のどの点でも貨幣市場は均衡しています。
したがって、両方の曲線上にある点=交点でのみ、両方の市場が同時に均衡します。
交点以外の点では、少なくともどちらかの市場が不均衡なので、
調整が働いて交点に向かって動いていきます。
④ 交点が1つに決まる理由
IS曲線は右下がり、LM曲線は右上がりでした。
傾きの符号が逆なので、2本は必ず1点で交わります。
もし両方が右下がりだったら、平行になったり2点で交わったりする可能性がありますが、
そうはならないので、均衡が一意に定まります。
⑤ 計算での求め方
試験で数式が与えられた場合、やることは連立方程式を解くだけです。
手順1: IS曲線の式を立てる(生産物市場の均衡条件から)
手順2: LM曲線の式を立てる(貨幣市場の均衡条件から)
手順3: 2式を連立させて と を求める
第7章で均衡国民所得を求めたときと同じ要領で、変数が1つ増えただけです。
⑥ 分析の目的
IS-LM分析の狙いは、財政政策と金融政策の効果を同じ土俵で比べることにあります。
| 政策 | 動かす曲線 |
|---|---|
| 財政政策(政府支出、租税) | IS曲線 |
| 金融政策(貨幣供給量) | LM曲線 |
どちらか一方の曲線を動かせば交点が動き、
均衡国民所得と均衡利子率がどう変わるかが読み取れます。
次のテーマから、それを1つずつ見ていきます。
| 政府支出 |
| 租税 |
| 貨幣需要 |
| 名目貨幣供給量 |
| 物価水準 |
ステップ1: IS曲線を求める
生産物市場の均衡条件 に代入します。
…… IS曲線
ステップ2: LM曲線を求める
貨幣市場の均衡条件 に代入します。
…… LM曲線
ステップ3: 連立して解く
均衡国民所得は800、均衡利子率は10%です。
検算
IS曲線に代入: ○
生産物市場を確かめると、
○
貨幣市場を確かめると、
両方の市場が均衡しています。
45度線分析との比較
第7章の45度線分析では、投資を利子率と無関係な定数として扱いました。
仮に (利子率5%に対応)だったとすると、
IS-LM分析での800より大きな値です。
45度線分析では利子率が動かないぶん、効果を大きく見積もることになります。
扱う市場を増やすほど、国民所得の推計は控えめになるという、
第7章の冒頭で述べた話がここで確認できます。
解く手順を型にしておく
1. IS曲線: に消費関数と投資関数を代入し、 の形にする
2. LM曲線: に貨幣需要関数を代入し、
3. 連立: 2式を等号で結び、 を求めてから を求める
どちらも の形にそろえておくと、連立が楽になります。
| 政策 | 結果 |
|---|---|
| 拡張的財政政策(政府支出の増加、減税) | 国民所得増加、利子率上昇 |
| 緊縮的財政政策(政府支出の減少、増税) | 国民所得減少、利子率低下 |
図でいえば、IS曲線が右にシフトし、LM曲線との交点が右上に動くので、
国民所得は から へ増加し、利子率は から へ上昇します。
② クラウディング・アウト
ここからが本題です。
貨幣市場を考慮せず、生産物市場だけ見ていたとき(45度線分析)では、
拡張的な財政政策はIS曲線を右にシフトさせ、
乗数効果分だけ国民所得を拡大させました()。
一方、IS-LM分析では、生産物市場と貨幣市場が同時に均衡する
利子率と国民所得の組み合わせを見るため、IS曲線とLM曲線の交点に着目します。
拡張的な財政政策は利子率の上昇()をもたらすため、
投資の抑制を引き起こし、国民所得は までしか増加しないことになります。
このように、**拡張的な財政政策が、利子率を上昇させ、投資の抑制を招き、
国民所得増加の効果が小さくなってしまう現象をクラウディング・アウト**といいます。
crowd out は「押し出す」という意味で、
政府の支出が民間の投資を押しのけてしまうというイメージです。
③ クラウディング・アウトの流れ
この5段階を、そらで言えるようにしておいてください。
選択肢の正誤判定は、この流れのどこかを取り違えさせる形で出題されます。
④ 3つの水準を区別する
この場面を図にすると、3つの国民所得が現れます。
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| もとの均衡国民所得 | |
| IS-LM分析での新しい均衡国民所得 | |
| 生産物市場のみを考慮した場合(45度線分析)の国民所得 |
そして、
図の読み取り問題では、この3つのうちどれを聞かれているかを確認してください。
⑤ なぜ利子率が上がるのか(もう一度)
政府支出が増えて国民所得が増えると、取引が活発になります。
取引には貨幣が必要なので、貨幣の取引需要が増加します。
しかし貨幣供給は中央銀行が決めた量のままで、増えていません。
需要だけが増えたので、貨幣市場は超過需要になります。
貨幣が足りないので、人々は債券を売って現金を得ようとします。
債券が売られれば債券価格が下がり、利子率が上がります。
利子率が上がれば、投資の限界効率が利子率を下回る案件が出てくるので、
民間の設備投資が減ります。
具体例
前のテーマと同じ設定で、財政政策の効果を計算してみましょう。
もとの均衡: 、
(IS曲線: / LM曲線: )
政府支出を20増やす()
新しいIS曲線
もとの より、右に100シフトしました。
(乗数5 × 政府支出20 = 100 です。)
新しい均衡
結果をまとめる
| もとの均衡 | 新しい均衡 | 変化 | |
|---|---|---|---|
| 国民所得 | 800 | 844 | +44 |
| 利子率 | 10.0% | 11.1% | +1.1% |
45度線分析との比較
45度線分析(利子率が動かない場合)なら、乗数効果で+100のはずでした。
しかし実際には+44しか増えていません。
56がクラウディング・アウトによって失われた分です。
投資がどれだけ減ったか確かめる
| 利子率 | 投資 | |
|---|---|---|
| もとの均衡 | 10.0% | 100 |
| 新しい均衡 | 11.1% | 88.9 |
投資が11.1減少しました。
この11.1の減少が乗数5倍で効くので、
たしかに、クラウディング・アウトで失われた56と一致します。
設例(平成25年第7問 d)
問: 次の記述の正誤を判定せよ。
「政府支出の増加によって、貨幣の取引需要が減少し、利子率が上昇することで、
民間投資が抑えられる。」
解答: ×(誤り)
正しくは、政府支出の増加によって、貨幣の取引需要が増加し、
利子率が上昇することで、民間投資が抑えられます。
政府支出が増えて国民所得が増えれば、取引が活発になるので、

クラウディング・アウト

IS-LM分析 財政政策の効果(クラウディング・アウト)
試験のポイント
| 国民所得増加、利子率低下 |
| 緊縮的金融政策(貨幣供給の減少) | 国民所得減少、利子率上昇 |
③ 波及の流れ
第7章で学んだ「利子率↓→投資↑→総需要↑→国民所得↑」が、そのまま現れています。
④ 財政政策との対比
ここが最重要の比較です。
| 財政政策(拡張) | 金融政策(拡張) | |
|---|---|---|
| 動く曲線 | IS曲線が右シフト | LM曲線が右シフト |
| 国民所得 | 増加 | 増加 |
| 利子率 | 上昇 | 低下 |
| 投資 | 減少(クラウディング・アウト) | 増加 |
国民所得はどちらも増えますが、利子率の向きが逆です。
この違いは決定的です。
財政政策は「政府が直接需要をつくる」が「民間投資を押しのける」。
金融政策は「利子率を下げて民間投資を呼び込む」。
経路がまったく違います。
⑤ ポリシー・ミックス
利子率の向きが逆であることを利用すると、
2つの政策を組み合わせて、利子率を変えずに国民所得だけ増やすことができます。
財政政策で上がる分と、金融政策で下がる分を打ち消し合わせるわけです。
この組合せをポリシー・ミックスといいます。
クラウディング・アウトを避けながら財政出動の効果を最大限に出す方法として、
現実の政策論でもよく議論されます。
⑥ 「金融政策で国民所得が増える」は無条件ではない
ここまでの説明は、LM曲線が通常の右上がりであることを前提にしています。
前節で学んだ流動性のわなの状態では、
貨幣供給を増やしても利子率が下がらないので、この経路が働きません。
その場合は金融政策が無効になります。
このケースは、あとのテーマで改めて扱います。
具体例
金融政策の効果を計算してみましょう。
もとの均衡: 、
(IS曲線: / LM曲線: )
買いオペで貨幣供給量を200から240に増やす
新しいLM曲線
もとの より、右に80シフトしました。
新しい均衡
結果をまとめる
| もとの均衡 | 新しい均衡 | 変化 | |
|---|---|---|---|
| 国民所得 | 800 | 844 | +44 |
| 利子率 | 10.00% | 9.11% | −0.89% |
国民所得は増え、利子率は下がりました。
投資がどうなったか
| 利子率 | 投資 | |
|---|---|---|
| もとの均衡 | 10.00% | 100.0 |
| 新しい均衡 | 9.11% | 108.9 |
投資が8.9増加しました。
財政政策のときは投資が11.1減ったのに対し、金融政策では増えています。
利子率の向きが逆だからです。
財政政策と並べて確認する
| 財政政策( を20増) | 金融政策( を40増) | |
|---|---|---|
| 動いた曲線 | IS曲線が右に100 | LM曲線が右に80 |
| 国民所得 | 800 → 844(+44) | 800 → 844(+44) |
| 利子率 | 10.0% → 11.1%(上昇) | 10.0% → 9.11%(低下) |
| 投資 |
たまたま国民所得の増加が同じ44になるように数字を選びましたが、
利子率と投資の向きが正反対であることがはっきり見てとれます。
ポリシー・ミックスを試す
政府支出を20増やすと同時に、貨幣供給量を40増やしたらどうなるでしょうか。
新しいIS曲線:
新しいLM曲線:
| 単独の財政政策 | 単独の金融政策 | 両方 | |
|---|---|---|---|
| 国民所得 | 844 | 844 | 889 |
| 利子率 | 11.1% | 9.11% | 10.22% |
国民所得は両方の効果を足した分だけ増え、利子率の上昇は抑えられました。
これがポリシー・ミックスの狙いです。
選択肢問題での問われ方(令和6年第11問など)
クラウディング・アウトは財政政策のときに生じる現象です。
金融政策では利子率が下がるので、むしろ投資が増えます。
覚え方
「財政は金利を上げ、金融は金利を下げる」
国民所得はどちらも増えるので区別がつきません。
利子率の向きで見分けるのが確実です。

IS-LM分析 金融政策の効果
試験のポイント
**LM曲線の傾きが急なほう(国民所得は へ変化)より、
傾きが緩やかなほう(国民所得は へ変化)が、財政政策の効果は大きい**
ということが確認できます。
| LM曲線の傾き | 財政政策の効果 |
|---|---|
| 緩やか(小さい) | 効果が大きい(国民所得は大きく増加) |
| 急(大きい) | 効果が小さい(国民所得の伸びは小さい) |
② 貨幣需要の利子率弾力性との関係
LM曲線の傾きについては、次の関係が成り立っていました。
これより、次の関係が成り立ちます。
| 貨幣需要の利子率弾力性 | 財政政策の効果 |
|---|---|
| 大 | 効果が大きい |
| 小 | 効果が小さい |
理由: 貨幣需要が利子率によく反応するなら、
政府支出で取引需要が増えても、利子率がわずかに上がるだけで需給が均衡します。
利子率があまり上がらなければ、投資の抑制も小さく、
クラウディング・アウトが弱くなるからです。
③ 金融政策の有効性はIS曲線の傾きで決まる
金融政策の効果の大きさは、IS曲線の傾きによって変わります。
| IS曲線の傾き | 金融政策の効果 |
|---|---|
| 緩やか(小さい) | 効果が大きい |
| 急(大きい) | 効果が小さい |
IS曲線の傾きは、限界消費性向と投資の利子率弾力性で決まりました。
どちらも大きいほどIS曲線が緩やかになります。
| 要因 | 金融政策の効果 |
|---|---|
| 限界消費性向 が大 | 効果が大きい |
| 投資の利子率弾力性が大 | 効果が大きい |
理由: 貨幣供給を増やして利子率が下がったとき、
投資がよく反応するなら(投資の利子率弾力性が大)、投資が大きく増えます。
さらに限界消費性向が大きければ、乗数効果も大きくなります。
どちらも国民所得の増加を大きくします。
④ まとめ
【財政政策】
【金融政策】
⑤ 「相手の曲線」で覚える
覚え方のコツは、その政策が動かさないほうの曲線に注目することです。
| 政策 | 動かす曲線 | 効果を決める曲線 |
|---|---|---|
| 財政政策 | IS曲線 | LM曲線の傾き |
| 金融政策 | LM曲線 | IS曲線の傾き |
そして、どちらも「相手の曲線が緩やかなら効果が大きい」です。
図で考えれば納得できます。
IS曲線を右にシフトさせたとき、相手のLM曲線が水平に近ければ、
交点は横に大きく動きます(国民所得が大きく増える)。
逆にLM曲線が垂直に近ければ、交点はほとんど横に動きません。
LM曲線を右にシフトさせるときも同じで、
相手のIS曲線が水平に近いほど交点が横に大きく動きます。
⑥ 問題を解くときの処理手順
結論を暗記するのではなく、次の手順で判断できるようにしておくのが望ましいところです。
たとえば「投資の利子率弾力性が大きい場合には、金融政策の効果は大きくなる」
という選択肢の正誤判定を求められたとします。
1. 投資の利子率弾力性が大きい場合には、IS曲線の傾きは緩やかになる
2. **通常のIS曲線とLM曲線を描き、当初の均衡点を基軸に、
傾きが緩やかなIS曲線(極端なもの=水平にすると判断しやすい)を描く**
3. LM曲線を右にシフトさせる(金融政策なので)
4. **IS曲線の傾きが通常の場合と緩やかな場合の均衡点の変化から、
国民所得の増加の程度を確認する**
傾きが通常の場合は から まで、緩やかな場合は から まで増加するので、
投資の利子率弾力性が大きい場合には金融政策の効果が大きくなることが確認できます。
極端な形(水平・垂直)を描いてみると判断しやすくなる、というのが実戦的なコツです。
具体例
曲線の傾きによる効き方の違いを、数値で確かめましょう。
共通の設定: IS曲線 、政府支出を20増やして
IS曲線が に右シフトするとします。
ケースA: LM曲線が緩やか()
変更前: → 、
変更後: → 、
国民所得の増加: +44
ケースB: LM曲線が急()
(傾きが急、つまり同じ利子率の変化で国民所得があまり動かない。)
変更前: → 、
変更後: → 、
国民所得の増加: +17
比べると
| LM曲線 | 財政政策の効果 | |
|---|---|---|
| ケースA | 緩やか | +44 |
| ケースB | 急 | +17 |
LM曲線が緩やかなほうが、財政政策の効果が大きいことが数字で確認できました。
利子率の上昇を比べる
| 利子率の上昇 | |
|---|---|
| ケースA(緩やか) | 10.0% → 11.1%(+1.1%) |
| ケースB(急) | 10.0% → 11.67%(+1.67%) |
LM曲線が急なケースBのほうが、利子率が大きく上がっています。
利子率が大きく上がれば投資の抑制も大きくなり、
クラウディング・アウトが強く働くわけです。
金融政策の側も確かめる
LM曲線 を
| IS曲線 | 金融政策の効果 | |
|---|---|---|
| ケースC | 緩やか | +44 |
| ケースD | 急 | +16 |
IS曲線が緩やかなほうが、金融政策の効果が大きいことも確認できました。
「極端な形で考える」テクニックを使ってみる
「貨幣需要の利子率弾力性が大きい場合、財政政策の効果は大きい」を確かめるとします。
弾力性が無限大なら、LM曲線は水平です。
水平なLM曲線にIS曲線の右シフトを重ねると、
利子率がまったく上がらず、交点は横に最大限動きます。
つまり効果が最大です。したがって「効果は大きい」は正しい、と判断できます。
この方法の利点
中間的な傾きで考えると、どちらが大きいか図から読み取りにくくなります。
水平か垂直かという極端な形にしてしまえば、結論が一目瞭然です。
試験中は迷っている時間がないので、この方法を身につけておくと確実です。
まとめて覚える
| 大きくなる要因 | 財政政策 | 金融政策 |
|---|---|---|
| 貨幣需要の利子率弾力性が大 | 効果大 | 効果小 |
| 投資の利子率弾力性が大 | 効果小 | 効果大 |
| 限界消費性向 が大 | (効果大) | 効果大 |
「相手の曲線が緩やかなら効く」。この1文で全部導けます。

財政政策と金融政策の比較

LM曲線の傾きと財政政策の効果
試験のポイント
| 利子率 |
|---|
| 拡張的財政政策 | 増加 | 不変 |
| 拡張的金融政策 | 不変 | 不変 |
財政政策が有効な理由: 流動性のわなが生じている場合、
財政政策はクラウディングアウトが生じず、有効です。
IS曲線を右にシフトさせても利子率が上がらないので、
民間投資が抑制されません。乗数効果が満額で出ます。
金融政策が無効な理由: 一方、金融政策は利子率にも国民所得にも影響を与えません。
流動性のわなの状態では利子率がすでに最低水準であるため、
貨幣供給量を増加させてもそれ以上利子率は下がらず、投資は増加しません。
図でいえば、LM曲線の水平な部分でIS曲線と交わっている状態なので、
LM曲線を右にシフトさせても交点が動かないのです。
② 古典派のケース(LM曲線が垂直)
貨幣需要の利子率弾力性がゼロの場合です。
貨幣は取引のためだけに持たれ、利子率にまったく反応しない、という想定です。
このときLM曲線は垂直になります。
| 政策 | 国民所得 | 利子率 |
|---|---|---|
| 拡張的財政政策 | 不変 | 上昇 |
| 拡張的金融政策 | 増加 | 低下 |
財政政策が無効な理由: LM曲線が垂直なので、
IS曲線を右にシフトさせても交点の国民所得は変わりません。
利子率だけが上がり、その分だけ民間投資が完全に押し出されます。
これを完全なクラウディング・アウトといいます。
金融政策が有効な理由: LM曲線を右にシフトさせれば、
交点の国民所得がそのまま右に動きます。効果が満額で出ます。
③ 2つのケースの対比
| 流動性のわな | 古典派のケース | |
|---|---|---|
| 貨幣需要の利子率弾力性 | 無限大 | ゼロ |
| LM曲線の形 | 水平 | 垂直 |
| 財政政策 | 有効(クラウディング・アウトなし) | 無効(完全なクラウディング・アウト) |
| 金融政策 | 無効 | 有効 |
きれいに正反対になっています。
④ 政策の効果(まとめ)
第8章の締めくくりとして、政策の効果を整理しておきます。
【財政政策】
【金融政策】
【流動性のわなの状態】
この4行が、第8章の結論です。
⑤ 現実への当てはめ
長期にわたる低金利のもとにあった日本は、流動性のわなに近い状態だったといわれます。
政策金利をゼロ近くまで下げても景気が回復せず、
量的緩和でマネタリーベースを大量に供給しても物価も所得もあまり動かない。
このとき「金融政策は限界なので財政出動が必要だ」と主張されたのは、
まさにこの結論を根拠にしています。
理論が現実の政策論とどうつながっているかを知っておくと、
選択肢を読むときの判断が速くなります。
具体例
流動性のわなの状態を、図の動きで追ってみましょう。
設定: 利子率の下限が で、LM曲線がその高さで水平になっているとします。
IS曲線は、その水平な部分と交わっています。
ケース1: 政府支出を増やす(拡張的財政政策)
IS曲線が から へ右にシフトします。
新しい交点は、LM曲線の水平な部分の上にあります。
つまり、利子率は のまま変わりません。
利子率が変わらないので、民間投資も変わりません。
クラウディング・アウトが生じないので、
国民所得は乗数効果の満額だけ増えます()。
結論: 国民所得は増加、利子率は不変。財政政策は有効。
ケース2: 貨幣供給量を増やす(拡張的金融政策)
LM曲線が から へ右にシフトします。
ところが、IS曲線と交わっているのは水平な部分です。
水平な部分が右に伸びても、IS曲線との交点はまったく動きません。
結論: 国民所得は不変、利子率も不変。金融政策は無効。
設例(平成24年第9問 オ)
問: 次の記述の正誤を判定せよ。
「流動性のわなが存在する場合、貨幣需要の利子率弾力性がゼロとなり、
LM曲線は水平になる。」
解答: ×(誤り)
流動性のわなが存在する場合、貨幣需要の利子率弾力性は無限大となり、
LM曲線は水平になります。
「LM曲線は水平になる」という後半は正しいのですが、
「弾力性がゼロ」が誤りです。無限大が正解です。
弾力性ゼロなら垂直、無限大なら水平。
この対応を取り違えさせる、典型的な引っかけです。
古典派のケースも確かめる
LM曲線が の垂直線だとします(利子率がいくらでも国民所得は800)。
政府支出を増やす
IS曲線が右にシフトしても、LM曲線が垂直なので、
交点の国民所得は800のままです。利子率だけが上がります。
政府支出が増えた分と同じだけ民間投資が減り、完全に相殺されました。
完全なクラウディング・アウトです。
貨幣供給量を増やす
LM曲線が に右シフトすれば、交点の国民所得は900になります。
利子率も下がります。金融政策は完全に有効です。
4つの組合せをまとめて確認
| ケース | LM曲線 | 財政政策 | 金融政策 |
|---|---|---|---|
| 通常 | 右上がり | 有効(一部クラウディング・アウト) | 有効 |
| 流動性のわな | 水平 | 完全に有効 | 無効 |
| 古典派のケース | 垂直 | 無効 | 完全に有効 |
覚え方
LM曲線の形を思い浮かべて、IS曲線を右にずらしたとき交点が横に動くかどうか
を確かめるだけです。
LM曲線を右にずらしたとき交点が動くかどうかも同じ要領です。
結論を4つ覚えるより、図を1枚描いて確かめるほうが確実です。

IS-LM分析の特殊ケース(財政政策と金融政策の効き方)
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
ここが引っかかりやすい理由
「利子率が上昇する」という結論は正しいので、うっかり○としてしまいがちです。
しかし、そこに至る途中の「取引需要が減少し」が誤りです。
結論だけでなく、途中の流れまで確認することが必要です。
だからこそ、5段階の流れをそらで言えるようにしておく価値があります。
取引需要 貨幣市場は超過需要 の抑制
この一続きのどこかが変わっていないか、1つずつ照合すれば確実です。
| 100 → 108.9(増加) |
ケースC: IS曲線が緩やか()
変更前: 、
変更後: → 、
国民所得の増加: +44
ケースD: IS曲線が急()
変更前: → 、
変更後: → 、
国民所得の増加: +16