不完全競争
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プレミアムで見る独占と完全競争の中間的な競争モデルとして、独占的競争があります。独占的競争市場とは、「各企業の製品がブランド品のように少しずつ差別化されているので、各企業が自分の製品に対してある程度の独占力を発揮できる市場」です。街のラーメン店やカフェ、美容室。多数の店が競い合いながら、それぞれが自分の店の味や雰囲気について小さな独占をもっている。そんな市場を思い浮かべてください。独占的競争市場を考えるにあたっては、短期での均衡状態と長期での均衡状態のそれぞれについて考える必要があります。短期には利潤が出ますが、参入が自由なので長期には利潤がゼロになる。この「短期と長期の違い」がこの節の主題です。
簡単にいうと
同じようなものなのに「違うもの」と思ってもらえる。それが製品差別化!差別化できれば、多数の企業がいる市場でも自分の商品の値段を決められるようになるんだ。企業経営理論の差別化戦略と、まったく同じ話だよ。
① 製品差別化とは
製品差別化 → 各企業の製品が、同じような性質、用途をもっている(密接な代替財)のだが、異なったものと消費者に認識されているような状態
定義のなかで大切なのは、「実際に違うかどうか」ではなく「消費者にそう認識されているかどうか」という点です。
このような製品差別化は、機能、デザイン、販売方法のわずかな差、あるいは商標、ブランドイメージといったものによって生み出されていることが多いものです。
② 差別化の手段
| 手段 | 例 |
|---|---|
| 機能 | 少しだけ性能が高い、使い勝手がよい |
| デザイン | 見た目や色の違い |
| 販売方法 | 立地、接客、アフターサービス |
| 商標・ブランド | ブランドイメージ、広告 |
物理的にはほとんど同じ商品でも、ブランドや店の雰囲気によって「別のもの」と認識されれば、それは差別化されたことになります。
具体例
身近な例で、製品差別化と価格支配力の関係を確かめてみましょう。
ケース1: 差別化されていない場合(完全競争に近い)
農産物の直売所で、同じ品種・同じ等級のトマトが並んでいるとします。
ここでA農家が320円に値上げしたらどうなるでしょうか。見た目も味も同じなら、客は全員B農家のトマトを買います。A農家の売上はゼロです。
需要曲線が水平、つまり価格支配力がゼロの状態です。
ケース2: 差別化されている場合(独占的競争)
街のラーメン店を考えます。
A店が900円に値上げしたらどうなるでしょうか。「あの濃厚な味が好きだ」という客の一部は残ります。もちろん一部は離れますが、全員が離れるわけではありません。
需要曲線が右下がり、つまり価格支配力をもっている状態です。
ステップ: 数値で確かめる
A店の需要が次のようだとします。
試験のポイント
簡単にいうと
独占的競争は「完全競争と独占のいいとこ取り」みたいなモデル。企業数は多数(完全競争と同じ)、でも価格支配力はある(独占と同じ)。そして参入・退出は自由。この3点セットを押さえよう!
① 独占的競争の3つの条件
独占的競争とは、以下のような競争モデルをいいます。
1)企業は多数存在し、各企業のシェアは小さい。
→ 完全競争市場と同様の特徴です。また、寡占市場とは異なり、各企業は他の企業との相互依存関係を考慮せず行動します。
2)各企業の製品は差別化されており(代替的ではあるが同質的ではない)、各企業は自社製品に対し、価格支配力をもつ。
→ 各企業は自社の製品に対しては、独占企業と同じ行動をとります(利潤最大化条件は独占企業と同様)。
3)長期的には、市場への参入・退出が自由である。
→ 長期的には、正の利潤が見込める場合には参入し、損失を被る場合には退出します。
簡単にいうと
短期の分析は独占市場とまったく同じ!MR = MC で生産量を決めて、需要曲線から価格を読む。そして価格が平均費用を上回っていれば利潤が出る。この利潤が、長期に何を引き起こすかが次のテーマだよ。
① 短期均衡の決まり方
短期の独占的競争均衡を考えます。 はこの個別企業の製品に対する需要曲線です。
各企業は自社の製品に対し、独占企業と同じような利潤最大化行動をとるので、限界収入
簡単にいうと
参入が自由だから、儲かっているとみんな入ってくる。その結果、1社あたりの需要が減って、最後は利潤ゼロに!図では「需要曲線と平均費用曲線が接する」という形になる。ここが結論だよ!
① 参入が起きる
超過利潤(独占利潤)が生じているような状況では、それを狙って新規に企業が参入し、密接な代替財を供給することになるため、結局、長期の均衡では超過利潤は生じなくなります。
第3の条件「長期的には、市場への参入・退出が自由である」が効いてくる場面です。
② 需要曲線が左方にシフトする
新たな企業が参入し、密接な代替財を供給するようになると差別化の程度が小さくなり、この企業の財への需要は減少し、(この企業の)需要曲線が左方向へシフトします。
※同じ価格でも需要量が減少するので、需要曲線は左方向にシフトします。
具体的には、価格
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③ 製品差別化と価格支配力
たとえ市場に参入している企業の数が多数であっても、製品が差別化されているような状況では、各企業は自社の製品に価格支配力をもつことになります。
ここが独占的競争市場の要点です。
完全競争市場では、財が同質なので少しでも値上げすれば客はゼロになりました(需要曲線が水平)。しかし製品が差別化されていれば、値上げしても「あの店の商品がいい」という客は残ります。だから需要曲線は右下がりになり、価格を自分で決められるのです。
④ 需要曲線が右下がりになる理由
独占的競争企業が直面する需要曲線が右下がりになるのは、次の理由によります。
ただし、独占企業の需要曲線ほど急ではありません。密接な代替財がたくさんあるので、値上げすればかなりの客が他社へ流れるためです。つまり独占よりは弾力的、完全競争よりは非弾力的な需要曲線に直面します。
| 市場 | 需要曲線の傾き | 弾力性 |
|---|---|---|
| 完全競争 | 水平 | 無限大 |
| 独占的競争 | 緩やかな右下がり | 大きい |
| 独占 | 急な右下がり | 小さい |
⑤ 企業経営理論との接続
製品差別化は、企業経営理論で学ぶ差別化戦略そのものです。
ポーターの競争戦略でいえば、コストリーダーシップ戦略が「同質財で価格勝負」、差別化戦略が「独占的競争の世界へ移る」という位置づけになります。
中小企業が大企業と価格で戦っても勝ち目は薄いのが普通です。そこで差別化によって自社の商品に価格支配力をもたせる。診断士として助言する内容が、経済学の枠組みできちんと説明できる、というわけです。
⑥ 差別化のコスト
ただし、差別化にはコストがかかります。広告宣伝費、デザイン費用、品質向上のための投資などです。
これらは多くの場合、生産量に関係なく発生する固定費用の性質をもちます。そのため、差別化を進めるほど平均費用曲線が上方にシフトします。
差別化によって価格を高くできても、それ以上に費用がかさめば利潤は増えません。このバランスが、第4テーマで扱う長期均衡の議論につながります。
| 1日の来客数 |
|---|
| 800円 | 120人 |
| 850円 | 100人 |
| 900円 | 80人 |
| 950円 | 60人 |
値上げすると客は減りますが、ゼロにはなりません。これが差別化の効果です。
売上を計算してみましょう。
| 価格 | 来客数 | 売上 |
|---|---|---|
| 800円 | 120人 | 96,000円 |
| 850円 | 100人 | 85,000円 |
| 900円 | 80人 | 72,000円 |
この範囲では値下げしたほうが売上は増えます。ただし利益は原価しだいなので、1杯あたりの原価を400円とすると
| 価格 | 来客数 | 粗利 |
|---|---|---|
| 800円 | 120人 | 円 |
| 850円 | 100人 | 円 |
| 900円 | 80人 | 円 |
こちらも800円が最も高くなりました。価格支配力があっても、いくらでも高くできるわけではありません。 となる水準が最適になります。
ステップ: 差別化を強めた場合
A店が内装を改装し、食材の質を上げて、独自性を打ち出したとしましょう。需要は次のように変わったとします。
| 価格 | 来客数(差別化前) | 来客数(差別化後) |
|---|---|---|
| 800円 | 120人 | 130人 |
| 900円 | 80人 | 110人 |
| 1,000円 | 40人 | 90人 |
差別化後は、値上げしても客があまり減らなくなりました。需要曲線が急になった、つまり弾力性が下がったわけです。
第2節で学んだラーナーの独占度を思い出してください。弾力性が下がれば独占度が上がり、より高い価格をつけられるようになります。
ただし、改装や食材の質向上には費用がかかります。その費用を上回る利益が得られるかどうかが、差別化戦略の成否を分けます。
ステップ: 完全競争・独占・独占的競争を並べる
| 売り手の数 | 需要曲線 | 価格支配力 | |
|---|---|---|---|
| 完全競争(直売所のトマト) | 多数 | 水平 | なし |
| 独占的競争(ラーメン店) | 多数 | 緩やかな右下がり | あり(弱い) |
| 独占(地域の水道) | 1社 | 急な右下がり | あり(強い) |
独占的競争は「売り手の数は完全競争と同じく多数だが、需要曲線は独占と同じく右下がり」という、両者の中間に位置する市場だとわかります。
② 3つの条件の由来を整理する
| 条件 | どの市場と同じか |
|---|---|
| 1)企業が多数、相互依存関係を考慮しない | 完全競争と同じ |
| 2)価格支配力をもち、 で行動 | 独占と同じ |
| 3)参入・退出が自由 | 完全競争と同じ |
つまり独占的競争は、「行動のしかたは独占、市場の構造は完全競争」という組合せになっています。この対応を押さえておくと、性質を暗記しなくても導けます。
③ 寡占市場との違い
独占的競争市場と寡占市場は、どちらも「不完全競争」であり価格支配力をもつ点で似ています。しかし決定的な違いがあります。
| 独占的競争 | 寡占 | |
|---|---|---|
| 企業数 | 多数 | 少数 |
| 相互依存関係 | 考慮しない | 考慮する |
| ゲーム理論 | 使わない | 使う |
| 参入・退出 | 自由 | 障壁あり |
企業数が多いので、1社が値下げしても他社への影響は小さく、他社が対抗してくることもありません。だから相手の出方を読む必要がなく、ゲーム理論が要らないわけです。
「独占的競争市場ではライバルの反応を考慮する」という記述は誤りになります。ここは頻出のひっかけです。
④ 利潤最大化条件
各企業は自社の製品に対して独占企業と同じ行動をとるので、利潤最大化条件も独占企業と同じです。
そして価格は、その生産量に対応する需要曲線の高さから読みます。第2節で学んだ手順がそのまま使えます。
限界収入曲線についても、独占企業と同様、①需要曲線と同じ切片を持ち、②傾きが2倍の直線になります。
⑤ 短期と長期を分けて考える
独占的競争市場を考えるにあたっては、短期での均衡状態と長期での均衡状態のそれぞれについて考える必要があります。
| 短期 | 長期 | |
|---|---|---|
| 参入・退出 | 起きない | 起きる |
| 利潤 | 正にも負にもなる | ゼロになる |
| 分析の焦点 | で生産量と価格を決める | 参入・退出による需要曲線のシフト |
短期の分析は独占企業とまったく同じです。違いが出るのは長期で、参入・退出が自由であるという条件が効いてきます。
⑥ この節の見通し
次のテーマ以降で、次の流れを追っていきます。
1. 短期均衡: で生産量が決まり、価格が平均費用を上回れば利潤が発生する
2. 参入: 利潤の存在を見て新規企業が参入する
3. 需要曲線の左方シフト: 代替財が増えるので、1社あたりの需要が減る
4. 長期均衡: 利潤がゼロになるまで参入が続き、需要曲線と平均費用曲線が接する状態になる
この4段階が、この節のすべてです。
具体例
美容室市場を例に、独占的競争の3条件を確かめてみましょう。
条件1: 企業は多数存在し、各企業のシェアは小さい
ある都市に美容室が500店あるとします。1店あたりのシェアは平均0.2%です。
寡占市場(たとえば3社しかない市場)であれば、1社の値下げは他社に大きな影響を与えるので、必ず対抗されます。企業数の違いが、この差を生んでいます。
条件2: 製品は差別化されており、価格支配力をもつ
各美容室は、立地、技術、内装、接客、使用する薬剤などで差別化されています。
料金が違っても、両店とも客がいます。同質財であればこんなことは起こりません。つまり各店は自分の店のサービスについて価格支配力をもっています。
条件3: 長期的には参入・退出が自由
美容室の開業には資格と設備が必要ですが、参入障壁としては高くありません。儲かっていれば新規開業が増え、赤字が続けば閉店します。
電力事業や鉄道事業のような巨額の設備投資や免許が必要な業種と比べれば、はるかに自由です。
ステップ: 3条件がそろっていることを確認する
| 条件 | 美容室市場 | 判定 |
|---|---|---|
| 企業が多数、相互依存関係を考慮しない | 500店、他店の動向を逐一追わない | ○ |
| 製品が差別化され、価格支配力をもつ | 料金に差があり、それぞれ客がいる | ○ |
| 参入・退出が自由 | 開業・閉店が比較的容易 | ○ |
3条件がすべて満たされているので、独占的競争市場だと判定できます。
ステップ: 他の市場と比べる
| 市場 | 企業数 | 差別化 | 参入障壁 | 分類 |
|---|---|---|---|---|
| 美容室 | 多数 | あり | 低い | 独占的競争 |
| 携帯通信 | 少数 | あり | 高い | 寡占 |
| 地域の水道 | 1社 | — | 極めて高い | 独占 |
ステップ: 相互依存関係の有無を確かめる
寡占市場と独占的競争市場の違いを、具体的に見てみましょう。
携帯通信(寡占)
美容室(独占的競争)
この違いが「相互依存関係を考慮するかどうか」の中身です。
ステップ: 利潤最大化の計算は独占と同じ
A店の需要曲線が (
試験のポイント
② 利潤が発生する
この均衡では、価格が平均費用 を上回っているので、利潤が発生します。
利潤は次の長方形の面積で表されます。
この利潤の存在により、長期には新たな企業が参入してきます。 ここが次のテーマへの橋渡しになります。
③ 図に登場する要素
短期均衡の図には、次の4本の線が描かれます。
| 線 | 内容 |
|---|---|
| 個別企業の製品に対する需要曲線(右下がり) | |
| 限界収入曲線( と同じ切片、傾き2倍) | |
| 限界費用曲線(U字型の右上がり部分) | |
| 平均費用曲線(U字型) |
第1章で学んだ と の関係( 曲線は 曲線の最小点を通る)も、そのまま成り立っています。
④ 面積の読み取り方
| 領域 | 内容 |
|---|---|
| の長方形 | 総収入 |
| の長方形 | 総費用 |
| の長方形 | 利潤 |
第1章第3節や第4章第2節で使った「縦が1単位あたりの金額、横が数量、面積が総額」という読み方がそのまま使えます。
⑤ 需要曲線についての注意
市場全体ではなく1企業が直面する需要曲線であることに注意します。
この需要曲線が右下がりになる理由は、前のテーマで確認したとおりです。
⑥ 限界収入曲線について
独占企業と同様、限界収入曲線は、①需要曲線と同じ切片を持ち、②傾きが2倍の直線になります。
第2節で学んだルールがそのまま適用できます。独占的競争企業は「自社製品については独占企業と同じ」なので、当然の帰結です。
⑦ 短期に損失が出る場合
ここまでは利潤が出ている場合を見てきましたが、短期には損失が出ることもあります。価格が平均費用を下回る場合です。
| 状況 | 短期の結果 | 長期に起きること |
|---|---|---|
| 利潤が発生 | 新規参入が起こる | |
| 利潤ゼロ | 参入も退出も起きない(長期均衡) | |
| 損失が発生 | 退出が起こる |
どちらの方向からでも、長期には利潤ゼロの状態に向かいます。次のテーマではその過程を追います。
⑧ 独占市場との違いはどこにあるのか
短期の分析だけを見ると、独占市場と独占的競争市場はまったく同じに見えます。実際、手順も図もほぼ同じです。
違いが出るのは長期です。
| 独占市場 | 独占的競争市場 | |
|---|---|---|
| 参入障壁 | 高い | 低い(参入自由) |
| 長期の利潤 | 正のまま残りうる | ゼロになる |
独占企業が長期にわたって高い利潤を得続けられるのは、参入障壁があるからでした。独占的競争市場には障壁がないので、利潤は参入によって消えてしまいます。
具体例
短期均衡を数値で求めてみましょう。
設定 ある独占的競争企業について、自社製品への需要曲線が 、費用関数が とします。
ステップ1: 限界収入を求める
需要曲線と同じ切片、傾き2倍です。
ステップ2: 限界費用を求める
ステップ3: 利潤最大化条件を解く
ステップ4: 価格を求める
需要曲線に代入します。
ステップ5: 平均費用を求める
ステップ6: 利潤を求める
価格600が平均費用300を上回っているので、60,000の利潤が発生しています。
ステップ7: 図の上での位置関係を確認する
| 項目 | 値 | 図での位置 |
|---|---|---|
| 生産量 | 200 | と の交点の横軸の値 |
ステップ8: 検算する
収入と費用から直接求めても確かめられます。

独占的競争の短期均衡と長期均衡
試験のポイント
③ なぜ需要が減るのか
参入した企業は、既存企業の製品と密接な代替財を供給します。客から見れば「似たような選択肢」が増えるわけです。
美容室が増えれば1店あたりの客が減る、というごく素直な話です。
④ 長期均衡の条件
新規参入はこの企業の利潤がゼロ(価格 = 平均費用 )になるまで続くので、長期の均衡では、需要曲線 と平均費用曲線 が接するような状態が実現します。
式による証明は割愛しますが、長期均衡では、限界収入 = 限界費用という利潤最大化条件だけでなく、価格 = 平均費用という利潤がゼロになる条件も成り立っています。
長期の独占的競争均衡
⑤ なぜ「接する」のか
「交わる」ではなく「接する」という点が重要です。理由を考えておきましょう。
もし需要曲線が 曲線と交わっていれば、その間の区間では となり、利潤が出る生産量が存在します。利潤が出るなら、まだ参入が続きます。
もし需要曲線が 曲線より完全に下にあれば、どの生産量でも損失が出るので、退出が起こります。
参入も退出も止まるのは、ちょうど1点だけで触れている状態、つまり接している状態です。そこでは利潤が出る生産量が1つもなく、しかも最大でゼロにはできる、という状況になっています。
⑥ 長期均衡の特徴
長期均衡には、完全競争市場の長期均衡と比べたときに次のような特徴があります。
| 完全競争の長期均衡 | 独占的競争の長期均衡 | |
|---|---|---|
| 利潤 | ゼロ | ゼロ |
| と | ||
| の位置 | 最小点 | 最小点より左 |
| と |
完全競争では需要曲線が水平なので、 曲線と接するのはちょうど最小点になります。しかし独占的競争では需要曲線が右下がりなので、接点は の最小点より左にずれます。
この「 の最小点より左で生産している」という状態を過剰設備(超過設備能力)と呼びます。もっとつくれば1個あたりの費用は下がるのに、そこまでつくっていない、という状態です。
⑦ 過剰設備をどう評価するか
過剰設備は、費用の観点からは非効率です。同じ商品を、もっと少ない平均費用で供給できるはずだからです。
しかしその一方で、消費者は多様な商品から選べるという便益を得ています。街に1種類のラーメンしかない世界より、多様な店がある世界のほうが望ましい、という見方もできます。
効率性と多様性のトレードオフが、独占的競争市場の特徴だといえます。試験では過剰設備という結論を押さえておけば十分ですが、背景を知っておくと理解が深まります。
⑧ 長期均衡に至る流れのまとめ
| 段階 | 起きること |
|---|---|
| ① 短期均衡 | で生産量が決まり、 なので利潤が発生 |
| ② 参入 | 利潤を狙って新規企業が参入し、密接な代替財を供給 |
| ③ 需要曲線の左方シフト | 1社あたりの需要が減少 |
| ④ 長期均衡 | 利潤がゼロになるまで続き、 と が接する状態に |
損失が出ている場合は、②が「退出」、③が「需要曲線の右方シフト」に変わるだけで、行き着く先は同じです。
具体例
問題 次の記述の正誤を判定せよ。
「短期均衡において企業の利潤が黒字であるために、新たな企業の参入が生じ、1社当たりの需要が減少して需要曲線が左方にシフトする。」
(平成22年度 第12問 c)
ステップ1: 短期均衡での利潤を確認する
短期均衡では となる生産量が選ばれ、価格が平均費用を上回っていれば利潤(黒字)が発生します。
ステップ2: 参入が起きるかを確認する
独占的競争市場では、長期的に市場への参入・退出が自由です。正の利潤が見込めるなら、新規企業が参入してきます。
ステップ3: 需要曲線がどう動くかを確認する
新規参入企業は密接な代替財を供給します。その結果
答え ○(正しい)
ステップ4: 数値で長期均衡を求める
前のテーマの設定(需要曲線 、費用関数 )で、長期均衡がどうなるか考えてみましょう。
短期均衡では 、、
参入によって需要曲線が左にシフトします。需要曲線を とし、長期均衡の条件を満たす を求めます。
条件1:
条件2:
、
ステップ5: 連立して解く
条件1より です。これを条件2に代入します。
したがって です。
ステップ6: 長期均衡の値を確認する
となり、利潤はゼロです。
ステップ7: 短期と長期を比べる
| 短期均衡 | 長期均衡 | |
|---|---|---|
| 需要曲線の切片 | 1,000 | 600(左方シフト) |
| 生産量 | 200 | 100 |
| 価格 | 600 | 400 |
| 平均費用 | 300 | 400 |
| 利潤 | 60,000 | 0 |
参入によって需要曲線が左へ動き、生産量も価格も下がり、平均費用は上がって、最終的に利潤がゼロになりました。
ステップ8: であることを確認する
長期均衡でも です。完全競争の長期均衡なら

独占的競争の長期均衡
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
| 為替市場の個人取引 |
| 極めて多数 |
| なし |
| 低い |
| 完全競争に近い |
価格は 円です。
手順は第2節の独占市場とまったく同じでした。独占的競争企業は「自社製品については独占企業と同じ行動をとる」という条件が、そのまま計算に表れています。
| 価格 |
| 600 |
| における需要曲線の高さ |
| 平均費用 | 300 | における 曲線の高さ |
| 1単位あたり利潤 | 300 | (縦の差) |
| 総利潤 | 60,000 | 縦300 × 横200 の長方形 |
一致しました。
ステップ9: 損失が出る場合も見ておく
固定費用が20,000ではなく80,000だったとしましょう。
このとき なので、利潤はちょうどゼロです。
固定費用がさらに大きく100,000なら
損失が発生します。この場合は長期に退出が起こります。
ステップ10: 長期に何が起きるかを予告する
最初の設定(利潤60,000)に戻りましょう。
この利潤を見た他の企業が参入してきます。すると密接な代替財が増えるため、この企業の製品への需要が減ります。つまり需要曲線が左方にシフトします。
需要曲線が左へ動けば、 曲線も左へ動き、生産量も価格も下がります。同時に、需要曲線と 曲線の位置関係も変わり、利潤は縮小していきます。
これが利潤ゼロになるまで続く、というのが次のテーマの内容です。
価格支配力をもっているので、価格は限界費用より高いままです。利潤がゼロになるのは、平均費用が高くなるからであって、価格が限界費用まで下がるからではありません。
ステップ9: 過剰設備を確認する
平均費用曲線 は が大きくなるほど下がり続けます(この設定では最小点がありません)。
より現実的な費用関数、たとえば が U字型になる場合を考えると、長期均衡の生産量は の最小点より左に来ます。つまり「もっとつくれば1個あたりの費用は下がるのに、そこまでつくっていない」という状態です。
これが過剰設備であり、独占的競争市場の長期均衡の特徴です。