企業行動の分析
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プレミアムで見るここまでは費用関数を出発点にして企業行動を追ってきました。しかし同じ話は、費用ではなく生産の側から組み立てることもできます。どれだけの労働や設備を投じれば、どれだけつくれるのか。この対応関係を表したものが生産関数です。おもしろいのは、費用関数のときに使った読み方がそっくりそのまま通用することです。原点と結んだ直線の傾きが平均、接線の傾きが限界。平均費用と限界費用のところで身につけた目の使い方を、そのまま持ち込めます。最後は、生産要素をどこまで投じるかを決める条件「限界生産物価値 = 要素価格」までたどり着きます。これは第3節の「価格 = 限界費用」を、生産要素の側から言い換えたものにほかなりません。
簡単にいうと
今度は「何を投入したら、どれだけつくれるか」という見方をするよ。投入するもの(労働や機械)が生産要素、その対応関係を表したのが生産関数。費用関数とは裏表の関係にあることを意識しながら読んでみよう!
① 生産要素とは
財やサービスをつくるには、土地、オフィス、機械設備、労働、原材料などが必要です。こうした生産活動に必要な要素をまとめて生産要素と呼びます。
経済学では、生産要素を大きく次の2つに束ねて扱うのが一般的です。
| 生産要素 | 記号 | 内容 | 対価 |
|---|---|---|---|
| 労働 | 働き手の投入量(人数や労働時間) | 賃金 | |
| 資本 |
具体例
ある工場の労働投入量と生産量の関係を、具体的な数値で見てみましょう。
設定 機械は3台で固定されており、増やすことはできません。働き手の人数だけを変えられるとします。
| 労働投入量 (人) | 生産量 (個) |
|---|---|
| 0 | 0 |
| 1 | 10 |
| 2 | 24 |
| 3 |
試験のポイント
簡単にいうと
平均生産物は「1人あたり何個つくれてる?」という指標だよ。平均費用のときと同じで、原点と結んだ直線の傾きで読み取れる。第2節でやった読み方がそのまま使えるから、うれしいところ!
① 平均生産物の定義
費用関数で平均費用や平均可変費用を考えたのと同じように、生産関数についても平均生産物という概念があります。
平均生産物(average product、)とは、生産要素1単位あたりの生産量です。
簡単にいうと
限界生産物は「あと1人雇ったら、何個増える?」という指標。限界費用と同じで、接線の傾きだよ。微分すれば求まる。そして大事なのが平均生産物との大小関係。ここが試験でよく問われるところ!
① 限界生産物の定義
限界生産物(marginal product、)とは、生産要素の投入量を1単位増加させたときに増加する生産量のことです。限界生産力、限界生産性とも呼ばれます。呼び名が3つありますが、指しているものは同じです。
「限界」は marginal の訳語で、追加1単位あたりの変化を意味する、という第2節の説明がここでもそのまま当てはまります。
② グラフ上の読み取り方と微分
限界費用が総費用曲線への接線の傾きだったのと同じく、限界生産物は
簡単にいうと
第2節で平均費用を使って規模の経済を定義したよね。同じことを限界生産物を使って定義することもできるんだ。限界生産物が上がるか下がるか一定か、の3パターンだけ。シンプル!
① 限界生産物による定義
第2節では、平均費用曲線の動きによって規模の経済・規模の不経済を定義しました。同じ内容を、限界生産物を使って定義することもできます。
| 生産要素の投入量の増加に伴って | 呼び方 |
|---|---|
| 限界生産物が低下する | 収穫逓減 |
| 限界生産物が一定 | 収穫一定 |
簡単にいうと
最後は「働き手を何人雇うのが得か」を決める条件だよ。答えは「限界生産物価値=要素価格」。むずかしそうに見えるけど、要するに『あと1人雇って増える売上と、その1人の給料を比べる』だけ!
① 要素価格とは
要素価格とは、生産要素を1単位増加させたときの費用の増加分であり、一定と考えます。
たとえば、ある工場が新たに資本(機械設備)1台を20万円で購入して生産に投入した場合、この20万円が要素価格にあたります。労働であれば、追加で1人雇うときの賃金が要素価格です。
要素価格は、生産関数の世界における限界費用にあたる概念だと考えるとわかりやすいでしょう。生産要素を1単位増やすのにいくらかかるか、を表しているからです。
② 限界生産物価値とは
限界生産物価値(value of marginal product、
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| 機械設備や工場などの投入量 |
| 利子・レンタル料 |
② 生産関数とは
生産関数とは、生産要素の投入量と生産量との関係を表す関数です。言い換えれば、どれだけの生産要素を投入したとき、どれだけの生産量を実現できるかを表したものです。
生産要素の投入量を (横軸)、生産量を (縦軸)にとると、生産関数は
と書けます。費用関数 が「生産量 → 費用」という向きだったのに対し、生産関数は「投入量 → 生産量」という向きになっています。
③ 短期と長期の区別
いま だけを変数にして議論するのは、資本の投入量が固定されている状況を想定しているからです。工場や機械はすぐには増やせませんが、労働はシフトを増やしたり人を雇ったりして比較的すぐに調整できます。
このように、一部の生産要素が固定されている期間を短期、すべての生産要素を調整できる期間を長期と呼びます。この節で扱う生産関数は短期のものであり、横軸は労働投入量だと考えて差し支えありません。
労働は生産水準に応じてすぐに投入量を調整できる可変的なインプットである、という言い方も試験ではよく出てきます。第1節で費用を可変費用と固定費用に分けたことと、きれいに対応しています。
④ 生産関数のグラフの形
生産関数のグラフは、原点から出発して右上がりに伸びますが、しだいに寝ていく形(上に凸)を描くのが基本形です。労働を増やせば生産量は増えますが、増え方はだんだん鈍っていく、という想定です。
固定された機械や工場に対して働き手ばかり増やしていけば、いずれ機械の順番待ちが生じます。働き手1人あたりの設備が薄くなっていくため、追加1人が生み出す生産量は減っていきます。これが収穫逓減と呼ばれる状況で、この節の議論の土台になります。
⑤ 費用関数との対応
生産関数と費用関数は、同じ生産技術を別の角度から見たものです。
| 費用関数の世界 | 生産関数の世界 |
|---|---|
| 横軸: 生産量 | 横軸: 生産要素投入量 |
| 縦軸: 費用 | 縦軸: 生産量 |
| 平均費用 | 平均生産物 |
| 限界費用 | 限界生産物 |
| 原点と結んだ直線の傾き = 平均費用 | 原点と結んだ直線の傾き = 平均生産物 |
| 接線の傾き = 限界費用 | 接線の傾き = 限界生産物 |
読み方の作法がそのまま流用できる、という点を先に押さえておいてください。
| 4 | 44 |
| 5 | 48 |
| 6 | 48 |
ステップ1: 生産量の増え方を追う
前の行との差を計算してみましょう。
ステップ2: 何が起きているかを読み取る
2人目までは、1人増やすごとの生産量の増え方が大きくなっています。1人で機械3台を扱うより、2人で分担したほうが効率がよいためです。
3人目からは増え方が小さくなっていきます。機械が3台しかないので、人を増やしても待ち時間が生じ始めます。
6人目にいたっては、生産量がまったく増えていません。機械がすべてふさがっており、これ以上人を投入しても意味がない状態です。
ステップ3: グラフの形を確認する
この数値をグラフに描くと、はじめは急に立ち上がり、途中から寝ていき、最後は水平になる形になります。一般的な生産関数の形状そのものです。
ステップ4: 資本を増やすとどうなるか
もし機械を3台から6台に増やせれば、この表全体が書き換わります。同じ5人でも、機械が多ければもっとつくれるはずです。
つまり生産関数 は、資本 が固定されているという前提のもとでの関係であり、 が変われば曲線そのものが上に移動します。「資本投入量が固定されているとき、生産物の産出量は労働投入量のみに依存する」という設定の意味は、ここにあります。
労働を生産要素とするなら「働き手1人あたりの生産量」であり、労働生産性と呼ばれるものにほかなりません。運営管理や企業経営理論で出てくる労働生産性と、まったく同じ概念です。
② グラフ上の読み取り方
平均生産物は「生産量 ÷ 生産要素投入量」という割り算なので、グラフの上では
原点と生産関数上の点を結んだ直線の傾き
として読み取れます。
理由は平均費用のときとまったく同じです。原点から生産関数上の点まで進むとき、ヨコには だけ、タテには だけ進みます。したがって傾きは となり、平均生産物の定義式そのものになります。
③ 平均生産物は逓減する
生産関数上に2つの点 A(投入量 )と B(投入量 、ただし )をとり、それぞれ原点と結んでみましょう。
生産関数が上に凸の形(しだいに寝ていく形)をしているため、点が右へ行くほど原点と結んだ直線は寝ていきます。つまり傾きが小さくなります。
したがって、
生産要素投入量が増えるとともに、平均生産物は逓減する
という性質が得られます。働き手を増やしていくと、1人あたりの生産量はだんだん下がっていく、ということです。機械の数が変わらないまま人だけ増えれば、1人あたりが扱える設備は薄くなっていくのですから、自然な結果だといえます。
④ 平均費用のときとの違いに注意
ここで混同しやすい点を1つ挙げておきます。平均費用曲線はU字型でした。では平均生産物曲線もU字型かというと、そうとは限りません。
生産関数が最初から上に凸(全域で収穫逓減)であれば、平均生産物は最初から一貫して逓減します。一方、生産関数が途中まで下に凸(収穫逓増)で、そこから上に凸に変わる形であれば、平均生産物はいったん上がってから下がる、山型(逆U字型)になります。
試験で出される生産関数がどちらの形をしているかは、図をよく見て判断してください。
具体例
前のテーマの数値例を使って、平均生産物を計算してみましょう。
ステップ1: 平均生産物を求める
| 労働投入量 | 生産量 | 平均生産物 |
|---|---|---|
| 1 | 10 | 10.0 |
| 2 | 24 | 12.0 |
| 3 | 36 | 12.0 |
| 4 | 44 | 11.0 |
| 5 | 48 | 9.6 |
| 6 | 48 | 8.0 |
ステップ2: 動きを読み取る
平均生産物は と変化しています。 から

生産関数と平均生産物・限界生産物
試験のポイント
で求められます。生産関数を とすれば、限界生産物は微分して
と表せます。
たとえば投入量 での限界生産物は、生産関数上の点 A を接点とする接線の傾きとして読み取れます。同様に での限界生産物は、点 B を接点とする接線の傾きです。
③ 限界生産物も逓減する
生産関数が上に凸の形をしていれば、右へ行くほど接線は寝ていきます。したがって
生産要素投入量の増加とともに、限界生産物は逓減する
という性質が成り立ちます。これを限界生産物逓減の法則(収穫逓減の法則)と呼びます。
④ 限界生産物と平均生産物の大小関係
ここが試験で問われるポイントです。生産関数上の同じ点で、原点と結んだ直線(平均生産物)と接線(限界生産物)を比べてみましょう。
生産関数が上に凸であれば、接線は原点と結んだ直線より必ず寝ています。つまり
が成り立ちます。点 A でも点 B でも、どの点をとっても同じです。したがって、
収穫逓減の生産関数では、いかなる生産量においても限界生産物 < 平均生産物となる
という結論が得られます。
⑤ ただし例外的な形もある
上の結論には「収穫逓減の生産関数の場合」という条件がついています。生産関数が途中まで下に凸(収穫逓増)である場合には、前半で となる区間が現れます。
そして、原点を通る直線がちょうど生産関数に接する点では、
が同じ1本の直線の傾きになるため、 が成立します。しかもその点は平均生産物が最大になる点です。
第2節で「限界費用曲線は平均費用曲線の最小点を通る」と学んだのと、まったく同じ構造です。費用では最小、生産物では最大、と向きが逆になるだけで、理屈は同じだと理解してください。
⑥ 3つの関係を整理する
| 区間 | 関係 | 平均生産物の動き |
|---|---|---|
| 限界が平均を引き上げる | 平均生産物は上昇 | |
| 引き上げも引き下げもしない | 平均生産物は最大 | |
| 限界が平均を引き下げる | 平均生産物は低下 |
具体例
問題 労働と生産水準の関係について考える。労働は、生産水準に応じてすぐに投入量を調整できる可変的インプットである。資本投入量が固定されているとき、生産物の産出量は労働投入量のみに依存し、下図のような総生産物曲線を描くことができる。図では、原点から引いた直線が総生産物曲線に接する点を A、総生産物曲線が最高点に達する点を B とする。この図に関する記述として最も適切なものを選べ。
(令和元年度 第14問)
ステップ1: 図の形を把握する
総生産物曲線は、はじめは下に凸(収穫逓増)で立ち上がり、途中から上に凸(収穫逓減)に変わって、点 B で最高点に達し、その後は下がっていきます。逆S字を横に寝かせて、最後に下降させたような形です。
ステップ2: 各選択肢を判定する
ア は誤り 総生産物は点 B を最高点として、その後は労働投入量を増やすと減少します。人を増やしすぎて現場が混雑し、かえって生産量が落ちる状態です。
イ は誤り 限界生産物は接線の傾きです。曲線が下に凸の区間では接線が立っていき、上に凸に変わる変曲点で接線の傾きは最大になります。つまり限界生産物は原点 O から点 A の間で最大を迎え、その後は減少します。「最小を迎え、それ以降は増加する」は逆です。
ウ は正しい 点 A では、原点を通る直線と曲線への接線が一致しています。
同じ1本の直線の傾きなのですから、この点で平均生産物と限界生産物は一致します。
エ は誤り 原点と総生産物曲線上の点を結んだ直線の傾きが最も大きくなるのは点 A です。つまり点 A で平均生産物は最大になります。「最小」ではありません。また点 B では総生産物が最大になるのであって、平均生産物が最大になるわけではありません。
答え ウ
ステップ3: 3つの点の意味を整理する
| 点 | 図での位置 | 意味 |
|---|---|---|
| 変曲点 | 曲線の曲がり方が変わる点 | 限界生産物が最大 |
| A | 原点を通る直線との接点 | 平均生産物が最大、かつ |
| B | 曲線の最高点(接線が水平) | 総生産物が最大、かつ |
左から「変曲点 → A → B」の順に並びます。第2節で学んだ「 の底 → の底 → の底」の並びと同じ考え方で処理できる、と気づけば取りこぼしません。

総生産物曲線から平均生産物と限界生産物を読む
試験のポイント
| 限界生産物が上昇する |
| 収穫逓増 |
② グラフの形との対応
限界生産物は生産関数への接線の傾きでした。したがって、生産関数のグラフの形を見れば、どのタイプかがすぐわかります。
| タイプ | 接線の傾きの動き | 生産関数の形 |
|---|---|---|
| 収穫逓減 | 右へ行くほど寝ていく | 上に凸の曲線 |
| 収穫一定 | どこでも同じ | 直線 |
| 収穫逓増 | 右へ行くほど立っていく | 下に凸の曲線 |
③ 3つの生産関数を見比べる
3本の生産関数を並べて確認しましょう。
上に凸の曲線 労働投入量が増えるとともに接線の傾きが小さくなっていきます。つまり限界生産物が低下しているので、収穫逓減の生産関数です。
原点を通る直線 どの点でも接線の傾きは同じ(直線そのものの傾き)です。限界生産物が常に一定なので、収穫一定の生産関数です。この場合、平均生産物も同じ値になり、 が全域で成り立ちます。
S字型の曲線 ある投入量 までは下に凸で接線が立っていき、
④ 第2節の定義との対応
平均費用で定義した規模の経済と、限界生産物で定義した収穫逓増・逓減は、同じ現象を裏表から見たものです。
| 生産の側 | 費用の側 |
|---|---|
| 収穫逓増(限界生産物が上昇) | 規模の経済(平均費用が低下)、限界費用は低下 |
| 収穫一定(限界生産物が一定) | 限界費用は一定 |
| 収穫逓減(限界生産物が低下) | 規模の不経済(平均費用が上昇)、限界費用は上昇 |
直感的にも自然です。あと1人雇って生産量がたくさん増えるなら(収穫逓増)、1個あたりの追加費用は小さくなる(限界費用が低下する)はずだからです。
第2節で可変費用曲線を逆S字型と仮定したことと、生産関数をS字型と想定することは、まさに同じ生産技術の表と裏にあたります。
⑤ 規模に関する収穫との違い
なお、より厳密には「収穫逓増・逓減」という言葉は、2通りの使われ方をします。
試験で単に「収穫逓減」と出てきた場合は、前者、つまり一部の生産要素を固定したうえでの話だと考えて差し支えありません。企業経営理論でいう「規模の経済」は後者に近い概念です。
具体例
3つのタイプの生産関数を、数値で見比べてみましょう。
ケース1: 収穫一定
とします。
| 限界生産物 | 平均生産物 | ||
|---|---|---|---|
| 1 | 5 | 5 | 5 |
| 2 | 10 | 5 | 5 |
| 3 | 15 | 5 | 5 |
| 4 | 20 | 5 | 5 |
限界生産物が常に5で一定です。しかも平均生産物も5で、両者が一致しています。原点を通る直線の生産関数では、 が全域で成立します。
ケース2: 収穫逓減
| 限界生産物(前行との差) | 平均生産物 | ||
|---|---|---|---|
| 1 | 12.0 | — | 12.0 |
| 4 | 24.0 |
限界生産物が と下がっています。平均生産物も と下がり続けています。
どの行でも限界生産物のほうが平均生産物より小さくなっていることも確認してください。収穫逓減の生産関数では、常に
| 限界生産物 | 平均生産物 | 判定 | ||
|---|---|---|---|---|
| 1 | 10 | 10 | 10.0 | — |
| 2 | 24 | 14 | 12.0 |
ステップ: 平均生産物と限界生産物の交差を確かめる

収穫逓増・逓減・一定の比較
試験のポイント
考え方は単純です。生産要素を1単位増やせば、限界生産物 だけ生産量が増えます。増えた分は市場価格 で売れるので、収入は だけ増える、ということです。
具体例 製造している製品の価格が1個5万円で、資本を1台導入することによって生産量が5個増えたとします。このときの限界生産物価値は
となります。
限界生産物価値は、生産関数の世界における限界収入にあたる概念です。
③ 限界生産物価値は逓減する
ミクロ経済学では多くの場合、収穫逓減(生産要素投入量の増加に伴って限界生産物が低下する)と、市場価格一定を想定しています。
という式において、 が一定で が逓減するのですから、
生産要素投入量の増加に伴って、限界生産物価値も逓減する
ことになります。グラフに描けば右下がりの曲線です。
④ 生産関数における利潤最大化条件
ここまで準備すれば、結論はすぐに出ます。
生産要素を1単位追加的に投入することによって増加する収入(限界生産物価値)が、増加する費用(要素価格)を上回る限り、追加的な利潤が生じます。ならば生産要素を投入して生産量を増やしたほうがよい、ということになります。
逆に限界生産物価値が要素価格を下回れば、その1単位は損を生むので投入しないほうがよいわけです。
したがって、
生産関数における利潤最大化条件は、「限界生産物価値 = 要素価格」となるように生産要素投入量を決めること
となります。
⑤ 費用関数のときの条件との対応
第3節で学んだ利潤最大化条件は「限界収入 = 限界費用となるまで生産する」でした。基本となる考え方はまったく同じです。
| 費用関数のアプローチ | 生産関数のアプローチ |
|---|---|
| 限界収入 (完全競争では価格 ) | 限界生産物価値 |
| 限界費用 | 要素価格 |
| 条件: | 条件: |
| 決めるもの: 生産量 | 決めるもの: 生産要素投入量 |
限界生産物価値が生産関数における限界収入に相当し、要素価格が生産関数における限界費用に相当する、と考えればわかりやすいでしょう。
⑥ 労働需要曲線につながる
利潤最大化条件を労働について書くと、 を賃金として
つまり
となります。右辺の は実質賃金と呼ばれるもので、賃金を物価で割った値です。
この式は「企業は、限界生産物が実質賃金に等しくなるところまで労働を雇う」と読めます。実質賃金が下がれば企業はもっと雇い、上がれば雇用を減らします。つまり右下がりの労働需要曲線が導かれるわけです。
この関係は第9章の労働市場と総供給曲線(AS曲線)のところで、そのまま使われます。ミクロの企業行動がマクロの分析に接続する場面なので、いま式の意味をつかんでおくと後で得をします。
具体例
ある工場が働き手を何人雇うべきかを、限界生産物価値と要素価格から決めてみましょう。
設定
ステップ1: 限界生産物を求める
| 労働投入量 (人) | 生産量 (個/月) | 限界生産物 |
|---|---|---|
| 1 | 20 | 20 |
| 2 | 38 | 18 |
| 3 | 53 | 15 |
| 4 | 65 | 12 |
| 5 | 73 | 8 |
| 6 | 78 | 5 |
ステップ2: 限界生産物価値を計算する
| 労働投入量 | 限界生産物 | 限界生産物価値 | 要素価格 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| 1 |
ステップ3: 最適な雇用量を決める
4人目までは、1人雇うごとに収入の増加()が人件費の増加(30万円)を上回っています。5人目からは逆転します。したがって最適な労働投入量は4人です。
となる点は4人と5人の間にあり、そこが利潤最大化の位置です。
ステップ4: 利潤を計算して確かめる
固定費用を50万円として、実際に利潤を計算してみましょう。
| 収入 | 人件費 | 固定費用 | 利潤 | |
|---|---|---|---|---|
| 3 |
確かに4人のときに利潤が最大の25万円になっています。
ステップ5: 賃金が変わるとどうなるか
賃金が20万円に下がったとしましょう。すると5人目の (24万円)も賃金(20万円)を上回るので、5人目を雇うようになります。6人目は が15万円なので雇いません。
賃金が下がれば雇用が増える、という右下がりの労働需要曲線が現れました。この関係が、第9章で労働市場を分析するときの土台になります。

限界生産物価値と要素価格(何人雇うのが最適か)
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
この例の生産関数は、はじめのうち収穫逓増(1人増やすごとの増加分が大きくなる)だったため、平均生産物も最初は上がりました。しかし 以降は収穫逓減に入り、平均生産物も下がっています。
ステップ3: グラフ上で確かめる
原点と各点を結んだ直線の傾きを計算すると、上の表の値がそのまま出てきます。
点が右へ行くほど直線が寝ていく( 以降)という形が、数値からも確認できます。
ステップ4: 労働生産性として読み替える
平均生産物は労働生産性そのものです。この工場では、働き手3人のときに1人あたり12個で最も効率がよく、6人まで増やすと1人あたり8個まで落ちてしまいます。
「人を増やせば総生産量は増えるが、1人あたりの生産量は下がる」という状況です。総生産量を増やしたいのか、生産性を高めたいのかで、望ましい人数は変わってきます。診断士として工場の改善提案をする場面でも、この区別は効いてきます。
ステップ5: 総生産量との違いを確認する
見落としやすいのは、総生産量が最大になる点( または )と、平均生産物が最大になる点( または )が一致しないことです。この2つは別の指標であり、最大になる投入量も異なります。
| 6.0 |
| 9 | 36.0 | 4.0 |
| 16 | 48.0 | 3.0 |
ケース3: 前半は収穫逓増、後半は収穫逓減
第1テーマで使った工場の例を再掲します。
| 3 | 36 | 12 | 12.0 | 収穫逓減に転換 |
| 4 | 44 | 8 | 11.0 | 収穫逓減 |
| 5 | 48 | 4 | 9.6 | 収穫逓減 |
| 6 | 48 | 0 | 8.0 | 総生産物が頭打ち |
が を上から下に横切る で、平均生産物が最大になっています。第2節で学んだ「 曲線が 曲線の最小点を通る」の裏返しが、ここでも起きていることが数値で確認できました。
| 20 |
| 60万円 |
| 30万円 |
| → 雇う |
| 2 | 18 | 54万円 | 30万円 | → 雇う |
| 3 | 15 | 45万円 | 30万円 | → 雇う |
| 4 | 12 | 36万円 | 30万円 | → 雇う |
| 5 | 8 | 24万円 | 30万円 | → 雇わない |
| 6 | 5 | 15万円 | 30万円 | → 雇わない |
| 90万円 |
| 50万円 |
| 万円 |
| 4 | 195万円 | 120万円 | 50万円 | 万円 |
| 5 | 219万円 | 150万円 | 50万円 | 万円 |