消費者行動の分析
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プレミアムで見る第1章では企業の側から市場を眺めてきました。ここからは買い手、つまり消費者の側に立ちます。企業が利潤を最大にしようとしたのと同じように、消費者は満足度を最大にしようとする、というのが出発点です。この節ではまず、満足度を表す効用という考え方と、それを式にした効用関数を押さえます。そのうえで効用関数をグラフに写した無差別曲線を描き、曲線の形状から読み取れる限界代替率という概念までたどり着きます。「地図の等高線」を思い浮かべながら読むと、無差別曲線はぐっと身近になります。
簡単にいうと
経済学では「うれしさ」を効用と呼ぶよ。ちょっと堅い言葉だけど、要は満足度のこと。そして人それぞれの好みのことを選好という。この2つの言葉を区別できるようにしておこう!
① 効用とは
効用(utility)とは、財を消費することから得られる満足度のことです。
経済学では、人の「うれしさ」を数値で表して比べられるものとして扱います。たとえば
という状況であれば、「紅茶1杯のほうがコーヒー1杯よりも効用が高い」という言い方をします。
② 選好とは
選好(preference)とは、人々の好みのことです。
同じ財でも、人によって感じる効用は違います。
このようなとき、「A さんと B さんは違う選好をもっている」と表現します。
③ 効用と選好の使い分け
2つの言葉は次のように整理できます。
| 用語 | 指すもの | 例 |
|---|
具体例
同じ2つの財について、2人の消費者の選好を比べてみましょう。
設定 夕食時にビールとヤキトリを消費する場面を考えます。ビール1杯とヤキトリ1本のどちらを選ぶか、A さんと B さんに聞いてみました。
ステップ1: それぞれの効用を数値で表す
| ビール1杯の効用 | ヤキトリ1本の効用 | どちらを選ぶか | |
|---|---|---|---|
| A さん | 8 | 5 | ビール |
| B さん | 4 | 7 | ヤキトリ |
A さんはビールのほうが効用が高く、B さんはヤキトリのほうが効用が高い。したがって2人は違う選好をもっています。
試験のポイント
簡単にいうと
効用関数は「何をいくつ買ったら、どれくらいうれしいか」を式にしたもの。u = xy みたいなシンプルな形で出てくることが多いよ。そして限界効用は「あと1個増やすと、うれしさがどれだけ増える?」という考え方!
① 効用関数とは
効用関数(utility function)とは、消費量の組合せからどれだけの効用(満足度)を得ることができるかを表す関数です。選好をより具体的に表現するための道具だと考えてください。
を効用水準、 をビールの消費量、
簡単にいうと
効用関数をグラフにするのが無差別曲線!同じうれしさになる組合せを線でつないだもので、地図の等高線とそっくりなんだ。右上にある曲線ほど効用が高い、というのがいちばんのポイント!
① 無差別曲線とは
効用関数をグラフで表現するために使われるのが無差別曲線(indifference curve)です。
無差別曲線とは、同じ効用水準を得られる消費量の組合せを結んだ曲線です。地図の等高線や天気図の等圧線と同じようなものだと考えると、イメージがつかめます。等高線が「標高の等しい地点を結んだ線」であるように、無差別曲線は「満足度の等しい消費の組合せを結んだ線」です。
② 実際に描いてみる
効用関数
簡単にいうと
無差別曲線には守るべきルールがあるよ。ふつうは右下がり、そして絶対に交わらない!でも「右上がりになる例外」もあるんだ。そこも含めて押さえておこう。
① 単調性とは
単調性とは、「一方の財の消費量を一定とし、他方の財の消費量を増加させた場合に、必ず効用が高くなる」という関係が、両財についてつねに成り立つことをいいます。
ビールとヤキトリの例でいえば、ヤキトリの消費量を据え置いたまま、ビールの消費量が増えたときに全体の効用が上昇する、ということです。平たくいえば「多いほどうれしい」という当たり前の性質です。
② 単調性が成り立つと無差別曲線は右下がりになる
単調性が成り立っている場合、つまり両方の財とも消費量が多いほど効用が高くなる場合には、無差別曲線は右下がりになります。
理由を考えてみましょう。一方の財の消費量を増加させると効用は上がります。それでもなお効用を元の水準のまま一定に保ちたいのであれば、もう片方の財の消費量を減少させなければなりません。増やしたぶんだけ、どこかで減らして相殺する必要があるわけです。
だから「
簡単にいうと
限界代替率は「ビール1杯をあきらめる代わりに、ヤキトリが何本ほしい?」という交換レート。図の上では無差別曲線の接線の傾き(の絶対値)だよ。そして「たくさん持っているものほど価値が下がる」というのが限界代替率逓減!
① 限界代替率の定義
X 財の Y 財に対する限界代替率(marginal rate of substitution、)とは、X 財を1単位減少させたとき、効用水準を一定に保つために必要な Y 財の消費の増加量です。
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| 効用 | 消費から得られる満足度そのもの | 紅茶1杯の効用は5 |
| 選好 | どちらをより好むかという好みのパターン | 紅茶をコーヒーより好む |
効用は「量」、選好は「順序づけの仕方」だと考えると区別しやすいでしょう。
④ 効用の数値に意味はあるのか
ここで少し踏み込んだ話をしておきます。効用を数値で表すとき、その数値そのものに絶対的な意味はありません。大事なのは大小関係だけです。
たとえば「紅茶の効用が5、コーヒーの効用が3」でも「紅茶が50、コーヒーが30」でも、紅茶のほうが好まれているという情報は同じです。そのため、効用の数値を2倍にしたり、全体に10を足したりしても、消費者の行動は変わりません。
この考え方を序数的効用と呼びます。試験で細かく問われることは多くありませんが、「効用の数値は順序を表しているだけ」という理解があると、後で無差別曲線を扱うときに迷いません。
⑤ 消費者行動の分析の見取り図
この章全体の流れを先に示しておきます。
1. 効用関数(この節)消費量の組合せから、どれだけの満足度が得られるかを表す
2. 予算制約(第2節)所得の制約のもとで、実際に買える組合せはどこまでか
3. 効用最大化(第3節)予算の範囲内で効用が最大になる点を探す
4. 需要曲線の導出(第4節)価格が変わるとその最適点がどう動くかを追う
つまり「満足度を表す道具」と「買える範囲を表す道具」の2つをそろえ、その2つを重ね合わせて最適点を求める、という構成になっています。第1章で費用関数を整えてから利潤最大化に進んだのと、まったく同じ組み立て方です。
ここで注意したいのは、「A さんのビールの効用8」と「B さんのヤキトリの効用7」を比べて、「A さんのほうが幸せだ」とは言えないという点です。
効用の数値は、同じ人の中での大小関係を表すために付けたものであり、人と人の間で比べられる単位ではありません。これを効用の個人間比較はできないといいます。
ステップ3: 数値を変えても選好は変わらない
A さんの効用をすべて10倍してみましょう。
| ビール | ヤキトリ | |
|---|---|---|
| A さん(元) | 8 | 5 |
| A さん(10倍) | 80 | 50 |
ビールのほうが効用が高い、という結論は変わりません。効用の数値そのものではなく、大小関係だけが意味をもつ、ということがここからも確認できます。
ステップ4: 組合せで考える
実際の消費では、どちらか一方だけを選ぶのではなく、両方を組み合わせて消費します。
このような組合せに対して効用を対応させる道具が、次のテーマで学ぶ効用関数です。
たとえば次のような効用関数を考えてみましょう。
これは「ビールの本数とヤキトリの本数を掛け合わせたものが満足度になる」という選好を表しています。
② 効用関数から効用水準を計算する
この効用関数のもとで、いくつかの消費パターンの効用を計算してみます。
| 消費パターン | (ビール) | (ヤキトリ) | (効用水準) |
|---|---|---|---|
| A | 2 | 2 | 4 |
| B | 2 | 3 | 6 |
| C | 3 | 2 | 6 |
| D | 6 | 1 | 6 |
この表から次のことが読み取れます。
B と D を見比べてください。ビール2杯とヤキトリ3本でも、ビール6杯とヤキトリ1本でも、この人にとっての満足度は同じ6です。まったく違う組合せなのに満足度が等しい、という状況は現実にもよくあります。
③ 限界効用
x 財の限界効用(marginal utility、)とは、他の財の消費量を一定に保ったうえで、x 財の消費量を1単位増加させたときに上昇する効用の大きさです。
第1章で「限界」は marginal の訳語であり、追加1単位あたりの変化を表すと学びました。ここでもまったく同じ考え方です。
例 ビールとヤキトリを消費しているとします。ビールの限界効用が2であるとは、ヤキトリの消費量を一定に保ちつつ、ビールの消費量を1単位増加させたときに効用が2上昇するということを意味します。
④ 限界効用は偏微分で求める
限界費用が費用関数の微分、限界生産物が生産関数の微分だったのと同じく、限界効用は効用関数の微分です。ただし変数が2つあるので、片方を定数とみなして微分します。これを偏微分と呼びます。
の場合、
おもしろい結果です。ビールの限界効用がヤキトリの本数で決まっています。ヤキトリがたくさんあるときほど、ビール1杯の追加でうれしさが大きく増える、という選好を表しているわけです。
⑤ 限界効用逓減の法則
一般に、同じ財を消費し続けると、追加1単位から得られる満足度はだんだん小さくなっていきます。これを限界効用逓減の法則と呼びます。
砂漠でのどが渇いているときの1杯目の水と、5杯目の水では、ありがたみがまったく違います。ビールでも1杯目と5杯目では、同じ1杯でも得られる満足度が異なります。この性質は次のテーマ以降で、無差別曲線が原点に対して凸の形をすることの背景になります。
具体例
効用関数 のもとで、限界効用がどう動くかを数値で追ってみましょう。
ステップ1: ヤキトリを3本に固定してビールを増やす
に固定し、 を1本ずつ増やしていきます。
| ビール | 効用 | 前行との差(ビールの限界効用) |
|---|---|---|
| 1 | 3 | — |
| 2 | 6 | 3 |
| 3 | 9 | 3 |
| 4 | 12 | 3 |
ビールの限界効用は常に3です。偏微分で求めた と一致しています。
ステップ2: ヤキトリを5本に増やして同じことをする
に固定します。
| ビール | 効用 | ビールの限界効用 |
|---|---|---|
| 1 | 5 | — |
| 2 | 10 | 5 |
| 3 | 15 | 5 |
今度は限界効用が5になりました。ヤキトリが多いほど、ビール1杯の価値が大きくなっています。 という式が意味しているのは、このことです。
ステップ3: 同じ効用になる組合せを探す
効用が6になる組合せをすべて書き出してみましょう。 を満たす組合せです。
| 1 | 6 | 6 |
| 2 | 3 | 6 |
この4つの組合せは、この人にとってまったく同じ満足度をもたらします。次のテーマでは、この組合せを線でつないだものを扱います。
ステップ4: 限界効用逓減を別の効用関数で確かめる
では限界効用が一定になってしまいましたが、
| 限界効用(前行との差) | ||
|---|---|---|
| 1 |
追加1単位あたりの効用の増え方が と小さくなっています。これが限界効用逓減の法則です。
試験のポイント
効用水準 4 の無差別曲線 消費パターン A(ビール2杯、ヤキトリ2本)と同じ効用をもたらす組合せを結んだものです。たとえばビール4杯とヤキトリ1本という組合せ E も、 なので A と同じ効用水準4であり、 の上にあります。
効用水準 6 の無差別曲線 消費パターン B(2, 3)と同じ効用をもたらす組合せを結んだものです。C(3, 2)も D(6, 1)も効用は6なので、B と同じ の上に並びます。
同じ無差別曲線上にある消費パターン、つまり同じ効用水準をもたらす消費パターンを「無差別な消費パターン」と呼びます。どちらを選んでも構わない、選ぶ理由がない、という意味です。
③ 無差別曲線は無数にある
両財の消費量の組合せは無数にありますから、無差別曲線も無数に描くことができます。効用水準を5に設定すれば効用5の無差別曲線が、7に設定すれば効用7の無差別曲線が描けます。地図に等高線が何本も引けるのと同じです。
ふだんは、そのうち何本かを代表として描くことになります。
④ 右上にあるほど効用が高い
そして重要な性質がこれです。
より右上にある無差別曲線のほうが、効用水準は高くなる
ただしこれは、次のテーマで扱う単調性が成立する場合の話です。
なぜ右上ほど効用が高いのでしょうか。右上に移動するということは、両方の財の消費量が増えるということです。財が増えれば満足度は上がるはずですから、より高い効用水準の無差別曲線に乗ることになります。
たとえば (効用4)と (効用6)を比べると、 のほうが右上に位置しています。
⑤ 無差別曲線の見方を整理する
| 見方 | 内容 |
|---|---|
| 同じ曲線上を動く | 効用水準は変わらない(無差別) |
| 右上の曲線へ移る | 効用水準が上がる |
| 左下の曲線へ移る | 効用水準が下がる |
| 曲線の傾き | 次のテーマで扱う限界代替率 |
消費者はできるだけ右上の無差別曲線に乗りたいわけですが、所得には限りがあります。どこまで右上に行けるかを決めるのが、第2節で学ぶ予算制約です。
具体例
効用関数 について、無差別曲線を実際に描いてみましょう。
ステップ1: 効用水準4の組合せを列挙する
を満たす組合せを探します。
| (ビール) | (ヤキトリ) |
|---|---|
| 1 | 4 |
| 2 | 2 |
| 4 | 1 |
これらの点を結んだ曲線が、効用水準4の無差別曲線 です。式で書けば という反比例のグラフになります。
ステップ2: 効用水準6の組合せを列挙する
| 1 | 6 |
| 2 | 3 |
| 3 | 2 |
| 6 | 1 |
これが で、式は です。
ステップ3: 2本の位置関係を確かめる

無差別曲線と限界代替率逓減
試験のポイント
③ 単調性が成り立たないケース
単調性が成り立たない例として、しばしば取り上げられるのが「所得と労働時間の選択」です。
この例では、次のように仮定します。
労働時間は増えるとうれしくないので、単調性は成り立っていません。このケースでは、無差別曲線は右上がりになります。
なぜでしょうか。所得を増加させた場合(点 A から点 B へ)、効用は上がります。これを元の水準に戻して一定に保つには、効用を下げる要素、つまり労働時間を増加させなければなりません(点 B から点 C へ)。だから「所得が増えると労働時間も増える」という右上がりの関係になるのです。
そしてこの例では、左上に位置する無差別曲線のほうが効用水準は高くなります。左上とは「労働時間が短く、所得が高い」という方向だからです。右上ほど効用が高い、という先ほどの性質が逆転している点に注意してください。
④ 無差別曲線は交わらない
もう1つの重要な性質がこれです。
無差別曲線は交わらない
背理法で確かめてみましょう。仮に、無差別曲線 (効用水準4)と (効用水準6)が点 B で交わっているとします。
すると、B という1つの消費量の組合せが、効用水準4であると同時に6であることになってしまいます。これは矛盾です。
したがって、無差別曲線は交わることはない、といえます。等高線が交わらないのと同じ理屈だと考えてください。標高100mの等高線と200mの等高線が交わったら、その地点の標高が100mでもあり200mでもあることになってしまいます。
⑤ 性質のまとめ
| 性質 | 内容 | 前提 |
|---|---|---|
| 右下がり | 一方を増やせば他方を減らす必要がある | 単調性が成立 |
| 右上がりになる例外 | 所得と労働時間の選択など | 単調性が不成立 |
| 交わらない | 交われば効用水準が二重になり矛盾 | つねに成立 |
| 右上ほど効用が高い | 両財とも消費量が多いほうがよい | 単調性が成立 |
| 原点に対して凸 | 次のテーマの限界代替率逓減による | 通常の仮定 |
具体例
無差別曲線が交わらないことを、数値で具体的に確かめてみましょう。
ステップ1: 矛盾する状況を仮定する
効用関数 のもとで、無差別曲線 (効用水準4)と (効用水準6)を考えます。
仮にこの2本が点 B で交わったとしましょう。B の座標を とします。
ステップ2: 2つの式を立てる
ステップ3: 矛盾を確認する
同じ という値が4でもあり6でもある、ということになります。1つの掛け算の答えが2つあることはありえません。したがって、このような点 B は存在しません。
別の角度から: 単調性を使った説明
もう1つの説明の仕方もあります。3つの点 A、B、C を次のように配置します。
すると次のようになります。
ところが単調性が成り立つなら、両財とも多い C のほうが A より効用が高いはずです。「等しい」と「高い」が同時に成り立つことはできません。やはり矛盾します。
ステップ4: 所得と労働時間の例を数値で見る
単調性が成り立たないケースも確認しておきましょう。ある人の効用が
で決まるとします。所得は多いほど効用を上げ、労働時間は長いほど効用を下げる形です。
労働時間が4時間で所得が8万円なら、効用は です。
では労働時間が6時間のとき、効用を6.4のまま保つには所得がいくら必要でしょうか。
4時間のときの8万円より多い所得が必要になりました。
| 労働時間 | 効用6.4を保つのに必要な所得 |
|---|---|
| 4時間 | 8.0万円 |
| 6時間 | 10.0万円 |
| 8時間 | 12.8万円 |
労働時間が増えるほど、同じ満足度を保つのに必要な所得が増えていきます。つまり無差別曲線は右上がりです。そして同じ労働時間なら所得が多いほど、同じ所得なら労働時間が短いほど効用が高いので、左上の無差別曲線ほど効用水準が高くなります。

無差別曲線の性質
試験のポイント
例 ビールのヤキトリに対する限界代替率が2であるとします。これは、ビールを1単位減少させた場合に効用水準を一定に保つには、ヤキトリの消費を2単位増加させなければならないということです。言い換えれば、1単位のビールを2単位のヤキトリで置き換えても効用は同じ、ということになります。
② 限界代替率は「y 財で測った x 財の価値」
限界代替率は、1単位の x 財を何単位の y 財で置き換えることができるかを表す数値です。そのため、消費者にとってのy 財で測った x 財の価値と解釈することもできます。
ビールの限界代替率が2なら、この人にとってビール1杯はヤキトリ2本ぶんの価値がある、ということです。限界代替率が5に上がれば、ビールの価値はヤキトリ5本ぶんに高まったことになります。
この読み方は、後の効用最大化の議論で「限界代替率 = 価格比」という条件が出てきたときに効いてきます。消費者にとっての交換レートと、市場での交換レートが一致するところが最適点になるからです。
③ 限界代替率は無差別曲線への接線の傾き(の絶対値)
限界代替率 = 無差別曲線への接線の傾き(の絶対値)
これがグラフでの読み取り方です。第1章で扱った限界費用や限界生産物と、まったく同じ発想です。
確認してみましょう。無差別曲線上の点 A から、x 財(ビール)の消費を 単位減少させたとします。同じ無差別曲線 の上にとどまるためには、y 財(ヤキトリ)の消費量が だけ増加しなければなりません。移動後の点を B とすると、限界代替率は点 A と点 B を結ぶ直線の傾きの絶対値、つまり
で与えられます。
ここで が十分小さければ(直線 AB の長さが限りなく短ければ)、直線 AB の傾きは点 A を接点とする無差別曲線への接線の傾きにほぼ等しくなります。したがって、点 A における無差別曲線への接線の傾きの絶対値で限界代替率が表されるのです。
無差別曲線は右下がりなので接線の傾きは負になります。そのため絶対値をとって正の数として扱います。
④ 限界効用との関係
限界代替率は、2財の限界効用の比としても表せます。
効用関数 であれば 、 ですから
となります。計算問題ではこの形を使うと速く解けます。
⑤ 限界代替率逓減
通常、無差別曲線は原点に対して凸の形であると想定されます。この形状は、ビールの消費量 を増加させヤキトリの消費量 を減少させるにつれて、ビールの限界代替率が低下していくことを意味しています。この性質を限界代替率逓減といいます。
無差別曲線が原点に対して凸 → 限界代替率逓減
⑥ 限界代替率逓減の解釈
ビールの限界代替率は、ヤキトリで測ったビール1単位の価値であるとみなせました。この解釈から考えると、限界代替率逓減とは、ビールの消費量を増加させヤキトリの消費量を減少させるほど、ヤキトリと比較してビールの価値が低下していくことを意味します。
つまり、ビールばかりたくさん消費しているという状態では、もう1杯のビールをもらうよりもヤキトリを1本もらうほうがよい、ということです。
このように、片方の財の消費量を増加させもう片方を低下させるほど、多く消費される財に対する評価が相対的に低くなっていく、という性質は、多くの財についてあてはまると考えられています。このため、通常、限界代替率は逓減するものと仮定されます。
同じものばかり食べていると飽きてくる、という日常的な感覚をそのまま数式にしたものだと考えてください。
具体例
問題 A さんは、夕食時にビールと焼酎を飲むことにしている。A さんの効用水準を一定とした場合、ビールを1杯余分に飲むことと引き換えに減らしてもよいと考える焼酎の数量が、徐々に減ることを描いた無差別曲線として、最も適切なものはどれか。
(令和元年度 第12問)
ステップ1: 問題文が何を言っているか読み解く
「ビールを1杯余分に飲むことと引き換えに減らしてもよいと考える焼酎の数量」とは、まさに限界代替率のことです。それが「徐々に減る」というのですから、限界代替率が逓減している無差別曲線を選べばよいことになります。
ステップ2: 各選択肢の限界代替率の動きを確かめる
ア(直線) 直線の傾きはどこでも一定です。したがって限界代替率も一定であり、逓減しません。これは2財が完全に代替できる場合(完全代替財)の無差別曲線です。
イ(原点に対して凸の曲線) 右へ行くほど接線が寝ていきます。つまり傾きの絶対値が小さくなっていくので、限界代替率は逓減します。これが正解です。
ウ(原点に対して凹の曲線) 右へ行くほど接線が立っていきます。限界代替率は逓増してしまいます。
エ(L字型) 2財を必ず一定の比率で組み合わせて消費する場合(完全補完財)の無差別曲線です。片方だけ増やしても効用は上がらないため、代替の考え方が成り立ちません。
答え イ
ステップ3: 数値で限界代替率逓減を確かめる
効用関数 で、効用水準を12に固定します。
| (ビール) | (焼酎) | |
|---|---|---|
| 1 | 12 | 12.0 |
| 2 |
ビールを増やして焼酎を減らしていくにつれて、限界代替率が と下がっています。まさに限界代替率逓減です。
ステップ4: 意味を言葉で確かめる
ビールをたくさん飲んでいるほど、追加のビールの価値が下がっている、という感覚がそのまま数値に表れています。

限界代替率と限界代替率逓減
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
| 20 |
| 5 |
| 3 |
| 2 |
| 6 |
| 6 | 1 | 6 |
| — |
| 4 | 2.00 |
| 9 | 3.00 |
| 16 | 4.00 |
のほうが上にあります。同じ でも、 上は 、 上は で、やはり が上です。
どの位置で比べても が より右上にあり、しかも効用水準も (6)が (4)より高くなっています。
ステップ4: 無差別であることを確かめる
上の2点、B(2, 3)と D(6, 1)を比べてみます。
まったく違う組合せなのに効用は等しく、この人はどちらを選んでも同じ満足度になります。まさに「無差別」です。
ステップ5: 等高線のたとえで確認する
山の地図で、標高100mの等高線上のどこに立っても標高は100mです。標高200mの等高線に移れば、それだけ高いところにいます。
無差別曲線もこれと同じで、同じ線の上ならどこでも満足度は同じ、線を乗り換えれば満足度が変わる、という読み方をします。
| 6 |
| 3.0 |
| 3 | 4 | 1.33 |
| 4 | 3 | 0.75 |
| 6 | 2 | 0.33 |