市場の失敗と政府の役割
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プレミアムで見るここでは、正の外部効果をもたらす財として、公共財を学習します。公共財とは、非競合性と非排除性をもつ財を指します。市場での自発的な取引の下では、公共財の供給は社会的に望ましい水準と比較し過少となると考えられています。消防や警察、国防のように、誰もが必要としているのに民間企業では供給できない財がある。それはなぜなのか。この節では、その理由を2つの性質から説明し、なぜ政府が供給することになるのかを確かめます。
簡単にいうと
公共財を見分ける鍵は2つ。非競合性と非排除性!「誰かが使っても減らない」「お金を払わない人を締め出せない」。この2つがそろうと、民間では供給できない財になるんだ。
① 公共財の定義
公共財とは、次の2つの性質をもつ財のことをいいます。
| 性質 | 内容 |
|---|---|
| 非競合性 | ある人の消費によって別の人が消費できる量が減らない |
| 非排除性 | 対価を支払わない人が消費することを排除することができない |
公共財は正の外部効果が働いている特殊なケースとみなせます。
誰かが公共財を購入すれば、対価を払っていない人まで便益を受けます。これはまさに、取引当事者以外の第三者が便益を得るという外部経済の構造です。
② 2つの性質を言い換える
非競合性 「みんなで同時に使える」ということです。1つのものを多くの人が同時に消費でき、消費しても減りません。
非排除性 「お金を払わない人を締め出せない」ということです。技術的にも費用的にも、対価を払わない人の利用を防ぐことが難しい、という意味です。
③ 公共財の例
消防、警察、国防、放送
具体例
身近な財を、2つの性質に照らして判定してみましょう。
ステップ1: 判定表をつくる
| 財 | 非競合性 | 非排除性 | 分類 |
|---|---|---|---|
| 国防 | ○(守られる人が増えても減らない) | ○(税を払わない人も守られる) | 公共財 |
| 一般道路 | ○(混雑しなければ) | ○(通行料を取らない) | 公共財 |
| コンビニのおにぎり | ×(誰かが買えばなくなる) | ×(代金を払わないと買えない) |

公共財の2つの性質
試験のポイント
簡単にいうと
非競合性と非排除性の組合せで、財は4つに分かれるよ。私的財・公共財・クラブ財・共有資源。とくに共有資源は「非排除性はあるが競合性はある」という点を取り違えやすいから注意!
① 4つの分類
非競合性と非排除性の有無の組合せで、財は4つに分類できます。
| 排除できる(排除性あり) | 排除できない(非排除性) | |
|---|---|---|
| 競合性あり | 私的財 | 共有資源 |
簡単にいうと
「他の人が払ってくれるだろう」とみんなが考えると、誰も払わなくなる。これがフリーライダー(ただ乗り)問題!だから公共財は市場では十分に供給されず、政府が供給することになるんだ。
① フリーライダー問題
公共財は、誰かが対価を支払うことで供給が行われれば、非競合性、非排除性という性質により、対価を支払わない他の人も同じように消費することができることになります。
よって人々は、自らが得ている便益にかなう対価を公共財に対して支払おうとはせず、他の人にただ乗りしようとします。これをフリーライダー(ただ乗り)問題とよびます。
② なぜ生じるのか
2つの性質のそれぞれが役割を果たしています。
| 性質 | フリーライダー問題への寄与 |
|---|---|
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2つの性質を両方満たすので、公共財です。
④ 公共財ではない例(私的財)
テレビの受像機
どちらの性質も満たさないので、公共財ではありません。これを私的財といいます。
⑤ 同じテレビでも別の分類になる
テレビの放送(番組)
→ 公共財
受像機(モノ)は私的財ですが、放送(番組そのもの)は公共財です。この対比は、公共財の考え方を理解するのにとてもよい例です。
「テレビ」とひとくくりにせず、何を財として見ているのかを確認する必要がある、ということでもあります。
⑥ 判定の手順
ある財が公共財かどうかを判定するときは、次の2つを順に確認します。
1. その人が消費したら、他の人が消費できる量が減るか → 減らなければ非競合的
2. 対価を払わない人を締め出せるか → 締め出せなければ非排除的
両方とも「いいえ」なら公共財です。
⑦ 一方だけを満たす場合
原則として公共財は、消費の非競合性と消費の非排除性の2つの性質をもつ財ですが、どちらか一方について、少しでも満たすようであれば「公共財としての性質をもつ」と考えられます。よって、必ず2つの性質を満たさなければ公共財ではないというわけではありません。
次のテーマでは、この「一方だけを満たす財」を含めた4分類を扱います。
| 有料の高速道路 | ○(混雑しなければ) | ×(料金所で締め出せる) | クラブ財 |
| 公海の魚 | ×(獲れば減る) | ○(誰でも獲れる) | 共有資源 |
| 花火大会 | ○(見る人が増えても見えなくならない) | ○(遠くからでも見える) | 公共財 |
ステップ2: 花火大会で考えてみる
花火大会は公共財の性質をよく表しています。
では、民間企業が花火大会を開催して収益を上げられるでしょうか。会場の外から見る人が大勢いるので、入場料だけでは費用を回収できません。
だから多くの花火大会は、自治体や商工会議所、協賛企業の資金で開催されています。公共財は市場では供給されにくい、ということの具体例です。
ステップ3: 灯台の例
経済学の教科書で古くから使われる例が灯台です。
民間が灯台を建てても、通る船から料金を取ることができません。だから公的に整備されることになります。
ステップ4: 技術によって分類が変わる
興味深いのは、技術の進歩によって分類が変わりうるという点です。
| 財 | 昔 | 今 |
|---|---|---|
| テレビ放送 | 公共財(電波は誰でも受信できる) | 有料放送はスクランブルで排除可能 → クラブ財 |
| 道路 | 公共財 | ETC などで課金しやすくなった |
非排除性は「技術的に排除できるか」に依存するので、技術が変われば分類も変わります。有料放送が成り立つようになったのは、スクランブル技術によって非排除性が失われたからです。
ステップ5: 判定のコツ
試験では次のように考えれば確実です。
1. まず「みんなで同時に使えるか」を考える → 非競合性の判定
2. 次に「お金を払わない人を締め出せるか」を考える → 非排除性の判定
3. 両方とも「使える/締め出せない」なら公共財
「公共」という言葉に引きずられて「政府が供給しているものが公共財」と考えないでください。定義はあくまで2つの性質です。政府が供給しているのは結果であって、定義ではありません。
| クラブ財 |
| 公共財 |
② 準公共財
橋、道路、教育などのようにある程度の競合性や排除性をもっている公共財を準公共財といいます。
準公共財のうち、
といいます。
③ それぞれの特徴
私的財 競合性も排除性もある、ごく普通の財です。市場で問題なく取引されます。パン、衣服、自動車など。
クラブ財 みんなで同時に使えるが、お金を払わない人は締め出せます。スポーツクラブ、有料放送、混雑していない有料道路など。会員制のビジネスが成り立つ財です。
共有資源 誰でも利用できるが、使えば減ってしまいます。公海の魚、地下水、共有の牧草地など。
公共財 純粋公共財とも呼ばれます。国防、消防、一般道路など。
④ 共有資源が引き起こす問題
共有資源には固有の問題があります。誰でも自由に利用できるうえに、使えば減ってしまうので、過剰に利用されてしまうのです。
これをコモンズの悲劇(共有地の悲劇)と呼びます。第4章で学んだ囚人のジレンマと同じ構造です。全員が自制すれば持続可能なのに、自分だけ得をしようとすると全員が損をします。
対策としては、漁業権の設定(所有権を明確にする)、漁獲量の規制、入漁料の徴収などが挙げられます。所有権を設定するというのは、第2節で学んだコースの定理の発想そのものです。
⑤ 誤りやすい記述
共有資源については、性質を入れ替えた誤りの選択肢が頻出します。
「排他性がある」は「排除できる」という意味なので誤りです。共有資源は誰でも利用できる(非排除性)が、使えば減る(競合性)財です。逆に書かれている選択肢に注意してください。
⑥ 4分類を覚えるコツ
表の縦横を次のように読むと覚えやすくなります。
| 料金を取れる | 料金を取れない | |
|---|---|---|
| 取り合いになる | 私的財(普通の商品) | 共有資源(乱獲される) |
| 取り合いにならない | クラブ財(会員制) | 公共財(政府が供給) |
「料金を取れないもの」は民間では供給されにくく、「取り合いになるもの」は過剰に使われる。この2つの軸で整理しておけば、分類だけでなく問題点まで導けます。
具体例
問題 次の記述の正誤を判定せよ。
「海洋資源などの共有資源は、消費に排他性があるが、競合性のない財として定義できる。」
(令和元年度 第17問 d)
ステップ1: 共有資源の定義を確認する
共有資源は、非排除性をもつが非競合性をもたない財です。言い換えれば
ステップ2: 記述と比べる
記述では「消費に排他性がある」「競合性のない財」となっています。定義とちょうど逆です。
答え ×(誤り)
正しくは「共有資源は非排除性をもち、競合性をもつ財である」となります。
ステップ3: 具体例で確かめる
公海の魚を考えてみましょう。
確かに「非排除性あり、競合性あり」です。
ステップ4: 4分類の表に当てはめる
| 財 | 競合性 | 排除性 | 分類 |
|---|---|---|---|
| コンビニのおにぎり | あり | あり | 私的財 |
| 公海の魚 | あり | なし | 共有資源 |
| スポーツクラブ | なし | あり | クラブ財 |
| 国防 | なし | なし |
ステップ5: コモンズの悲劇を数値で考える
共有の漁場に10隻の漁船があるとします。
全員がこれを考えると、全員が乱獲します。その結果、資源が枯渇して翌年は全体で50トンしか獲れなくなります。
| 全員が自制 | 全員が乱獲 | |
|---|---|---|
| 今年の漁獲 | 100トン | 200トン |
| 来年の漁獲 | 100トン | 50トン |
| 再来年の漁獲 | 100トン | 20トン |
短期的には乱獲が得ですが、長期的には全員が損をします。囚人のジレンマとまったく同じ構造です。
ステップ6: 対策を考える
| 対策 | 内容 | 背景にある考え方 |
|---|---|---|
| 漁業権の設定 | 特定の者だけが漁をできるようにする | 所有権の設定(コースの定理) |
| 漁獲量の規制 | 総量を決めて配分する | 直接規制 |
| 入漁料の徴収 | 利用に価格をつける | ピグー税 |
| 譲渡可能な漁獲枠 | 漁獲枠を売買できるようにする | 排出権取引 |
第2節で学んだ外部性の是正手段が、そのまま共有資源の問題にも使えることがわかります。共有資源の過剰利用も、他の利用者に対する負の外部効果だと捉えられるためです。
ステップ7: 準公共財の例
橋、道路、教育などは準公共財です。
このように、程度の問題として捉えられる財が多くあります。「純粋な公共財」は現実には多くなく、多くは準公共財だと考えてよいでしょう。

財の4分類(公共財・私的財・クラブ財・共有資源)
試験のポイント
| 払わなくても使えてしまう → 払う理由がない |
| 非競合性 | 他の人が使っても自分の分は減らない → 遠慮する理由もない |
私的財であれば、お金を払わなければ手に入りません。だから対価を支払います。公共財ではその強制力が働かないため、みんなが「誰かが払ってくれるだろう」と考えてしまいます。
③ 公共財の供給は過少になる
フリーライダー問題 → 市場の取引に任せていては、十分な量の公共財の供給が行われない(過少供給)
このため、公共財は政府、公的機関により供給が行われることが多いのです。
④ 政府が供給する仕組み
政府が公共財を供給できるのは、税という形で強制的に対価を徴収できるからです。
民間企業は「払わない人を締め出す」ことができないので事業が成り立ちません。しかし政府は「払わない人に納税を強制する」ことができます。この違いが、公共財の供給を政府が担う理由です。
| 民間企業 | 政府 | |
|---|---|---|
| 対価の徴収 | 払わない人を締め出す | 税として強制的に徴収する |
| 公共財の場合 | 締め出せないので成り立たない | 徴収できるので供給可能 |
⑤ 第2節との関係
公共財は正の外部効果が働いている特殊なケースとみなせる、と第1テーマで述べました。
結論が一致しています。公共財は、外部経済が極端に強く働いているケースだと捉えることができます。ある人が購入した公共財の便益が、対価を払っていない全員に及ぶからです。
⑥ 民間供給の工夫
なお、公共財がまったく民間で供給されないわけではありません。次のような工夫によって供給される例もあります。
| 工夫 | 例 |
|---|---|
| 広告収入で賄う | 民間放送(番組は公共財だが、広告主から収入を得る) |
| 寄付を募る | 公園の整備、文化財の保護 |
| 抱き合わせ販売 | 花火大会の有料観覧席 |
| 排除技術の開発 | 有料放送のスクランブル |
とはいえ、これらの工夫が使えない財(国防、消防など)については、やはり政府が供給せざるを得ません。
⑦ 供給量の決め方の難しさ
政府が公共財を供給するとしても、どれだけ供給すればよいかを決めるのは簡単ではありません。
私的財なら、各人がいくらまで払う気があるかは購買行動に表れます。しかし公共財では、人々は自分の評価を正直に申告する誘因をもちません。「大切だ」と言えば税負担が増えるかもしれないし、「要らない」と言っても非排除性のおかげで使えてしまうからです。
このため、公共財の最適供給量の決定は、経済学でも難しい問題として扱われています。診断士試験で詳しく問われることはありませんが、「政府が供給すれば万事解決」というわけではない、という点は知っておくとよいでしょう。
具体例
フリーライダー問題を数値で確かめてみましょう。
設定 ある地域に10人の住民がいます。防犯灯を設置すると、住民1人あたり年間5万円分の便益が得られます。設置費用は年間30万円です。
ステップ1: 社会全体で見て設置すべきか判断する
社会全体で見れば、設置したほうが20万円得です。設置すべきです。
ステップ2: 個人が単独で設置するか考える
1人の住民が自腹で設置する場合を考えます。
明らかに損なので、誰も単独では設置しません。
ステップ3: 話し合って分担する場合を考える
10人で3万円ずつ分担すれば
全員が得をするので、合意できそうです。
ステップ4: ただ乗りの誘因を確かめる
ところが、1人だけ「私は払わない」と言ったらどうなるでしょうか。
残り9人が3.33万円ずつ負担すれば設置できます。このとき
| 便益 | 負担 | 差引 | |
|---|---|---|---|
| 払わない1人 | 5万円 | 0 | 万円 |
| 払う9人 | 5万円 | 3.33万円 | 万円 |
払わない人のほうが得です。しかも防犯灯は非排除的なので、払わない人も照らされます。
ステップ5: 全員がそう考えるとどうなるか
全員が「自分は払わずに済ませたい」と考えます。その結果、誰も払わず、防犯灯は設置されません。
社会全体では20万円の得になるはずだったのに、実現しませんでした。これがフリーライダー問題による過少供給です。
ステップ6: 政府が介入する場合
自治体が防犯灯を設置し、住民税として1人3万円ずつ徴収するとしましょう。
社会全体の余剰20万円が実現しました。政府の介入によって、市場では実現しなかった望ましい状態が達成されたわけです。
ステップ7: 第2節・第3章と比べる
| 市場に任せると | 政府の介入 | |
|---|---|---|
| 市場の失敗がない場合(第3章) | 総余剰が最大 | 死荷重が生じる |
| 外部不経済(第2節) | 供給が過大 | 課税で改善 |
| 公共財(この節) | 供給が過少(ゼロのことも) | 政府が供給して改善 |
市場の失敗の類型によって、介入の必要性も方向も変わることが確認できます。
ステップ8: 囚人のジレンマとの共通点
このフリーライダー問題は、第4章で学んだ囚人のジレンマとよく似た構造をしています。
| 囚人のジレンマ | フリーライダー問題 | |
|---|---|---|
| 全員が協調すれば | 両者とも高い利得 | 公共財が供給され全員が得 |
| 個人にとっては | 裏切りが有利 | ただ乗りが有利 |
| 結果 | 双方が裏切り、低い利得 | 誰も払わず、供給されない |
| 分類 | パレート非効率 | パレート非効率 |
自分の利益だけを考えて合理的に行動すると、全員にとってより悪い結果になる。この構造が、公共財にも表れています。

フリーライダー問題
試験のポイント
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