企業行動の分析
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プレミアムで見る前節までで、企業は価格を受け取ってから となる生産量を選ぶ、という行動が見えてきました。ということは、価格をいろいろに変えながらそのつど最適な生産量を拾っていけば、価格と供給量の対応表ができあがります。これが供給曲線です。つまり供給曲線の正体は限界費用曲線であり、第2節で描いたU字型の曲線がそのまま使えます。ただし、すでに操業している企業とこれから参入しようとする企業とでは、どこから上を供給曲線とみなすかが変わります。後半では、価格が動いたときに供給量がどれだけ反応するかを測る供給の価格弾力性を取り上げ、グラフの傾きとの対応を確認します。
簡単にいうと
供給曲線って結局なんだったの?という疑問に、ここで答えが出るよ。答えはずばり「限界費用曲線」!企業はP=MCで生産量を決めるんだから、価格が動けばMC曲線の上を滑っていくだけなんだ。
① 供給曲線とは何か
供給曲線とは、与えられた価格に対して最適な(つまり利潤が最大になる)供給量を表した曲線です。グラフで与えられたときは、「価格(縦軸)がいくらなら、供給量(横軸)はどれだけになるか」という見方で読みます。
需要曲線を読むときは「この価格ならいくつ買われるか」と考えますが、供給曲線もまったく同じ読み方です。原因が価格、結果が数量、という向きを押さえておいてください。
② なぜ限界費用曲線が供給曲線になるのか
企業は前節の結論に従い、価格 = 限界費用となるように供給量を決めます。ということは、市場価格がいくらであっても、企業は限界費用曲線をたどって供給量を選ぶことになります。
具体的に追ってみましょう。
具体例
費用関数 の企業について、供給曲線を導いてみましょう。
ステップ1: 限界費用を求める

供給曲線の導出(MC曲線との関係)
試験のポイント
簡単にいうと
同じ限界費用曲線でも、「どこから上を供給曲線とみなすか」は企業の立場で変わるよ。すでに工場を建てちゃった企業と、これから建てるか考えている企業では、判断基準が違うんだ。ここもサンクコストの考え方が効いてくるところ!
① 2つのケースを分けて考える
企業はプライステイカーとして に従って生産量を決めますが、そもそも「どんな価格でも生産を行うのか」という問題が残っています。ここは次の2つのケースに分けて考えなければなりません。
| 企業の立場 |
|---|
簡単にいうと
ここからは「価格が動いたとき、供給量はどれくらい敏感に反応する?」という話。測るものさしが供給の価格弾力性だよ。まずは変化率の計算から。分母に「元の値」を置くのがポイント!
① 変化率とは
弾力性の話に入る前に、変化率の計算を確認しておきます。ある変数 について、その変化分を (デルタ・エックス)と書きます。変化率は
簡単にいうと
弾力性はグラフの形にもちゃんと表れるよ。ひとことで言うと「寝ている供給曲線ほど弾力性が大きい」!縦軸が価格、横軸が数量というグラフの約束を思い出しながら確認しよう。
① 傾きが緩やかな供給曲線ほど弾力性は大きい
2本の供給曲線 と
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こうして得られる(価格, 供給量)の組合せを並べたものが供給曲線ですが、その組合せはすべて限界費用曲線の上にあります。したがって、
限界費用曲線が、そのまま供給曲線に相当する
という結論になります。
③ 供給曲線が右上がりになる理由
限界費用曲線がU字型であることを思い出してください。企業が実際に選ぶのは、 曲線の右上がりの部分です。左下がりの部分では となる点があっても、そこは利潤が最小になる点であって最大になる点ではありません。
そのため、供給曲線は右上がりになります。「価格が上がれば供給量が増える」という、ごく当たり前に見える性質の裏には、限界費用が逓増するという生産技術上の事情があるわけです。
④ 供給曲線の下の面積が意味するもの
少し先取りになりますが、供給曲線(=限界費用曲線)の下側の面積は、可変費用の総額に一致します。前節で「可変費用は限界費用を積み上げたもの」と確認したからです。
この性質は第3章の余剰分析で、生産者余剰を「価格線の下、供給曲線の上」の面積として読み取るときの根拠になります。いまのうちに、供給曲線が単なる線ではなく費用の情報を担っていることを意識しておくと後が楽です。
ステップ2: 利潤最大化条件を立てる
より
ステップ3: 供給関数の形に直す
供給曲線は「価格が与えられたときの供給量」を表すので、 について解きます。
これがこの企業の供給関数です。
ステップ4: 価格ごとの供給量を確かめる
| 価格 | 供給量 |
|---|---|
| 6 | 1 |
| 8 | 2 |
| 10 | 3 |
| 12 | 4 |
価格が2上がるごとに供給量が1ずつ増えています。右上がりの供給曲線になっていることが数値からも確認できます。
ステップ5: どこから上が供給曲線かを確かめる
平均可変費用は です。これは右上がりの直線なので、最小値は のときの4になります。
したがって価格が4以下では供給量はゼロです。供給関数に を代入すると となり、きちんと整合しています。 の領域でのみ、この企業は正の量を供給します。
ステップ6: グラフでの見え方
を、縦軸に価格、横軸に数量をとって描くと、縦軸切片4から右上がりに伸びる直線になります。企業が実際に供給するのはこの直線上の の部分であり、それより下では横軸(供給量ゼロ)に張りつきます。つまり供給曲線は、縦軸の0から4までを縦に走り、そこから 曲線に乗り移る、という形になります。
| すでに産業に参入している企業 | 限界費用曲線の操業停止点より上の部分 |
| これから参入しようとする企業 | 限界費用曲線の損益分岐点より上の部分 |
② すでに参入している企業のケース
この企業はすでに固定費用を支払っており、しかもその多くはサンクコストになっています。工場も機械も手元にあり、いまさら支払いを取り消すことはできません。
そうであれば、判断すべきは「この価格で操業を続けるか、止めるか」だけです。前節の結論のとおり、
となります。したがって供給曲線は、限界費用曲線のうち操業停止点より上の部分になります。操業停止価格より下では供給量ゼロなので、グラフでは縦軸に沿って立ち上がり、操業停止点から 曲線に乗り移る形になります。
③ これから参入しようとする企業のケース
こちらはまだ固定費用を支払っていません。設備投資をするかどうかも含めて、これから決められる立場です。
この企業は、利潤が正になるような価格が成立していれば参入し、 となるように生産します。しかし利潤が負になるような価格、つまり損益分岐価格より低い価格しか成立していないのであれば、わざわざ参入して赤字を引き受ける理由がありません。
したがって供給曲線は、限界費用曲線のうち損益分岐点より上の部分になります。
④ 2つのケースの違いを生むもの
同じ費用構造の企業なのに判断が分かれるのは、固定費用がすでに支払い済み(サンク)かどうかという一点の違いによります。
第1節で学んだサンクコストの考え方が、そのまま供給行動の違いとして表れているわけです。
⑤ 市場全体の供給曲線
ここまでは1企業の供給曲線を見てきましたが、以降の章では市場全体の供給曲線を扱うことが増えます。
市場全体の供給量は、個別企業の供給量の合計です。ある価格のもとで各企業がいくら供給するかを求め、それらを横方向に足し合わせれば市場全体の供給曲線が得られます。この足し方を水平和と呼びます。
考え方も形状も1企業の供給曲線と変わりません。右上がりであることも、価格が上がれば供給量が増えることも同じです。違うのは、同じ価格の上昇に対する数量の増え方が、企業の数だけ大きくなるという点だけです。
具体例
同じ費用構造をもつ企業が市場に何社いるかで、市場全体の供給曲線がどう変わるかを見てみましょう。
設定 各企業の費用関数は とします。前のテーマで求めたとおり、1企業の供給関数は です。
ステップ1: 1企業の供給量を確認する
| 価格 | 1企業の供給量 |
|---|---|
| 8 | 2 |
| 10 | 3 |
| 12 | 4 |
ステップ2: 同じ企業が100社いる場合の市場供給量を求める
市場全体の供給量 は、各社の供給量を足し合わせたものです。
| 価格 | 市場全体の供給量 |
|---|---|
| 8 | 200 |
| 10 | 300 |
| 12 | 400 |
ステップ3: 傾きを比べる
横軸に数量をとったグラフで見ると、市場全体の供給曲線のほうがずっと緩やかな傾きになります。企業数が多い市場ほど、価格の変化に対して数量が大きく動く、ということです。
ステップ4: 参入と退出でどう変わるか
各社の損益分岐価格を計算しておきましょう。平均費用は

参入済み企業と新規参入企業の供給曲線
試験のポイント
で求めます。分母が「元の値」である点に注意してください。変化後の値ではありません。
例 が100から150に増えたとします。このとき ですから、
となります。
② 供給の価格弾力性の定義
供給の価格弾力性とは、価格 が1%変化したときに供給量 が何%変化するかを表す指標です。式で書くと次のようになります。
最後の形への変形は、分数の割り算がひっくり返して掛けることになるからです。この形にしておくと、グラフの傾きとの関係が見やすくなります。
③ 弾力性の読み方
弾力性の値が意味するところは次のとおりです。
| 弾力性の値 | 意味 |
|---|---|
| 大きい | 価格の変化に対して供給量が敏感に反応する |
| 小さい | 価格が変わっても供給量があまり動かない |
| 1 | 価格の変化率と供給量の変化率が等しい |
| 0 | 価格が変わっても供給量はまったく動かない(垂直な供給曲線) |
供給の価格弾力性は通常プラスの値になります。価格が上がれば供給量も増えるので、分子と分母の符号がそろうためです。この点は、第2章で学ぶ需要の価格弾力性(価格が上がれば需要量は減るので、そのままだとマイナスになる)と異なります。
④ 何が弾力性を決めるのか
供給の価格弾力性は、生産をどれだけ機動的に増減できるかで決まります。
農産物の収穫直後や、生産に長い年月がかかる財では弾力性が小さくなる、というのは覚えておくと具体例として使えます。
具体例
問題 ある財について、市場価格が10円のときに供給量20個という組合せが成立していた。その後、市場価格が15円に上昇し、供給量が40個に増えたとする。この場合の供給の価格弾力性を求めよ。
ステップ1: 変化分を求める
ステップ2: それぞれの変化率を求める
分母は必ず「元の値」です。
ステップ3: 弾力性を計算する
答え 2
ステップ4: 意味を確認する
弾力性が2ということは、価格が1%上がると供給量が2%増える、という関係です。この財は価格の変化にかなり敏感に反応していることになります。
ステップ5: 別の形の式でも検算する
同じ値になりました。どちらの式を使っても構いません。
ステップ6: 元の値をどちらにとるかに注意する
もし「価格が15円から10円に下がり、供給量が40個から20個に減った」という向きで問われたらどうなるでしょうか。
値が2ではなく1.5になりました。変化の向きによって基準となる「元の値」が変わるためです。試験では問題文がどちらを出発点にしているかを必ず確認してください。
試験のポイント
ここで価格が から へ同じだけ上昇したとき、それぞれの供給量がどう動くかを見ます。
同じ価格上昇に対して、緩やかな曲線のほうが供給量の増加幅が大きくなります。したがって
傾きが緩やかな供給曲線ほど、供給の価格弾力性は大きい
という結論になります。
② 式で確かめる
弾力性の式を再掲します。
2本の曲線を比べるとき、出発点の価格 と供給量 は共通なので、右側の は同じ値です。したがって違いを生むのは左側の だけです。
よって は のほうが大きくなり、弾力性も のほうが大きいことになります。
③ 傾きと の関係に注意
ここで混乱しやすいのが、グラフの「傾き」と の向きです。
経済学のグラフでは、縦軸に価格 、横軸に数量 をとる約束になっています。したがってグラフ上の傾きは 、つまり弾力性の式に出てくる の逆数です。
逆数の関係を一度整理しておけば、あとは「寝ている曲線は弾力的」と覚えるだけで済みます。
④ 極端な2つのケース
| 供給曲線の形 | 弾力性 | 意味 |
|---|---|---|
| 垂直(横軸と直角) | 0 | 価格が変わっても供給量はまったく動かない |
| 水平 | 無限大 | その価格ならいくらでも供給されるが、少しでも下がるとゼロになる |
垂直な供給曲線の例としては、その日に水揚げされた鮮魚や、コンサートの座席数のように、短期的に数量をまったく増やせないものが挙げられます。水平な供給曲線は、限界費用が一定で、その価格でいくらでも生産できる状況を表します。
⑤ 傾きだけで弾力性は決まらない
最後に注意点をひとつ。弾力性の式には という項も含まれています。したがって同じ1本の直線であっても、どの点をとるかで弾力性の値は変わります。
たとえば原点を通る直線の供給曲線であれば、どの点でも が一定なので弾力性は常に1になります。一方、縦軸に正の切片をもつ直線であれば、価格が高い点ほど弾力性は小さくなります。「傾きが緩やかなら弾力的」というのは、同じ点を出発点として2本を比べるときの話である、という限定を忘れないようにしてください。
具体例
同じ価格と供給量から出発する2つの産業を比べてみましょう。どちらも現在、価格100円で200個を供給しています。
設定
ステップ1: それぞれの弾力性を計算する
価格の変化率はどちらも です。
産業A:
産業B:
ステップ2: グラフ上の傾きを比べる
グラフの傾きは で計算します。
弾力性が大きい産業Aのほうが、グラフでは寝た曲線になっていることが確認できます。
ステップ3: 結果を表にまとめる
| 産業A | 産業B | |
|---|---|---|
| 価格の変化率 | 0.2 | 0.2 |
| 供給量の変化率 | 0.5 | 0.1 |
| 供給の価格弾力性 | 2.5 | 0.5 |
| グラフの傾き | 0.2(緩やか) | 1.0(急) |
| 解釈 | 弾力的 | 非弾力的 |
ステップ4: なぜ差がつくのかを考える
産業Aは設備に余力があるため、価格が上がればすぐに稼働率を上げて増産できます。産業Bは仕込みに1年かかるので、いま価格が上がったからといって今年の出荷量を大きくは増やせません。
同じ産業Bであっても、期間を5年と長くとれば設備も仕込みも増やせるため、弾力性は大きくなります。短期より長期のほうが弾力性は大きくなるという性質は、第3章以降で課税の負担が誰にどれだけ回るかを論じるときにも使われます。

供給の価格弾力性の比較
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
で、最小になるのは のとき()です。つまり損益分岐価格は10です。
こうして市場価格は、長期的には損益分岐価格である10に落ち着きます。参入と退出が自由であるという完全競争市場の前提が、ここで効いているわけです。