開発に関するガイドライン
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プレミアムで見るシステム開発を担当するベンダは、システム構想フェーズのユーザ企業によるベンダ選定の際、およびシステム構築フェーズの基本計画(要求分析/要件定義)終了後の計2回にわたって、システム開発費用の見積りを行うことが一般的です。この節では、ベンダがシステム開発費用の見積りを行う際に用いられる代表的な手法を学びます。令和6年度第16問では、7つの手法のうち5つが選択肢として並び、それぞれの説明を入れ替えた出題がされました。手法の名前と、その手法が「何に着目して見積もるのか」を1対1で結びつけておきましょう。
簡単にいうと
見積りは2回! ベンダ選定のときと、要件定義が終わったあと。そしてCOCOMOは「統計的コスト見積りモデル」——過去の統計値を積み上げておかないと使えないのがポイントだよ。
① ガイドラインとは
システムやソフトウェアの開発における代表的なガイドラインを、この章では扱います。
ここでのガイドラインとは、開発を進めるための雛形となる開発フレームワーク、開発現場で一般的に使用される手法などを含みます。
② 見積りを行う場面
システム開発を担当するベンダは、システム開発費用の見積りを行うことが一般的です。
その場面は計2回です。
| 回 | 場面 |
|---|---|
| 1回目 | システム構想フェーズのユーザ企業によるベンダ選定の際 |
| 2回目 | システム構築フェーズの基本計画(要求分析/要件定義)終了後 |
③ なぜ2回なのか
| 時点 |
|---|
具体例
見積りの2回が、発注者にとって意味すること
中小企業がシステムを発注する場面で考えます。
1回目:ベンダ選定の際
| 発注者が出す情報 | ベンダが出す見積り |
|---|---|
| 「販売管理システムがほしい」 | 概算 1,500万円 |
| 「顧客は500社、商品は3,000点」 |
この段階で分かっていないこと
| 項目 | 状態 |
|---|---|
| 画面の数 | 決まっていない |

見積りを行う場面とCOCOMO(1/3)

見積りを行う場面とCOCOMO(2/3)

見積りを行う場面とCOCOMO(3/3)
試験のポイント
簡単にいうと
ファンクションポイント法は「機能の数を数える」!行数で測るLOC法と比べて、ユーザの理解を得やすいのが強みだよ。開発の初期段階から使えるのも大事なポイント。
① ファンクションポイント法とは
ファンクションポイント法は、作るシステムから入力や出力といった機能を数え上げ、1つずつ難しさに応じた重みを掛けて点数にし、その合計で規模を測るやり方です。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 入力や出力などの機能(ファンクション)を抽出する |
| ② | それぞれの難易度や複雑さに応じて重み付けする |
簡単にいうと
残り5つ! 令和6年度はこれらを入れ替えて出題されたよ。「WBSで洗い出した作業単位=ボトムアップ法」「過去の類似プロジェクト=類推法」「変動要因=CoBRA法」「データの構造や流れ=COSMIC法」だよ。
① ボトムアップ法
ボトムアップ法は標準タスク法ともよばれ、WBSで洗い出された作業単位ごとに工数を見積り、この合計をシステム全体の工数と考えて開発規模を見積る手法です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 別名 | 標準タスク法 |
| 出発点 | WBSで洗い出された作業単位 |
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| 見積りの精度 |
|---|
| ベンダ選定の際 | 大まかな要望だけ | 粗い |
| 要件定義終了後 | 何を作るかが固まっている | 細かい |
1回目の見積りは、発注先を決めるための概算です。要件が固まる前の数字なので、確定した金額ではありません。
④ この違いがトラブルのもとになる
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 最初に出た見積りが最終金額 | 要件定義後に改めて見積もる |
| 要件が増えても金額は変わらない | 作るものが増えれば費用も増える |
発注者として、「この見積りはどの段階のものか」を確認する——診断士として助言できる点です。
⑤ COCOMO(COnstructive COst MOdel)
COCOMOとは、B.W.ベームが提案した代表的な統計的コスト見積りモデルです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 提案者 | B.W.ベーム |
| 性格 | 代表的な統計的コスト見積りモデル |
⑥ COCOMOの考え方
COCOMOでは、ソフトウェアの生産性に影響を与えるさまざまな要因を明らかにし、開発形態や開発規模に応じたモデル式によって、ソフトウェア開発の工数や期間を推定します。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | ソフトウェアの生産性に影響を与えるさまざまな要因を明らかにする |
| ② | 開発形態や開発規模に応じたモデル式を使う |
| ③ | ソフトウェア開発の工数や期間を推定する |
⑦ COCOMOの前提条件
COCOMOは、プログラムの規模を土台に、見積りをどの精度で行うか、どういう要員構成かといった係数を掛け合わせて工数を出します。この係数は自社の実績から決めるものなので、過去の開発環境と要員の力量を数値でためておかないと動きません。
| 用いる要素 |
|---|
| プログラムの大きさ |
| 見積り対象レベル |
| 開発要員の構成 |
必要な前提
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| 統計値の累積 | 開発環境や開発要員の能力を統計値として累積しておく必要がある |
⑧ 統計値がないと使えない
| 状況 | COCOMOが使えるか |
|---|---|
| 過去の開発実績が蓄積されている | 使える |
| 初めての開発 | 使えない |
| 開発体制が毎回変わる | 精度が落ちる |
「過去の積み上げがあって初めて機能する手法」——これがCOCOMOの性格です。
⑨ 統計的コスト見積りモデルとは
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| 過去のデータから法則を見つける | この規模ならこれくらいの工数 |
| モデル式に当てはめる | 今回の規模を入れれば工数が出る |
⑩ 「プログラムの大きさに基づく」点
COCOMOは、プログラムの大きさ(規模)を出発点にします。
| 出発点 | 手法 |
|---|---|
| プログラムの大きさ(行数) | COCOMO、LOC法 |
| 機能の数 | ファンクションポイント法 |
| 作業単位 | ボトムアップ法 |
何を出発点にするかで、手法が分かれる——この整理が、次のテーマ以降の理解の土台になります。
⑪ 7つの手法を先に俯瞰する
| 手法 | 何に着目するか |
|---|---|
| COCOMO | 統計値に基づくモデル式 |
| ファンクションポイント法 | 入力や出力などの機能 |
| ボトムアップ法 | WBSで洗い出された作業単位 |
| トップダウン法 | 全体を細分化する |
| 類推法 | 過去の類似プロジェクトの実績 |
| CoBRA法 | 見積り熟練者の経験および知識(変動要因) |
| COSMIC法 | データの構造や流れ |
この一覧を頭に入れておくと、それぞれの説明が入れ替えられていても気づけます。
| 決まっていない |
| 他システムとの連携 | 決まっていない |
2回目:要件定義終了後
| 確定したこと | 見積り |
|---|---|
| 画面42本、帳票18種、連携3件 | 2,100万円 |
なぜ増えたのか
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 要件が具体化した | 想定より機能が多かった |
| 連携が必要と分かった | 当初は見込んでいなかった |
発注者として備えること
| 備え | 内容 |
|---|---|
| 要件定義を別契約にする | 要件定義だけ先に発注し、その後に本契約 |
| 概算であることを確認する | どの段階の見積りかを明示してもらう |
| 予備費を見込む | 概算の2〜3割 |
「要件定義を別契約にする」のが実務的
| 一括契約 | 分割契約 | |
|---|---|---|
| 要件が固まる前に金額を決める | する | しない |
| ベンダのリスク | 大きい(余裕を見た金額になる) | 小さい |
| 発注者のリスク | 追加費用でもめる | 段階的に判断できる |
COCOMOが中小企業の案件で使われにくい理由
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 統計値の累積が必要 | 小規模なベンダでは蓄積が少ない |
| 規模が小さい | 統計的なばらつきが大きい |
| 開発体制が毎回違う | 要員の能力が安定しない |
実務では類推法が多い
| 手法 | 実務での使われ方 |
|---|---|
| 類推法 | 「前に似た案件があったから、あれくらい」 |
| ボトムアップ法 | 「作業を洗い出して積み上げる」 |
この2つが現実的に多く使われます。
見積りが外れる要因
| 要因 | 内容 |
|---|---|
| 要件が変わる | 後から機能が追加される |
| 顧客の協力度合い | 確認に時間がかかる |
| 技術的な難易度 | やってみたら難しかった |
| 要員の能力 | 想定した生産性が出ない |
2つ目がとくに見落とされる
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 発注者が確認に2週間かける | その間、開発が止まる |
| 決裁に時間がかかる | 待ち時間が積み上がる |
発注者側の体制も、見積りの前提です。この要因を織り込むのが、後で学ぶCoBRA法の発想です。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a ベンダは、ベンダ選定の際と、基本計画(要求分析/要件定義)終了後の計2回にわたって、システム開発費用の見積りを行うことが一般的である。
> b COCOMOは、B.W.ベームが提案した代表的な統計的コスト見積りモデルである。
> c COCOMOを用いるには、開発環境や開発要員の能力を統計値として累積しておく必要がある。
解答 a:○ b:○ c:○
いずれも正しい記述です。COCOMOは「統計的コスト見積りモデル」であり、統計値の累積が前提——この点を押さえておきましょう。
| 点数化して開発規模を見積る |
② 5つの機能区分
ファンクション数を算出する際は、機能を5つに区分します。
| 機能 |
|---|
| 外部入力 |
| 外部出力 |
| 内部論理ファイル |
| 外部インタフェースファイル |
| 外部照会 |
③ 複雑度別の重み
各機能について、単純・普通・複雑の複雑度別に個数を数え、重みを掛けます。
| 機能 | 単純 | 普通 | 複雑 |
|---|---|---|---|
| 外部入力 | ×3 | ×4 | ×6 |
| 外部出力 | ×4 | ×5 | ×7 |
| 内部論理ファイル | ×7 | ×10 | ×15 |
| 外部インタフェースファイル | ×5 | ×7 | ×10 |
| 外部照会 | ×3 | ×4 | ×6 |
④ 算出の手順
| 順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 外部入力・外部出力・内部論理ファイルなどを、複雑さの段階ごとに何個あるか数える |
| ② | 段階ごとに決められた重みを掛け、全部足してファンクション数を出す |
| ③ | 1ファンクションあたりに必要となる開発工数などをファンクション数に乗じて、ファンクションポイントを算出する |
⑤ 重みの意味
| 機能 | 重みの傾向 |
|---|---|
| 内部論理ファイル | 最も重い(7〜15) |
| 外部インタフェースファイル | 次に重い(5〜10) |
| 外部出力 | 中程度(4〜7) |
| 外部入力・外部照会 | 軽い(3〜6) |
ファイル(データ構造)の設計が、最も手間がかかる——重みの大小が、この実感を反映しています。
⑥ LOC法との比較
ファンクションポイント法は開発現場で広く普及している手法です。
従来用いられていたプログラムの行数により開発規模を見積もるLOC法(Lines Of Code法)(またはプログラムステップ法)と比較されます。
| LOC法 | ファンクションポイント法 | |
|---|---|---|
| 測るもの | プログラムの行数 | 機能の数と複雑さ |
| 別名 | プログラムステップ法 | — |
⑦ ファンクションポイント法のメリット
LOC法と比較し、以下のようなメリットがあります。
| メリット |
|---|
| 機能の数から測るので、行数が何行になるか見えていない段階でも使える |
| 「機能が多ければ手間も増える」という理屈が素直なので、発注する側にも納得してもらいやすい |
| 早い段階から使えるぶん、予算を組むのが楽になる |
⑧ 3つのメリットを整理する
| メリット | 何が嬉しいか |
|---|---|
| 行数が不透明でも使える | プログラミング言語や作り方に左右されない |
| ユーザの理解を得やすい | 「機能が多いから高い」は納得しやすい |
| 開発の初期段階から採用できる | 予算を立てやすい |
⑨ LOC法の問題点
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 行数は作り方で変わる | 同じ機能でも、言語や書き方で行数が違う |
| ユーザには分からない | 「5万行だから高い」と言われても判断できない |
| 後にならないと分からない | 設計が終わるまで行数は見えない |
行数を増やすほど見積りが高くなる
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 効率の悪いプログラムのほうが高く見積もられる | 作る側に不合理な動機が生まれる |
ファンクションポイント法はこの問題を避けられます。
⑩ ユーザの理解を得やすい理由
| 説明 | 納得できるか |
|---|---|
| 「プログラムが5万行あります」 | 判断できない |
| 「入力画面が20本、帳票が15種、ファイルが8つあります」 | 分かる |
機能の数は、ユーザが自分で数えられる——これが理解を得やすい理由です。
⑪ 開発の初期段階から使える理由
| 段階 | 分かること |
|---|---|
| 要件定義 | どんな画面・帳票が要るか |
| 設計 | どんな処理をするか |
| プログラミング | 何行になるか |
機能の数は、要件定義の段階で見えます。行数が見えるのはずっと後です。
具体例
ファンクションポイント法で見積もってみる
小規模な受注管理システムを例にします。
手順① 機能を数える
| 機能区分 | 具体例 | 単純 | 普通 | 複雑 |
|---|---|---|---|---|
| 外部入力 | 受注入力、顧客登録、商品登録 | 2 | 3 | 1 |
| 外部出力 | 受注一覧、納品書、請求書 | 1 | 2 | 1 |
| 内部論理ファイル | 受注、顧客、商品、在庫 | 1 | 2 | 1 |
| 外部インタフェースファイル | 会計システムへの連携 | 0 | 1 | 0 |
| 外部照会 | 在庫照会、受注照会 | 2 | 1 | 0 |
手順② 重みを掛けて合算する
| 機能 | 計算 | 小計 |
|---|---|---|
| 外部入力 | 2×3 + 3×4 + 1×6 | 24 |
| 外部出力 | 1×4 + 2×5 + 1×7 | 21 |
| 内部論理ファイル | 1×7 + 2×10 + 1×15 | 42 |
| 外部インタフェースファイル | 0×5 + 1×7 + 0×10 | 7 |
| 外部照会 |
手順③ 開発工数を求める
| 前提 | 値 |
|---|---|
| 1ファンクションあたりの開発工数 | 0.5人月 |
| 開発工数 | 104 × 0.5 = 52人月 |
| 前提 | 値 |
|---|---|
| 1人月あたりの単価 | 80万円 |
| 開発費用 | 52 × 80 = 4,160万円 |
見えてくること
| 発見 | 内容 |
|---|---|
| 内部論理ファイルの比重が高い | 42/104=40% |
| データ設計が費用の中心 | 表を減らせば費用が下がる |
費用を下げる相談ができる
| 相談 | 効果 |
|---|---|
| 「この帳票は本当に必要か」 | 外部出力を減らす |
| 「この連携は後回しにできないか」 | 外部インタフェースファイルを減らす |
| 「この画面は既存の画面で兼ねられないか」 | 外部入力を減らす |
機能単位で費用が見えるから、削る相談ができる——これが発注者にとっての実務的な価値です。
LOC法だとこうはいかない
| 説明 | 相談できるか |
|---|---|
| 「全体で8万行です」 | どこを削ればよいか分からない |
| 「帳票1種で7ポイントです」 | この帳票を削れば下がると分かる |
「1人月80万円」という考え方
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| 人月 | 1人が1か月作業する量 |
| 52人月 | 1人なら52か月、10人なら5.2か月 |
人月は単純に割れない
| 人数 | 期間 | 実際は |
|---|---|---|
| 1人 | 52か月 | — |
| 10人 | 5.2か月 | もっとかかる |
| 52人 | 1か月 | 不可能 |
理由
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 連携の手間が増える | 人数が増えるほど調整が必要 |
| 教育の時間がかかる | 新しい人に説明する |
| 並行できない作業がある | 設計が終わらないと作れない |
「人を増やせば早く終わる」は成り立たない
この点は、後で学ぶクラッシング(クリティカルパス上に資源を投入して期間を短縮する)の限界にもつながります。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。(令和6年度第16問 改題)
> a ファンクションポイント法とは、開発するシステムの入力や出力などの機能を抽出し、それぞれの難易度や複雑さに応じて重み付けし点数化することによって、ソフトウェアの開発規模を見積もる方法である。
> b ファンクションポイント法は、開発の初期段階から採用できるため、ユーザが予算を立てやすい。
> c LOC法は、プログラムの機能数により開発規模を見積もる手法である。
解答 a:○ b:○ c:×

システム開発の見積り手法
試験のポイント
| 考え方 |
| 作業単位ごとの工数を合計する |
WBS(Work Breakdown Structure:作業分割図)は、次節で学びます。
② トップダウン法
トップダウン法とは、全体システムを見積り可能なサイズのソフトウェアコンポーネントに細分化する見積り手法です。
| ボトムアップ法 | トップダウン法 | |
|---|---|---|
| 方向 | 小さい単位から積み上げる | 全体を細分化する |
③ 類推法
類推法とは、過去の類似プロジェクトの実績を基礎に見積る方法です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出発点 | 過去の類似プロジェクトの実績 |
最も直感的で、実務でもよく使われる手法です。
④ CoBRA法(Cost estimation, Benchmarking and Risk Assessment法)
開発コストが規模だけで決まらない理由
ソフトウェアの開発コストは、開発規模(製作したソースコード量や実現した機能量など)だけではなく、要求内容の変動や顧客の協力度合いなど、開発プロジェクトに介在する多種多様な要因(変動要因)に影響されます。
| 影響する要因 |
|---|
| 開発規模(ソースコード量、機能量) |
| 要求内容の変動 |
| 顧客の協力度合い |
⑤ 従来の限界
しかしプロジェクトの初期段階では、組織やプロジェクトに特有の変動要因を見極めること、また、その影響を定量的に把握することが困難であることから、それに近い値を推定する手法で開発コストの見積りが行われてきました。
⑥ CoBRA法の内容
CoBRA法は、経験豊富なプロジェクトマネージャなどの見積り熟練者の経験および知識を抽出し、それを変動要因として定義・定量化することで、透明性と説明性が高いコスト見積りを実現する方法です。
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 見積り熟練者の経験および知識を抽出する |
| ② | それを変動要因として定義・定量化する |
| ③ | 透明性と説明性が高いコスト見積りを実現する |
⑦ CoBRA法の仮定
開発工数は開発規模に比例することを仮定するとともに、さまざまな変動要因によって工数増加が発生することを加味しています。
| 前提 | 内容 |
|---|---|
| 基本 | 開発工数は開発規模に比例する |
| 加味するもの | さまざまな変動要因によって工数増加が発生する |
⑧ 「変動要因」がCoBRA法の目印
| 選択肢の語 | 対応する手法 |
|---|---|
| 変動要因によって工数増加が発生することを加味 | CoBRA法 |
令和6年度の本試験では、この内容が「COSMIC法」の説明として出題され、誤りとされました。
⑨ COSMIC法
COSMIC法は、ソフトウェアの機能規模をユーザ視点から評価し、データの構造や流れに着目してソフトウェアの開発規模を見積る方法です。
利用者機能要件と機能プロセスに着目して、機能プロセスごとにデータの構造や流れを計測します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 評価の視点 | ユーザ視点 |
| 着目するもの | データの構造や流れ |
| 計測の単位 | 利用者機能要件と機能プロセス |
⑩ COSMIC法の適用範囲
適用範囲が広く、ビジネスアプリケーションのほかにもリアルタイムシステムや組込みシステムにも適用できます。
| 適用できるシステム |
|---|
| ビジネスアプリケーション |
| リアルタイムシステム |
| 組込みシステム |
⑪ ユーザ視点で評価(利用者機能要件)
ユーザの観点からソフトウェアがどのようなデータの流れを持っているかを分析し、実際に使われる機能を重視した評価ができるため、ユーザにとっての価値を明確に測定できます。
⑫ データの構造や流れに基づいて計測
COSMIC法は、データの流れを4つの基本的な操作(エントリ、エグジット、読込み、書込み)に分類して計測します。
4つの動作がどのくらいあるかを測ることで、ソフトウェアの機能規模を定量化します。
| 操作 | 内容 |
|---|---|
| エントリ(Entry) | 外部からソフトウェアにデータが入る動作 |
| エグジット(Exit) | ソフトウェアから外部にデータが出る動作 |
| 読込み(Read) | 内部のデータを読み取る動作 |
| 書込み(Write) | 内部にデータを書き込む動作 |
⑬ 4つの操作の覚え方
| 方向 | 対象 | 操作 |
|---|---|---|
| 入る | 外部から | エントリ |
| 出る | 外部へ | エグジット |
| 読む | 内部の | 読込み |
| 書く | 内部に | 書込み |
外部とのやり取りが2つ、内部とのやり取りが2つ——この対称性で整理できます。
⑭ DFDとの関係
COSMIC法が着目する「データの構造や流れ」は、第9章で学んだDFDが表すものと同じです。
| DFD | COSMIC法 | |
|---|---|---|
| 着目するもの | データの流れと処理の関係 | データの構造や流れ |
データの流れを図にできれば、COSMIC法で計測できる——この関係があります。
⑮ 7つの手法の判別キーワード
| 選択肢の語 | 対応する手法 |
|---|---|
| 統計的コスト見積りモデル、B.W.ベーム | COCOMO |
| 入力や出力などの機能を抽出し重み付けし点数化 | ファンクションポイント法 |
| WBSで洗い出された作業単位ごとに工数を見積り | ボトムアップ法(標準タスク法) |
| 全体システムを見積り可能なサイズに細分化 | トップダウン法 |
| 過去の類似プロジェクトの実績 | 類推法 |
| 変動要因によって工数増加が発生することを加味 | CoBRA法 |
| データの構造や流れに着目 | COSMIC法 |
具体例
設例 見積り手法の判別
> 次の正誤を判定せよ。(令和6年度第16問 改題)
> イ COCOMO法とは、データの構造や流れに着目してソフトウェアの開発規模を見積もる方法である。
> ウ COSMIC法とは、開発工数が開発規模に比例すると仮定するとともに、さまざまな変動要因によって工数増加が発生することを加味して開発規模を見積もる方法である。
> エ ファンクションポイント法とは、開発するシステムの入力や出力などの機能を抽出し、それぞれの難易度や複雑さに応じて重み付けし点数化することによって、ソフトウェアの開発規模を見積もる方法である。
> オ 類推法とは、WBSで洗い出された作業単位ごとに工数を見積もり、この合計をシステム全体の工数と考えて開発規模を見積もる方法である。
解答 イ:× ウ:× エ:○ オ:×
3つの誤りを整理する
| 選択肢 | 書かれている内容 | 本来の手法 |
|---|---|---|
| イ(COCOMO法) | データの構造や流れに着目 | COSMIC法 |
| ウ(COSMIC法) | 変動要因によって工数増加 | CoBRA法 |
| オ(類推法) | WBSで洗い出された作業単位 | ボトムアップ法 |
名前を1つずつずらしている
| 本来の手法 | 誤って付けられた名前 |
|---|---|
| COSMIC法 | COCOMO法 |
| CoBRA法 | COSMIC法 |
COCOMO・CoBRA・COSMICは名前が似ている
| 手法 | 読み | 押さえどころ |
|---|---|---|
| COCOMO | ココモ | 統計的コスト見積りモデル、B.W.ベーム |
| CoBRA | コブラ | 見積り熟練者の経験、変動要因 |
| COSMIC | コスミック | データの構造や流れ、4つの操作 |
「Co」で始まる3つを区別するのが、この論点の要です。
それぞれの正式名称から思い出す
| 手法 | 正式名称 | 手がかり |
|---|---|---|
| COCOMO | COnstructive COst MOdel | Cost Model → コスト見積りモデル |
| CoBRA | Cost estimation, Benchmarking and Risk Assessment | Risk Assessment → リスク(変動要因)の評価 |
| COSMIC | — | データの構造や流れ |
CoBRAの「Risk Assessment」が手がかり
変動要因=リスク要因と考えると、CoBRA法の内容と名前が結びつきます。
CoBRA法が扱う変動要因の例
| 変動要因 | 工数への影響 |
|---|---|
| 要求内容が変動しやすい | 増える |
| 顧客の協力度合いが低い | 増える |
| 技術者の経験が浅い | 増える |
| 既存システムとの連携が多い | 増える |
| 開発期間が極端に短い | 増える |
なぜ定量化するのか
| 従来 | CoBRA法 |
|---|---|
| 「なんとなく2割増し」 | 「顧客の協力度合いが低いので15%増、連携が多いので10%増」 |
| 根拠が説明できない | 透明性と説明性が高い |
発注者として見積りを受け取るとき
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 何を根拠に見積もったか | 手法によって精度が違う |
| どんな前提を置いているか | 前提が崩れると金額が変わる |
| 変動要因をどう見込んでいるか | 自社の協力体制も要因になる |
3つ目がとくに重要
| 発注者側の要因 | 対策 |
|---|---|
| 確認に時間がかかる | 回答期限を決めておく |
| 決裁に時間がかかる | 事前に承認ルートを整理する |
| 要望が後から出る | 要件定義を丁寧に行う |
「見積りが高い」と感じたとき、自社側の要因が織り込まれている可能性がある——CoBRA法の考え方を知っていると、この見方ができます。
COSMIC法が組込みシステムにも使える理由
| ファンクションポイント法 | COSMIC法 | |
|---|---|---|
| 想定するシステム | ビジネスアプリケーション(画面と帳票が中心) | ビジネスアプリケーション、リアルタイムシステム、組込みシステム |
組込みシステムの特徴
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 画面がない | 入力画面や帳票がない |
| センサーからデータが入る | エントリ |
| 機器を制御する | エグジット |
画面や帳票で数える方法では測れない
| 対象 | 数えられるか |
|---|---|
| 家電の制御ソフト | 画面がないので難しい |
| センサーの制御 | データの流れなら測れる |
データの流れで測るから、画面がなくても使える——これがCOSMIC法の適用範囲が広い理由です。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a ボトムアップ法は標準タスク法ともよばれ、WBSで洗い出された作業単位ごとに工数を見積り、この合計をシステム全体の工数と考える。
> b 類推法とは、過去の類似プロジェクトの実績を基礎に見積る方法である。
> c COSMIC法は、データの流れをエントリ、エグジット、読込み、書込みの4つの基本的な操作に分類して計測する。
解答 a:○ b:○ c:○
いずれも正しい記述です。「標準タスク法=ボトムアップ法」という別名も押さえておきましょう。

その他の見積り手法(1/2)

その他の見積り手法(2/2)
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
| 10 |
| ファンクション数 | 104 |