システム構成技術
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プレミアムで見る業務におけるコンピュータへの依存度が高まるにつれて、コンピュータに障害が起きたときに業務に与える支障が大きくなります。この節では、その障害に対する考え方を整理します。大きく分けると、障害が起きることを前提に備えるフォールトトレランスと、障害そのものを起こさないようにするフォールトアボイダンスの2つがあり、両者は対極の発想です。さらに、フェイルソフト・フェイルセーフ・フールプルーフといったよく似た名前の用語が並びます。令和3年度・7年度と続けて、説明を入れ替えた形で出題されている頻出分野です。
簡単にいうと
「壊れないようにする」んじゃなくて「壊れても動き続ける」——これがフォールトトレランス!そこから枝分かれするのがフェイルソフトとフェイルセーフ。継続を取るか、安全を取るかの違いだよ。
① 障害への2つの向き合い方
障害の発生に対処し得る信頼性の高いシステムをどのように構築するか、その設計思想の全体像は次のとおりです。
| 考え方 | 内容 |
|---|---|
| フォールトトレランス | 障害時にもシステムの運転を継続する |
| ├ フェイルソフト | 機能を低下させても運転を継続する → 全面停止を回避、継続重視 |
| └ フェイルセーフ | 被害が拡大しない方向に制御する → 安全性の重視 |
| フォールトアボイダンス | 障害の発生自体を防ぐ → 各構成要素の信頼性を上げる |
② フォールトトレランス(Fault Tolerance)
フォールトトレランスとは、故障や障害が発生したときに、システムの被害を最小限にとどめるように設計することです。
具体例
設例 障害対策の考え方
> 情報システムの信頼性設計に関する次の記述の正誤を判定せよ。(令和7年度第10問 改題)
> ア フェイルオーバとは、故障や障害が発生したときに、一部の機能を低下させても、限定的ながら重要な機能だけでも稼働し続けるように設計することである。
> エ フォールトマスキングとは、故障や障害が発生したときに、システムの被害を最小限にとどめるように設計することである。
解答 ア:× エ:×
判別のキーワード
| 選択肢の語 | 対応する用語 |
|---|---|
| 一部の機能を低下させても稼働し続ける | フェイルソフト |
| 被害を最小限にとどめるように設計する |

障害対策の考え方
試験のポイント
簡単にいうと
こっちは「そもそも壊さない」という発想!トレランスとは対極の考え方なんだ。ただし、部品の信頼性を上げるには限界があるから、両方を組み合わせるのが現実的。
① フォールトアボイダンス(Fault Avoidance)
フォールトアボイダンスとは、部品一つ一つの信頼性を高めることで、故障や障害が発生しないように設計することです。
障害そのものを発生させないようにするアプローチといえます。
② フォールトトレランスとの関係
システム構成要素の信頼性向上には限界があり、障害が発生することを前提として対策を行うフォールトトレランスとは対極となる考え方です。
| フォールトアボイダンス | フォールトトレランス | |
|---|---|---|
簡単にいうと
ここは似た名前が並ぶ難所!でも「設計概念」か「具体的な対応」か、で仕分ければ整理できるよ。フェイルソフトは概念、フォールバックは実際の動き——この対比が鍵。
① フールプルーフ(Fool Proof)
人為的な操作ミスがあっても危険が生じず、システムに異常が起こらないように設計することです。
ユーザが誤ったデータを入力した時にシステムがそれを感知して、ユーザに警告を出したり、再入力を促したりする仕組みです。
たとえば、パソコン操作で作成したファイルを保存しないで終了させようとすると警告が表示されます。これは終了指示が意図したものでなく誤った動作による可能性があることを配慮したものです。
② 名前の意味
fool proof は、直訳すれば「愚か者にも耐える」です。誰が操作しても間違いが起きないようにする、という設計思想を表しています。
③ 何が対象かで区別する
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フォールトトレランスを具体化した設計思想に、フェイルソフトとフェイルセーフがあります。
③ 名前から意味を引く
| 語 | 意味 |
|---|---|
| fault | 故障、欠陥 |
| tolerance | 耐性、許容 |
故障に耐える——これがフォールトトレランスの直訳です。「故障を許容する」という語感が、障害は避けられないものとして受け入れるという設計思想を表しています。
④ フェイルソフト(Fail Soft)
故障や障害が発生したときに、一部の機能を低下させても、限定的ながら重要な機能だけでも稼働し続けるように設計することです。
銀行ATMシステムにおいて、硬貨の取り扱いが停止しても紙幣の取り扱いのみで利用を続けるように、継続稼働が重視されるシステムに適用されます。
⑤ フェイルセーフ(Fail Safe)
障害が発生した場合、障害による被害が拡大しない方向に制御すること、またはその設計概念です。
列車の運行システムなど、一部の障害であっても致命的な影響を与え得るシステム(安全性が重視されるシステム)に適用されます。
⑥ 2つの違いは「何を優先するか」
| フェイルソフト | フェイルセーフ | |
|---|---|---|
| 優先するもの | 継続(全面停止を回避) | 安全(被害の拡大を防ぐ) |
| 障害時の動き | 機能を落として動き続ける | 安全な方向に止める/制御する |
| 適用される場面 | 継続稼働が重視されるシステム | 安全性が重視されるシステム |
| 例 | 銀行ATM(硬貨が使えなくても紙幣で継続) | 列車の運行システム |
⑦ 名前から導く
| 語 | 意味 | 導かれる動き |
|---|---|---|
| fail soft | soft=やわらかく | 急に止めず、やわらかく機能を落とす |
| fail safe | safe=安全に | 安全な状態に持っていく |
「やわらかく落とす」か「安全に止める」か——この対比で覚えられます。
⑧ なぜ適用場面が違うのか
| システム | 止まったら | 中途半端に動いたら |
|---|---|---|
| 銀行ATM | 顧客が困る | 紙幣だけでも使えたほうがよい |
| 列車の運行 | 乗客は待てばよい | 中途半端に動いたら事故になる |
「止まること」と「中途半端に動くこと」のどちらが危険か——この判断が、2つの設計思想を分けます。
ATMは、止まるより動いていたほうがよい。列車は、中途半端に動くより止まったほうがよい。業務の性質から、選ぶ設計思想が決まるわけです。
⑨ 身近な例で考える
| 場面 | 採用されている考え方 |
|---|---|
| 踏切の遮断機が故障 → 降りたままになる | フェイルセーフ(通さないほうが安全) |
| 信号機が故障 → 赤の点滅になる | フェイルセーフ |
| Webサイトの検索機能が故障 → 一覧表示だけは使える | フェイルソフト |
| 通販サイトの決済が一時停止 → 閲覧とカート追加は使える | フェイルソフト |
⑩ 第4節とのつながり
第4節で学んだRASISのうち、フォールトトレランスが高めるのは可用性です。
| 考え方 | 高めるRASISの要素 |
|---|---|
| フォールトトレランス | 可用性(止まらない、機能を落としてでも動く) |
| フォールトアボイダンス | 信頼性(そもそも故障しにくい) |
次のテーマで学ぶフォールトアボイダンスと合わせると、MTBFを伸ばすのがアボイダンス、止まる影響を小さくするのがトレランスという対応になります。
| 被害が拡大しない方向に制御する | フェイルセーフ |
銀行ATMで考える
ATMシステムに障害が発生した場合の対応を、2つの設計思想で比べます。
フェイルソフトの場合
| 故障した機能 | 対応 |
|---|---|
| 硬貨の取り扱い装置 | 硬貨の入出金は停止、紙幣のみで継続 |
| 通帳記入の機能 | 記帳は停止、入出金は継続 |
| 振込の機能 | 振込は停止、引き出しは継続 |
「できることだけでもやる」という発想です。
フェイルセーフだったら
| 故障 | 対応 |
|---|---|
| 金額の計算に異常を検知 | 直ちに取引を中止し、現金を出さない |
「間違うくらいなら止める」という発想です。
同じシステムでも、部分によって使い分ける
実はATMでも、お金の計算に関わる部分にはフェイルセーフが適用されています。
| 部分 | 設計思想 | 理由 |
|---|---|---|
| 硬貨・紙幣の取り扱い | フェイルソフト | 片方が使えれば業務は回る |
| 金額の計算 | フェイルセーフ | 間違った金額を出せば重大な損害 |
「機能を落としてよい部分」と「絶対に間違ってはいけない部分」を切り分ける——これが実際の設計です。
列車システムで考える
| 障害 | フェイルセーフの動き |
|---|---|
| 信号の状態が分からなくなった | 停止信号を出す(進ませない) |
| ブレーキの制御に異常 | 自動的にブレーキをかける |
| 踏切の制御に異常 | 遮断機を降ろす |
「分からないときは、危険な側ではなく安全な側に倒す」——これがフェイルセーフの原則です。
中小企業のシステムで考える
| システム | どちらを優先すべきか |
|---|---|
| 受注システム | フェイルソフト(注文だけでも受けたい) |
| 在庫引き当て | フェイルセーフ(誤って引き当てると出荷できない) |
| 工場の設備制御 | フェイルセーフ(安全が最優先) |
| 社内の情報共有 | フェイルソフト |
「止まって困るか、間違って困るか」を業務ごとに考える——これが設計時の問いになります。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a フォールトトレランスは、障害を避けることができないものととらえ、障害の発生を前提に耐え得る仕組みをあらかじめ備えておこうとする考え方である。
> b フェイルセーフは、銀行ATMのように継続稼働が重視されるシステムに適用される。
> c フェイルソフトは、全面停止を回避し継続を重視する考え方である。
解答 a:○ b:× c:○
| 障害は防げる |
| 障害は避けられない |
| やること | 部品の信頼性を高める | 障害に耐える仕組みを備える |
| 名前の意味 | avoidance=回避 | tolerance=耐性 |
| 関係 | 対極 | 対極 |
③ 名前から導く
| 語 | 意味 |
|---|---|
| fault avoidance | 故障を避ける |
| fault tolerance | 故障に耐える |
「避ける」と「耐える」——正反対の発想であることが、名前からそのまま読み取れます。
④ フォールトアボイダンスの具体的手法
フォールトアボイダンスの具体的手法には、次のものがあげられます。
| 手法 |
|---|
| 高信頼部品の採用 |
| テストや検証による良品選別 |
| 高信頼化設計・保護設計の導入 |
| 品質保証・品質管理体制の整備 |
| 作業者に対する教育・訓練などの作業手順に対する工夫 |
⑤ 5つの手法を分類する
| 分類 | 手法 |
|---|---|
| モノに対する工夫 | 高信頼部品の採用、高信頼化設計・保護設計の導入 |
| 検査による工夫 | テストや検証による良品選別 |
| 仕組みに対する工夫 | 品質保証・品質管理体制の整備 |
| 人に対する工夫 | 作業者に対する教育・訓練 |
モノだけでなく、仕組みと人にも及んでいる点に注目してください。第6章で学んだセキュリティ対策の4分類(技術的・人的・物理的・組織的)と同じ構造です。
⑥ 運営管理とのつながり
これらの手法は、運営管理で学ぶ品質管理の考え方そのものです。
| 情報システム | 運営管理 |
|---|---|
| 高信頼部品の採用 | 良品条件の確保 |
| テストや検証による良品選別 | 検査 |
| 品質保証・品質管理体制の整備 | 品質保証体系 |
| 作業者への教育・訓練 | 標準作業、教育訓練 |
「不良品を作らない」という製造業の発想が、システムの世界にも適用されているわけです。
⑦ なぜ限界があるのか
システム構成要素の信頼性向上には限界があります。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 費用が急激に増える | 信頼性を1桁上げるのに、費用が何倍にもなる |
| 物理的な限界がある | どんな部品もいつかは壊れる |
| 想定外の事象がある | 災害、人為的ミス、設計上の見落とし |
「絶対に壊れない」を目指すのは、費用の面でも技術の面でも現実的ではありません。
だからこそ、フォールトトレランス——壊れることを前提に備える——という考え方が必要になります。
⑧ 両方を組み合わせる
実際のシステムでは、両方を使い分けます。
| 対象 | 選ぶ考え方 | 理由 |
|---|---|---|
| 機器そのもの | フォールトアボイダンス | 信頼性の高い機器を選ぶ |
| システム全体 | フォールトトレランス | それでも壊れる前提で冗長化する |
「良い部品を使い、それでも壊れたときに備える」——これが現実的な設計です。
⑨ 第1節・第4節とのつながり
| 考え方 | 高めるRASISの要素 | 対応する指標 |
|---|---|---|
| フォールトアボイダンス | 信頼性(R) | MTBFを伸ばす |
| フォールトトレランス | 可用性(A) | 止まる影響を小さくする |
第4節で見たとおり、MTBFを伸ばすのは費用がかかり、MTTRを縮めるほうが安いことが多くあります。
同じ構図が、ここにも当てはまります。
| 費用 | |
|---|---|
| フォールトアボイダンス(壊れにくくする) | 高くつきやすい |
| フォールトトレランス(壊れても動くようにする) | 費用対効果が高いことが多い |
⑩ 試験での問われ方
令和7年度の本試験では、フォールトトレランスの説明にフールプルーフの内容を当てるという誤りが出されました。
> 誤りの例:「フォールトトレランスとは、人為的な操作ミスがあっても危険が生じず、システムに異常が起こらないように設計することである。」
これは次のテーマで学ぶフールプルーフの内容です。
「人為的な操作ミス」という語が出てきたらフールプルーフ——この対応を押さえておきましょう。
具体例
設例 フォールトアボイダンス
> 次の記述の正誤を判定せよ。(令和7年度第10問 改題)
> イ フォールトアボイダンスとは、部品一つ一つの信頼性を高めることで、故障や障害が発生しないように設計することである。
解答 ○
フォールトアボイダンスの定義そのものです。
「部品一つ一つの信頼性を高める」という語が目印
| 選択肢の語 | 対応する用語 |
|---|---|
| 部品一つ一つの信頼性を高める | フォールトアボイダンス |
| 障害の発生を前提に耐え得る仕組み | フォールトトレランス |
サーバを選ぶ場面で考える
中小企業がサーバを導入する場面で、2つの考え方をどう組み合わせるかを見てみます。
フォールトアボイダンスの観点
| 選択 | 内容 |
|---|---|
| サーバ用の機器を選ぶ | 一般向けPCより信頼性の高い部品を使っている |
| ECCメモリを採用する | 第1章で学んだ誤り訂正機能 |
| 電源の品質にこだわる | 安定した給電 |
| 設置環境を整える | 温度・湿度・ほこりの管理 |
フォールトトレランスの観点
| 選択 | 内容 |
|---|---|
| ディスクをRAIDで冗長化する | 次節で学ぶ |
| 電源を二重化する | 片方が壊れても動く |
| UPSを設置する | 停電時も動く |
| 予備機を用意する | 壊れたら交換する |
どちらも必要
| もしアボイダンスだけなら | もしトレランスだけなら |
|---|---|
| 壊れたときに止まる | 頻繁に壊れて運用が大変 |
「良い機器を選び、そのうえで冗長化する」——これが実務での答えです。
費用配分の考え方
予算が限られている場合、どう配分すべきでしょうか。
| 配分案 | 評価 |
|---|---|
| 最高級のサーバ1台 | 壊れたら止まる。アボイダンスに偏りすぎ |
| 中級のサーバ+冗長構成 | バランスがよい |
| 安価なサーバを多数 | 管理の手間が増える |
第4節で計算したとおり、並列にすれば稼働率は大きく上がります。稼働率0.9の機器2台(並列で0.99)は、稼働率0.99の機器1台と同等です。
そして多くの場合、中級機2台のほうが最高級機1台より安く済みます。
製造業への助言としても使える
この考え方は、情報システムに限りません。
| 場面 | アボイダンス | トレランス |
|---|---|---|
| 生産設備 | 予防保全で故障を防ぐ | 予備機、代替工程を用意する |
| 仕入先 | 信頼できる1社と深く付き合う | 複数社から調達する |
| 人材 | 教育で属人化を防ぐ | 複数人が対応できるようにする |
「壊れないようにする」と「壊れても困らないようにする」の両方を考える——これは経営全般に通じるリスク管理の発想です。
第11章で学ぶITリスク管理でも、同じ枠組みが使われます。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a フォールトアボイダンスは、障害そのものを発生させないようにするアプローチである。
> b フォールトアボイダンスとフォールトトレランスは、同じ方向の考え方である。
> c フォールトアボイダンスの具体的手法には、作業者に対する教育・訓練なども含まれる。
解答 a:○ b:× c:○

フォールトアボイダンス(1/2)

フォールトアボイダンス(2/2)
試験のポイント
| 用語 | 何に備えるか |
|---|---|
| フォールトトレランス | 機械の故障 |
| フォールトアボイダンス | 機械の故障(起こさない) |
| フールプルーフ | 人の操作ミス |
フールプルーフだけが「人」を対象にしている——これが判別の決め手です。
選択肢に「人為的な操作ミス」という語があれば、それはフールプルーフです。
④ 身近なフールプルーフの例
| 場面 | 仕組み |
|---|---|
| ファイルを保存せず閉じようとする | 「保存しますか」と確認する |
| 削除ボタンを押す | 「本当に削除しますか」と確認する |
| 数値欄に文字を入力する | 入力を受け付けない |
| 電子レンジの扉を開ける | 加熱が止まる |
| 洗濯機の蓋を開ける | 回転が止まる |
⑤ フォールバック
システムの一部に不具合が発生した時、その部分を運用から切り離し、残りの部分で機能や性能を限定して運用を継続することです。
フォールバックには、管理者の判断による手動フォールバックと、監視システムと連動させて自動制御する自動フォールバックがあります。
フェイルソフトは、主に設計概念を指すのに対して、フォールバックは、障害発生時の具体的な対応を指します。
⑥ 概念か、対応か
この区別が、この節でもっとも紛らわしい部分です。
| フェイルソフト | フォールバック | |
|---|---|---|
| 位置づけ | 設計概念 | 障害発生時の具体的な対応 |
| 内容 | 機能を低下させても運転を継続する | 不具合の部分を切り離し、残りで運用を継続する |
「こう設計しておこう」という思想がフェイルソフト、「実際にこう動く」という対応がフォールバック——同じことを、抽象と具体の2つの水準で言い表しています。
⑦ フェイルオーバとフェイルバック
フェイルオーバ
故障や障害が発生したときに、待機系システムが処理を継続するように設計することです。
フェイルバック
フェイルオーバによって切換えられたシステムを障害発生前の元の状態に戻すことです。
フェイルオーバ・フェイルバックは、フォールバックと同様、障害発生時の具体的な対応を指します。
⑧ 3つの「フェイル」と1つの「フォール」
| 用語 | 動き | 概念か対応か |
|---|---|---|
| フェイルソフト | 機能を低下させて継続 | 設計概念 |
| フェイルセーフ | 安全な方向に制御 | 設計概念 |
| フェイルオーバ | 待機系に切り換える | 具体的な対応 |
| フェイルバック | 元の系に戻す | 具体的な対応 |
| フォールバック | 不具合部分を切り離して継続 | 具体的な対応 |
over(越えて)とback(戻して)
| 語 | 意味 | 動き |
|---|---|---|
| fail over | 越える | 待機系へ移る |
| fail back | 戻る | 元の系へ戻る |
行きがオーバ、帰りがバック——方向で覚えられます。
⑨ フォールトマスキング
どこかが壊れても、埋め合わせをして外からは壊れたと分からないまま動かし続け、その裏で自分で直してしまうことです。
mask(隠す)という名前のとおり、障害を外から見えないようにするのが特徴です。
⑩ フォールトマスキングの特徴
| 特徴 | 内容 |
|---|---|
| 外部からは障害がわからない | 利用者は障害に気づかない |
| 稼働を継続する | 止まらない |
| 自律的な障害修復も行う | 人の手を借りずに直す |
フェイルソフトは機能が落ちるので利用者に分かりますが、フォールトマスキングは分かりません。この違いが両者を分けます。
⑪ 5つの用語を1枚の表で
| 用語 | 何をするか | 利用者から見ると |
|---|---|---|
| フールプルーフ | 人の操作ミスを防ぐ | 警告が出る |
| フォールバック | 不具合部分を切り離して継続 | 機能が制限される |
| フェイルオーバ | 待機系に切り換える | 一時的に途切れることもある |
| フェイルバック | 元の系に戻す | 同上 |
| フォールトマスキング | 障害を隠ぺいしつつ自律修復 | 何も起きていないように見える |
⑫ 試験での問われ方
令和7年度の本試験では、5つの用語の説明を総当たりで入れ替えた設問が出されました。
| 選択肢の用語 | 書かれていた内容 | 本来の用語 |
|---|---|---|
| フェイルオーバ | 一部の機能を低下させて稼働し続ける | フェイルソフト |
| フォールトトレランス | 人為的な操作ミスがあっても異常が起こらない | フールプルーフ |
| フォールトマスキング | 被害を最小限にとどめるように設計する | フォールトトレランス |
| フォールバック | 待機系システムが処理を継続する | フェイルオーバ |
用語と説明の1対1の対応を、正確に覚えているかが問われています。
具体例
設例 信頼性設計の用語
> 情報システムの信頼性設計に関する次の記述の正誤を判定せよ。(令和7年度第10問 改題)
> ウ フォールトトレランスとは、人為的な操作ミスがあっても危険が生じず、システムに異常が起こらないように設計することである。
> オ フォールバックとは、故障や障害が発生したときに、待機系システムが処理を継続するように設計することである。
解答 ウ:× オ:×
キーワードで一発判定する
| キーワード | 対応する用語 |
|---|---|
| 人為的な操作ミス | フールプルーフ |
| 待機系システム | フェイルオーバ |
| 元の状態に戻す | フェイルバック |
| 一部の機能を低下させて継続 | フェイルソフト |
| 被害が拡大しない方向に制御 | フェイルセーフ |
| 被害を最小限にとどめる(設計思想全体) | フォールトトレランス |
| 部品一つ一つの信頼性を高める | フォールトアボイダンス |
| 障害を隠ぺいしながら自律修復 | フォールトマスキング |
| 不具合部分を切り離して残りで継続 | フォールバック |
この表を再現できれば、この論点は制覇したといえます。
実際のシステムで、これらがどう組み合わさるか
Webサービスを運営する会社のシステムで、障害が起きた場面を追ってみます。
場面:データベースサーバの1台が故障
| 時刻 | 起きたこと | 働いた仕組み |
|---|---|---|
| 10:00 | 主系のDBサーバが故障 | — |
| 10:00 | 監視システムが検知 | 第6章のSIEM、SNMP |
| 10:00 | 待機系のDBサーバに自動で切り換わる | フェイルオーバ |
| 10:01 | サービスが復旧(利用者は数十秒の中断を経験) | — |
| 10:30 | 検索機能だけ重いので、一時的に停止 | フォールバック |
なぜフェイルバックを深夜に行うのか
切り換えには一瞬の中断が伴うためです。利用者の少ない時間帯を選ぶのが定石です。
フォールトマスキングだったら
もし完全なフォールトマスキングが実装されていれば、
| 時刻 | 起きたこと |
|---|---|
| 10:00 | DBサーバの1台が故障 |
| 10:00 | 他のサーバが補正して処理を継続。利用者は何も気づかない |
| 10:00 | 自律的に修復を試みる |
利用者から見て、何も起きていないのと同じ——これがマスキングの理想形です。ただし実現には高度な仕組みと費用が必要で、金融機関の基幹系など、限られた場面で採用されます。
中小企業でどこまでやるか
| 水準 | 内容 | 費用 |
|---|---|---|
| 最低限 | バックアップと復旧手順 | 低 |
| 標準 | 予備機の確保、手動での切り換え | 中 |
| 高 | 自動フェイルオーバ | 高 |
| 最高 | フォールトマスキング | 非常に高 |
「止まったら何時間で戻せるか」を決めてから、水準を選ぶ——第4節で学んだMTTRの考え方が、ここでも判断の軸になります。
フールプルーフは費用をかけずにできる
| 対策 | 費用 |
|---|---|
| 確認ダイアログを出す | ほぼゼロ |
| 入力値を検証する | 低 |
| 危険な操作に二重の確認を求める | 低 |
| 削除はゴミ箱経由にする | 低 |
人為的ミスへの対策は、費用対効果がきわめて高い——機器の故障より、人の操作ミスのほうが頻度が高いことを考えれば、当然の結論です。
第6章で学んだ人的対策の重要性が、ここでも確認できます。
確認してみましょう
> 次の記述と対応する用語を答えよ。
> a システムの一部に不具合が発生した時、その部分を運用から切り離し、残りの部分で運用を継続すること。
> b フェイルオーバによって切換えられたシステムを障害発生前の元の状態に戻すこと。
> c 障害が発生した際、補正などを行って外部からは障害がわからないように隠ぺいしながら、同時に自律的な障害修復も行うこと。
解答 a:フォールバック b:フェイルバック c:フォールトマスキング

障害対策の用語
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。
| 14:00 |
| 故障した機器を交換・復旧 |
| — |
| 翌2:00 | 利用の少ない時間帯に主系へ戻す | フェイルバック |