経営とIT
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プレミアムで見る技術は年々込み入っていき、選べる製品やサービスも増える一方です。その中でITを戦略の実現につなげるには、使える人をどう育てるかを筋道立てて考えるしかありません。この節では、IT組織・人材育成に関する用語と代表的なガイドラインを学びます。前節で学んだデジタルガバナンス・コードの第3の柱「デジタル人材の育成・確保」を、より具体的に示したのがIPAの「デジタルスキル標準」です。
簡単にいうと
CIOは「最高情報責任者」「情報システム統括役員」!経営・現場(業務)・ITの3つの視点を持つ——前節のIT経営の3要素と同じ並びだよ。
① IT組織・人材育成の重要性
IT技術が高度化し、市場に提供されるIT製品やITサービスが多様化する現在において、ITを活用し、自社の経営戦略や事業戦略を実現していくためには、戦略的で体系的な人材育成が重要となります。
| 環境の変化 | 内容 |
|---|---|
| IT技術の高度化 | 専門性が高まる |
| IT製品・ITサービスの多様化 | 選択肢が増え、判断が難しくなる |
② CIO(Chief Information Officer)とは
CIOとは、企業における最高情報責任者、情報システム統括役員を意味します。
| 呼称 |
|---|
| 最高情報責任者 |
| 情報システム統括役員 |
③ CIOが持つべき3つの視点
具体例
CIOがいない中小企業で起きること
状況
| 部門 | 導入したシステム | 導入時期 |
|---|---|---|
| 営業 | 顧客管理システムA | 3年前 |
| 製造 | 生産管理システムB | 5年前 |
| 経理 | 会計システムC | 8年前 |

CIO(1/2)

CIO(2/2)
試験のポイント
簡単にいうと
IPAのデジタルスキル標準は2つ! DSS-LとDSS-P。Lはリテラシー(全ビジネスパーソン向け)、Pは推進(DXを進める人材向け)。DSS-Lの構成はWhy・What・How+マインド・スタンスだよ。
① デジタルスキル標準とは
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、2つの標準を公開しています。
| 標準 | 対象 |
|---|---|
| DXリテラシー標準(DSS-L) | ビジネスパーソンがDXに関するリテラシーを身につけ変革により行動できるようになるため |
| DX推進スキル標準(DSS-P) | DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルなどを定義 |
簡単にいうと
5つの人材類型! ビジネスアーキテクト・デザイナー・データサイエンティスト・ソフトウェアエンジニア・サイバーセキュリティ。「指示する/依頼する関係ではなく、協働関係を構築し連携する」のが要だよ。
① DX推進スキル標準(DSS-P)とは
DX推進スキル標準(DSS-P)は、企業や組織のDXの推進において必要な人材のうち、主な人材として5つの「人材類型」に区分して定義しています。
| 5つの人材類型 |
|---|
| ビジネスアーキテクト |
| デザイナー |
| データサイエンティスト |
| ソフトウェアエンジニア |
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CIOは、経営・現場(業務)・ITの3つの視点を持ち、全体最適を鑑みてIT戦略を立案し、それを実行する先導役としてきわめて重要な役割を担っています。
| 3つの視点 |
|---|
| 経営 |
| 現場(業務) |
| IT |
④ 前節のIT経営との対応
| IT経営の3要素 | CIOの3つの視点 |
|---|---|
| 経営 | 経営 |
| 業務 | 現場(業務) |
| IT | IT |
IT経営を実践する役割を担うのがCIO——この対応関係で理解できます。
⑤ CIOの役割
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| IT戦略を立案する | 全体最適を鑑みて |
| それを実行する先導役 | 推進する |
「全体最適を鑑みて」がキーワード
| 部分最適 | 全体最適 | |
|---|---|---|
| 判断の基準 | 各部門の都合 | 会社全体の利益 |
| 結果 | システムが連携しない | 一貫した基盤ができる |
第9章で学んだEA(エンタープライズアーキテクチャ)——全体最適の観点から分析する枠組みが、CIOの仕事の道具になります。
⑥ CIOの育成・確保
ベンダ、ユーザ企業を問わず、IT経営に取組むすべての企業において優れたCIOの育成および確保は重要な課題であり、昨今、各方面でCIOに関するさまざまな取組みがなされています。
| 対象 | 内容 |
|---|---|
| ベンダ | IT製品・サービスを提供する側 |
| ユーザ企業 | それを利用する側 |
どちらにもCIOが必要——この点が明記されています。
⑦ 他のCxOとの関係
| 略称 | 役職 |
|---|---|
| CEO | 最高経営責任者 |
| CFO | 最高財務責任者 |
| COO | 最高執行責任者 |
| CIO | 最高情報責任者 |
| CTO | 最高技術責任者 |
| CISO | 最高情報セキュリティ責任者 |
CIOとCTOの違い
| CIO | CTO | |
|---|---|---|
| 主な対象 | 社内の情報システム | 製品・サービスの技術 |
| 視点 | 経営・業務・IT | 技術 |
CIOとCISOの違い
| CIO | CISO | |
|---|---|---|
| 主な対象 | 情報システム全般 | 情報セキュリティ |
⑧ 中小企業にCIOは置けるか
| 規模 | 実態 |
|---|---|
| 大企業 | 専任のCIOを置く |
| 中小企業 | 専任は難しい |
現実的な形
| 形 | 内容 |
|---|---|
| 経営者が兼務する | 最も多い |
| 役員が兼務する | 次に多い |
| 外部の専門家を活用する | IT顧問、診断士など |
「誰が決めるかを明確にする」ことが最低限
| 決める人がいない | いる | |
|---|---|---|
| 部門ごとの導入 | ばらばらになる | 調整される |
| 投資の判断 | 場当たり的 | 一貫性がある |
⑨ 外部CIO(バーチャルCIO)
| 形態 | 内容 |
|---|---|
| 外部の専門家が、複数企業のCIO的役割を担う | 常勤でなくても機能する |
中小企業診断士が担いうる役割
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 経営の視点を持ち込む | 経営戦略との整合を見る |
| 業務を理解する | 現場の実態を把握する |
| ベンダとの橋渡し | 技術的な要求を整理する |
| 投資の判断を支援する | TCO、BSCの考え方を使う |
前節で学んだ「業務とITとの橋渡し」——これがCIOの中核的な仕事であり、診断士が関われる領域です。
| 勤怠管理システムD |
| 1年前 |
それぞれが別々に選定した結果
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| データが連携しない | 手作業で転記している |
| 顧客情報が複数箇所にある | どれが最新か分からない |
| 保守契約がばらばら | 窓口が4社 |
| 更新時期がずれている | 毎年どれかの更新がある |
4つ目の影響
| 年 | 更新対象 | 費用 |
|---|---|---|
| 1年目 | 会計システム | 200万円 |
| 2年目 | 生産管理システム | 400万円 |
| 3年目 | 顧客管理システム | 150万円 |
毎年投資が発生し、計画が立てられない
CIO的な役割があれば
| 施策 | 効果 |
|---|---|
| 導入時に連携を条件にする | 後の手作業が不要 |
| マスタを一元化する | 顧客情報が1か所に |
| 更新時期を揃える | 計画的に投資できる |
| 窓口を絞る | 管理の手間が減る |
TCOの観点でも差が出る
| ばらばら | 統括されている | |
|---|---|---|
| 手作業の工数 | 多い | 少ない |
| 保守費用 | 重複がある | 集約できる |
| 障害時の対応 | どこの責任か分からない | 明確 |
中小企業でCIO的な役割を置く
段階①:誰が決めるかを決める
| 決めること | 内容 |
|---|---|
| IT投資の決裁者 | 経営者か、任命された役員か |
| 選定のルール | 必ず相談する |
段階②:全体像を把握する
| 把握すること | 内容 |
|---|---|
| どんなシステムがあるか | 一覧を作る |
| どんなデータがあるか | どこに何があるか |
| どんな契約があるか | 費用と期間 |
この一覧を作るだけでも効果がある
| 発見 | 内容 |
|---|---|
| 使っていないソフトの契約が残っている | 解約できる |
| 同じ機能のソフトが複数ある | 統合できる |
| サポートが切れているものがある | 対応が必要 |
段階③:方針を決める
| 方針の例 |
|---|
| 新しいシステムは、既存システムと連携できることを条件とする |
| カスタマイズは原則行わない |
| クラウドを優先する |
| マスタ(顧客、商品)は一元管理する |
方針があると、選定が速くなる
| 方針なし | 方針あり | |
|---|---|---|
| 選定のたび | 一から検討 | 方針で絞れる |
| 判断のぶれ | ある | 少ない |
診断士として関わる場面
| 場面 | 提供できること |
|---|---|
| システム導入の相談 | 経営課題との整合を確認 |
| ベンダ選定 | 比較の観点を整理 |
| 投資判断 | TCOとBSCで多面的に評価 |
| 導入後のフォロー | 効果測定と改善 |
「経営とITの両方が分かる人」が不足している
| 立場 | 弱み |
|---|---|
| 経営者 | ITの判断ができない |
| IT業者 | 経営の文脈が分からない |
| 診断士 | その間を埋められる |
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a CIOとは、企業における最高情報責任者、情報システム統括役員を意味する。
> b CIOは、経営・現場(業務)・ITの3つの視点を持ち、全体最適を鑑みてIT戦略を立案する。
> c 優れたCIOの育成および確保が重要な課題となるのは、ITベンダのみである。
解答 a:○ b:○ c:×
② 2つの標準の対象の違い
| DSS-L | DSS-P | |
|---|---|---|
| 対象 | 全てのビジネスパーソン | DXを推進する人材 |
| 内容 | 身につけるべき能力・スキルの標準 | 役割や習得すべきスキル |
| L/Pの意味 | Literacy(リテラシー) | Promotion(推進) |
③ DXリテラシー標準(DSS-L)のねらい
DXリテラシー標準(DSS-L)は、全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準として、一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につけることで、DXを自分事ととらえ、変革に向けて行動できるようになることをねらいとしています。
| ねらい |
|---|
| 一人ひとりがDXに関するリテラシーを身につける |
| DXを自分事ととらえる |
| 変革に向けて行動できるようになる |
「自分事ととらえる」がキーワード
| 他人事 | 自分事 | |
|---|---|---|
| 受け止め方 | 「IT部門の話」 | 「自分の仕事の話」 |
| 行動 | 変わらない | 変える |
④ DSS-Lの全体像
「Why」DXの背景、「What」DXで活用されるデータ・技術、「How」データ・技術の利活用、および「マインド・スタンス」新たな価値を生み出すための土台から構成されています。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| Why | DXの背景 |
| What | DXで活用されるデータ・技術 |
| How | データ・技術の利活用 |
| マインド・スタンス | 新たな価値を生み出すための土台 |
⑤ Why:DXの背景
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義するもの | DXの重要性を理解するために必要な、社会、顧客・ユーザー、競争環境の変化に関する知識 |
| 位置づけ | DXに関するリテラシーとして身につけるべき知識の学習の指針とする |
⑥ What:DXで活用されるデータ・技術
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義するもの | ビジネスの場で活用されているデータやデジタル技術に関する知識 |
| 位置づけ | 同上 |
⑦ How:データ・技術の利活用
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義するもの | ビジネスの場でデータやデジタル技術を利用する方法や、活用事例、留意点に関する知識 |
| 位置づけ | 同上 |
⑧ マインド・スタンス
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義するもの | 社会変化の中で新たな価値を生み出すために必要な意識・姿勢・行動 |
| 位置づけ | 個人が自身の行動を振り返るための指針かつ、組織・企業がDX推進や持続的成長を実現するために、構成員に求める意識・姿勢・行動を検討する指針とする |
⑨ 構造を図で理解する
| 位置 | 構成要素 |
|---|---|
| 上(ねらい) | 標準策定のねらい |
| 中(3つの柱) | Why/What/How |
| 下(土台) | マインド・スタンス |
マインド・スタンスが土台
| 知識だけ | 知識+マインド |
|---|---|
| 知っているが動かない | 知って、動く |
「新たな価値を生み出すための土台」——知識を行動に変えるのが意識・姿勢・行動、という構造です。
⑩ Why・What・Howの順序
| 順 | 問い |
|---|---|
| Why | なぜDXが必要なのか |
| What | どんなデータ・技術があるのか |
| How | どう使うのか |
Whyから始まる意味
| 順序 | 結果 |
|---|---|
| Whatから始める | 技術に詳しくなるが、なぜやるか分からない |
| Whyから始める | 目的が分かった上で技術を学ぶ |
「なぜやるか」が先——これは前節のIT経営(単に現業をIT化するだけでは不十分)と同じ発想です。
⑪ 「全てのビジネスパーソン」という点
| 従来の考え方 | DSS-Lの考え方 |
|---|---|
| ITは専門家のもの | 全員が基礎を持つ |
なぜ全員なのか
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 業務を知っているのは現場 | 現場からしか改善案は出ない |
| IT部門だけでは分からない | 業務の実態が見えない |
| 変革は全員で行う | 一部の人だけでは進まない |
前節の視点③「企業文化への定着」——DXを文化として根付かせるには、全員が基礎を持つ必要がある、という考え方です。
具体例
DSS-Lの4つの区分を、中小企業の研修で考える
Why:DXの背景
| 学ぶこと | 内容 |
|---|---|
| 社会の変化 | 人口減少、人手不足、働き方の変化 |
| 顧客・ユーザーの変化 | ネットで調べてから来店する、口コミを見る |
| 競争環境の変化 | ネット通販の台頭、価格の透明化 |
自社に引きつけて考える
| 問い | 例 |
|---|---|
| 「うちのお客様は、どうやって店を知りますか」 | 昔は口コミ、今は検索 |
| 「競合はどこですか」 | 昔は近隣の店、今は全国のネット通販 |
この問いが「自分事」への入口
What:DXで活用されるデータ・技術
| 技術 | 自社での可能性 |
|---|---|
| AI | 需要予測、画像認識 |
| IoT | 設備の稼働監視 |
| クラウド | どこからでも業務ができる |
| データ分析 | 売れ筋の把握 |
「知っている」レベルでよい
| 専門家 | 全ビジネスパーソン | |
|---|---|---|
| 求められる水準 | 使える | 何ができるかを知っている |
「何ができるかを知っている」ことの価値
| 状況 | 効果 |
|---|---|
| 業務の課題に直面したとき | 「これはAIでできるのでは」と思いつく |
| ベンダの提案を聞くとき | 妥当性を判断できる |
How:データ・技術の利活用
| 学ぶこと | 内容 |
|---|---|
| 活用の方法 | どう使うか |
| 活用事例 | 他社はどう使っているか |
| 留意点 | 注意すべきこと |
「留意点」が実務的に重要
| 技術 | 留意点 |
|---|---|
| 生成AI | 機密情報を入力しない、出力を鵜呑みにしない |
| クラウド | データの保管場所、解約時の移行 |
| データ分析 | 相関と因果の混同 |
マインド・スタンス
| 求められる意識・姿勢・行動 | 内容 |
|---|---|
| 変化を受け入れる | 今のやり方に固執しない |
| 試してみる | 完璧を待たない |
| 失敗を学びにする | 責めない |
| データで考える | 勘だけに頼らない |
| 顧客起点で考える | 自社都合にしない |
中小企業で最も難しいのはここ
| 障害 | 内容 |
|---|---|
| 「今までこれでやってきた」 | 変化への抵抗 |
| 「失敗したら責任問題」 | 試せない |
| 「そんな時間はない」 | 目先の業務に追われる |
2つ目への対応
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 小さく試す | 失敗しても影響が小さい範囲で |
| 失敗を責めない | 経営者が明言する |
| 試したこと自体を評価する | 結果だけで評価しない |
「小さく試す」の具体例
| 対象 | 範囲 |
|---|---|
| 新しいツール | 1部門、3か月だけ |
| AI | 無料の範囲で試す |
| 業務の変更 | 1つの工程だけ |
アジャイル開発の発想——短い期間で試し、フィードバックを得て、続けるか決める。この進め方が、DXの取組にも当てはまります。
研修を設計するときの順序
| 順 | 内容 | 時間の目安 |
|---|---|---|
| ① | Why:なぜやるのか(自社の状況) | 30分 |
| ② | What:何があるのか(技術の概要) | 60分 |
| ③ | How:どう使うのか(自社での例) | 60分 |
| ④ | マインド:どう取り組むか(議論) | 30分 |
④を議論形式にする理由
| 講義 | 議論 | |
|---|---|---|
| 知識 | 伝わる | 伝わる |
| 意識 | 変わりにくい | 変わりやすい |
自分の言葉で話すことで、自分事になる——これがDSS-Lのねらいそのものです。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a DXリテラシー標準(DSS-L)は、全てのビジネスパーソンが身につけるべき能力・スキルの標準である。
> b DSS-Lは、「Why」DXの背景、「What」DXで活用されるデータ・技術、「How」データ・技術の利活用、および「マインド・スタンス」から構成されている。
> c DSS-Lは、DXを推進する人材の役割や習得すべきスキルなどを定義したものである。
解答 a:○ b:○ c:×

CIOとデジタルスキル標準
試験のポイント
② ビジネスアーキテクト
DXの取組みにおいて、ビジネスや業務の変革を通じて実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードしながら、目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する人材です。
| 役割 |
|---|
| 実現したいこと(=目的)を設定する |
| 関係者をコーディネートする |
| 関係者間の協働関係の構築をリードする |
| 目的実現に向けたプロセスの一貫した推進を通じて、目的を実現する |
「目的を設定する」「コーディネートする」——中心的な役割です。
③ デザイナー
ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえ、製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定し、それらに沿った製品・サービスのありかたのデザインを担う人材です。
| 役割 |
|---|
| ビジネスの視点、顧客・ユーザーの視点等を総合的にとらえる |
| 製品・サービスの方針や開発のプロセスを策定する |
| 製品・サービスのありかたのデザインを担う |
「デザイナー」は見た目だけではない
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 画面の見た目を作る人 | 製品・サービスのありかたをデザインする人 |
④ データサイエンティスト
DXの推進において、データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて、データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う人材です。
| 役割 |
|---|
| データを活用した業務変革や新規ビジネスの実現に向けて |
| データを収集・解析する仕組みの設計・実装・運用を担う |
⑤ ソフトウェアエンジニア
DXの推進において、デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するためのシステムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う人材です。
| 役割 |
|---|
| デジタル技術を活用した製品・サービスを提供するための |
| システムやソフトウェアの設計・実装・運用を担う |
⑥ サイバーセキュリティ
業務プロセスを支えるデジタル環境におけるサイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う人材です。
| 役割 |
|---|
| 業務プロセスを支えるデジタル環境における |
| サイバーセキュリティリスクの影響を抑制する対策を担う |
⑦ 5つの類型の関係
DXを推進する人材は、他の類型とのつながりを積極的に構築した上で、他類型の巻き込みや他類型への手助けを行うことが重要です。
またどちらかがどちらかに指示をする、又は依頼する、といった形ではなく、さまざまな場面で2つ(又はそれ以上)の類型が、協働関係を構築し、連携することが重要です。
| 誤った関係 | あるべき関係 |
|---|---|
| どちらかがどちらかに指示をする | 協働関係を構築し、連携する |
| 依頼する | 同上 |
⑧ 「指示・依頼」ではなく「協働」
| 指示・依頼の関係 | 協働の関係 | |
|---|---|---|
| 上下 | ある | ない |
| 責任 | 指示した側 | 共有 |
| 提案 | 出にくい | 出る |
なぜ協働なのか
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 誰も全体を分かっていない | それぞれの専門領域がある |
| 組み合わせて初めて価値が出る | 1つの類型だけでは実現できない |
⑨ 5つの類型が担う領域
| 類型 | 担う領域 |
|---|---|
| ビジネスアーキテクト | 目的の設定と推進 |
| デザイナー | 製品・サービスのありかた |
| データサイエンティスト | データの収集・解析の仕組み |
| ソフトウェアエンジニア | システムやソフトウェア |
| サイバーセキュリティ | リスクの抑制 |
中心に置かれるもの
5つの類型は横一列に並ぶのではなく、「データやデジタル技術を活用した製品・サービスや業務などの変革」を囲む形で配置されます。
囲まれている真ん中が目的、囲んでいる5人が担い手、という読み方です。
| 位置 | 何が置かれるか |
|---|---|
| 中心 | データやデジタル技術を活用した製品・サービスや業務などの変革 |
| 周囲 | 5つの人材類型(たがいに線で結ばれる) |
5人が変革を囲み、たがいに結ばれている——これがDSS-Pの構造です。
⑩ 判別のポイント
| 選択肢の語 | 対応する類型 |
|---|---|
| 目的を設定し、関係者をコーディネート | ビジネスアーキテクト |
| 製品・サービスのありかたのデザイン | デザイナー |
| データを収集・解析する仕組み | データサイエンティスト |
| システムやソフトウェアの設計・実装・運用 | ソフトウェアエンジニア |
| サイバーセキュリティリスクの影響を抑制 | サイバーセキュリティ |
⑪ 2つの標準の対比
| DSS-L | DSS-P | |
|---|---|---|
| 正式名称 | DXリテラシー標準 | DX推進スキル標準 |
| 対象 | 全てのビジネスパーソン | DXを推進する人材 |
| 構成 | Why/What/How/マインド・スタンス | 5つの人材類型 |
| ねらい | DXを自分事ととらえ行動できるように | 役割や習得すべきスキルを定義 |
⑫ 前節とのつながり
デジタルガバナンス・コード3.0の第3の柱「DX戦略の推進」の3-2「デジタル人材の育成・確保」——その具体的な指針が、このデジタルスキル標準です。
| 柱 | 具体化したもの |
|---|---|
| デジタル人材の育成・確保 | DSS-L、DSS-P |
具体例
5つの類型を、中小企業の取組で考える
取組:製造業が「設備の稼働データを活用して生産性を上げる」
ビジネスアーキテクト(目的の設定と推進)
| やること | 内容 |
|---|---|
| 目的を設定する | 「設備稼働率を65%から78%に上げる」 |
| 関係者を集める | 製造、生産管理、経営、外部の専門家 |
| 協働関係を作る | それぞれの役割を明確にする |
| 推進する | 進捗を管理し、課題を解決する |
この役割が最も重要
| いない場合 | 起きること |
|---|---|
| 目的が曖昧 | 何をすればよいか分からない |
| 関係者がばらばら | 調整されない |
| 推進役がいない | 止まる |
デザイナー(ありかたのデザイン)
| やること | 内容 |
|---|---|
| 現場が使える形を考える | どんな画面なら現場が見るか |
| 業務の流れに組み込む | 見るタイミングをどこに作るか |
「どんな画面なら見るか」が実は重要
| 設計 | 結果 |
|---|---|
| 数字がびっしり並ぶ画面 | 見られない |
| 一目で異常が分かる画面 | 見られる |
データサイエンティスト(データの収集・解析)
| やること | 内容 |
|---|---|
| どのデータを取るか決める | 稼働、停止、停止理由、段取り時間 |
| 収集の仕組みを作る | 設備からの取得方法 |
| 解析する | 停止の要因、改善の余地 |
ソフトウェアエンジニア(システムの実装)
| やること | 内容 |
|---|---|
| 設備とつなぐ | データを取得する仕組み |
| 蓄積する | データベース |
| 表示する | 画面 |
サイバーセキュリティ(リスクの抑制)
| やること | 内容 |
|---|---|
| 設備が外部から攻撃されないようにする | ネットワークの分離 |
| データが漏れないようにする | アクセス制限 |
5つ目が見落とされやすい
| 状況 | リスク |
|---|---|
| 設備をネットワークにつないだ | 外部から操作される危険 |
| 制御系と情報系が同じネットワーク | 感染が製造ラインに及ぶ |
製造業のランサムウェア被害
| 影響 | 内容 |
|---|---|
| 生産が止まる | 数日〜数週間 |
| サプライチェーン全体に波及 | 取引先も止まる |
「つなぐこと」にはリスクが伴う——DXの推進とセキュリティは一体で考える必要があります。
中小企業に5つの人材を揃えられるか
| 現実 | 内容 |
|---|---|
| 5人揃えるのは困難 | 採用も育成も難しい |
現実的な形
| 類型 | 確保の方法 |
|---|---|
| ビジネスアーキテクト | 社内から(業務を知っている人が最適) |
| デザイナー | 外部と協働 |
| データサイエンティスト | 外部と協働 |
| ソフトウェアエンジニア | ベンダに委託 |
| サイバーセキュリティ | 外部の支援を受ける |
ビジネスアーキテクトだけは社内に必要
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 目的を設定するのは自社 | 外部には決められない |
| 関係者をコーディネートする | 社内の力学を知っている必要がある |
| 継続的に推進する | 外部は離れる |
「業務を知っている人にITを学んでもらう」
| 外から採る | 中から育てる | |
|---|---|---|
| 業務知識 | ない | ある |
| 社内の人間関係 | ない | ある |
| IT知識 | ある | 学べる |
ビジネスアーキテクトに最も必要なのは、IT知識より業務知識と調整力——だから社内から育てるほうが適しています。
「協働関係」の重要性
指示・依頼の関係になると
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 「こう作ってください」と発注 | 言われたものしかできない |
| ベンダは提案しない | より良い方法があっても出てこない |
| 問題が起きても「指示どおり」 | 責任の押し付け合い |
協働の関係だと
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 目的を共有する | 手段はベンダが提案できる |
| 一緒に考える | より良い方法が出る |
| 問題を一緒に解決する | 前に進む |
発注者としてできること
| やること | 内容 |
|---|---|
| 目的を伝える | 「何を実現したいか」 |
| 手段を押し付けない | 「どう作るか」は任せる |
| 情報を共有する | 業務の実態を隠さない |
| 一緒に決める | 丸投げしない |
第9章で学んだアジャイル開発の価値——「契約上の交渉よりも顧客との協調を重視する」——と、同じ考え方がここにあります。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a DX推進スキル標準(DSS-P)では、「ビジネスアーキテクト」「デザイナー」「データサイエンティスト」「ソフトウェアエンジニア」「サイバーセキュリティ」の5つの人材類型に区分して定義している。
> b ビジネスアーキテクトは、実現したいこと(=目的)を設定したうえで、関係者をコーディネートし関係者間の協働関係の構築をリードする人材である。
> c DXを推進する人材は、上位の類型が下位の類型に指示をする形で連携することが重要である。
解答 a:○ b:○ c:×

DX推進スキル標準(DSS-P)(1/2)

DX推進スキル標準(DSS-P)(2/2)
試験のポイント
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