IT資産管理
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プレミアムで見る機械やソフトは、買って据え付けただけでは入れた意味が出ません。手元にあるもの全体に目配りして、直しながら回していって、ようやく元が取れます。これらの管理や保守運用にかかわる支援機能を、総称してITサービスとよびます。この節では、ITサービスの品質を保つためのマネジメントと、その要となるSLA・SLM、そして世界標準のガイドラインであるITILを学びます。令和4年度・5年度・7年度と繰り返し出題されている分野です。
簡単にいうと
ITサービスマネジメントは「品質の維持や向上、効率化を図るためのマネジメント」!そしてPDCAサイクルを回す仕組みがITSMS。構築のポイントの1番目が「経営者が深く関与する」なのが印象的だよ。
① IT資産管理とは
IT技術やIT基盤(インフラ)は、ハードウェアやソフトウェアといった物的資産を購入・導入しただけでは効率的な利用や導入による目的を達成することはできません。
ITにかかわる物的資産の全般を適切に管理し、保守や運用を行う必要があります。
② ITサービス
これらの管理や保守運用にかかわる支援機能は、総称してITサービスとよばれます。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| ITサービス | ITにかかわる物的資産の管理や保守運用にかかわる支援機能の総称 |
③ ITアウトソーシングが主流に
IT資産を取得したユーザ企業が自社ですべてのITサービスを提供することは難しいため、その一部を外部企業に委託するITアウトソーシングが主流になっています。
| 理由 | 内容 |
|---|---|
| 自社ですべては難しい |
具体例
保守・運用のコストが構築以上になる理由
5年間で見た内訳の例
| 項目 | 金額 | 比率 |
|---|---|---|
| 構築(開発) | 2,000万円 | 36% |
| 保守(障害対応、法改正対応) | 1,500万円 | 27% |
| 運用(監視、バックアップ、問い合わせ対応) | 1,200万円 | 22% |

IT資産管理とITサービスマネジメント(1/2)

IT資産管理とITサービスマネジメント(2/2)
試験のポイント
簡単にいうと
SLAは「合意書」、SLMは「監視・管理する活動」——文書か活動かの違い!そしてOLAは組織内部、UCは組織外部。令和5年度で出題されているよ。
① SLAが必要な理由
ITサービスの提供については、ユーザ企業とベンダでお互いが納得のいくサービスの水準を合意する必要があります。
この合意に従い、ユーザ企業は適正な対価を支払い、ベンダは不要なサービスを提供することなく、サービスの品質を維持することが可能となります。
| 立場 | 合意による効果 |
|---|---|
| ユーザ企業 | 適正な対価を支払う |
| ベンダ |
簡単にいうと
ITILは「ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス集」!英国政府が1989年に発行、最新はITIL4。アジャイル開発・DevOps・クラウドを取り入れているのが特徴だよ。
① ITIL(Information Technology Infrastructure Library)とは
ITILは、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス集(ガイドライン)です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何か | ベストプラクティス集(ガイドライン) |
| 分野 | ITサービスマネジメント |
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④ ITサービスの構築
ITサービスは、ユーザ企業(ITサービスに対価を支払う側)とベンダ(ITサービスの提供側)の相互関与・かかわりによって構築されます。
| 立場 | 内容 |
|---|---|
| ユーザ企業 | ITサービスに対価を支払う側 |
| ベンダ | ITサービスの提供側 |
⑤ 明示的な合意が必要
「サービスに対するユーザ企業の満足度を実現しており、それが継続的に提供されているか」「妥当な価格(コスト)で提供されているか」といった観点で、ユーザ企業とベンダとの間に明示的な合意がなされてゆく必要があります。
| 観点 |
|---|
| ユーザ企業の満足度を実現し、継続的に提供されているか |
| 妥当な価格(コスト)で提供されているか |
この「明示的な合意」が、次のテーマで学ぶSLAです。
⑥ ITサービスマネジメントとは
情報システムのライフサイクルにおいては、ITサービスにかかわる保守・運用がそのシステムの構築以上にコスト面において多大なものとなります。
ITサービスマネジメントとは、ITサービスの品質の維持や向上、効率化を図るためのマネジメントです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象 | ITサービス |
| 目的 | 品質の維持や向上、効率化を図る |
「構築以上にコストがかかる」
| 段階 | コストの比重 |
|---|---|
| 構築 | 小さい |
| 保守・運用 | 大きい |
前章で学んだTCOの考え方——導入時よりも運用費用が相対的に大きな問題となっている——と同じ認識です。
⑦ ITサービスマネジメントの目的および効果
主な目的および効果は次の4つです。
⑧ ①適切なサービスの提供
ユーザ企業が望むサービスを定義し、ユーザ企業とベンダとの間でサービスレベル合意(SLA:Service Level Agreement)を締結します。
⑨ ②サービス提供にかかわるプロセスやルールの標準化
プロセスやルールの標準化により均質なサービスの提供、またコスト削減や品質向上が期待できます。
| 効果 |
|---|
| 均質なサービスの提供 |
| コスト削減 |
| 品質向上 |
⑩ ③サービス品質を定量的に管理
PDCAサイクルに沿って提供するサービスの品質を測定し、費用対効果を評価、継続的な改善を行います。
このPDCAサイクルを回す仕組みはITサービスマネジメントシステム(ITSMS:IT Service Management System)とよばれます。
ITサービスマネジメントシステムの認証を受けると、ITSMS認証を取得することができます。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| ITSMS | PDCAサイクルを回す仕組み |
| ITSMS認証 | 認証を受けると取得できる |
⑪ ITSMS構築のポイント
情報マネジメントシステム認定センターは、ITSMS構築のポイントを次のように示しています。
| 順 | ポイント |
|---|---|
| ① | 経営者が腰を据えて関わる(任せきりにしない) |
| ② | 部門の壁を越えてプロセスで捉える(プロセスごとに誰が何を負うかを決め、プロセスとプロセスの受け渡し=入力と出力をはっきりさせる) |
| ③ | 目標と指標(KPI)を置いて測る(数で測れる目標を立て、測った結果を直すきっかけにする) |
| ④ | 効果的な運用管理手順の実装(必要に応じてITIL等のベストプラクティスを適用する/従来のサービス提供方法や管理体制を有効活用する/社内規定/ルールと実態との乖離を極小化する) |
⑫ ①が最初に来る意味
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 運用の話だからIT部門の仕事 | 経営者が深く関与する |
前章で学んだデジタルガバナンス・コードの「経営者自らがリーダーシップを発揮し」と同じ趣旨です。
⑬ ④サービスの価値を把握
サービスがどれだけ貢献しているのかを関係者が認識し、価値観を共有します。
ユーザ企業もサービスに対する理解と認識を深めてゆきます。
| 主体 | やること |
|---|---|
| 関係者 | サービスがどれだけ貢献しているのかを認識し、価値観を共有する |
| ユーザ企業 | サービスに対する理解と認識を深める |
ベンダだけの話ではない——ユーザ企業側の理解も求められる、という点が明記されています。
| 800万円 |
| 15% |
| 合計 | 5,500万円 | 100% |
構築は全体の4割以下
| 見えているもの | 実際 | |
|---|---|---|
| 導入時の議論 | 2,000万円の投資 | 5年で5,500万円 |
保守・運用の中身
| 業務 | 内容 |
|---|---|
| 障害対応 | 動かなくなったときの復旧 |
| 問い合わせ対応 | 使い方の質問 |
| 法改正対応 | 消費税率、インボイス、電子帳簿保存法など |
| 定期メンテナンス | バックアップ、データ整理 |
| 監視 | 正常に動いているかの確認 |
法改正対応が見落とされやすい
| 改正 | 対応の必要性 |
|---|---|
| 消費税率の変更 | 必須 |
| インボイス制度 | 必須 |
| 電子帳簿保存法 | 必須 |
これらは自社の都合とは無関係に発生します。
中小企業がシステムを発注するとき
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| 保守契約の範囲 | 何が含まれ、何が別料金か |
| 法改正対応の扱い | 保守に含まれるか、別料金か |
| 問い合わせの対応時間 | 平日9時〜17時か、24時間か |
| 障害時の復旧目標 | 何時間以内に復旧するか |
これらを文書にしたものがSLA——次のテーマで詳しく学びます。
ITSMS構築のポイントを中小企業で考える
①経営者が深く関与する
| 関与しない場合 | 関与する場合 |
|---|---|
| 「システムのことは担当者に任せている」 | 「どのサービスがいくらで、何を得ているか」を把握 |
| 投資の判断ができない | 判断できる |
| 障害時に混乱する | 優先順位を判断できる |
「障害時の優先順位」は経営判断
| 状況 | 判断すべきこと |
|---|---|
| システムが止まった | どの業務を優先して復旧するか |
| 受注と出荷、どちらが先か | 経営者が決める |
②組織横断的なプロセスアプローチ
| プロセス | 役割と責任 |
|---|---|
| 障害の受付 | 誰が受ける |
| 障害の切り分け | 誰が判断する |
| ベンダへの連絡 | 誰が連絡する |
| 業務部門への通知 | 誰が伝える |
| 復旧の確認 | 誰が確認する |
決めておかないと起きること
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 誰がベンダに連絡するか決まっていない | 誰も連絡しない、または全員が連絡する |
| 業務部門への通知が決まっていない | 現場が状況を知らない |
③KPIの設定と測定
| KPI | 目標 |
|---|---|
| 月間の障害発生件数 | 2件以下 |
| 障害からの平均復旧時間 | 2時間以内 |
| 問い合わせへの初回回答時間 | 1時間以内 |
| 稼働率 | 99.5%以上 |
「測定し、改善のための『きっかけ』とする」
| 状況 | きっかけ |
|---|---|
| 障害が月5件に増えた | 原因を調べる |
| 復旧時間が長くなった | 手順を見直す |
| 問い合わせが増えた | 教育や画面の改善を検討 |
4つ目が示唆的
| 見方 | 判断 |
|---|---|
| 「問い合わせ対応が大変だ」 | 人を増やす |
| 「なぜ問い合わせが多いのか」 | 画面が分かりにくい、教育が不足 |
数字を見ることで、原因に遡れる——これがKPIを測る意味です。
④社内規定/ルールと実態との乖離を極小化する
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| 規定では「申請してから作業」 | 実際は口頭で済ませている |
| 規定では「月次でパスワード変更」 | 実際は誰も変えていない |
乖離があると何が問題か
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 規定が形骸化する | 他の規定も守られなくなる |
| 事故時に責任が曖昧になる | 規定どおりでないため |
対応は2つ
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 実態を規定に合わせる | 運用を正す |
| 規定を実態に合わせる | 現実的な規定に直す |
「守れない規定は直す」という判断も必要——形だけの規定は、かえって組織を弱くします。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a ITサービスマネジメントとは、ITサービスの品質の維持や向上、効率化を図るためのマネジメントである。
> b PDCAサイクルを回す仕組みは、ITサービスマネジメントシステム(ITSMS)とよばれる。
> c ITSMS構築のポイントの第一に挙げられているのは、最新の技術を積極的に導入することである。
解答 a:○ b:○ c:×
② SLA(Service Level Agreement)
サービス内容およびサービス目標値に関するユーザ企業(顧客)とベンダ(サービス提供者)の間の合意書をSLAとよびます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何か | 合意書 |
| 当事者 | ユーザ企業(顧客)とベンダ(サービス提供者) |
| 内容 | サービス内容およびサービス目標値 |
③ SLM(Service Level Management:サービスレベル管理)
サービスがSLAの内容に基づいて適切に提供されているかを確認し、その達成状況を監視・管理する活動をSLMとよびます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何か | 活動 |
| やること | SLAの内容に基づいて適切に提供されているかを確認し、達成状況を監視・管理する |
④ SLAとSLMの違い
| SLA | SLM | |
|---|---|---|
| 性格 | 合意書(文書) | 活動 |
| 何をするか | サービス内容と目標値を合意する | 達成状況を監視・管理する |
「文書」か「活動」か——この1点で判別できます。
⑤ SLAの例
| 項目 | 内容の例 |
|---|---|
| いつ使えるか | 平日9:00〜17:00/年中無休24時間、など |
| どれだけ止まらないか | 稼働率99%以上、など |
| どれだけ壊れないか | 故障は年4回まで、など |
| 困ったときの受け口 | 問い合わせ窓口、連絡の道筋、など |
| どれだけ速いか | 平均の応答が10秒以内、など |
⑥ 第7章とのつながり
| SLAの項目 | 第7章で学んだ指標 |
|---|---|
| 可用性(稼働率) | システムの評価(稼働率、MTBF、MTTR) |
| 信頼性(故障の発生回数) | 同上 |
| 性能(平均応答時間) | レスポンスタイム |
システムの評価指標が、そのまま契約の条件になる——この対応関係を押さえておきましょう。
⑦ OLA(Operational Level Agreement)
OLAは、サービス提供者が組織内部の供給者と取り交わす文書です。
サービスを提供するために各部門がどのように連携するかを定義し、内部の調整と効率的なサービス提供を促進します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当事者 | サービス提供者と組織内部の供給者 |
| 定義するもの | 各部門がどのように連携するか |
| 狙い | 内部の調整と効率的なサービス提供の促進 |
⑧ UC(Underpinning Contract)
UCは、サービス提供者が組織外部の供給者と取り交わす文書です。
サービスの品質とパフォーマンスを保証するために必要なサポートなどが含まれています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 当事者 | サービス提供者と組織外部の供給者 |
| 含まれるもの | サービスの品質とパフォーマンスを保証するために必要なサポートなど |
underpinning は「土台を支える」——外部の供給者が、サービスの土台を支える、という意味です。
⑨ 3つの契約の当事者
| 契約 | 当事者 |
|---|---|
| SLA | 顧客 ⇔ サービス提供者 |
| OLA | サービス提供者 ⇔ 組織内部の供給者 |
| UC | (サービス提供者/組織内部の供給者)⇔ 外部の供給者 |
⑩ 3層の構造
| 層 | 誰 |
|---|---|
| 一番上 | 顧客 |
| 真ん中 | サービス提供者(内部に組織内部の供給者を含む) |
| 一番下 | 外部の供給者 |
| 層の間 | 契約 |
|---|---|
| 顧客とサービス提供者の間 | SLA |
| サービス提供者と組織内部の供給者の間 | OLA |
| 組織内部の供給者と外部の供給者の間 | UC |
⑪ 判別のポイント
| キーワード | 対応 |
|---|---|
| 顧客との間の合意書 | SLA |
| 達成状況を監視・管理する活動 | SLM |
| 組織内部の供給者と取り交わす | OLA |
| 組織外部の供給者と取り交わす | UC |
「内部」がOLA、「外部」がUC——この対比が判別の決め手です。
⑫ なぜOLAが必要か
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 顧客に「1時間以内に復旧」と約束した | 社内の各部門が協力しないと守れない |
| 部門間の役割が曖昧 | たらい回しになる |
顧客との約束(SLA)を守るために、社内の約束(OLA)が必要——この関係です。
⑬ なぜUCが必要か
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 回線は通信事業者に依存 | 通信事業者の対応が遅いと守れない |
| 機器の保守はメーカーに依存 | 同上 |
SLAで約束した水準を、外部の供給者との契約(UC)で裏付ける——この関係です。
⑭ 3つが揃って初めて機能する
| 契約 | 役割 |
|---|---|
| SLA | 顧客との約束 |
| OLA | それを支える社内の約束 |
| UC | それを支える社外との約束 |
顧客との約束だけでは守れない——だから3つが必要になります。
具体例
SLAを実際に読む
中小企業がクラウド型の販売管理システムを契約する場面
| 項目 | SLAの内容 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| サービス時間 | 24時間365日 | メンテナンス時間は除外されるか |
| 可用性 | 月間稼働率99.5%以上 | 月に何時間止まりうるか |
| 障害受付 | 平日9:00〜18:00 | 夜間・休日に止まったらどうなるか |
| 復旧目標 | 4時間以内 | 目標か、保証か |
| バックアップ | 日次、14日間保持 | それ以前に戻せるか |
| 返金 | 稼働率を下回った場合、月額の10% | 損害の補償にはならない |
「稼働率99.5%」が意味すること
| 期間 | 許容される停止時間 |
|---|---|
| 月(30日=720時間) | 3.6時間 |
| 年 | 約43.8時間 |
99.9%なら
| 期間 | 許容される停止時間 |
|---|---|
| 月 | 約43分 |
| 年 | 約8.8時間 |
0.4%の違いが、月3時間近い差になる
自社にとって許容できるか
| 業種 | 3.6時間の停止 |
|---|---|
| 小売(レジ連動) | 売上に直結。厳しい |
| 卸(受注) | 半日分の受注が遅れる |
| 製造(生産管理) | ラインが止まる |
| 士業(顧客管理) | 業務は続けられる |
「障害受付が平日9:00〜18:00」の意味
| 状況 | 対応 |
|---|---|
| 金曜20時に停止 | 月曜9時まで受け付けられない |
| 実質61時間の停止 | 稼働率の計算とは別の話 |
稼働率だけを見ていると見落とす
| 稼働率 | 受付時間 | |
|---|---|---|
| 数字上 | 99.5% | — |
| 実際の影響 | いつ止まるかによる | 受付時間外は長引く |
「復旧目標4時間以内」——目標か保証か
| 表現 | 意味 |
|---|---|
| 「目標」 | 努力する。守れなくても責任はない |
| 「保証」 | 守れなければ返金などの措置 |
多くのSLAは「目標」——この点を理解して契約する必要があります。
「返金は月額の10%」の意味
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| 月額12万円のサービス | 返金は1.2万円 |
| 停止による損害 | 受注が取れず数百万円の機会損失 |
返金は損害の補償ではない
| 誤解 | 実際 |
|---|---|
| 止まったら損害を補償してもらえる | 月額の一部が返るだけ |
だからリスク管理が必要
前章で学んだ4つのリスク対応で考えると、
| 対応 | 内容 |
|---|---|
| 低減 | 手作業の代替手順を用意する |
| 移転 | 事業中断保険に加入する |
| 保有 | 残ったリスクは受容する |
SLAの交渉は中小企業でもできるか
| サービスの種類 | 交渉の余地 |
|---|---|
| 大手のクラウドサービス | ほぼない(定型の約款) |
| 地元のベンダとの保守契約 | ある |
地元ベンダとの契約では交渉できる
| 交渉できる項目 | 例 |
|---|---|
| 受付時間 | 繁忙期だけ土曜も対応 |
| 復旧目標 | 業務への影響が大きい機能を優先 |
| 定例報告 | 月次で障害状況を報告 |
「優先順位を決めておく」が実務的
| 機能 | 優先度 |
|---|---|
| 受注入力 | 最優先。1時間以内 |
| 出荷指示 | 最優先 |
| 分析帳票 | 翌営業日でよい |
すべてを最優先にすると費用が上がる——優先順位をつけることで、費用を抑えられます。
OLAとUCを中小企業で考える
規模が小さいと、3層構造は薄くなる
| 層 | 中小企業の実態 |
|---|---|
| 顧客 | 社内の各部門 |
| サービス提供者 | 情報システム担当(1〜2名) |
| 外部の供給者 | ベンダ、通信事業者 |
それでもUCは重要
| 確認すること | 理由 |
|---|---|
| ベンダの対応時間 | 社内に約束した時間を守れるか |
| メーカーの保守期限 | 部品がなければ復旧できない |
| 回線事業者の対応 | 回線障害時の復旧時間 |
「社内に約束した水準」が外部の契約で裏付けられているか
| 状況 | 問題 |
|---|---|
| 社内には「半日で復旧」と伝えている | — |
| ベンダの保守契約は「翌営業日対応」 | 約束が守れない |
この不整合に気づくのがUCの考え方——社内への約束と社外との契約を突き合わせる、という発想です。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。(令和5年度第19問 改題)
> a SLAとは、サービス内容およびサービス目標値に関するユーザ企業とベンダの間の合意書である。
> b OLAは、サービス提供者が組織外部の供給者と取り交わす文書である。
> c SLMとは、サービスがSLAの内容に基づいて適切に提供されているかを確認し、その達成状況を監視・管理する活動である。
解答 a:○ b:× c:○

ITサービスマネジメント
試験のポイント
ITILは、ITSMSの教科書的な位置付けにあり、世界の多くの国の政府や企業において、ITILを取り入れた業務が行われています。
| 用語 | 関係 |
|---|---|
| ITSMS | PDCAサイクルを回す仕組み |
| ITIL | その教科書的な位置付け |
③ ITILの歴史
| 年 | 出来事 |
|---|---|
| 1989年 | 最初のITILが英国政府により発行 |
| 2011年 | 「ITIL2011 Edition」が発行 |
| 2019年 | 最新バージョンであるITIL4の「ITIL 4 Foundation」の書籍がリリース |
「英国政府により」という点が問われます。
④ ITIL4の特徴
ITIL4は、次の近年のトレンドを取り入れています。
| 取り入れたトレンド |
|---|
| アジャイル開発 |
| DevOps |
| クラウドコンピューティング |
⑤ ITIL4が念頭においているもの
IoTや3Dプリンタ、AIなど第4次産業革命やデジタルトランスフォーメーション(DX)などの実現を念頭においたITサービスマネジメントの包括的ガイドラインです。
| 念頭においているもの |
|---|
| IoTや3Dプリンタ、AIなど第4次産業革命 |
| デジタルトランスフォーメーション(DX) |
⑥ なぜアジャイル開発とDevOpsを取り入れたのか
第9章で学んだとおり、
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| アジャイル開発 | プログラムの変更とリリースを頻繁に繰り返す |
| DevOps | 開発側と運用側とが密接に連携する |
リリースが頻繁になると、運用の考え方も変わる
| 従来 | アジャイル・DevOps時代 | |
|---|---|---|
| リリースの頻度 | 年に数回 | 週に何度も |
| 変更管理 | 慎重に、時間をかけて | 迅速に、自動化して |
| 開発と運用の関係 | 分離 | 密接に連携 |
従来のITILは「変更を慎重に管理する」思想が強かった——それがアジャイル時代に合わなくなったため、ITIL4で見直されました。
⑦ ITILとITSMSの関係
| ITIL | ITSMS | |
|---|---|---|
| 性格 | ベストプラクティス集(ガイドライン) | PDCAサイクルを回す仕組み |
| 関係 | ITSMSの教科書的な位置付け | — |
| 認証 | なし(個人の資格試験はある) | ITSMS認証がある |
⑧ ITSMS構築のポイントとの対応
前テーマで学んだITSMS構築のポイント④「効果的な運用管理手順の実装」に、
「必要に応じてITIL等のベストプラクティスを適用する」
と記されています。
ITILは「必要に応じて」適用するもの
| すべて適用 | 必要に応じて適用 | |
|---|---|---|
| 考え方 | 型に合わせる | 自社に合う部分を使う |
同じ項目に「従来のサービス提供方法や管理体制を有効活用する」とあります。
| 意味 | 内容 |
|---|---|
| 今までのやり方も活かす | すべてをITILに置き換える必要はない |
⑨ 「ベストプラクティス集」とは
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| ベストプラクティス | 最も効果的とされる実践方法 |
| 規格・標準 | ベストプラクティス集 | |
|---|---|---|
| 性格 | 守るべき基準 | 参考にする事例集 |
| 拘束力 | ある(認証を受ける場合) | ない |
ITILは「こうしなさい」ではなく「こうするとうまくいく」——この性格を押さえておきましょう。
⑩ 他のガイドラインとの比較
| ガイドライン | 分野 | 策定 |
|---|---|---|
| ITIL | ITサービスマネジメント | 英国政府 |
| デジタルガバナンス・コード | DX経営 | 経済産業省 |
| デジタルスキル標準 | 人材育成 | IPA |
| EA | 全体最適の分析枠組み | — |
それぞれ扱う領域が違う——混同しないよう、対象で整理しておきます。
具体例
設例 ITIL
> 次の記述の正誤を判定せよ。(令和4年度第18問 改題)
> ITILは、ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス集(ガイドライン)である。
解答 ○
押さえるべき事実
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 何か | ベストプラクティス集(ガイドライン) |
| 最初の発行 | 1989年、英国政府 |
| 最新 | ITIL4(2019年にITIL 4 Foundation) |
| 取り入れたトレンド | アジャイル開発、DevOps、クラウドコンピューティング |
ITILが扱う領域
ITILは、ITサービスの運用に関する幅広い領域を扱います。代表的なものを挙げます。
| 領域 | 内容 |
|---|---|
| インシデント管理 | 障害が起きたときに、早く元に戻す |
| 問題管理 | 障害の根本原因を突き止め、再発を防ぐ |
| 変更管理 | システムへの変更を安全に行う |
| 構成管理 | 何がどこにあるかを把握する |
| リリース管理 | 新しい機能を本番環境に反映する |
インシデント管理と問題管理の違い
| インシデント管理 | 問題管理 | |
|---|---|---|
| 目的 | 早く元に戻す | 原因を突き止め再発を防ぐ |
| 時間軸 | 今すぐ | 中長期 |
| 例 | サーバを再起動して復旧 | なぜ落ちたのかを調べて対策 |
この2つを分ける意味
| 分けない場合 | 分ける場合 |
|---|---|
| 復旧を優先して原因究明が後回し | 両方が行われる |
| 同じ障害が繰り返す | 再発が防げる |
中小企業でよくある状況
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| 「とりあえず再起動したら直った」 | インシデントは解決 |
| 原因は分からないまま | 問題は未解決 |
| 翌月また同じことが起きる | 再発 |
「再起動で直った」で終わらせない
| 問い | 内容 |
|---|---|
| なぜ止まったのか | メモリ不足、ディスク満杯、プログラムの不具合 |
| いつから起きているか | 頻度の変化 |
| どうすれば防げるか | 監視、容量の追加、修正 |
記録を残すことが第一歩
| 記録する項目 |
|---|
| いつ起きたか |
| どんな症状か |
| どう対応したか |
| 原因は何か(分かれば) |
記録があると見えること
| 発見 | 内容 |
|---|---|
| 毎月末に起きている | 月次処理が原因 |
| 特定の端末だけ | 端末の問題 |
| 頻度が増えている | 機器の劣化 |
「毎月末に起きている」のような規則性は、記録がないと見つかりません。
構成管理の重要性
| 把握すべきこと | 内容 |
|---|---|
| どんな機器があるか | 台数、機種、設置場所 |
| どんなソフトが入っているか | バージョン、ライセンス数 |
| 何がつながっているか | ネットワーク構成 |
| 契約はどうなっているか | 保守期限、更新時期 |
把握していないと起きること
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| ライセンス違反 | 契約数を超えて使っている |
| サポート切れの放置 | 脆弱性が残る |
| 更新の見落とし | 突然使えなくなる |
| 障害時に構成が分からない | 復旧に時間がかかる |
一覧表を作るだけでも効果が大きい
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 機器名 | 業務サーバ |
| 設置場所 | 本社2階 |
| 導入年 | 2021年 |
| 保守期限 | 2026年3月 |
| 担当ベンダ | ○○システム |
| 入っているソフト | 販売管理、会計 |
中小企業でITILをどう使うか
| 全面的に導入 | 部分的に取り入れる | |
|---|---|---|
| 現実性 | 低い(規模に合わない) | 高い |
取り入れやすい考え方
| 考え方 | 実践 |
|---|---|
| インシデントと問題を分ける | 復旧だけでなく原因も調べる |
| 構成を把握する | 機器とソフトの一覧を作る |
| 変更を記録する | いつ、何を変えたかを残す |
| サービス水準を決める | どの業務をどれだけ守るか |
3つ目が障害対応で効く
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| 昨日まで動いていた | 何か変えたはず |
| 記録がある | 原因の候補がすぐ分かる |
| 記録がない | 手当たり次第に調べる |
「直前に何を変えたか」が最大の手がかり——これは規模を問わず有効な原則です。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a 最初のITILは、英国政府により1989年に発行された。
> b ITIL4は、アジャイル開発、DevOps、クラウドコンピューティングなど近年のトレンドを取り入れている。
> c ITILは、ITサービスマネジメントにおける認証制度であり、認証を受けると取得できる。
解答 a:○ b:○ c:×

ITIL(1/2)

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