経営とIT
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プレミアムで見るIT戦略とは、自社の経営戦略や事業戦略を実現するためのIT活用方針を定めるものです。かつては経営戦略が先にあり、それを受けてIT戦略を作る流れが一般的でした。しかし現代では、ITは経営戦略や事業戦略を実現する重要な技術基盤となっているため、これらの戦略を考える上でIT戦略も併せて検討することが必要不可欠になっています。この節では、IT戦略の位置づけの変化と、経済産業省が示す「IT経営」「デジタルガバナンス・コード3.0」を学びます。令和6年度・7年度と続けて出題されている、直近で重要度の増している分野です。
簡単にいうと
昔は「経営戦略 → 情報化戦略 → システム全体計画」の3段階だったのが、今は「経営戦略(ITも含む)→ 情報化全体計画」の2段階に!ITが経営戦略の中に入り込んだ、というのがこの図の意味だよ。
① IT戦略とは
IT戦略とは、自社の経営戦略や事業戦略を実現するためのIT活用方針を定めるものです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何のために | 自社の経営戦略や事業戦略を実現するため |
| 何を定めるか | IT活用方針 |
② 整合性の確保
IT戦略は経営戦略や事業戦略と密接に関わっているため、両者の整合性を確保し、維持することが求められます。
| 求められること |
|---|
| 整合性を確保する |
| 整合性を維持する |
「確保」だけでなく「維持」も必要——戦略は変わるため、一度合わせて終わりではありません。
具体例
IT戦略の位置づけが変わった例
例1:飲食業
| 従来の流れ | 内容 |
|---|---|
| ① | 来店客を増やす戦略を立てる |
| ② | そのために予約システムを入れる |
| 現在の流れ | 内容 |
|---|---|
| ① | デリバリーとテイクアウトを含めた事業の形を考える |
| ② | その前提として、注文・決済・配送の仕組みを設計する |

IT戦略の変化
試験のポイント
簡単にいうと
IT経営は経済産業省の定義!「単に現業をIT化するだけでは不十分」——この一文が出発点だよ。経営・業務・ITの3つが融合するイメージを持とう。
① IT経営とは
IT投資本来の効果を享受するためには、単に現業をIT化するだけでは不十分です。
自社のビジネスモデルを再確認したうえで、経営の視点を得ながら、業務とITとの橋渡しを行っていくことが重要です。
経済産業省では、このような経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すことを「IT経営」と定義しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義者 | 経済産業省 |
簡単にいうと
2024年に経済産業省が改訂した指針だよ!全体像は「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」。視点は方向性、柱は行動の枠組み——この区別が大事だよ。
① デジタルガバナンス・コード3.0とは
デジタルガバナンス・コード3.0は、経済産業省が2024年に改めた指針です。デジタルを使って企業の価値を伸ばし続け、あわせて社会にとっての価値も生み出すには、経営として何をすべきか——その行動原則を並べたものにあたります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 策定者 | 経済産業省 |
| 改訂年 | 2024年 |
簡単にいうと
5つの柱は「どのようにDXを進めるか」の枠組み!1.ビジョン → 2.戦略策定 → 3.戦略推進 → 4.成果指標 → 5.対話、という流れ。第3の柱の3つの領域は令和6年度・7年度と続けて出題されているよ。
① 5つの柱とは
5つの柱は、実際に「どのようにDXを進めるか」についての枠組みです。
② 第1の柱:「経営ビジョン・ビジネスモデルの策定」
技術の進み方や、社会と競争相手の動きから生まれる好機と危うさを織り込んだうえで、この先どこへ向かうのかと、それをどう稼ぎにつなげるのかを組み立て、外に向けて示しなさい——という柱です。
| 求められること |
|---|
| 技術の進み方と、社会・競争相手の動きが生む好機と危うさを織り込む |
| 向かう先と、それを稼ぎに変える仕組みを組み立てる |
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従来は経営戦略や事業戦略に基づいてIT戦略を策定し、さらにそれを詳細化してIT導入の全体計画・個別計画と展開していく流れが一般的でした。
| 順 | 段階 |
|---|---|
| ① | 経営戦略 |
| ② | 情報化戦略 |
| ③ | システム全体計画 |
上から下への一方通行——ITは経営戦略を受けて考えるもの、という位置づけでした。
④ 現在の流れ
しかし現代では、ITは経営戦略や事業戦略を実現する重要な技術基盤となっているため、これらの戦略を考える上でIT戦略も併せて検討していくことが必要不可欠になりました。
| 順 | 段階 |
|---|---|
| ① | 経営戦略(ITも含む) |
| ② | 情報化全体計画 |
段階が3つから2つに減っている
| 従来 | 現在 | |
|---|---|---|
| 段階数 | 3段階 | 2段階 |
| ITの位置 | 経営戦略の下 | 経営戦略の中 |
⑤ この変化が意味すること
これは、経営におけるIT戦略の位置づけが相応に高まっているととらえることができます。
| 従来 | 現在 |
|---|---|
| 経営戦略を決めてから、ITをどう使うか考える | 経営戦略を考える時点でITも一緒に考える |
| ITは手段 | ITは前提でもある |
⑥ なぜ変化したのか
| 変化 | 内容 |
|---|---|
| ITそのものが事業になった | ネット通販、サブスクリプション、プラットフォーム |
| ITなしでは成立しない事業が増えた | 決済、物流、予約 |
| 競争の条件がITで決まる | 早さ、価格、顧客接点 |
「ITを使ってどうするか」ではなく「ITがあるから何ができるか」——発想が逆転しています。
⑦ 中小企業での意味
| 従来の考え方 | 現在の考え方 |
|---|---|
| 業務が固まってから、それを効率化するためにITを入れる | ITを前提に、そもそもの事業のやり方を考える |
例:小売業
| 従来 | 現在 |
|---|---|
| 店舗で売る → レジを効率化する | ネットと店舗をどう組み合わせるか、から考える |
⑧ 整合性が崩れる例
| 状況 | 起きること |
|---|---|
| 経営戦略が変わったのにシステムが古いまま | 戦略が実行できない |
| システムを入れたが戦略と合っていない | 投資が無駄になる |
| 部門ごとにばらばらにシステムを導入 | 全体最適にならない |
3つ目がとくに多い
| 部門 | 導入したもの |
|---|---|
| 営業 | 顧客管理システム |
| 製造 | 生産管理システム |
| 経理 | 会計システム |
それぞれが連携しない
| 問題 | 内容 |
|---|---|
| 同じ顧客情報が3か所にある | どれが正しいか分からない |
| 手作業で転記している | 効率化されていない |
第9章で学んだEA(エンタープライズアーキテクチャ)——全体最適の観点から分析する枠組みが、この問題への答えになります。
⑨ 経営戦略とIT戦略の関係を整理する
| 段階 | 問い |
|---|---|
| 経営戦略 | どこで、誰に、何を、どう売るか |
| IT戦略 | それを実現するために、どんなITをどう使うか |
| 情報化全体計画 | どのシステムを、いつ、いくらで導入するか |
企業経営理論とのつながり
| 科目 | 扱うもの |
|---|---|
| 企業経営理論 | 経営戦略、事業戦略 |
| 経営情報システム | それを支えるIT戦略 |
2次試験の事例IIIや事例Iでも、IT活用の提案が求められることがあります。経営課題とITを結びつけて考える訓練が、ここで必要になります。
| 従来 | 現在 | |
|---|---|---|
| 事業の形 | 来店前提で固定 | ITによって選択肢が広がる |
例2:製造業
| 従来 | 現在 |
|---|---|
| 受注生産で納期3週間 | 設備の稼働データを使って納期を短縮できないか |
| 営業が受注を取る | 得意先のシステムと直接つなげないか |
「ITがあるから何ができるか」から考える
| 問い | 生まれる発想 |
|---|---|
| 稼働データが取れたら | 予知保全、納期短縮、稼働率の向上 |
| 得意先とつながったら | 受発注の自動化、在庫の共有 |
中小企業でIT戦略を作るとき
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 経営課題を整理する |
| ② | ITで解決できる課題を選ぶ |
| ③ | 優先順位をつける |
| ④ | いつ、いくらで、誰がやるかを決める |
②が最も難しい
| 課題 | ITで解決できるか |
|---|---|
| 人手が足りない | 一部できる(自動化) |
| 売上が伸びない | 一部できる(販路、分析) |
| 技術力が低い | できない |
| 資金が足りない | できない |
「ITで解決できない課題にITを入れない」——これが投資を無駄にしない第一歩です。
よくある失敗
| 失敗 | 内容 |
|---|---|
| 流行りだから導入する | 課題と結びついていない |
| 補助金があるから導入する | 同上 |
| 競合が入れたから導入する | 同上 |
補助金の話は現実的に多い
| 状況 | 助言 |
|---|---|
| 「補助金が出るから何か入れたい」 | 先に課題を整理しましょう |
| 「使わないと損だから」 | 使わない機能に保守費用がかかります |
補助金は初期費用だけ
| 費用 | 補助の対象 |
|---|---|
| 導入費用 | 対象になることが多い |
| 毎年の保守費用 | 対象外 |
| 教育の手間 | 対象外 |
次節で学ぶTCO(Total Cost of Ownership)の考え方が、ここで必要になります。
整合性を「維持」する難しさ
| 時点 | 状況 |
|---|---|
| 導入時 | 経営戦略と合っている |
| 3年後 | 事業の形が変わった |
| 5年後 | システムが足かせになっている |
定期的に見直す仕組みが要る
| 仕組み | 内容 |
|---|---|
| 年1回の見直し | 経営計画と情報化計画を一緒に見る |
| システムの棚卸し | 使われているか、必要か |
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a IT戦略とは、自社の経営戦略や事業戦略を実現するためのIT活用方針を定めるものである。
> b IT戦略は経営戦略や事業戦略と密接に関わっているため、両者の整合性を確保し、維持することが求められる。
> c 現代では、経営戦略や事業戦略を策定した後にIT戦略を検討する流れが一般的である。
解答 a:○ b:○ c:×
| 経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すこと |
② 3つの要素
| 要素 | 内容 |
|---|---|
| 経営 | 経営の視点 |
| 業務(現業) | 実際の仕事 |
| IT | 技術 |
③ 「単に現業をIT化するだけでは不十分」
| 不十分な例 | なぜ不十分か |
|---|---|
| 紙の伝票をそのまま画面にした | 業務の無駄がそのまま残る |
| 手作業をそのまま自動化した | そもそも不要な作業かもしれない |
④ 求められること
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 自社のビジネスモデルを再確認する |
| ② | 経営の視点を得る |
| ③ | 業務とITとの橋渡しを行う |
⑤ 「橋渡し」という言葉
| 立場 | 見えているもの |
|---|---|
| 経営者 | 事業の方向性。ITの中身は分からない |
| 現場 | 日々の業務。経営の意図は見えにくい |
| IT担当・ベンダ | 技術。業務の実態は分からない |
この3者がかみ合わないと、投資が効果を生まない——だから橋渡しが必要になります。
⑥ 橋渡しができないと起きること
| 状況 | 結果 |
|---|---|
| 経営者の意図が伝わらない | 戦略と関係ないシステムができる |
| 現場の実態が伝わらない | 使われないシステムができる |
| ITの制約が伝わらない | できない要求が積み上がる |
⑦ 診断士の役割
中小企業診断士は、この橋渡しの役割を担いうる立場にあります。
| 立場 | 持っている視点 |
|---|---|
| 診断士 | 経営の視点と、業務の理解 |
| 役割 | 内容 |
|---|---|
| 経営者の意図を整理する | 何を実現したいのかを言語化する |
| 業務の実態を把握する | 現場で何が起きているかを見る |
| ベンダとの間に立つ | 要求を技術的に伝わる形にする |
⑧ BPRとのつながり
第9章で学んだBPR(リエンジニアリング)——業務内容や業務の流れを抜本的に見直すこと——は、IT経営の実践そのものです。
| 単なるIT化 | IT経営 | |
|---|---|---|
| 業務 | そのまま | 見直す |
| ビジネスモデル | そのまま | 再確認する |
| 効果 | 限定的 | 企業価値の最大化 |
⑨ 「企業価値の最大化」という目標
| 目標 | 内容 |
|---|---|
| 効率化 | 費用を減らす(一部にすぎない) |
| 企業価値の最大化 | 売上、利益、競争力、持続性すべて |
IT投資の効果は効率化だけではない
| 効果 | 例 |
|---|---|
| 費用の削減 | 作業時間の短縮 |
| 売上の増加 | 新しい販路、顧客の拡大 |
| 品質の向上 | 誤りの減少 |
| 意思決定の改善 | データに基づく判断 |
| リスクの低減 | 属人化の解消 |
費用の削減だけで投資を判断すると、後の3つが見落とされる——これが次節のIT投資管理につながる論点です。
具体例
「単に現業をIT化するだけ」の失敗例
例:受注業務のシステム化
単なるIT化
| 手順 | 従来 | IT化後 |
|---|---|---|
| ① | FAXで注文を受ける | 変わらず |
| ② | 紙に転記する | 画面に入力する |
| ③ | 担当者が確認する | 変わらず |
| ④ | 紙の受注票を回す | 印刷して回す |
効果
| 項目 | 変化 |
|---|---|
| 作業時間 | ほとんど変わらない |
| 費用 | システムの費用が増えた |
なぜこうなるのか
| 原因 | 内容 |
|---|---|
| 業務の流れを変えていない | 紙をパソコンに置き換えただけ |
| 現場の要望をそのまま実装した | 「今のやり方のままで」 |
IT経営の観点で見直すと
| 問い | 内容 |
|---|---|
| そもそもFAXで受ける必要があるか | 得意先のシステムとつなげないか |
| 確認は必要か | 自動でチェックできないか |
| 紙を回す必要があるか | 画面で見ればよいのでは |
見直し後
| 手順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 得意先が直接システムに入力する |
| ② | 在庫と与信を自動でチェックする |
| ③ | 問題があるものだけ担当者が確認する |
効果
| 項目 | 変化 |
|---|---|
| 作業時間 | 大幅に減る |
| 誤りの数 | 減る |
| 顧客の利便性 | 向上する |
この見直しができるかどうかが、IT経営の分かれ目です。
なぜ見直しができないのか
| 障害 | 内容 |
|---|---|
| 現場が変化を嫌う | 慣れたやり方を変えたくない |
| 経営者が関与しない | 「システムのことはよく分からない」 |
| ベンダが言われたとおり作る | 業務の見直しまでは提案しない |
3つ目について
| ベンダの立場 | 内容 |
|---|---|
| 言われたとおり作るのが安全 | 後で「違う」と言われない |
| 業務の見直しは範囲外 | 契約に含まれていない |
だから第三者の視点が要る
| 立場 | できること |
|---|---|
| 診断士 | 業務の見直しを含めて提案できる |
経営者への問いかけ
| 問い | 引き出したいこと |
|---|---|
| 「このシステムで何を実現したいですか」 | 目的の明確化 |
| 「3年後、どういう会社にしたいですか」 | 経営の視点 |
| 「今の業務は、なぜこのやり方ですか」 | 見直しの余地 |
3つ目の問いが効く
| よくある答え | 意味 |
|---|---|
| 「昔からこうだから」 | 見直しの余地が大きい |
| 「法律でこう決まっているから」 | 変えられない |
| 「お客様の要望で」 | 確認の余地あり |
「昔からこうだから」が最も多い——そしてそこに改善の余地があります。
現場への問いかけ
| 問い | 引き出したいこと |
|---|---|
| 「この作業で一番面倒なことは何ですか」 | 本当の課題 |
| 「同じ情報を何回入力していますか」 | 重複作業 |
| 「後戻りが起きるのはどこですか」 | 手戻りの原因 |
現場は課題を知っているが、言語化されていない——聞き出すのが診断士の役割です。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a 経済産業省では、経営・業務・ITの融合による企業価値の最大化を目指すことを「IT経営」と定義している。
> b IT投資本来の効果を享受するためには、単に現業をIT化するだけでは不十分である。
> c IT経営では、自社のビジネスモデルは変えずに、現業を忠実にIT化することが重要とされる。
解答 a:○ b:○ c:×

IT経営(1/2)

IT経営(2/2)
試験のポイント
| 性格 |
| 行動原則 |
| 目的 | 持続的な企業価値向上と社会的価値の創出 |
② 背景
Society 5.0やDX(デジタルトランスフォーメーション)の進展を踏まえ、経営者自らがリーダーシップを発揮し、ステークホルダーと対話しながら、変化の激しいデジタル環境に適応することが求められます。
| 求められること |
|---|
| 経営者自らがリーダーシップを発揮する |
| ステークホルダーと対話する |
| 変化の激しいデジタル環境に適応する |
「経営者自らが」という点が重要——IT部門任せにしない、という趣旨です。
③ DX認定制度
「デジタルガバナンス・コード」は、国が企業を認定する「DX認定制度」にも用いられています。
| 制度 | 内容 |
|---|---|
| DX認定制度 | 国が企業を認定する制度 |
④ 全体像
本コードの全体像が「DX経営に求められる3つの視点・5つの柱」で構成されています。
| 構成 | 示すもの |
|---|---|
| 視点 | DXを推進する上で重視すべき方向性 |
| 柱 | 実行に向けた行動の枠組み |
⑤ 視点と柱の違い
| 視点 | 柱 | |
|---|---|---|
| 何を示すか | 重視すべき方向性 | 実行に向けた行動の枠組み |
| 数 | 3つ | 5つ |
| 性格 | 心構え・姿勢 | 具体的な行動 |
⑥ DX経営に求められる3つの視点
「デジタルガバナンス・コード3.0」において、DX経営を真に機能させ企業価値を高めるには、まず経営者が意識すべき基本的視点として次の3点が定められています。
⑦ 視点①:「経営ビジョンとDX戦略の連動」
企業の長期的な経営ビジョンと、それを支えるDXの戦略を一体的に策定・実行することで、DXが単なる施策に終わらないようにする視点です。
| 狙い | 内容 |
|---|---|
| 一体的に策定・実行する | DXが単なる施策に終わらないようにする |
「単なる施策に終わらない」とは
| 施策に終わる例 | 内容 |
|---|---|
| とりあえずRPAを入れた | 経営ビジョンと結びついていない |
| AIを試してみた | 同上 |
⑧ 視点②:「As is-To be ギャップの定量把握・見直し」
現状と目指すべき姿とのギャップを具体的な数字や指標で捉え、その結果を踏まえて戦略を柔軟かつ継続的に見直すというものです。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| As is | 現状 |
| To be | 目指すべき姿 |
| ギャップ | その差 |
| 求められること |
|---|
| 具体的な数字や指標で捉える |
| 戦略を柔軟かつ継続的に見直す |
「定量把握」がキーワード
| 定性的な把握 | 定量的な把握 | |
|---|---|---|
| 表現 | 「まだ不十分」 | 「目標50%に対し現状20%」 |
| 判断 | できない | できる |
⑨ 視点③:「企業文化への定着」
DXを単なるプロジェクトではなく、文化として社内に根付かせることが、持続可能な企業価値向上には不可欠であるという考えです。
| プロジェクト | 文化 | |
|---|---|---|
| 期間 | 終わりがある | 続く |
| 範囲 | 担当者 | 全社員 |
| 性格 | 一時的な取組 | 当たり前の行動 |
⑩ 3つの視点を一覧で
| 視点 | 内容 |
|---|---|
| 視点①:経営ビジョンとDX戦略の連動 | 一体的に策定・実行し、DXが単なる施策に終わらないようにする |
| 視点②:As is-To be ギャップの定量把握・見直し | ギャップを具体的な数字や指標で捉え、戦略を柔軟かつ継続的に見直す |
| 視点③:企業文化への定着 | DXを単なるプロジェクトではなく、文化として社内に根付かせる |
⑪ 3つの視点の関係
| 順 | 内容 |
|---|---|
| ① | 方向を定める(経営ビジョンとの連動) |
| ② | 現在地を測る(ギャップの定量把握) |
| ③ | 続ける仕組みを作る(企業文化への定着) |
方向・測定・継続——この3つが揃わないとDXは機能しない、という構造です。
具体例
3つの視点を、中小企業の場面で考える
視点①:経営ビジョンとDX戦略の連動
連動していない例
| 経営ビジョン | 導入したIT |
|---|---|
| 地域密着で顧客との関係を深める | 無人レジ(顧客との接点が減る) |
ちぐはぐになっている
連動している例
| 経営ビジョン | 導入したIT |
|---|---|
| 地域密着で顧客との関係を深める | 顧客管理システム(購買履歴から提案する) |
| 無人レジ(浮いた時間を接客に回す) |
同じ無人レジでも、位置づけが違えば意味が変わる
| 位置づけ | 意味 |
|---|---|
| 人を減らすため | ビジョンと矛盾 |
| 接客の時間を作るため | ビジョンと整合 |
視点②:As is-To be ギャップの定量把握
定量化していない例
| 現状 | 目標 |
|---|---|
| 「業務が非効率」 | 「効率化する」 |
判断できない
定量化した例
| 項目 | As is(現状) | To be(目標) |
|---|---|---|
| 受注1件あたりの処理時間 | 45分 | 10分 |
| 入力の誤り率 | 3% | 0.5% |
| 月次締めにかかる日数 | 7日 | 2日 |
| 在庫の精度 | 90% | 99% |
この表があると、投資の判断ができる
| 投資額 | 効果 | 判断 |
|---|---|---|
| 500万円 | 年間1,200時間の削減 | 人件費換算で年240万円 → 約2年で回収 |
視点③:企業文化への定着
定着していない例
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| システムを入れたが使われない | 元のやり方に戻っている |
| 担当者が辞めたら止まった | 属人化している |
| 「あのプロジェクトは終わった」 | 継続していない |
定着している例
| 状況 | 内容 |
|---|---|
| 新しい業務を考えるときITも一緒に考える | 当たり前になっている |
| 現場から改善提案が出る | 自分事になっている |
| データを見て判断する習慣がある | 文化になっている |
定着させるためにできること
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 小さな成功体験を作る | やってよかったと感じてもらう |
| 現場に決めさせる | 押し付けない |
| 評価に組み込む | 取り組むことが評価される |
| 経営者が使う | 経営者が使わないものは定着しない |
4つ目がとくに効く
| 状況 | 現場の受け取り方 |
|---|---|
| 経営者が紙の資料を求める | 「結局、紙が必要なんだ」 |
| 経営者が画面で確認する | 「これが標準なんだ」 |
DX認定制度
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 何か | 国が企業を認定する制度 |
| 基準 | デジタルガバナンス・コード |
中小企業にとっての意味
| 効果 | 内容 |
|---|---|
| 税制の優遇 | 一定の要件で適用されることがある |
| 金融支援 | 日本政策金融公庫の融資制度など |
| 対外的な信用 | 取引先や採用への訴求 |
認定を目指す過程に価値がある
| 過程 | 得られること |
|---|---|
| ビジョンを言語化する | 社内で共有できる |
| 現状を整理する | 課題が見える |
| 戦略を公表する | 後戻りしにくくなる |
「認定を取ること」より「考える過程」に意味がある——中小企業への助言としては、この点を伝えるのが実務的です。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a デジタルガバナンス・コード3.0は、経済産業省が2024年に改訂した指針である。
> b 視点②「As is-To be ギャップの定量把握・見直し」では、現状と目指すべき姿とのギャップを具体的な数字や指標で捉える。
> c デジタルガバナンス・コード3.0の全体像は、「DX経営に求められる5つの視点・3つの柱」で構成されている。
解答 a:○ b:○ c:×

デジタルガバナンス・コード3.0
試験のポイント
「公表する」という点
| 公表しない | 公表する |
|---|---|
| 社内で変えられる | 後戻りしにくい |
| ステークホルダーに伝わらない | 投資家、顧客、従業員に伝わる |
③ 第2の柱:「DX戦略の策定」
ビジョンを数値化して具体化する戦略を策定・開示することが求められます。
| 求められること |
|---|
| ビジョンを数値化して具体化する |
| 戦略を策定・開示する |
「数値化して具体化する」
| ビジョン | 数値化した戦略 |
|---|---|
| 「デジタルで顧客体験を高める」 | 「オンライン比率を3年で30%に」 |
視点②の「定量把握」とつながる——数値がないと、後でギャップを測れません。
④ 第3の柱:「DX戦略の推進」
特に、次の3つの領域の重要性を反映しています。
| 領域 |
|---|
| 3-1 組織づくり |
| 3-2 デジタル人材の育成・確保 |
| 3-3 ITシステム・サイバーセキュリティ |
この3つの領域は、令和6年度第10問・令和7年度第21問で問われています。
⑤ 3つの領域の意味
| 領域 | 何を整えるか |
|---|---|
| 組織づくり | 推進する体制 |
| デジタル人材の育成・確保 | 担う人 |
| ITシステム・サイバーセキュリティ | 技術的な基盤と守り |
体制・人・基盤——3つが揃わないと推進できない、という構造です。
⑥ 第4の柱:「成果指標の設定・DX戦略の見直し」
設定したKPIなどによって成果を測定し、その結果に応じて戦略を再構築するPDCA的プロセスが求められます。
| 用語 | 意味 |
|---|---|
| KPI | 重要業績評価指標 |
| 求められること |
|---|
| 設定したKPIなどによって成果を測定する |
| その結果に応じて戦略を再構築する |
⑦ 第5の柱:「ステークホルダーとの対話」
投資家や顧客、社員、社会全体などに対する開示・対話を通じて持続的信頼を築くことを重視しています。
| ステークホルダー |
|---|
| 投資家 |
| 顧客 |
| 社員 |
| 社会全体 |
⑧ 5つの柱の流れ
| 順 | 柱 | 内容 |
|---|---|---|
| 1 | 経営ビジョン・ビジネスモデルの策定 | どこを目指すか |
| 2 | DX戦略の策定 | 数値化して具体化する |
| 3 | DX戦略の推進 | 組織・人材・ITで実行する |
| 4 | 成果指標の設定・DX戦略の見直し | 測って見直す |
| 5 | ステークホルダーとの対話 | 開示して信頼を築く |
PDCAの形になっている
| PDCA | 対応する柱 |
|---|---|
| Plan | 第1・第2の柱 |
| Do | 第3の柱 |
| Check | 第4の柱 |
| Act | 第4の柱(戦略の再構築) |
⑨ 視点と柱の対応
全体像の図では、視点が柱を横断する形で配置されています。
| 視点 | どこにかかるか |
|---|---|
| 視点①:経営ビジョンとDX戦略の連動 | 第1の柱と第2の柱の間 |
| 視点②:As is-To be ギャップの定量把握・見直し | 第3の柱と第4の柱の間 |
| 視点③:企業文化への定着 | 第4の柱と第5の柱の間 |
柱が「何をするか」、視点が「どう取り組むか」——この関係で全体が構成されています。
⑩ 押さえどころ
| 事項 | 内容 |
|---|---|
| 数 | 視点は3つ、柱は5つ |
| 第3の柱の3領域 | 組織づくり/デジタル人材の育成・確保/ITシステム・サイバーセキュリティ |
| 第5の柱 | ステークホルダーとの対話 |
とくに第3の柱の3領域と、第5の柱が繰り返し出題されています。
具体例
5つの柱を、中小製造業の例で
第1の柱:経営ビジョン・ビジネスモデルの策定
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 機会 | 得意先がEDI(電子データ交換)を求めている |
| リスク | 対応できないと取引が減る |
| ビジョン | 「データでつながる工場」 |
| ビジネスモデル | 受発注から生産、納品までをデータでつなぐ |
第2の柱:DX戦略の策定
| 項目 | 数値目標 |
|---|---|
| EDI対応の得意先比率 | 3年で80% |
| 受注処理時間 | 1件45分 → 10分 |
| 納期遵守率 | 92% → 98% |
| 設備稼働率 | 65% → 78% |
第3の柱:DX戦略の推進
3-1 組織づくり
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 推進責任者を決める | 専務が兼任 |
| 部門横断のチームを作る | 営業・製造・経理から1名ずつ |
| 月1回の推進会議 | 進捗と課題を共有 |
3-2 デジタル人材の育成・確保
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 社内から選抜して育成する | 業務を知っている人を伸ばす |
| 外部研修に出す | 基礎知識を身につける |
| 外部の専門家を活用する | 足りない部分を補う |
3-3 ITシステム・サイバーセキュリティ
| 施策 | 内容 |
|---|---|
| 老朽化したシステムを更新する | 連携できる形にする |
| バックアップ体制を整える | ランサムウェア対策 |
| 従業員教育を行う | 標的型攻撃メールへの対応 |
第4の柱:成果指標の設定・DX戦略の見直し
| KPI | 目標 | 1年後の実績 | 判断 |
|---|---|---|---|
| EDI対応比率 | 30% | 35% | 前倒し |
| 受注処理時間 | 25分 | 38分 | 遅れ |
| 納期遵守率 | 94% | 93% | やや遅れ |
見直しの判断
| 課題 | 対応 |
|---|---|
| 受注処理時間が減らない | 原因を調べる |
| 原因:EDI対応の得意先でも電話確認している | 業務ルールを見直す |
測るから、原因が見つかる——第4の柱の意味がここにあります。
第5の柱:ステークホルダーとの対話
| 相手 | 伝えること |
|---|---|
| 得意先 | EDI対応を進めていること |
| 従業員 | なぜやるのか、どう変わるのか |
| 金融機関 | 投資計画と効果 |
| 採用候補者 | デジタル化に取り組む会社であること |
従業員への説明がとくに重要
| 説明しない | 説明する |
|---|---|
| 「また何か始まった」 | 「こういう理由でやる」 |
| 不安が広がる | 協力が得られる |
不安の中身
| 不安 | 説明すべきこと |
|---|---|
| 仕事がなくなるのでは | 配置転換の方針 |
| ついていけるか | 教育の計画 |
| 今のやり方が否定されるのか | これまでの蓄積を活かすこと |
「これまでの蓄積を活かす」と伝える
| 伝え方 | 受け取られ方 |
|---|---|
| 「今のやり方は古い」 | 否定された |
| 「培ってきた技術をデータにして残す」 | 価値を認められた |
第3の柱が中小企業で最も難しい
| 領域 | 中小企業の実態 |
|---|---|
| 組織づくり | 専任者を置く余裕がない |
| デジタル人材 | 採用が難しい |
| ITシステム | 老朽化している |
現実的な進め方
| 課題 | 対応 |
|---|---|
| 専任者を置けない | 兼任でも責任者を明確にする |
| 人材が採れない | 社内から育てる+外部を使う |
| システムが古い | 一度に全部ではなく、優先順位をつける |
「社内から育てる」が現実的
| 外から採る | 中から育てる | |
|---|---|---|
| 業務知識 | ない | ある |
| IT知識 | ある | これから |
| 採用の難易度 | 高い | — |
| 定着 | 不安 | 高い |
業務を知っている人にITを学んでもらうほうが、橋渡しができる人材になりやすい——IT経営の観点からも、この方向が有効です。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a 第3の柱「DX戦略の推進」では、「組織づくり」「デジタル人材の育成・確保」「ITシステム・サイバーセキュリティ」への対応といった領域の重要性を反映している。
> b 第5の柱「ステークホルダーとの対話」では、投資家や顧客、社員、社会全体などに対する開示・対話を通じて持続的信頼を築くことを重視している。
> c 第2の柱「DX戦略の策定」では、ビジョンを定性的に表現することが求められる。
解答 a:○ b:○ c:×

DX経営に求められる5つの柱(1/3)

DX経営に求められる5つの柱(2/3)

DX経営に求められる5つの柱(3/3)
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