ソフトウェア
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プレミアムで見るソフトウェアを手に入れる方法は、買うことだけではありません。設計図にあたるソースコードを公開し、誰でも改良して配り直せるようにする——この考え方がオープンソースです。中小企業にとっては、自社システムを低コストで構築する現実的な選択肢でもあります。ただし「無料だから何をしてもよい」わけではありません。ライセンスの種類によって、改変したものを公開する義務があったりなかったりします。この節では、オープンソースの定義と10の要件、BSD・GPL・MITという3つのライセンスの違い、そして無料で使えるソフトウェアの分類を整理していきます。
簡単にいうと
オープンソースは「タダのソフト」という意味じゃないんだ。設計図を公開して、みんなで改良していこうという考え方のこと。そして大事なのは、著作権を放棄しているわけじゃないという点!
① オープンソースソフトウェアとは
オープンソースソフトウェアとは、ソースコード(プログラム)をインターネットなどにより公開し、誰でも改良、再配布が行えるようにする考え方、またはそのプログラム自体を指します。
ここでいうソースコードとは、プログラミング言語で書かれた、人間が読める形のプログラムです。建物でいえば設計図にあたります。通常の市販ソフトウェアは、この設計図を公開せず、機械が実行できる形(実行形式)だけを配布します。設計図が手に入らなければ、利用者は中身を確かめることも、自分の都合に合わせて作り変えることもできません。
オープンソースは、その設計図を公開してしまおう、という考え方です。
② OSIによる定義
OSI(The Open Source Initiative)では、オープンソースを定義しており、10項目の基準を満たすものに限定しています。これらに準拠しているものにはOSI認定マークが付与されます。
| 要件 | |
|---|---|
| 1 | 自由な再頒布ができること(販売や無料で配布することを制限しない) |
| 2 | ソースコードを入手できること |
具体例
中小企業がオープンソースを使うときに確かめること
顧問先から「システムの費用を抑えたいのでオープンソースを使いたい」と相談されたとします。診断士として確認すべき点を整理します。
| 確認事項 | なぜ確認するか |
|---|---|
| どのライセンスか | 改変したソースの公開義務があるかが変わる |
| 商用利用が認められるか | オープンソースの定義上は認められるが、独自の条件が付いた「オープンソース風」のものもある |
| サポートをどう確保するか | 無償版には保証もサポートもないのが原則 |
| 社内に扱える人がいるか | 改変できても、できる人がいなければ価値は出ない |
| 更新の情報を誰が追うか | 脆弱性が見つかったときに対応できる体制が要る |
「無償」と「無料で済む」は違う
ライセンス費用はゼロでも、次の費用は発生します。

オープンソースソフトウェアとライセンス
試験のポイント
簡単にいうと
3つのライセンスの違いは「改変したソースを公開する義務があるか」の一点!GPLだけが「公開しなさい」と求めるの。BSDとMITは公開しなくていい。この対比を押さえれば、選択肢はほぼ切れるよ。
① 3つのライセンス
オープンソースソフトウェアの代表的なライセンスに、BSD License(Berkeley Software Distribution license)、GNU General Public Licenseがあります。また、オープンソースソフトウェアに類似したソフトウェアライセンスに、MIT Licenseがあります。
② BSD License
BSD Licenseは、オープンソースのソフトウェアにおいて、無保証と免責、および再配布時の著作権表示のみを条件とします。
条件はこれだけです。作った人は「動かなくても責任は取りません」と宣言し、使う側は「元の著作権表示を消さない」ことだけを守ればよい、という緩やかなライセンスです。
③ GNU General Public License(GPL)
簡単にいうと
名前だけ並べても頭に入らないから、「何をするソフトか」とセットで覚えよう。そしてLAMPは、Webサイトを動かすための定番の組み合わせ。頭文字を取っただけの名前だよ!
① LAMP——定番の組み合わせ
データベース連動型のWebサイトを開発する際に必要となるアプリケーションのうち、人気の高いオープンソースソフトウェアの組み合わせをLAMPといいます。
| 頭文字 | ソフトウェア | 役割 |
|---|---|---|
| L | Linux | OS |
簡単にいうと
「無料で使える」にもいろいろあるんだ。試用期間だけ無料なのがシェアウェア、ずっと無料なのがフリーウェア。そして著作権まで放棄したのがPDS——ただし日本では実は成立しないの!
① シェアウェア
シェアウェアとは、定められた無料試用期間の後、継続して使用する場合は、料金を支払う方式のソフトウェアです。
ネットワークなどを通じて配布され、比較的安価であるにもかかわらず、業務に十分耐えられるものが数多くあります。
「まず使ってみて、気に入ったら払う」という販売方法です。利用者は買う前に自分の用途に合うかを確かめられ、作り手は広告費をかけずに配れます。
② フリーウェア
フリーウェアとは、著作者が金銭的な諸権利を放棄したソフトウェアです。
ネットワークなどを通じて、無料で配布されますが、著作権を放棄するものではありません。改変や再配布を禁じているものもある
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| 派生物が存在でき、派生物に同じライセンスを適用できること |
| 4 | 差分情報の配布を認める場合には、同一性の保持を要求してもかまわない |
| 5 | 個人やグループを差別しないこと |
| 6 | 利用する分野を差別しないこと |
| 7 | 再配布において追加ライセンスを必要としないこと |
| 8 | 特定製品に依存しないこと |
| 9 | 同じ媒体で配布される他のソフトウェアを制限しないこと |
| 10 | 技術的な中立を保っていること |
③ 10項目の読み解き方
10項目を丸暗記するのは現実的ではありません。何を禁じているかで3つに束ねると理解しやすくなります。
| 束 | 該当する項目 | 要するに |
|---|---|---|
| 入手と配布を妨げない | 1、2、7 | 誰でも手に入れられ、誰にでも渡せる |
| 使う相手と用途を選ばない | 5、6 | 個人・団体・分野で差別しない |
| 他のものを縛らない | 3、4、8、9、10 | 派生物や同梱物、特定の技術に縛りをかけない |
とくに5と6は、試験でも狙われやすいところです。「軍事利用は禁止」「営利企業の利用は禁止」といった条件を付けると、それはもうオープンソースの定義から外れてしまいます。使い道が気に入らない相手にも渡さなければならない——ここがオープンソースの厳しさであり、同時に強さでもあります。
④ オープンソースの利点
オープンソースは、ソースコードが公開されているため、世界中の技術者によって改良が加えられ、高機能なプログラムに発展しているものが多いという特徴があります。
また、無償または安価で利用できるため、うまく活用すれば、自社システムを低コストで構築することができます。診断士として中小企業に助言する立場からは、この点が実務的に重要です。
| 利点 | 中小企業にとっての意味 |
|---|---|
| 無償または安価 | ライセンス費用を抑えられる |
| ソースコードが公開されている | 自社の業務に合わせて改変できる |
| 多くの技術者が使っている | 不具合が見つかりやすく、情報も得やすい |
| 特定ベンダに縛られない | ベンダロックインを避けられる |
⑤ 著作権は放棄されていない
ここが最重要の論点です。
> オープンソースは著作権を保護しながらソースコードを公開するものであり、ソースの作成者が著作権を放棄するものではありません。
「ソースコードが公開されている」ことと「著作権がない」ことは、まったく別の話です。オープンソースのソフトウェアにも著作者がいて、著作権を持っています。そのうえで、「この条件を守るなら自由に使ってよい」という許諾(ライセンス)を与えている、という構造です。
だからこそ、次のテーマで学ぶライセンスの条件を守らなければ、著作権侵害になります。「オープンソースだから何をしてもよい」という理解は誤りです。
総所有コスト(TCO:Total Cost of Ownership)という考え方でいえば、ライセンス費用は一部にすぎません。第11章のIT投資管理で学ぶとおり、導入費だけでなく運用・保守を含めた総額で比較する必要があります。
それでもオープンソースが選ばれる理由
上の費用をすべて考慮しても、オープンソースが有利な場面は多くあります。とくに、
という2点は、長期にわたって使うシステムでは大きな意味を持ちます。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a オープンソースソフトウェアは、ソースの作成者が著作権を放棄したものである。
> b オープンソースの要件には、個人やグループを差別しないこと、利用する分野を差別しないことが含まれる。
> c オープンソースの要件では、自由な再頒布ができることが求められるが、販売することは認められない。
解答 a:× b:○ c:×
そして最大の特徴が次の点です。
> GPLに基づいて公開されたソフトウェアを改変して再配布する場合は、GPLに従ってそのソースコードを公開することが求められます。
つまり、GPLのソフトウェアを土台にして何かを作り、それを配布するなら、自分が書いた部分のソースコードも公開しなければならない、ということです。この性質をコピーレフトとよびます。著作権(copyright)をもじった言葉で、「自由を受け取った者は、その自由を次の人にも渡さなければならない」という考え方を表しています。
④ MIT License
MIT Licenseは、米国マサチューセッツ工科大学を起源とするソフトウェアライセンスです。
MIT Licenseのもとで配布されているものは、改変でも、再配布でも、商用利用でも、有料販売でも、基本的にどんなことにでも自由に無料で使用することができます。
大きな特徴は、MIT Licenseを用いて公開されたプログラムを改変したり、自らのプログラムに組み込んだ派生的な著作物は、ソースコードを公開せずに販売、配布できるという点です。
⑤ 3つを1枚の表で
| BSD License | GPL | MIT License | |
|---|---|---|---|
| 起源 | Berkeley Software Distribution | GNUプロジェクト | 米国マサチューセッツ工科大学 |
| 改変・再配布 | 可 | 可 | 可 |
| 商用利用・有料販売 | 可 | 可 | 可 |
| 改変部分のソースコード公開 | 不要 | 必要 | 不要 |
| 主な条件 | 無保証・免責、著作権表示 | コピーレフト(同じ条件での公開) | 著作権表示と免責条項の記載 |
⑥ 見分ける決め手
3つのうち、GPLだけが「改変したソースを公開せよ」と求めます。BSDとMITは求めません。
この一点が、ソフトウェアを選ぶ企業にとって決定的な違いになります。自社の独自機能を組み込んだシステムを外部に配布する場合、GPLのソフトウェアを土台にすると、自社が書いた部分まで公開する義務が生じるからです。競争上の優位を守りたい場面では、BSDやMITのソフトウェアを選ぶ、という判断になります。
試験での問われ方
| 誤りの作り方 | 例 |
|---|---|
| ライセンス名を入れ替える | 「MySQLはMIT Licenseで利用可能なDBMSである」(正:GPL) |
| 公開義務の有無を逆にする | 「MIT Licenseは改変部分のソースコード公開を求める」(正:求めない) |
いずれも名前と性質の対応を確認しているだけです。3つの名前と「公開義務あり/なし」の対応を、まず固めてください。
具体例
設例 ライセンスとソフトウェアの対応
> 次の文章の正誤を判定せよ。(令和3年度第5問 改題)
> イ MySQLはMIT Licenseで利用可能なデータベース管理システムの1つである。
> エ オープンソースソフトウェアである統合開発環境のApacheを用いれば、Webアプリケーションを構築することができる。
解答 イ:× エ:×
エの誤りの作り方に注目
この選択肢は、「オープンソースソフトウェアである」「Webアプリケーションを構築することができる」という部分は正しく、「統合開発環境の」という1語だけが誤りになっています。長い選択肢の中に1語だけ誤りを埋め込む、という作り方です。
対策は、名前を見たら分類を思い浮かべる習慣をつけることです。次のテーマで学ぶ「代表的なオープンソースソフトウェア」の表を、分類と名前のペアで覚えておけば、この種の選択肢は瞬時に切れます。
ライセンスの選択が事業に効く場面
ソフトウェア製品を開発して販売する企業を想定します。
| 使いたい部品のライセンス | 何が起きるか | 判断 |
|---|---|---|
| MIT License | 組み込んで、自社のソースは非公開のまま販売できる | 採用しやすい |
| BSD License | 著作権表示さえすれば、自社のソースは非公開のまま販売できる | 採用しやすい |
| GPL | 組み込んで配布するなら、自社のソースも公開が必要 | 慎重な検討が要る |
GPLを避けるべき、という話ではない
GPLのソフトウェアも、社内で使うだけ(配布しない)なら公開義務は生じません。自社のサーバで動かして業務に使う、という使い方であれば問題は起きにくいといえます。
問題になるのは、改変したものを外部に配布する場合です。自社製品に組み込んで販売する、顧客に納品する、といった場面では、ライセンスの条件を事前に確認する必要があります。
この観点は経営法務ともつながる
ソフトウェアのライセンスは、著作権法上の利用許諾契約です。条件に違反した利用は著作権侵害となり、差止請求や損害賠償の対象になりえます。経営法務で学ぶ著作権の知識と合わせて理解しておくと、実務での助言に厚みが出ます。

コピーレフトとLAMP
試験のポイント
| A |
| Apache |
| Webサーバソフトウェア |
| M | MySQL | DBMS |
| P | PHP/Perl/Pythonのいずれか | スクリプト言語 |
それらの頭文字を取ってLAMPとよばれています。
② なぜこの4つなのか
Webサイトを動かすには、次の4つの層が必要です。
1. 機械を動かす土台……OS
2. ブラウザからの要求を受け取る窓口……Webサーバソフトウェア
3. データを蓄えて出し入れする場所……DBMS
4. 業務の処理を書く言葉……スクリプト言語
LAMPは、この4層をすべてオープンソースでそろえた組み合わせです。どれか1つでも有償製品を使えば、そこにライセンス費用が発生します。4つすべてを無償でそろえられることが、LAMPが広く使われてきた理由です。
第7章で学ぶ3層アーキテクチャ(プレゼンテーション層・ファンクション層・データ層)と重ねると、ApacheとPHPがプレゼンテーション層とファンクション層を、MySQLがデータ層を担っている、という対応が見えてきます。
③ 代表的なオープンソースソフトウェア
| 分類 | オープンソースソフトウェアの例 |
|---|---|
| OS | UNIX、Linux、Ubuntu |
| 電子メールサーバ | Postfix |
| 電子メールクライアント | Mozilla Thunderbird |
| DNSサーバ | BIND |
| オフィスソフト | OpenOffice |
| Webサーバ | Apache |
| Webブラウザ | Firefox |
| データベース | PostgreSQL、MySQL |
| ブログ | WordPress |
| 統合開発環境 | Eclipse |
④ 分類と名前を結びつけて覚える
この表は、分類を入れ替えた選択肢を作るために使われます。先ほどの設例でも「統合開発環境のApache」という形で出題されました。
覚える取っかかりをいくつか挙げます。
| 名前 | 手がかり |
|---|---|
| Ubuntu | Linuxの派生版。OS |
| Postfix | メールを「post(郵送)」する |
| Thunderbird | Firefoxと同じ団体が作るメールソフト |
| BIND | DNSといえばBIND、とセットで覚える |
| Apache | Webサーバの代名詞。世界中のWebサイトで動いている |
| Firefox | ブラウザ。Thunderbirdと兄弟 |
| PostgreSQL/MySQL | 名前にSQLが入っている=データベース |
| WordPress | 「Press(出版)」=ブログ |
| Eclipse | 統合開発環境。プログラムを書くための道具 |
サーバ側とクライアント側で分けるのも有効です。Apache、Postfix、BIND、MySQL、PostgreSQLはサーバで動くもの。Firefox、Thunderbird、OpenOffice、Eclipseは手元のパソコンで動かすもの、という具合です。
⑤ 統合開発環境(IDE)とは
Eclipseの分類にある統合開発環境(IDE:Integrated Development Environment)とは、プログラムを書く・動かす・不具合を探すといった作業を、1つの画面でまとめて行えるようにしたソフトウェアです。
| 含まれる機能 | 役割 |
|---|---|
| エディタ | ソースコードを書く |
| コンパイラ/インタプリタ | 機械が実行できる形に変換する |
| デバッガ | 不具合の原因を探す |
| バージョン管理との連携 | 変更履歴を管理する |
第8章で学ぶ言語プロセッサや、第9章で学ぶ開発工程の話と直結する道具です。
具体例
LAMPで小さなECサイトを動かす
中小の小売業が自社の通販サイトを立ち上げる場面を、LAMPの各層に当てはめて追ってみましょう。
利用者が商品ページを開いたとき
| 順番 | 担当 | やっていること |
|---|---|---|
| ① | Apache(Webサーバ) | ブラウザからの「この商品ページをください」という要求を受け取る |
| ② | PHP(スクリプト言語) | 商品コードを取り出し、データベースに問い合わせる処理を実行する |
| ③ | MySQL(DBMS) | 商品名、価格、在庫数を返す |
| ④ | PHP | 受け取ったデータをHTMLの形に組み立てる |
| ⑤ | Apache | 組み立てられたページをブラウザに返す |
| — | Linux(OS) | ①〜⑤のすべてが動く土台を提供している |
もし有償製品でそろえたら
| 層 | 有償の例 | 費用の発生の仕方 |
|---|---|---|
| OS | 商用UNIX、Windows Server | サーバ台数やCPU数に応じて |
| Webサーバ | 商用Webサーバ製品 | 同上 |
| DBMS | 商用データベース製品 | 同上。しばしば最も高額 |
| 開発言語 | 商用開発環境 | 開発者の人数に応じて |
とくにDBMSのライセンス費用は、規模によっては数百万円単位になります。立ち上げ時に費用をかけられない中小企業にとって、LAMPは現実的な選択肢です。
ただし考えておくべきこと
| 論点 | 検討すべき内容 |
|---|---|
| 障害時のサポート | 無償版には保証がない。商用サポートを別途契約するか、自社で対応できる体制を作るか |
| セキュリティ更新 | 脆弱性の情報を誰が追い、誰が適用するか |
| 技術者の確保 | 広く使われている技術なので人は見つけやすいが、社内に1人もいないと厳しい |
第12章で学ぶクラウドコンピューティングを使えば、これらの負担の一部を事業者に任せることもできます。「オープンソースを自社サーバで動かす」のか「クラウドのサービスを使う」のかは、費用と運用体制の両面から判断する論点です。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a LAMPは、Linux、Apache、MySQL、PHP/Perl/Pythonの頭文字を取った組み合わせである。
> b BINDは電子メールサーバのオープンソースソフトウェアである。
> c WordPressはブログのオープンソースソフトウェアである。
解答 a:○ b:× c:○

代表的なオープンソースソフトウェアとLAMP
試験のポイント
ここが重要な点です。フリーウェアが放棄しているのは金銭的な諸権利、つまり「代金を請求する権利」だけです。著作権そのものは著作者が持ち続けています。したがって、
という制約が残ります。「無料=何をしてもよい」ではないわけです。
③ PDS(Public Domain Software)
これに対して、金銭的な諸権利と著作権を放棄したソフトウェアは、PDS(Public Domain Software)といいます。
Public Domain(パブリックドメイン)とは、著作権が消滅した、あるいは放棄された状態を指す言葉です。誰のものでもない公共の領域に置かれた、という意味になります。
ただし、日本の著作権法では、著作財産権は放棄できるが、著作者人格権は放棄できないため、本来の意味でのPDSは存在しえないといわれています。
| 権利 | 内容 | 放棄できるか |
|---|---|---|
| 著作財産権 | 複製権、譲渡権など、財産的な利益にかかわる権利 | 放棄できる |
| 著作者人格権 | 公表権、氏名表示権、同一性保持権など、人格的な利益にかかわる権利 | 放棄できない |
著作者人格権は著作者の人格と切り離せない権利とされ、譲渡も放棄もできません。したがって日本では、どれだけ権利を手放そうとしても、同一性保持権(勝手に改変されない権利)などは残ってしまう、ということです。
④ 4つを1枚の表で
| 費用 | 著作権 | 改変・再配布 | |
|---|---|---|---|
| オープンソースソフトウェア | 無償または安価 | 著作者が保持 | ライセンスの条件に従えば可 |
| シェアウェア | 試用期間後は有料 | 著作者が保持 | 原則不可 |
| フリーウェア | 無料 | 著作者が保持(金銭的な諸権利のみ放棄) | 禁じているものもある |
| PDS | 無料 | 放棄(日本では著作者人格権は放棄できない) | 自由 |
⑤ 見分ける2つの軸
4つの区別は、次の2問に答えれば決まります。
1. お金を払う必要があるか → 試用期間後に払うのがシェアウェア
2. 著作権を放棄しているか → 放棄しているのがPDS、していないのがフリーウェアとオープンソース
そしてフリーウェアとオープンソースの違いは、ソースコードが公開されているかどうかです。フリーウェアは無料で使えますが、ソースコードが公開されているとは限りません。オープンソースは、公開されていることが定義の要件になっています。
具体例
社内で使うソフトウェアを選ぶとき——4つの分類が効く場面
情報システム担当者として、社内で使う画像編集ソフトを選ぶ場面を考えます。候補は4つあります。
| 候補 | 分類 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| A社製の市販ソフト | 商用ソフトウェア | 必要なライセンス数と費用 |
| Bというシェアウェア | シェアウェア | 試用期間後も使うなら支払いが必要。業務利用の可否 |
| Cというフリーウェア | フリーウェア | 業務利用を禁じていないか。改変・再配布の可否 |
| Dというオープンソース | オープンソース | ライセンスの種類。商用利用の可否 |
もっとも事故が起きやすいのはシェアウェアとフリーウェア
| よくある事故 | 何が問題か |
|---|---|
| 試用期間が過ぎても使い続ける | シェアウェアの利用規約違反。著作権侵害になりうる |
| 「個人利用に限る」フリーウェアを社内で使う | 利用条件の違反 |
| フリーウェアを社内サーバに置いて配る | 再配布を禁じている場合は違反 |
| 「無料だから」と規約を読まずに導入する | 上記すべての原因 |
「無料で手に入った」ことと「自由に使ってよい」ことは別——この節の内容を一言でまとめるなら、この一行に尽きます。
ソフトウェア資産管理の観点から
第12章で学ぶIT資産管理では、社内で使われているソフトウェアの棚卸しが重要な論点になります。無償のソフトウェアも、次の理由から管理の対象に含める必要があります。
確認してみましょう
> 次の記述の正誤を判定せよ。
> a フリーウェアは、著作者が著作権を放棄したソフトウェアである。
> b シェアウェアは、定められた無料試用期間の後、継続して使用する場合は料金を支払う方式である。
> c 日本の著作権法では著作者人格権を放棄できないため、本来の意味でのPDSは存在しえないといわれている。
解答 a:× b:○ c:○

シェアウェア・フリーウェア・PDS
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。