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購買意思決定プロセス

消費者購買行動と組織購買行動

消費者の購買意思決定は「問題認識→情報探索→代替案評価→購買決定→購買後評価」の5段階で進みます。口コミ・準拠集団の影響やアサエルの購買行動類型も学びます。

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購買意思決定プロセス

簡単にいうと

消費者が商品を買うまでには5つのステップがあります。それぞれの段階で何が起きているのかを理解しましょう。

コトラーは、消費者が製品を購買する際には、問題認知→情報探索→代替品評価→購買決定→購買後の行動という5つの段階を通過するとしています。

問題認知とは、消費者がニーズを認知するところから始まる段階です。ニーズとは人間が感じる欠乏状態であり、内部の刺激(空腹感など)や外部の刺激(おいしそうな匂いなど)から発生します。

情報探索では、ニーズを感じた消費者がそれを満たすための情報探索を開始します。情報探索は内部探索外部探索の2種類に分けられます。

  • 内部探索:消費者が自らの記憶や過去の経験から情報を引き出す行為です。過去に購入・使用した経験や、広告・口コミなどで蓄積された知識を思い出すことで、新たに外部の情報源を探す必要なく意思決定できる場合に特に重要となります。日常的な購買や関与の低い製品では、内部探索だけで購買に至ることも多くあります。
  • 外部探索:消費者が自らの記憶の外にある情報源から情報を収集する行為です。具体的にはパンフレット、ウェブサイト、店頭の説明、知人への相談、専門家の意見、広告媒体などが含まれます。関与の高い製品や購買経験が少ない場合に活発に行われます。

ここで重要な概念として関与知識があります。

関与(involvement)とは、消費者が持つ中心的な価値観と、対象となる財・サービスとの間の結びつきの強さを示す概念です。関与の水準が高いほど消費者は積極的に情報を集め、慎重に検討を重ねます。関与が高い場合と知識が豊富である場合は別の概念であることに注意が必要です。関与が高い消費者が必ずしも知識が豊富とは限りません。

精緻化見込みモデル(ELM)によると、関与が高い消費者は「中心的ルート」を通じて論理的・分析的に情報を処理し、関与が低い消費者は「周辺的ルート」を通じて感覚的・直感的な手がかり(有名人の推薦、パッケージの外観など)で判断する傾向があります。なお、購買においては感情や感覚的な判断も関与する場合があるとされています。

知識とは、消費者が過去の使用経験や学習によって蓄えている製品やサービスに関する情報の蓄積です。知識が豊富な消費者は、内部探索の段階で十分な情報を引き出すことができるため、外部探索の必要性が減少します。一方、関与が高くても知識が少ない消費者は、満足を最大化しようとして限定的な意思決定プロセスを選ぶことがあります。

代替品評価では、情報探索により収集した複数の代替可能なもの(代替品)の情報を比較検討し、その評価を行います。ブランド・カテゴライゼーションの概念では、消費者が購買可能なすべてのブランドを入手可能集合とし、知名集合(ブランドの存在を知っている)→処理集合(具体的な特徴も把握している)→想起集合(購入を検討する候補として考慮する)→選択ブランドへと段階的に絞り込まれていきます。知名集合のうち、具体的特徴を把握していないものは「非処理集合」、処理集合のうち購入を検討しないものは「保留集合」や「拒否集合」に分類されます。

購買決定では、アサエルの購買行動類型などにより消費者の購買行動を分類します。

購買後の行動では、消費者は購買したものの内容が期待に合致したものであれば満足を感じ、期待が高すぎる場合には客観的に十分な水準であっても不満足(不協和)を感じることになります。ここで重要なのは、消費者の主観的な事前期待がカギになるという点です。製品やサービスが客観的に一定の品質を満たしていても、消費者が事前に過度な期待を持っていた場合には不満(認知的不協和)が生じます。企業側は広告で過度な期待を与えず、不安を解消する要素を提供することが重要です。

具体例

スマートフォンの購入では、「電池が持たない」と問題認知し、口コミサイトで情報探索、複数機種を比較検討(代替品評価)、購入を決め、使用後に満足か不満かを評価します。

概念
意味
具体例
試験のポイント
内部探索
自分の記憶や経験から情報を引き出す
以前飲んだコーヒーの味を思い出す
日常的な低関与製品では内部探索のみで購買に至る
外部探索
外部の情報源から新たに情報を収集する
ウェブサイトや知人の意見を参考にする
高関与・購買経験が少ない場合に活発化
関与
消費者の価値観と対象との結びつきの強さ
車好きな人にとって車は高関与
関与が高い=知識が豊富、ではない
知識
過去の経験や学習で蓄えた製品情報
何度も買い替えたPCの性能知識
知識が豊富だと内部探索で十分な場合が多い

試験のポイント

  • 5段階の購買意思決定プロセスの順序は必須です
  • 関与と知識は異なる概念であり、関与が高いことと知識が豊富であることは別であるという点がよく問われます
  • 内部探索は記憶・経験からの情報引き出し、外部探索はパンフレット・ネット・知人などの外部情報源からの収集と、明確に区別できるようにしましょう
  • 精緻化見込みモデル(ELM)の中心的ルートと周辺的ルートの区別も出題されます
  • ブランド・カテゴライゼーション(入手可能集合→知名集合→処理集合→想起集合→選択ブランド)の流れも頻出です
  • 購買後の行動では、消費者の主観的期待と客観的水準のギャップが不満足を生むという点を押さえましょう
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口コミと準拠集団

簡単にいうと

消費者の購買行動は、周りの人の意見や所属するグループから大きな影響を受けます。口コミの力と準拠集団の種類を押さえましょう。

口コミとは、商品やサービスについて消費者同士が情報を交換・共有することです。関与が高い製品やサービスほど口コミ情報を探索する傾向が強まります。口コミ情報の影響は意思決定の後半段階になるほど大きくなります。また、苦情処理に満足した人よりも不満を抱いた人のほうが、その経験をより多くの人に口コミで伝えるという特徴があります。口コミは買わせようという意図がなく客観的な情報と感じられるため、広告よりも受け入れられやすい面があります。

ネガティブなクチコミは広まりやすいという性質があります。消費者は製品やサービスの欠点を確認し回避するためにクチコミを利用する傾向が強い一方、長所を確認するための参照情報としては企業が発信する広告のほうが全般的に信頼できるとされています。

準拠集団とは、消費者の態度や行動に影響を与える集団(あるいは個人)のことです。準拠集団は、願望集団、所属集団、拒否集団の大きく3つに分類されます。願望集団は自らが所属したいと思う集団(芸能人、スポーツ選手など)であり、所属集団は自らが所属している集団(家族、職場の同僚など)です。拒否集団は自らが所属したくないと考える集団です。

準拠集団から受ける3つの影響タイプ

消費者が準拠集団から受ける影響には、ビアーデンとエツェル(Bearden & Etzel, 1982)の研究に基づく以下の3つがあります。

1. 情報的影響

情報の獲得に関して与える影響です。消費者が製品やサービスの情報を求める際に、準拠集団のメンバーが持つ知識や専門性を参考にすることです。情報を提供する側の知識や専門性が高く信用度が高いほど、また新製品や評価が難しい経験財の場合に、その影響は大きくなります。

2. 功利的(規範的)影響

集団の規範やルールに従うよう個人に圧力を加える影響です。個人が準拠集団に受け入れられようとする(あるいは罰を避けようとする)動機から生じます。集団のルールに従えば報酬が得られ、従わなければ制裁される行動が観察されている場合、その影響力はより大きくなります。例えば、会社の暗黙の服装規範に合わせてスーツを購入するような場合がこれに該当します。

3. 価値表出的影響

自己概念を高めたり維持したりするという動機に関連した影響です。具体的には準拠集団に属する人々と似た行動を取ることで、自らと準拠集団との結びつけようとする行動です。例えば、憧れのスポーツ選手と同じブランドのシューズを選ぶような場合がこれに該当します。

準拠集団の影響と商品カテゴリー

準拠集団からの影響は製品の特性によって異なり、「高級品/必需品」と「公的(public)/私的(private)」の2軸で製品を4つに分類することで、カテゴリー採択(その製品を購入するかどうか)とブランド選択への影響度が変わります。

  • 公的な高級品(ゴルフクラブ、スキー、ヨットなど):カテゴリー採択=強い影響、ブランド選択=強い影響
  • 私的な高級品(テレビゲーム、こみ圧縮機、製氷機など):カテゴリー採択=強い影響、ブランド選択=弱い影響
  • 公的な必需品(腕時計、自動車、服装など):カテゴリー採択=弱い影響、ブランド選択=強い影響
  • 私的な必需品(マットレス、電灯、冷蔵庫など):カテゴリー採択=弱い影響、ブランド選択=弱い影響

つまり、プライベートな場面で使用される製品よりも、パブリックな場面で使用される製品のほうがブランド選択において準拠集団の影響は大きくなります。

具体例

人気インフルエンサーが紹介した商品を買いたくなるのは、そのインフルエンサーが願望集団として消費者に影響を与えている例です。

影響タイプ
内容
発生メカニズム
具体例
情報的影響
情報の獲得に関する影響
専門性・信用度の高い情報源を参考にする
詳しい友人にカメラの選び方を相談する
功利的(規範的)影響
集団の規範やルールへの同調圧力
集団に受け入れられたい・罰を避けたいという動機
会社の服装規範に合わせてスーツを購入する
価値表出的影響
自己概念の向上・維持に関連する影響
準拠集団と自己を結びつけたいという動機
憧れの選手と同じブランドのシューズを選ぶ

試験のポイント

  • 準拠集団の3分類(願望集団・所属集団・拒否集団)は基礎知識として必須です
  • 3つの影響タイプは特に重要で、情報的影響=専門知識の参照、功利的(規範的)影響=集団規範への同調圧力、価値表出的影響=自己概念の向上のための模倣行動、と明確に区別できるようにしましょう
  • 高級品と必需品、公的と私的の4象限マトリクスでは、「公的な高級品」がカテゴリー採択・ブランド選択ともに強い影響を受け、「私的な必需品」が両方とも弱い影響を受ける点を押さえましょう
  • 口コミではネガティブな情報ほど広まりやすい点も出題されます
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購買決定行動のタイプとアサエルの購買行動類型

簡単にいうと

消費者がどれだけ悩んで買うかは、製品の値段や関与の高さによって変わります。アサエルの4つの類型は試験でよく出ますよ。

購買決定行動には、日常的反応行動、限定的問題解決、拡大的問題解決の3つのタイプがあります。日常的反応行動は低価格品・購買頻度が高い・低関与の製品で、よく知っているブランドをあまり時間をかけずに購入するものです。拡大的問題解決は高価格品・購買頻度が低い・高関与の製品で、あまり知らない製品・ブランドについて考えたり探したりするのに十分時間をかけます。限定的問題解決はその中間に位置します。

購買行動の分類の仕方として、アサエルの購買行動類型があります。アサエルの購買行動類型とは、「製品や購買に対する関与の度合い(製品関与・購買関与)」と「消費者がブランドに関して認識している違い(ブランド間知覚差異)」という2つの要素によって、消費者がどのような購買行動をとるかを分類するものです。

情報処理型は、関与が高くブランド間の差が大きいと感じる場合で、ブランド選択に時間を割き熟考して購買し、購買後にロイヤルティの高い顧客になることが多い類型です。バラエティ・シーキング型は、関与は高くないがブランド間の差が大きいと感じるため色々なブランドを買って試す行動です。不協和解消型は、関与は高いがブランド間の差が小さいと感じるため、購買後に自らの選択が正しかったのかに不安を感じる類型で、認知的不協和の解消のために広告などの情報を求めます。習慣型は、関与が低くブランド間の差も小さいため、最も低価格なブランドを選択する傾向があります。

具体例

ペットボトル飲料で色々な味を試すのはバラエティ・シーキング型、高級腕時計を慎重に比較検討して購入するのは情報処理型の典型例です。

類型
関与
ブランド間知覚差異
特徴
情報処理型
高い
大きい
慎重に比較検討、高ロイヤルティ
バラエティ・シーキング型
低い
大きい
色々なブランドを試す
不協和解消型
高い
小さい
購買後の不安、認知的不協和を解消
習慣型
低い
小さい
最も低価格なブランドを選択

試験のポイント

  • アサエルの購買行動類型の4分類(情報処理型・バラエティシーキング型・不協和解消型・習慣型)と、それぞれの関与×ブランド間知覚差異の組み合わせは頻出です
  • 認知的不協和の概念とその解消行動も重要です
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購買後の行動と認知的不協和

簡単にいうと

商品を買った後の気持ちも、実は消費者行動の重要な一部です。「買って正解だったかな」という不安が認知的不協和で、その解消行動まで理解しておきましょう。

購買後の行動とは、消費者が製品やサービスを購入した後に生じる満足・不満足の評価や、それに基づく行動のことです。購買意思決定プロセスの最終段階に位置します。

消費者は、購入した製品やサービスが自分の事前の期待に合致していれば満足を感じます。一方で、消費者の主観として事前の期待が高すぎた場合には、客観的に十分な水準を有した製品やサービスであっても不満足(不協和)を感じることになります。つまり、満足・不満足は製品の絶対的品質ではなく、事前期待との相対的なギャップによって決まります。

認知的不協和とは、人間が自己の内部で矛盾する2つの認知を抱えたときに生じる心理的な緊張状態のことです。購買行動の場面では、「自分は正しい選択をした」という信念と「もっと良い選択肢があったかもしれない」という疑念が同時に存在することで不協和が発生します。消費者はこの不快な緊張状態を解消するために、自らが購入したブランドの広告を探して読んだり、購入しなかったブランドの情報を避けたりする行動を取ります。

アサエルの購買行動類型における不協和解消型(関与が高くブランド間知覚差異が小さい場合)は、特にこの認知的不協和が起こりやすい類型です。ブランド間の差異が小さいため「どれを選んでも同じだったのでは」という不安が生じやすくなります。

企業にとっては、このような購買行動が多い製品においては、広告に不安を解消させる要素(品質保証、ユーザーの声など)を入れておくことが重要とされています。

また、口コミの観点では、苦情処理に満足した消費者よりも不満を抱いた消費者のほうが、その経験をより多数の人に伝える傾向があります。ネガティブなクチコミは広まりやすいため、企業は購買後の顧客満足の管理が不可欠です。

具体例

高額な家電を購入した後、「本当にこの選択で良かったのだろうか」と不安になり、購入した製品の良いレビューを探してしまうのは、認知的不協和を解消しようとする典型的な行動です。

試験のポイント

  • 購買後の行動では、消費者の事前期待と実際の成果のギャップが満足・不満足を決定するという点が頻出です
  • 認知的不協和は「自己の内部で矛盾する認知が生じた際の緊張状態」であり、購買場面では自分の選択への不安として表れます
  • 不協和解消型の消費者が自ら購入したブランドの広告を読むなどの解消行動を取ることも問われます
  • 苦情処理への不満は口コミを通じて広がりやすい点にも注意しましょう

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