消費者購買行動と組織購買行動
下の動画はこの節の解説ではありません。 解説動画の雰囲気を知っていただくための見本として、「PPM」の動画を再生します。
この節の解説動画はプレミアム限定です。プレミアムなら全科目・全節が見放題!
プレミアムで見るマーケティングミックスの投入は、消費者の集合体である市場に対して実施するものです。
よって、その各マーケティング要素に対して消費者がどのように反応し、行動していくのかという消費者の購買行動を十分に理解しておく必要があります。
この節では、代表的な消費者行動の分析モデルを4つ見ていきます。
4つはばらばらに並んでいるように見えますが、実は消費者の頭の中をどこまで開けて見るかという一本の流れでつながっています。
最初のモデルは頭の中を開けません。次のモデルは開けて覗きます。その次は、消費者が自分から動くものとして描き直します。そして最後のモデルは、その頭の中がいつも論理的とは限らないことを指摘します。
この順で読むと、4つが自然に頭に入ります。
簡単にいうと
最初のモデルは、頭の中を「ブラックボックス」として開けないままにしたんだ。次のモデルがそこを開けるよ!
① 刺激−反応モデル(S−Rモデル)
刺激−反応モデルは、消費者がマーケティングの刺激に対してどのように反応するかに焦点をあてたものです。
刺激(stimulus)と反応(response)の間のプロセスは、ブラックボックスとして解明していないモデルです。
図にすると単純です。
刺激 → ブラックボックス → 反応
② ブラックボックスとは何か
ブラックボックスとは、中で何が起きているか分からないまま扱う箱のことです。
このモデルは、「広告を打ったら売上が上がった」という入口と出口だけを見ます。
なぜ上がったのか、消費者がどう感じてどう考えたのかには踏み込みません。
③ それでも意味があった理由
頭の中を見ないモデルに意味があるのか、と思うかもしれません。
しかし、入口と出口の対応が分かれば、どの刺激を与えれば売れるかは分かります。
中身が分からなくても、実務は回る。それがこのモデルの割り切りです。
第8章で学んだ行動科学の考え方に近いところがあります。
④ S−O−Rモデル
S−O−Rモデル
具体例
同じ「50%引き」という刺激に、3人の消費者がまったく違う反応を示した場面を考えてみます。
S−Rモデルで見ると
刺激は「50%引きの広告」、反応は「購入した/しなかった」。
100人に見せたら32人が買った。それだけが記録されます。
この会社は「50%引きなら3割強が買う」と学習し、次も同じ手を打ちます。中身が分からなくても、これで商売は回ります。
S−O−Rモデルで見ると
同じ広告を見た3人に、何が起きていたのかを聞き取ってみます。
Aさん以前からこのブランドを使っており、好意的な態度を持っていました。「いつも買っているものが半額だ」と受け取り、買いました。
Bさんこのブランドを知りませんでした。半額という表示を「もともと高すぎたのでは」と知覚し、買いませんでした。
Cさん買いたい気持ちはありましたが、先月同じものを買ったばかりでした。購買意図はあっても、いま必要がありません。
3人とも同じ刺激を受けています。それでも反応が分かれたのは、真ん中にあるもの(態度・知覚・購買意図)が違ったからです。
この会社がBさんのような人にも買ってもらいたいなら、値引き幅を変えるより、もとの価格の根拠を伝えるほうが効きます。

S-Rモデルとその発展
試験のポイント
簡単にいうと
消費者は刺激を待っているだけじゃない、自分から情報を取りに行くんだ。その前提に立ったモデルだよ!
① 情報処理モデルとは
情報処理モデルとは、消費者を受動的に行動するものであるととらえた刺激−反応モデルと異なり、自ら情報収集を行う能動的な消費者を前提にして構築された消費者行動のモデルです。
② 内部情報と外部情報
消費者は、経験の蓄積である内部情報を用いて、外部情報を主観によって解釈します。
③ 何が転換したのか
このモデルの要点は、消費者の立ち位置が変わったことです。
S−Rモデルでは、消費者は企業から刺激を与えられる受け身の存在でした。企業が広告を打てば消費者が反応する、という向きです。
簡単にいうと
人はいつも理屈で買うわけじゃないよね。2つのルートがあるという考え方だよ!
① 精緻化見込みモデルとは
精緻化見込みモデルとは、消費者の購買行動は必ずしも論理的な判断によるものばかりではなく、感情や感覚的な判断によるものもあるとするモデルです。
② 2つのルート
③ どちらを通るかで効く訴え方が変わる
中心的ルートを通る人には、内容そのものが効きます。性能の数値、成分、価格の根拠。
動画・テキスト・過去問・AI添削まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
刺激反応モデルでは考慮されなかった消費者の心的プロセス(知覚、態度、購買意図など)を理解しようとするものです。
⑤ 2つの違いは真ん中のO
違いは、真ん中にO(生体)が入ったことだけです。
S−Rモデルが開けなかったブラックボックスを、S−O−Rモデルは開けて中を見ようとしました。
同じ広告を見ても、その製品にどういう態度を持っているかで反応は変わる。同じ値引きを見ても、その人の知覚によって「お買い得」とも「品質が不安」とも映る。
入口が同じでも出口が違う理由を、真ん中の箱の中身で説明しようとしたわけです。
情報処理モデルでは、消費者は自分から情報を探しにいく能動的な存在です。企業が何もしなくても、消費者は調べます。
④ 主観によって解釈する
もうひとつの要点が、主観という言葉です。
同じ情報を受け取っても、その人が過去に何を経験してきたか(内部情報)によって意味の受け取り方が変わります。
企業が発した情報が、そのまま届くわけではない。受け手の側で作り変えられるということです。
だから、企業が「安さ」を伝えたつもりでも、過去に安物で失敗した経験のある人には「品質が心配」として届いてしまいます。
⑤ 次の節につながる
この能動的な消費者という前提は、第2節で扱う購買意思決定プロセスに引き継がれます。
情報探索という段階が置かれているのは、消費者が自ら探すという見方に立っているからです。
そして第2節で出てくる内部探索と外部探索は、ここでいう内部情報と外部情報にそのまま対応しています。
具体例
ノートパソコンを買おうとしているDさんの頭の中を追ってみます。
内部情報を先に使う
Dさんは5年前に買ったパソコンが2年で壊れた経験があります。そのときのメーカーはE社でした。
この経験が内部情報です。誰にも聞かず、何も調べなくても、Dさんの中にすでにあります。
外部情報を取りにいく
Dさんは価格比較サイトとレビューを1週間見て回りました。企業から広告を見せられたからではありません。自分から探したのです。
ここが能動的な消費者ということです。
主観による解釈
調べていると、E社の新製品が「業界最軽量・高評価」として紹介されていました。
同じ記事を読んだ友人のFさんは「これは良さそうだ」と受け取りました。
しかしDさんは「軽くするために強度を犠牲にしているのでは」と受け取りました。
同じ外部情報です。違ったのは、それを解釈する内部情報でした。
企業から見ると
E社がどれだけ良い広告を打っても、Dさんには意図したとおりには届きません。
E社がDさんのような人に届かせたいなら、広告を強めるより、保証期間を延ばすほうが効きます。内部情報のほうに働きかけることになるからです。
試験のポイント
同じ製品でも、どちらのルートを通る人に向けるかで広告の作り方がまったく変わります。
④ 関与と知識は別のもの
ここが最も問われる論点です。
関与が高いことと、知識が豊富であることは別です。
「ある製品に対して高い製品関与水準を持つ消費者は、自らが蓄積した豊かな製品知識を容易に参照できるため、購買意思決定プロセスは単純化する」
という言い方は誤りとして扱われます。
関与とは、次の節で扱うとおり消費者の中心的価値と対象との結びつき、つまりどれだけこだわっているかです。
こだわりが強くても、知識があるとは限りません。初めて家を買う人は、極めて関与が高いのに知識はほとんどありません。
そしてこの問題文は、そもそも精緻化見込みモデルの説明になっていません。
精緻化見込みモデルは、購買においては感情や感覚的な判断もあるとするモデルです。関与と知識の関係を論じたモデルではありません。
⑤ 4つのモデルを並べ直す
最後に、この節で見た4つを並べておきます。
見ようとする範囲が広がり、そして最後に「理屈だけではない」と限界を認める。この流れで覚えておけば、混ざりません。
具体例
同じシャンプーの広告を、2つのルートに向けて作り分けてみます。
中心的ルート向けの広告
「アミノ酸系洗浄成分を78%配合。頭皮への刺激を従来品より42%低減しました。皮膚科医100人によるモニター試験で、89人が刺激の少なさを評価」
数字と根拠が並びます。
頭皮のトラブルに悩んでいて、成分表を読み比べている人には、これが効きます。内容そのものを吟味して判断するからです。
周辺的ルート向けの広告
人気の俳優が、朝の光の差す浴室で髪をなびかせる。音楽が流れ、最後にボトルが映る。成分の説明はありません。
とくにこだわりなくシャンプーを選んでいる人には、こちらが効きます。内容以外の手がかりで判断するからです。
関与と知識が別である例
Gさんは、頭皮の湿疹に3年悩んでいます。シャンプー選びへの関与は極めて高い。
しかし、化学は苦手で「アミノ酸系」が何を意味するのか分かりません。知識は乏しいのです。
こだわりが強いから、Gさんは何時間も調べます。けれど知識がないため、調べれば調べるほど迷い、判断がつきません。
関与が高いと意思決定が単純になる、ということはない。Gさんを見れば、それがよく分かります。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。