コーポレートガバナンスの機能と日本企業
企業の社会的責任(CSR)とコーポレートガバナンス
日本企業のコーポレートガバナンスには独自の課題があります。指名委員会等設置会社などガバナンス機能を強化する仕組みと、日本企業が直面する問題点を学びます。
日本企業のコーポレートガバナンスの問題点
簡単にいうと
日本企業のガバナンスには2つの大きな問題があります。1つは取締役と経営陣が同じ人たちであること、もう1つは取締役が社内の昇格者ばかりで上司である社長に意見できないという構造的な課題です。
日本企業はコーポレートガバナンスが十分に機能していないとされます。主な理由は以下のとおりです。
①取締役と経営陣の重複
経営陣の選任・解任は、実質的に経営陣自身の判断で行われています。本来、取締役は株主に代わって経営を監督する立場にありますが、取締役と業務執行者が重なっているため、自分たち自身を客観的に評価・解任することが極めて困難です。このため、不適任な経営者であっても交代が進まず、さらには不正行為の抑止も難しくなります。
②取締役が内部従業員からの昇格者であるという問題
日本企業では、取締役の多くが社内の従業員として長年勤務し、段階的に昇格して取締役に就任します。その最上位に代表取締役が位置しています。ここで重要な問題が生じます。取締役は本来、代表取締役を含む経営陣を監督・牽制する役割を担っていますが、昇格の過程で代表取締役は自分たちの上司であり続けた存在です。つまり、監視すべき対象が自分よりも上位の管理者であるという逆転した関係が生まれ、実効的なチェック機能が発揮されません。この内部昇格型の構造が、日本企業のガバナンスにおける最大の構造的課題の一つです。
具体例
日本の伝統的な企業では、社長が次期社長を実質的に指名するようなケースがあり、ガバナンスが機能しにくいという指摘があります。また、取締役のほとんどが社内から昇進した人材であるため、経営トップに対する監視が形骸化しやすい構造です。
試験のポイント
- ・日本企業のガバナンスの問題点は2つのポイントを整理して押さえましょう
- ・①取締役と経営陣が重複しているため自浄作用が働かない点、②取締役が社内昇格者であるため代表取締役への牽制が機能しない点です
- ・特に②は「上司と部下の関係が逆転できない」という構造的問題として理解することが重要です
ガバナンス機能強化と指名委員会等設置会社
簡単にいうと
ガバナンスを強化するための仕組みとして指名委員会等設置会社という制度があります。指名・監査・報酬の3委員会を置き、各委員会は3名以上の取締役で構成、社外取締役が過半数を占めるのがポイントです。
コーポレートガバナンスを強化するためには、まず株主がガバナンスの主権者としての意識をもつことが重要です。具体的な施策として、取締役の独立性を確保し株主の利益を適切に代表するために、社外取締役を選任することや、指名委員会等設置会社への移行が挙げられます。
指名委員会等設置会社の制度概要
指名委員会等設置会社とは、以下の3つの委員会を設置する株式会社の形態です。
| 委員会名 | 主な役割 |
|---|---|
| 指名委員会 | 取締役の選任・解任に関する議案の決定 |
| 監査委員会 | 取締役・執行役の職務執行の監査、会計監査人の選解任議案の決定 |
| 報酬委員会 | 取締役・執行役の個人別報酬の決定 |
各委員会の構成要件
- 各委員会は3名以上の取締役で構成されます
- 各委員会において社外取締役が過半数を占めなければなりません
- どの委員会にも所属しない取締役がいても問題ありません
- 1人の取締役が複数の委員会に所属することも可能です
この仕組みにより、経営の監督と業務執行が明確に分離され、社外の視点による客観的なチェック体制が構築されます。
具体例
ソニーグループなどの大企業は指名委員会等設置会社の形態を採用し、社外取締役を過半数とすることでガバナンスの透明性を高めています。
試験のポイント
- ・指名委員会等設置会社は中小企業診断士試験と経営法務の両方で頻出です
- ・必ず覚えるべきポイントは、①3つの委員会の名称(指名・監査・報酬)とそれぞれの役割、②各委員会は3名以上の取締役で構成、③各委員会で社外取締役が過半数を占める必要がある、の3点です
- ・「3委員会・各3名以上・社外過半数」とセットで暗記しましょう
日本型と米国型のコーポレートガバナンスの比較
簡単にいうと
日本と米国ではコーポレートガバナンスのスタイルが大きく異なります。米国は株主優先で社外取締役が中心、日本は従業員重視で社内取締役が多いという特徴があります。
コーポレートガバナンスのあり方はその国の慣習や法律に大きく影響されます。日本型と米国型の主な違いは以下のとおりです。
| 特徴 | 米国型 | 日本型 |
|---|---|---|
| 重視する利益 | 株主利益の追求を最優先 | 従業員の利益を重視 |
| 取締役の構成 | 社外取締役が大半 | 社内取締役が大半 |
| 経営の監視体制 | 取締役会による経営者の監視が強力(大半が社外取締役) | 取締役と経営陣が重複し監視が弱い |
| 経営の志向性 | 短期的な業績志向に陥りがち | 長期的な成長志向が強い |
| 企業間関係 | 独立した経営が基本 | 企業グループ・系列間で株式の持ち合いが見られる |
| 金融機関の役割 | 資本市場中心 | メインバンクが経営のモニタリング機能を担う傾向がある |
それぞれの型には長所と短所があり、近年は両者の良い点を取り入れたハイブリッド型のガバナンス体制を模索する動きもあります。
具体例
トヨタのようなメインバンク制や系列取引を特徴とする日本型に対し、アップルのような株主利益最優先・社外取締役中心の米国型では、ガバナンスの考え方が大きく異なります。
試験のポイント
- ・日米のガバナンス比較は対比表で整理して覚えましょう
- ・特に、米国型は「株主利益優先・社外取締役中心・短期志向」、日本型は「従業員利益重視・社内取締役中心・長期志向・メインバンク制・持ち合い」という対照的な特徴がポイントです
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