企業の社会的責任(CSR)とコーポレートガバナンス
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プレミアムで見るコーポレートガバナンスのかたちは、国によって違います。その国の慣習や法律に大きく影響されるからです。前半では日本型と米国型を比べ、それぞれの長所と短所を見ます。後半では、日本の企業の大半を占めるファミリービジネスに固有のガバナンスを、スリー・サークル・モデルと4Cモデルという2つの枠組みから押さえます。中小企業診断士として同族経営の会社に関わるとき、直接効いてくる内容です。
簡単にいうと
米国型は株主重視・社外取締役中心・短期志向。日本型は従業員重視・社内取締役中心・長期志向。きれいに裏返しになっているのが覚えやすいところだよ!
① 国によって違う理由
コーポレートガバナンスは、その国の慣習や法律に大きく影響されます。
会社の作り方も、株式の持たれ方も、雇用の慣行も国ごとに違います。その違いが、そのままガバナンスのかたちの違いになって現れます。
② 米国型の特徴
| 特徴 | |
|---|---|
| ❶ | 株主利益の追求が優先される |
| ❷ | 取締役会による経営者の監視が強い(大半が社外取締役) |
| ❸ | 短期的な業績志向に陥りがちである |
③ 日本型の特徴
| 特徴 | |
|---|---|
具体例
同じ業界の日米2社が、不況期にどう振る舞ったかを比べてみましょう。
米国のA社
・売上が2割落ちた四半期の直後、従業員の15%を削減
・工場3か所を閉鎖し、固定費を圧縮
・同時に自社株買いを実施し、1株あたり利益を維持
・株価は発表翌日に上昇
取締役会の11名中9名が社外取締役で、株主利益の追求を明確に求めました。判断は速く、株主は評価しましたが、3年後に需要が戻ったとき、熟練工を集められずに増産が遅れます。短期的な業績志向に陥りがちという弱点が出た形です。
日本のB社
・同じく売上が2割落ちたが、人員削減は行わず
・余剰人員を教育訓練と設備保全に振り向けた
・役員報酬の減額と、配当の減額で耐えた
・メインバンクが運転資金を追加融資し、経営会議にも同席
・系列企業が保有する株式は売却されず、株価は安定
取締役8名は全員が社内出身です。従業員の利益重視と長期的な成長志向が現れており、メインバンクのモニタリングと株式の持ち合いも働いています。
需要が戻ったとき、B社は即座に増産できました。ただし、この6年間で新規事業への転換は一度も議論されませんでした

日米のガバナンス比較とファミリービジネス
試験のポイント
簡単にいうと
所有・事業・家族の3つの輪。重なり方で7つの立場ができる。重なっているところほど、立場が複雑でもめやすいんだ!
① ファミリービジネスとは
ファミリービジネスとは、創業者や創業者の親族といった創業家が中心となって経営している企業のことです。
そのコーポレートガバナンスには、固有の特徴があります。ここでは、それをモデル化したものであるスリー・サークル・モデルと4Cモデルを取り上げます。
日本の中小企業の多くはファミリービジネスであり、中小企業診断士の実務でも避けて通れないテーマです。
② スリー・サークル・モデル
ファミリービジネスを理解するためのフレームワークであり、ファミリービジネスを、所有(オーナーシップ)、事業(ビジネス)、家族(ファミリー)という3つの要素で構成されていると考えるものです。
3つの輪が重なり合う図で表され、
簡単にいうと
継続性・コミュニティ・コネクション・コマンドの4つのC。大事なのは「4つのバランス」。どれかに偏らないことが重要だよ!
① 4Cモデルとは
4Cモデルとは、欧米のファミリービジネスを事例から調べたところ、長く好業績を保っている会社には近代的な経営とは別の論理が働いていることが見えてきました。その論理を、次の4つのCの組み合わせとして示したものです。
また、4つのCのバランスが重要であり、いずれかに経営が偏らないようにすることが重要であるとしています。
② 4つのC
❶ 継続性(continuity)
創業家の抱いたミッションを継続的、情熱的に達成するために、長期的視点で投資を行う。
四半期ごとの利益に追われず、10年、20年という単位で判断できるのがファミリービジネスの強みです。前のテーマで見た日本型ガバナンスの「長期的な成長志向」とも重なります。
❷ コミュニティ(community)
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| 従業員の利益重視のガバナンスである |
| ❷ | 社内取締役が大半である |
| ❸ | 長期的な成長志向が強い |
| ❹ | 企業グループ・系列間で株式の持ち合いが見られる |
| ❺ | メインバンクが経営のモニタリング機能を担う傾向がある |
④ 対比して理解する
前半の3つは、きれいに裏返しの関係になっています。
| 観点 | 米国型 | 日本型 |
|---|---|---|
| 誰の利益を優先するか | 株主 | 従業員 |
| 取締役の構成 | 大半が社外取締役 | 社内取締役が大半 |
| 時間の視野 | 短期的な業績志向に陥りがち | 長期的な成長志向が強い |
⑤ 日本型に固有の2つ
日本型には、米国型にはない特徴が2つあります。
❹ 株式の持ち合い
企業グループ・系列間で株式の持ち合いが見られるという点です。
A社がB社の株を持ち、B社もA社の株を持つ。この関係にある株主は、短期の配当や株価より長期の取引関係を重んじます。そのため経営陣に厳しいことを言わない、いわゆる安定株主になります。
これは長期的な成長志向を支える一方で、経営へのチェックを弱めるという両面を持っています。
❺ メインバンクによるモニタリング
メインバンクが経営のモニタリング機能を担う傾向があるという点です。
米国では株主が経営を監視しますが、日本では主要な取引銀行がその役割の一部を担ってきました。融資している以上、返済されるかどうかを見張る動機があるからです。
⑥ どちらが優れているというものではない
米国型の「株主利益の追求」は、経営に規律をもたらす一方で短期的な業績志向に陥りがちという弱点を伴います。
日本型の「従業員の利益重視」と「長期的な成長志向」は、人材の育成や技術の蓄積には向いていますが、前節で見たとおりチェック機能が働きにくいという弱点があります。
第1章で学んだミンツバーグの「状況による」という結論が、ここでも当てはまります。近年の日本では、長期志向という長所を保ちながら、社外取締役の導入などで監視機能を補おうとする動きが進んでいます。
③ 7つの領域
| 番号 | 属する領域 | 立場 |
|---|---|---|
| 1 | 所有のみ | 外部の投資家 |
| 2 | 事業のみ | 非家族の経営者か従業員 |
| 3 | 家族のみ | 所有者でも従業員でもない家族 |
| 4 | 所有+家族 | 所有権を持つ家族であるが、社外 |
| 5 | 所有+事業 | 所有権を持つ経営者か従業員 |
| 6 | 家族+事業 | 所有権を持たない家族で経営者か従業員 |
| 7 | 所有+家族+事業 | 家族、所有者、経営者もしくは従業員の3要素を持つ |
1〜3が輪が重ならない単独の領域、4〜6が2つの輪が重なる領域、7が3つすべてが重なるまん中の領域です。
④ どこで問題が起きるのか
ここが試験で問われるところです。
7つの領域は、それぞれ立場が違います。違えばぶつかります。なかでも面倒になりやすいのが、輪が重なっているところにいる人(4〜7)です
なぜ重なる部分でもめるのか。立場が複数あり、それぞれの立場で求めるものが違うからです。
たとえば領域7の人は、
・家族としては、一族の和を保ちたい
・所有者としては、配当や企業価値を高めたい
・経営者としては、事業に再投資したい
という3つの立場を同時に抱えています。配当を増やせば再投資できず、再投資を優先すれば社外の親族株主(領域4)から不満が出る。自分の中でも、周囲との間でも、ぶつかりが起きるわけです。
⑤ 単独の領域は分かりやすい
逆に、1〜3の単独領域の人は立場が単純です。
・外部の投資家(1)は、投資のリターンだけを考えればよい
・非家族の従業員(2)は、賃金と処遇を考えればよい
・所有者でも従業員でもない家族(3)は、一族としての関心だけ
だから課題が生じやすいのは重なる部分だ、という結論になります。
具体例
創業75年、3代目が社長を務める食品会社の関係者を、7つの領域に当てはめてみましょう。
領域1(外部の投資家) 地元の金融機関系ファンドが株式の8%を保有。取締役ではなく、配当と将来の売却益に関心があります。
領域2(非家族の経営者か従業員) 生え抜きの専務と、従業員120名。株式は持たず、一族でもありません。
領域3(所有者でも従業員でもない家族) 社長の妹。株式は相続せず、会社にも勤めていません。それでも法事や親族会では意見を述べます。
領域4(所有権を持つ家族だが社外) 社長の弟。株式の15%を相続しましたが、別の会社に勤めています。会社の事情を知らないまま株主の立場にあるため、「もっと配当を出せ」と主張しがちです。
領域5(所有権を持つ経営者か従業員) 先代から株式の5%を譲られた、非家族の営業本部長。経営者としては再投資を望みますが、株主としては配当も欲しい立場です。
領域6(所有権を持たない家族で経営者か従業員) 社長の長男。工場長として働いていますが、株式はまだ持っていません。将来の後継者と目されながら、いまは発言権がないという立場です。
領域7(3要素すべて) 社長自身。家族であり、筆頭株主であり、経営者です。
実際に起きたコンフリクト 新工場への5億円の投資をめぐり、
・領域4の弟は「配当が減る」と反対
・領域6の長男は「将来のために必要」と賛成するが議決権がない
・領域2の従業員は雇用の安定を期待して賛成
・領域1のファンドは投資利回りで判断
単独領域の人ほど意見は単純で、重なる領域の人ほど板挟みになっていることが見て取れます。
試験のポイント
従業員を強い価値共有集団とすること。そのために従業員を厚遇し、忠誠心と主体性を導き出す。
同じ価値観を共有する集団を作るということです。第8章で学ぶ組織文化の話と直結します。
❸ コネクション(connection)
顧客、取引先、広く社会一般と良好な関係を築く。
代が替わっても続く関係を大事にするということです。第3章で学んだVRIOでいえば、長年の関係は社会的複雑性による模倣困難性を持ちます。
❹ コマンド(command)
株主の言動に左右されにくいため、比較的独立的に行動できる。環境変化に合わせて創業家出身のトップが新しい事業を創造して永続性を保つ。
株式が創業家に集中しているため、外部の株主の短期的な要求に振り回されずに決断できる、ということです。
③ バランスが重要という意味
ここが最も問われるところです。
過去問では、次の記述が正しいものとして出題されています。
『4Cモデルは、それぞれの要素にプラスの側面とマイナスの側面があることを認めたものである』
解説では、それぞれの要素にプラスの側面とマイナスの側面があるからこそ、いずれかに偏らないバランスが重要と考えるとされています。
4つのCは、行き過ぎると裏返ります。
| C | プラスの側面 | 行き過ぎたときのマイナスの側面 |
|---|---|---|
| 継続性 | 長期的視点で投資できる | 変えるべきものまで守り、変化に対応できなくなる |
| コミュニティ | 忠誠心と主体性が高まる | 内向きになり、異なる考えを排除する |
| コネクション | 長く続く信頼関係を築ける | 古い関係にしばられ、新しい相手と組めない |
| コマンド | 独立して素早く決断できる | 独断に陥り、誰も止められなくなる |
とくにコマンドは、前々節で見たガバナンスの問題と表裏一体です。創業家のトップが素早く決断できるということは、誰もチェックできないということでもあります。
だから「4つのバランス」が強調されるのです。どれか1つを突き詰めれば強くなる、という話ではありません。
④ 近代的な経営とは異なる論理
定義にある「近代的な経営とは異なる論理」という表現も押さえておきましょう。
株主利益の最大化や、合理的な意思決定といった近代的な経営の考え方では、ファミリービジネスの強さは説明できません。創業家のミッション、従業員との情緒的な結びつき、代を超えた関係といった要素が効いているからです。
この点は、第1章で学んだ経営理念が「インフォーマルに語り伝えられて、社風や組織文化の形で形成されている場合もある」という記述ともつながっています。
具体例
創業140年の老舗醤油メーカーを、4Cで読み解いてみましょう。強みと弱みが同じ根から出ていることが分かります。
継続性(プラス) 蔵の木桶を30年に一度、職人に作らせて入れ替えています。採算だけで考えれば金属タンクにすべきですが、「この蔵の味を守る」という創業家のミッションのために続けています。
継続性(マイナス) 一方で、業務用の需要が減り続けているにもかかわらず、「先代が始めた事業だから」という理由で採算の合わない業務用ラインを20年間維持してきました。
コミュニティ(プラス) 従業員の平均勤続年数は22年。社長は全従業員の家族構成を把握しており、職人は「この蔵の味を任されている」という誇りを持っています。
コミュニティ(マイナス) 外部から採用した営業部長が、2年で辞めました。「よそ者扱いが抜けなかった」というのが理由です。
コネクション(プラス) 契約農家との関係は3代続いており、不作の年も優先的に大豆を回してもらえます。
コネクション(マイナス) 新しい販路としてネット通販を始めようとしたとき、長年の問屋との関係を気にして踏み切れませんでした。
コマンド(プラス) 6代目が「これからは減塩だ」と判断し、半年で新ラインを立ち上げました。株主総会も取締役会も、実質的に一族だけなので即断できます。
コマンド(マイナス) 同じ6代目が別の年に決めた海外進出は、誰も反対せずに進み、2億円の損失を出して撤退しました。
素早く決められることと、誰も止められないことは同じことです。だから4つのバランスが重要になるわけです。
試験のポイント
プレミアムプラン
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