製品戦略
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プレミアムで見る前の節でブランドの種類を見ました。この節では、ブランドが持つ価値と、その価値をどう使うかという戦略を扱います。
押さえるべきは4つ。
ブランド要素(ブランド化の手段)、ブランドエクイティ(ブランドの資産価値)、顧客ロイヤルティの4分類、そしてブランド戦略の2つの4類型です。
最後の「2つの4類型」が、この節で最も取り違えやすいところです。
どちらの話をしているのかを問題文から読み取ること。ここを最初に切り分けてください。
簡単にいうと
ブランドは、それ自体が資産なんだ。その価値を作っている部品と、価値を高める要素を見ていこう!
① ブランド要素(ブランドエレメント)
ブランド要素とは、ブランド化の手段としての言語的・視覚的な情報コードです。
具体的には、次のものがあります。
ジングルは耳慣れない言葉かもしれませんが、
簡単にいうと
何度も買っているからといって、好きとは限らないんだ。「行動」と「心理」の2軸で見ると、4つに分かれるよ!
① ブランドロイヤルティとは
ブランドロイヤルティとは、ある特定ブランドに対する消費者の忠誠心のことであり、特定ブランドに強い愛顧をもち、そのブランドに執着している状態です。
② 2つの軸
ロイヤルティは、次の2つに分けて考えられます。
行動的ロイヤルティとは、繰り返し購買している(再購買率で測定)など、文字どおりロイヤルティの高さが行動に表れているということです。
心理的(態度的)ロイヤルティとは、消費者の心理として高いロイヤルティを有しているということです。
③ 4つの組み合わせ
簡単にいうと
新しい製品を出すとき、名前は使い回す? 新しくする?カテゴリーは同じ? 違う? この2軸だよ!
① 2つの軸
企業が新たな製品を市場に投入する際に、次の2つによってブランド戦略は4つに分類されます。
② 4つの戦略
ⅰ ライン拡張(ブランド名=既存 / カテゴリー=既存)
すでに成功したブランド名を使って、既存製品と同一のカテゴリーに、風味、形、色、原材料、容器のサイズなどを変えた新商品を導入することです。
ⅱ ブランド拡張(ブランド名=既存 / カテゴリー=新規)
簡単にいうと
こっちは「すでにある製品」の話だよ。さっきの4類型と混ぜないように気をつけてね!
① 前のテーマとの違い
前項のコトラーのブランド戦略(ライン拡張、ブランド拡張、マルチブランド、新ブランド)が新たな製品を市場に投入する際の戦略であるのに対し、この枠組みはすべて「既存製品」について論じられていることがポイントです。
名前も似ていて4類型という形も同じなので、新製品の話か、既存製品の話かを問題文から読み取ることが先決です。
② 2つの軸
既存製品について、次の2つで4つに分かれます。
③ 4つの戦略
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② ブランドエクイティ
ブランドは、それ自体が資産価値を有しています。その資産価値のことをブランドエクイティといいます。
ブランドエクイティを高める要素には、次のものがあります。
③ ブランド知名度
ある特定のブランドを尋ねたとき、その名称を知っているかどうかという指標です。
④ 知覚品質
個人によって異なる優先順位や選好が織り込まれた、顧客の知覚に基づく総合的な品質のことです。
ここが押さえどころです。客観的な品質ではありません。測定器で測れる性能ではなく、その人が何を重んじるかが入り込んだ、受け手の側の品質です。
第11章3節で見た知覚マップと同じ発想で、ブランドが戦うのは消費者の頭の中だということです。
⑤ ブランド連想
あるブランドが提示されたとき、消費者は何らかの事柄(製品カテゴリー、製品便益、製品属性、利用状況、音、地域など)を思い浮かべます。
ブランド連想とは、ブランド名とある事柄との結びつきのことです。
そして、連想される事柄が好ましくて、ユニークであり、結びつきが強いほうがブランド価値は高くなります。
3つの条件が並んでいる点に注意してください。強く結びついていても、その連想が好ましくなければ価値になりません。不祥事とブランド名が強く結びついた場合を考えれば分かります。
⑥ ブランド要素とエクイティの関係
2つは混ざりやすいので整理しておきます。
ブランド要素は、ブランドを作る「部品」です。名前、ロゴ、音、パッケージ。企業が自分で決められるものです。
ブランドエクイティは、その結果として生まれた「資産」です。知名度や連想は、消費者の頭の中にあるので、企業が直接は決められません。
部品を組んで働きかけ、頭の中に資産を作る。この向きで捉えると混ざりません。
具体例
ある飲料ブランドで、要素とエクイティを分けてみます。
ブランド要素(企業が決めたもの)
ブランドエクイティ(消費者の頭の中にできたもの)
ブランド知名度 … 調査で「ミネラルウォーターといえば」と尋ねたとき、34%の人が名前を挙げた。
知覚品質 … 実際の成分は他社とほとんど同じですが、「なんとなく体に良さそう」と評価されています。
客観的な品質ではなく、受け手の感じ方である点が、この例によく表れています。
ブランド連想 … 名前を聞くと「森」「静けさ」「朝」を思い浮かべる人が多い。
この連想は、
3つとも満たしているので、ブランド価値を押し上げています。
もし連想が好ましくなかったら
仮にこのブランドが回収騒ぎを起こし、名前を聞くと「異物混入」を思い出すようになったとします。
結びつきは極めて強い。ユニークでもある。しかし好ましくないので、ブランド価値は下がります。3つ揃って初めて価値になる、というのはこういうことです。
試験のポイント
2つの軸を掛け合わせると、4つに分かれます。
④ 見せかけのロイヤルティ
行動的ロイヤルティが高い場合であっても、その企業やブランドに対して感情的にコミットしているとは限りません。
関与が低い、他のブランドにスイッチするのが面倒といったことにより、惰性で同じブランドを購入していることもあります。
これが見せかけのロイヤルティです。
第13章2節で見た習慣型の購買行動(関与が低く、ブランド間知覚差異も小さい)を思い出してください。あの状態で同じものを買い続けている人が、まさにこれにあたります。
⑤ 潜在的ロイヤルティ
一方、心理的ロイヤルティが高い場合であっても、実際に購買にはあまりつながっていない場合もあります。
その企業やブランドに対して好意的な認識を有しているが、たとえば価格帯が高いなどによってなかなか購買ができていない、といったことです。
これが潜在的ロイヤルティです。
⑥ 一方が高ければ他方も高い、とは限らない
ここが出題される論点です。
「前者(行動的)が高ければ後者(心理的)も高いが、前者が低くても後者は高いこともある」
という言い方は誤りです。行動的が高くても心理的が高いとは限りません(見せかけのロイヤルティ)。
2つの軸は独立している、と押さえてください。
⑦ 企業にとっての意味
4つを見分けることには実務上の意味があります。
見せかけのロイヤルティの客は、再購買率だけ見れば優良顧客に見えます。しかし、他社がもっと便利な選択肢を出せば、あっさり離れます。数字が安心材料になりません。
潜在的ロイヤルティの客は、購買が少ないので数字上は目立ちません。しかし気持ちはこちらを向いているので、障害(価格、入手しにくさ)を取り除けば動きます。最も伸びしろのある層です。
具体例
あるコーヒーチェーンの4人の客を見てみます。
Aさん ― 真のロイヤルティ
週4回通い、豆も自宅用に買っています。友人にも薦め、新店舗ができれば話題にします。
行動も心理も高い。最も価値の高い客です。
Bさん ― 見せかけのロイヤルティ
毎朝この店に寄ります。再購買率で見れば週5回。数字上はAさんより上です。
しかし理由は「会社の1階にあるから」。味にこだわりはなく、他のチェーンが入居したら迷わず乗り換えるでしょう。
行動は高いが心理は低い。この店が移転したら、Bさんは付いてきません。
Cさん ― 潜在的ロイヤルティ
この店の味が一番好きだと思っています。SNSでも褒めています。
しかし来店は月1回。1杯600円は、毎日飲むには高いからです。
心理は高いが行動は低い。もし手頃なサイズや回数券が出れば、Cさんの来店は一気に増える可能性があります。
Dさん ― ロイヤルティなし
そのときいちばん近い店に入るだけ。
数字だけ見ていたら
再購買率で顧客を並べると、BさんがCさんより上に来ます。
しかし、店を守ってくれるのはCさんのほうです。行動だけを見ていると、客の質を読み違える。2軸で見る意味はここにあります。

コトラーの4つのブランド戦略
試験のポイント
すでに成功したブランド名を使って、新製品や改良製品を新しいカテゴリーに投入することです。
ⅲ マルチブランド(ブランド名=新規 / カテゴリー=既存)
新しいブランド名を、既存製品と同一カテゴリーの新製品に付すことです。
次の効果が期待できます。
主力ブランドを守るために脇を固めるブランドとして展開したい場合や、地域別・国別にブランドを区別したい場合にも用いられます。
ⅳ 新ブランド(ブランド名=新規 / カテゴリー=新規)
既存のブランド名がふさわしくない新しい製品カテゴリーに参入する場合に、新しいブランド名を創出することです。
また、買収によって新しいカテゴリーの新しいブランド名を獲得することも含まれます。
③ ライン拡張とブランド拡張の取り違え
ここが最頻出です。
ブランド・エクステンション(ブランド拡張)とは、確立されたブランド名を他の製品カテゴリーで活用することです。
「ある製品カテゴリーにおいて確立されたブランド名を、同種の製品カテゴリー内の新しい製品に活用すること」
という言い方は誤りです。それはライン拡張にあたります。
同じカテゴリーの中ならライン拡張、別のカテゴリーへ出ればブランド拡張。この一点で見分けてください。
④ マルチブランドが陳列スペースにつながる理由
この効果は理屈が分かると忘れません。
小売店の棚は有限です。1社が1ブランドしか持っていなければ、確保できる面は1つ分です。
同じカテゴリーに複数のブランドを持てば、それぞれが1つの商品として棚に並びます。結果として、そのメーカーが占める面積が増えます。
そして、客が飽きて別のブランドに乗り換えたくなったとき、乗り換え先も自社のブランドなら、売上は社外に流れません。これが「自社内にとどめる」ということです。
具体例
ある食品メーカーの4つの新製品を、戦略別に見てみます。
ライン拡張 … 「〇〇カレー 辛口」を追加
すでに成功している「〇〇カレー」の名前を使い、同じレトルトカレーというカテゴリーの中で、辛さを変えた商品を出します。
名前も既存、カテゴリーも既存です。
ブランド拡張 … 「〇〇カレーパン」を出す
同じ「〇〇」の名前を使いますが、レトルトカレーではなくパンという別のカテゴリーです。
カレーで築いた味の信頼を、別の売場へ持ち出す形になります。
マルチブランド … 「スパイス紀行」という別名で高級カレーを出す
同じレトルトカレーというカテゴリーですが、まったく新しい名前を付けます。
狙いは2つ。
棚に「〇〇カレー」と「スパイス紀行」の2つが並べば、この会社が取る面積が倍になります。
そして、「〇〇カレーに飽きた」という客が他社へ行かず「スパイス紀行」へ移れば、売上は社内にとどまります。
新ブランド … ペットフード事業へ参入
人間用の食品ブランド名をペットフードに付けるのはふさわしくありません。
そこで新しい名前を創出します。あるいは、既存のペットフード会社を買収してそのブランド名を手に入れることもあります。
実際の企業でいうと
試験のポイント
ⅰ ブランド強化(既存市場 / 既存ブランド)
対象市場もブランドも変更しない戦略です。従来の戦略の強化・延長であり、最もリスクの少ない戦略です。
一般的に、市場への浸透が不十分であったり、競争が激しくなったりした場合にこの戦略がとられます。
ⅱ ブランド・リポジショニング(新規市場 / 既存ブランド)
既存のままのブランドで新しい市場を狙う戦略です。
対象市場を思い切って新しいセグメントへ変更することで、売上高の増加を狙う際に取られる戦略です。
ⅲ ブランド変更(既存市場 / 新規ブランド)
同じ市場をターゲットとし続けるが、ブランドを新規なものに変更する戦略です。
一般的に値崩れしてきたブランドを廃棄したり、消費者へ新しいブランドで鮮度を訴えたりすることができるなどの効果があります。
一方で、過去から築いてきた知名度やロイヤルユーザーを放棄し、ゼロからのスタートとなることから、かなりのリスクをともなった戦略でもあります。
ⅳ ブランド開発(新規市場 / 新規ブランド)
新しいブランドで新しい市場を狙う戦略です。
経験のない市場へ、消費者に知られていないブランドで進出するので最もリスクが高い戦略といえます。典型的なハイリスク・ハイリターン型の戦略です。
④ リスクの並びで覚える
4つは、リスクの低い順に並べると筋が通ります。
ブランド強化(最も低い)→ リポジショニング・ブランド変更 → ブランド開発(最も高い)
何も変えなければリスクは小さい。市場かブランドの一方を変えれば中程度。両方変えれば最も大きい。
第3章6節で学んだアンゾフの製品=市場マトリックスとまったく同じ構造です。市場浸透がリスク最小、多角化がリスク最大だったのと重なります。
⑤ ブランド変更のリスクの中身
4つのうち、ブランド変更だけ利点とリスクが具体的に書かれているのは理由があります。
得られるもの(値崩れの解消、鮮度)と失うもの(知名度、ロイヤルユーザー)がはっきり対になっているからです。
ブランドエクイティは資産だと最初のテーマで見ました。ブランドを変えるとは、その資産を意図的に手放すということです。だから「ゼロからのスタート」と表現されます。
具体例
低迷している家庭用洗剤ブランド「クリアス」の立て直しを4つの案で考えてみます。
案1 ブランド強化(既存市場・既存ブランド)
対象はこれまでどおり主婦層、名前もそのまま。広告を増やし、詰め替え用を値下げして浸透を図ります。
最もリスクが小さい案です。うまくいかなくても失うものは広告費だけです。
案2 ブランド・リポジショニング(新規市場・既存ブランド)
名前は「クリアス」のまま、狙いを業務用(飲食店の厨房)へ移します。
家庭用では埋もれていますが、洗浄力の高さは業務用で評価される可能性があります。
案3 ブランド変更(既存市場・新規ブランド)
対象は主婦層のまま。しかし「クリアス」は安売り店で値崩れしており、安物という印象が付いてしまいました。
そこで名前を捨て、「ピュアノ」として出し直します。
値崩れの印象は消えますが、20年かけて作った知名度と、長年使ってくれた客も手放すことになります。
案4 ブランド開発(新規市場・新規ブランド)
新しい名前で、業務用市場へ出ます。
知らない市場に、知られていない名前で入る。当たれば大きいが、最もリスクが高い案です。
どれを選ぶか
この会社は案2を選びました。
「クリアス」の家庭での評判は悪くなく、資産を捨てる必要はない。一方で家庭用市場は成熟しており伸びしろがない。
資産は残したまま、売り先を変える。リポジショニングが選ばれる典型的な状況です。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。