製品戦略
下の動画はこの節の解説ではありません。 解説動画の雰囲気を知っていただくための見本として、「PPM」の動画を再生します。
この節の解説動画はプレミアム限定です。プレミアムなら全科目・全節が見放題!
プレミアムで見るこの節では、製品戦略の2つの話題を扱います。
ひとつはパッケージング。製品の包装や容器のデザイン/制作などの活動のことであり、製品戦略の一要素と考えることができます。
もうひとつは新製品開発のプロセスです。
新製品の開発は、多角化戦略や新製品開発戦略などの経営戦略を策定する際にも重要な役割を果たしています。また、マーケティングの要素としての製品戦略においても、その中心的な課題に位置づけられます。
8つのステップは順番がそのまま問われます。各段階で何を決めるのかを一言で言えるようにしておいてください。
簡単にいうと
包装は「中身を守る入れ物」だけじゃないんだ。ブランドを作る道具でもあるよ!
① 4つの機能
パッケージには、次の機能があります。
ⅰ 保護する機能
運搬や取扱いの際に内容物を保護する機能です。
ⅱ 利便性を提供する機能
持ち運びやすさ、開けやすさ、使いやすさを提供します。
ⅲ 情報を提供する機能
使用方法や内容物の表示、商標や規格の表示などです。
ⅳ 販売促進に役立つ機能
パッケージのデザインや色彩などを工夫すれば、販売促進に役立ちます。
② ブランド要素としてのパッケージ
パッケージはブランド要素のうちのひとつでもあり、視覚や触覚への訴求によってブランド価値を向上させる機能も有しています。
前の節で見たブランド要素の一覧にパッケージが入っていたのは、このためです。
そして、第14章1節で見た感覚価値(パッケージデザインによる心地よさ)もここにつながっています。
③ デザイン変更にはリスクがある
具体例
長年売れているスナック菓子のパッケージを変更した会社の話です。
変更の狙い
10年間ほぼ同じデザインで、「古い」「変わり映えしない」という調査結果が出ていました。
そこで、写真を大きくし、ロゴを現代的な書体に変え、背景色を赤から白基調に変えました。
ブランド鮮度を訴求するという狙いは、手段としては有効です。
実際に起きたこと
変更から2か月、売上が12%落ちました。
問い合わせ窓口には「いつもの商品が店から消えた」「味が変わったのか」という声が届きました。
実際には中身は何も変えていません。
何が起きたか
この商品を買っていた層の多くは、棚の前で赤いパッケージを目印に手を伸ばしていました。
白基調に変わった瞬間、その目印が消えたわけです。
その後の対応
この会社は、背景の赤を一部戻し、「中身は変わりません」という帯を半年間付けました。
変えることが悪いのではなく、変えたと気づかせずに変えるか、変わっていないと伝えるかを併せて設計する必要があった、ということです。
試験のポイント
簡単にいうと
アイデアから市場導入まで、8つの段階があるよ。順番がそのまま問われるから、流れで覚えよう!
① 全体の流れ
新製品開発は、一般的には次のステップで実施されます。
アイデアの創出 → スクリーニング → 製品コンセプトの開発 → マーケティング戦略の検討 → 経済性の評価 → 試作モデルの開発 → テストマーケティング → 市場導入
② 各ステップで何を決めるか
ⅰ アイデアの創出
新製品のアイデアの創出は、次の2つに分けられます。
簡単にいうと
社外の力を借りて作る方法が3つあるよ。何を集めるのかがそれぞれ違うんだ!
① クラウド・ソーシング
クラウド・ソーシングとは、コンテンツの創造や問題解決、あるいは研究開発を行うために、不特定多数の人々に対して公募形式で資源の提供を求めるものであり、その余剰能力を労働力のプールとして用いるものです。
つまり、主に情報的経営資源を調達するものです。
クラウドソーシングには、「アイデアを求める場合」と「単純作業を行ってもらう場合」があり、製品開発におけるクラウドソーシングは前者で、オープン・イノベーションの一形態とも言えます。
② イノベーション・コミュニティ
さまざまな場所に分散して存在するユーザー・イノベーター(
動画・テキスト・過去問・AI添削まですべて網羅!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決できます
パッケージデザインの変更は、ブランド鮮度を訴求する有効な手段となります。
しかし、すでに流通し、認知されている商品のパッケージを変更することは、消費者にそのブランドそのものが変わったと勘違いされるリスクもあることに留意する必要があります。
④ 「積極的に行うべき」とまでは言えない
したがって、
「パッケージデザインの変更はブランド鮮度を訴求する有効な手段であるため、イメージを一新するパッケージ変更を積極的に行うべきである」
という言い方は誤りです。
有効な手段であることは正しいのですが、リスクもあるため、積極的に行うべきであるとまでは言えません。
この形の設問は、「前半は正しいが、後半で言い過ぎている」という作りになっています。前半に納得してそのまま丸をつけないよう注意してください。
⑤ なぜ勘違いされるのか
前の節で見たブランド連想を思い出してください。
消費者はパッケージの見た目とブランドを強く結びつけています。棚の前で瞬時に選んでいるのは、名前を読んでいるからではなく色と形で見分けているからです。
だから見た目が変わると、「いつものあれが無くなった」と受け取られることがあります。資産であるはずのブランド連想が、変更のときには足かせになる、というわけです。
ⅱ スクリーニング
創出したアイデアを、経営理念や事業戦略、経営資源などの多様な観点を踏まえて絞り込みます。
ここで2種類の誤りに留意します。
2つは向きが逆です。落としてはいけないものを落とすのがドロップエラー、進めてはいけないものを進めるのがゴーエラー。名前のとおりなので、落ち着いて読めば取り違えません。
ⅲ 製品コンセプトの開発
製品コンセプト自体が顧客の購買理由や市場価値であり、これを明確化する必要があります。
これが不明確だと、各部門の行動に統一性がなくなってしまいます。
この過程と並行して、「ポジショニング」と「標的市場」も明らかにします。
第11章3節で見たSTPが、新製品開発のこの段階で実際に使われるわけです。
ⅳ マーケティング戦略の検討
この段階ではコンセプトをもとに、マーケティング戦略の基本骨格を固めます。
ⅴ 経済性の評価
大まかなマーケティング戦略を策定した後、その製品事業に関する経済性を分析します。
具体的には、製品の予想売上高、利益、原価などをいくつかのパターン(ベストケース、ワーストケース)でシミュレーションを行い、採算性を検討します。
ⅵ 試作モデルの開発
マーケティング部門と開発部門の議論により、具体的な製品への落とし込みが始まり、試作品を物理的側面と心理的側面の両面から比較検討します。
製品化が決定した場合、必要であれば特許の申請などを行います。
ⅶ テストマーケティング
この段階では地域を限定した実験販売を行い、最終的にデザインなどさまざまな製品仕様を決定します。
この決定は、その後行う生産数量の決定、広告、販売促進、流通経路の決定などのマーケティング活動を効率よく行うための最終調整の場です。
ただし、テストマーケティングは競合他社に新製品を見せるというリスクも伴います。
ⅷ 市場導入
スムーズに市場導入し、一気に事業基盤を築くための活動に力を注ぎます。
③ 経済性の評価が試作より前にある
順番で見落としやすいのがここです。
採算の検討(ⅴ)は、試作品を作る(ⅵ)より前に来ます。
作ってから儲かるか考えるのでは、試作にかけた費用が無駄になります。数字で見込みを立ててから、モノを作り始めるという順です。
④ ユニバーサルデザイン
製品コンセプトの開発に関連する考え方として、ユニバーサルデザインがあります。
多様なユーザー層の身体的な特性を深く理解し、幅広いユーザーが使いやすいように生成されたデザイン(あるいはデザイン思想)のことです。
高齢者や子供、障害者等、多様な特性をもつユーザーを設計段階であらかじめ想定し、できるだけ幅広い層に使いやすい製品ないし空間を開発していこうというデザイン思想をいいます。
設計段階であらかじめ想定するという点が要点です。後から特別な対応を足すのではなく、最初から幅広い層を含めて設計する、という考え方です。
具体例
調味料メーカーが新しいドレッシングを出すまでを、8つのステップで追ってみます。
ⅰ アイデアの創出
シーズ発想から … 「自社が持つ低温抽出の技術を、何かに使えないか」
ニーズ発想から … 「野菜をもっと食べたいという声があるが、何か手はないか」
2つの向きから、合計42のアイデアが出ました。
ⅱ スクリーニング
42案を6案に絞ります。
このとき、「油を使わない」という案は社内で「売れない」と判断されて落とされました。もしこれが当たる案だったならドロップエラーです。
逆に、役員の思い入れで残った案があれば、それがゴーエラーになりかねません。
ⅲ 製品コンセプトの開発
「生野菜が主役になるドレッシング」と定めました。
あわせて、標的市場を「30〜40代の共働き世帯」、ポジショニングを「素材の味を邪魔しない」と決めます。
ⅳ マーケティング戦略の検討
価格帯400円前後、販路はスーパーの野菜売場の近く、訴求は「かけるだけで野菜が変わる」——という骨格を固めます。
ⅴ 経済性の評価
ここで数字を作ります。
ワーストケースでも耐えられると判断し、次へ進みました。
まだ試作品は作っていません。
ⅵ 試作モデルの開発
ここで初めてモノを作ります。味(物理的側面)と、ボトルを持ったときの印象(心理的側面)の両面から比較しました。
低温抽出の製法について特許を申請しています。
ⅶ テストマーケティング
静岡県内のスーパー40店に限定して3か月販売しました。
ここでボトルの容量を300mlから200mlへ変更しています。「使い切れない」という声が多かったためです。
ただし、この3か月のあいだに競合他社が似た商品の開発に着手したという情報も入りました。新製品を見せるリスクが現実になった形です。
ⅷ 市場導入
全国発売。初動でスーパーの棚を確保するため、営業部門を集中投入しました。

新製品開発の8ステップ
試験のポイント
③ クラウド・ファンディング
新製品開発などのための資金をオンライン上の不特定多数の消費者から調達することです。
クラウド・ファンディングは、資金調達の目的だけではなく、製品やサービスの市場での需要度を確認するテストマーケティングとしての目的でも利用されます。
3つの型があります。
④ 3つは「何を集めるか」が違う
似た名前が並ぶので、集めるものの違いで整理します。
「クラウド」が付く2つは、ソーシングが人手、ファンディングが金。英語の意味そのままなので、sourcing(調達)と funding(資金供給)で分けてください。
⑤ 誰が主導するかも違う
もうひとつの軸は主導権です。
クラウド・ソーシングとクラウド・ファンディングは、企業が呼びかけて人々が応じる形です。
イノベーション・コミュニティは、消費者主導です。企業が場を用意することはあっても、動かしているのはユーザー・イノベーターの側です。
第11章4節で見た共創(Co-creation)、すなわち「消費者が主導する製品開発も起きるようになっている」という話が、ここで具体的な形をとっています。
⑥ クラウド・ファンディングの二重の役割
クラウド・ファンディングで押さえたいのは、資金集めだけの仕組みではないという点です。
目標額に届くかどうかで、その製品に需要があるかが分かります。作る前に、買う意思のある人の数が見えるわけです。
前のテーマで見たテストマーケティングは「地域を限定した実験販売」でしたが、こちらは作る前に需要を測れます。在庫を抱えずに済む点で、より踏み込んだ使い方になります。
具体例
小さな調理器具メーカーが、3つの仕組みを使い分けた例です。
クラウド・ソーシング … 名前とデザインを募る
新しい鍋の商品名とロゴを、ウェブ上で不特定多数から公募しました。
採用案には賞金10万円。応募は420件集まりました。
社内のデザイナー1人では出てこない発想が集まります。知恵という情報的経営資源を、公募で調達した形です。
これは「アイデアを求める場合」にあたり、オープン・イノベーションの一形態といえます。
イノベーション・コミュニティ … 改造する人たちの場
この鍋を使う人のなかに、取っ手を自分で付け替えたり、蓋に穴を開けて蒸し器にしたりする人がいました。ユーザー・イノベーターです。
会社はオンラインの掲示板を用意し、そうした改造や使い方を共有できるようにしました。
ここで動いているのは消費者です。会社は場を提供しただけで、何を作るかを決めているのはユーザー同士のやり取りです。
のちに、この場で生まれた「蒸し板」が正式な純正品として商品化されました。
クラウド・ファンディング … 作る前に需要を測る
次の新製品は、金型に800万円かかる見込みでした。売れなければ大きな損になります。
そこでクラウド・ファンディングに出し、目標600万円を設定しました。
リターンは「完成した鍋を1台お届け」——金銭ではないので購入型です。
結果は1,100万円が集まりました。
資金が手に入っただけではありません。「この価格で買う人が何人いるか」が作る前に分かったのです。
これがテストマーケティングとしての利用にあたります。
もし目標に届かなければ、金型を作る前に引き返せました。在庫を抱えてから気づくのとは、損失の桁が違います。
試験のポイント
プレミアムプラン
¥9,800〜/ 買い切り・自動更新なし(税込)
決済はStripe(世界最高水準・PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。