分業システムとしての組織
組織構造論
組織構造の設計原理でふれたように、組織は専門化(分業化)の原則に沿って構成されることになります。それぞれに役割を分けることで、専門性を発揮させるなどのメリットを追求しているのです。ここでは組織における分業について考察します。
機能(職能)分業と階層分業
簡単にいうと
組織の分業には、ヨコに分ける「機能分業」とタテに分ける「階層分業」の2種類があります。それぞれの特徴を押さえましょう。
機能(職能)分業とは、組織図においてヨコ方向に業務を分割する方法で、水平分業とも呼ばれます。たとえば購買・製造・販売・管理といった形で、企業全体の業務を機能ごとに分けます。これは機能別組織の基本となる考え方です。
一方、階層分業とは、組織図においてタテ方向に分割する方法であり、垂直分業とも呼ばれます。経営者から事業部長、課長、一般従業員へと階層ごとに役割を分けることで、上位者は日常業務から解放され、より戦略的な判断に集中できるようになります。
具体例
ある製造業の組織図を見ると、経営者の下に購買部・製造部・販売部・管理部がヨコに並んでいます(機能分業)。同時に、各部門内で部長→課長→係長→一般社員というタテの階層が存在します(階層分業)。このように、ひとつの組織の中で水平・垂直の両方の分業が同時に行われています。

分業と統合・調整の仕組み
試験のポイント
- ・機能分業=水平分業=ヨコ方向、階層分業=垂直分業=タテ方向という対応関係は頻出です
- ・階層分業は「考える仕事」と「実行する仕事」を分離するものと理解しておきましょう
経営者行動・管理者行動・作業行動の3階層
簡単にいうと
階層分業をさらに掘り下げると、組織の人間行動は「経営者行動」「管理者行動」「作業行動」の3つに分類されます。各階層で求められる役割がまったく異なる点がポイントです。
経営組織における人間の行動を階層的に分類すると、管理行動と作業行動に大別できます。さらに管理行動は、経営者行動と管理者行動に細分化されます。
経営者行動(トップマネジメント/最高管理層)
トップマネジメントとは、社長・副社長・専務など経営の最上位に位置する層です。全社的な経営戦略の策定、長期ビジョンの設定、経営資源配分の最終決定など、企業全体の方向性を左右する非定型的・長期的な意思決定を担います。アンゾフはこれを「戦略的意思決定」と呼びました。
管理者行動(ミドルマネジメント/中間管理層)
ミドルマネジメントとは、部長・課長など組織の中間階層に位置する層です。トップが定めた経営戦略を各部門で具体化し、経営資源の調整を行います。上位の戦略的意思決定と下位の業務的意思決定をつなぐ橋渡しの役割を果たし、アンゾフの分類では「管理的意思決定」に対応します。
作業行動(ロワーマネジメント+一般従業員)
ロワーマネジメント(現場管理層:係長・主任など)は、従業員に対して直接的な指示・監督を行います。一般従業員は製品やサービスの生産・販売など日々の業務を遂行します。これらの層が担うのは、日常的・反復的・定型的な「業務的意思決定」です。
具体例
自動車メーカーを例に取ると、社長が「今後EV事業に注力する」と経営方針を決定するのが経営者行動です。製造部長がEV生産ラインの設置に向けて人員や設備を調整するのが管理者行動です。そして工場の従業員が実際にEVの組み立て作業を行うのが作業行動にあたります。
試験のポイント
- ・トップ=戦略的意思決定(非定型・長期)、ミドル=管理的意思決定(戦略と業務の中間)、ロワー=業務的意思決定(定型・短期)という対応をしっかり覚えましょう
- ・アンゾフの意思決定分類との関連は頻出テーマです
例外の原則と計画のグレシャムの法則
簡単にいうと
階層分業がうまく機能するためには「例外の原則」が大切です。これが守られないと「グレシャムの法則」という問題が起こります。
例外の原則(権限委譲の原則)
経営者は、業務的意思決定や管理的意思決定から自らを解放し、戦略的意思決定に専念できるようにする必要があります。そのために、日常的に繰り返し発生する定型業務の処理は下位レベルの者に委ね、経営者自身は例外的・非定型的な事項(戦略的意思決定)の処理に専念すべきとする考え方です。これは権限委譲の原則とも呼ばれます。
計画のグレシャムの法則
しかし現実には、経営者が定型的な意思決定に忙殺されてしまい、非定型的な意思決定が後回しになることがあります。その結果、将来の計画策定が事実上消えてしまう現象を「計画のグレシャムの法則」といいます。本来の「悪貨は良貨を駆逐する」というグレシャムの法則になぞらえて、「ルーティン業務が計画業務を駆逐する」と表現されます。
具体例
ある中小企業の社長が、日々のクレーム対応や伝票処理に追われるあまり、来期の事業計画を立てる時間がまったく取れなくなってしまいました。これが計画のグレシャムの法則の典型的な例です。例外の原則に従って、定型業務を部下に任せることで、この問題を回避できます。
試験のポイント
- ・例外の原則=権限委譲の原則という別名を押さえましょう
- ・グレシャムの法則は「定型業務が非定型業務(計画業務)を駆逐する」という意味で、試験ではひっかけ問題として出題されることがあります
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