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プレミアムで見るこの節では、労働基準法のうち解雇と賃金に関する規定を扱います。
どちらも、働く人の生活に直結する部分です。だからこそ法律の縛りが細かく、そして試験でもよく問われます。
解雇では、いつ解雇できないか(解雇制限)と、解雇するとき何をしなければならないか(解雇の予告)。
賃金では、支払い方の5つの原則と、その例外に何が必要か。そして時間外・休日・深夜に働かせたときの割増賃金率。
数字が多く見えますが、原則と例外の組で押さえていけば整理できます。
簡単にいうと
解雇には2つの縛りがあるんだ。「理由が要る」という縛りと、「この時期は解雇できない」という縛りだよ!
① 解雇権濫用法理
解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効となります。
会社に解雇する権利がないわけではありません。しかし、理由なく、あるいは行き過ぎた形で行使すれば無効になる、という枠組みです。
第13節で見た雇止め法理と同じ言い回しが使われています。有期契約の更新拒絶にも、無期契約の解雇にも、同じ物差しが当てられているわけです。
② 解雇制限 ― 解雇できない期間
使用者は、原則として、次の期間内にある労働者を解雇することができません。
③ なぜこの2つなのか
労働者が病気などで働くことができない、あるいは体調が十分ではないときに解雇されると、生活が困難になります。
次の職を探そうにも探せない時期だからです。そこで労働基準法は、このような状態にある労働者が解雇されないよう保護しています。
その後30日間という余裕が付いているのも同じ理由です。復帰した翌日に解雇されては、結局は探す時間がないままになってしまいます。
なお、ここで守られるのは業務上の負傷・疾病による休業です。私生活でのけがや病気による休業は、この制限の対象になりません。
具体例
製造業H社の3つの場面を見てみます。
Iさん ― 作業中のけが
工場のプレス機で指を負傷し、6か月休業しました。業務上の負傷による療養のための休業ですから、この6か月とその後30日間は解雇できません。
Jさん ― 休日のスキーでのけが
同じく6か月休業しましたが、こちらは業務外の負傷です。解雇制限の対象にはなりません。
ただし、解雇するには客観的に合理的な理由と社会通念上の相当性が要ります。けがで休んだというだけで解雇すれば、解雇権の濫用として無効になるでしょう。解雇制限の対象外であることと、解雇してよいことは別です。
Kさん ― 長期の業務上疾病
業務上の疾病で療養を始めて3年2か月が経ちましたが、回復の見込みが立ちません。
この場合、H社は平均賃金の1,200日分の打切補償を支払うことで、解雇制限期間中であっても解雇することができます。
Kさんの平均賃金が1日1万2千円なら、打切補償は1,440万円。軽々に使える手段ではありません。

賃金支払いの5原則と解雇のルール
試験のポイント
簡単にいうと
解雇するなら30日前に言うか、30日分のお金を払うか。突然クビになったら生活できないからね!
① 解雇の予告とは
労働基準法では、労働者が突然解雇されて生活不安に陥らないように、使用者が労働者を解雇しようとするときは一定の手続をとるように義務づけています。
② 2つの手続き
使用者が労働者を解雇しようとするときは、原則として次のいずれかの手続(併用可)が必要になります。
併用できるという点が重要です。たとえば10日前に予告し、20日分の平均賃金を支払う、という組み合わせも認められます。
「21日前に予告し、しない場合は21日分を払う」といった言い方は誤りです。30日という数字を動かさないでください。
簡単にいうと
賃金が本人の手に確実に渡るための決まりだよ。例外に何が必要かまで問われるから、そこが勝負どころ!
① 賃金とは
賃金は労働者にとって生活の糧となるものですから、労働基準法ではその保護規定を設けています。
賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかんを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいいます。
名前が何であっても、労働の対償なら賃金です。
② 賃金支払の5原則
賃金が確実に労働者本人に渡るよう、支払方法について5つの原則が定められています。
簡単にいうと
残業代の割増率は表で覚えよう。「時間外+休日は6割じゃない」ところが最大の引っかけだよ!
① 割増賃金の対象
労働者に時間外労働、休日労働、深夜労働をさせた使用者は、割増賃金を支払わなければなりません。
対象となるのは次の場合です。
第14節で見た区別が効いてきます。
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次の場合は、解雇制限期間中の者であっても例外的に解雇が認められます。
ⅰ 打切補償を行った場合
業務上の傷病により療養している労働者が療養開始後3年を経過しても傷病が治らない場合において、平均賃金の1,200日分の打切補償を行った場合です。
ⅱ 天災事変等の場合
天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合で、所轄労働基準監督署長の認定を受けた場合です。
⑤ 打切補償が使えるのは業務上の傷病だけ
ここが引っかけどころです。
打切補償が適用されるのは、業務上の傷病により療養している労働者が療養開始後3年を経過しても治らない場合に限られます。
産前産後休業の場合に打切補償を支払って解雇する、という形は認められません。出産は傷病ではなく、3年も療養が続くという性質のものでもないからです。
2つの制限は並んで書かれていますが、例外の適用範囲は同じではありません。
③ 解雇予告の適用除外者
解雇予告の規定は、一定の労働者には適用されません。ただし、それぞれ一定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合には適用されます。
④ 「所定の期間」の読み方
2つめと3つめの「所定の期間」は、定めた期間そのものを指します。
1か月の期間を定めた場合は、1か月を超えたら必要になります。2か月ではありません。上限として2か月以内・4か月以内と書かれているだけで、判定に使うのは実際に定めた期間です。
⑤ 試用期間の14日
ここは頻出です。
試用期間中だからといって、いつでも予告なしに解雇できるわけではありません。14日を超えて引き続き使用されるに至れば、解雇予告の規定が適用されます。
試用期間を3か月と定めていても、15日目以降の解雇には予告または予告手当が必要になります。
⑥ 予告なしで解雇できる場合
次の場合は、予告なしで解雇できます。ただし、いずれも所轄労働基準監督署長の認定が必要です。
会社が自分で「本人に責任がある」と判断すれば足りる、というわけではありません。行政の認定を挟むことで、この例外が濫用されないようにしています。
具体例
小売業L社の4つのケースを見てみます。
Mさん(正社員)3月31日付で解雇することが決まりました。
L社がとりうる手続きは3つです。
Nさん(試用期間3か月の新入社員・入社10日目)14日を超えていないので、解雇予告の規定は適用されません。
Oさん(試用期間3か月の新入社員・入社40日目)14日を超えて引き続き使用されているので、解雇予告の規定が適用されます。試用期間中であることは理由になりません。
Pさん(1か月の期間を定めて雇った販売応援)1か月の契約が終わった後も引き続き働いてもらっています。所定の期間である1か月を超えたので、解雇予告の規定が適用されます。
ここで「2か月以内の期間を定めて使用される者だから、2か月を超えるまでは不要だ」と考えるのは誤りです。判定に使うのは、実際に定めた1か月のほうです。
試験のポイント
③ 5つの原則が守ろうとしているもの
5つとも、賃金が本人の手に、丸ごと、決まった日に届くようにするための決まりです。
通貨でないもの、たとえば自社製品で支払われては生活が立ちません。親や配偶者に渡されては本人が使えません。勝手に天引きされては生活設計が立ちません。いつ払われるか分からなければ、家計を組めません。
④ 例外に何が必要か
ここが出題の的です。同じ通貨払の例外でも、要るものが違います。
通貨払の例外
現物支給は労働協約、銀行振込は労働者の同意。ここは正確に区別してください。
現物支給に労働協約が求められるのは、現物での支払いが労働者にとって不利益になりやすく、労働組合という組織の関与を挟む必要があるからです。労使協定では足りません。
直接払の例外
労働者が病気で欠勤している場合に、その家族等の使者に支払うことは可能です。
ここでいう使者とは、本人の代わりに受け取って本人に渡す立場の人を指します。本人の代理人として自分の判断で受け取る、という形は認められません。
全額払の例外
賃金から控除できるものは次のとおりです。
毎月1回以上払・一定期日払の例外
退職金、賞与などは、毎月支払われるものでも一定の期日に支払われるものでもありません。これらは例外として扱われます。
また、一定期日払については非常時払いも例外にあたります。
具体例
食品メーカーQ社の給与のやり方を、5原則に照らしてみます。
銀行振込にしている通貨払の例外にあたりますが、労働者の同意を得ているので問題ありません。振込先も本人名義の口座です。
通勤定期券を現物で渡しているこれも通貨払の例外ですが、Q社には労働組合がなく、過半数代表者との労使協定しか結んでいませんでした。
これは認められません。現物支給に必要なのは労働協約であって、労使協定ではないからです。Q社は通勤手当を現金で支給する形に改めました。
社宅費を給与から天引きしている全額払の例外にあたるため、労使協定を結んだうえで控除しています。これは適切です。
Rさんが入院中、奥さんが給与を受け取りに来た本人に渡すための使者として受け取る形なので、直接払の例外として認められます。
ただし、Rさんの債権者が「Rさんから債権を譲り受けた」と言って受け取りに来た場合は、支払うことができません。直接払の原則は、こうした取り立てから賃金を守るためのものでもあります。
試験のポイント
② 割増賃金率
割増賃金の額は、通常の労働時間または労働日の賃金に次の率を掛けて割り増しした額となります。
③ 足し算にならない組み合わせがある
ここが最大の引っかけどころです。
時間外労働+深夜労働は2割5分+2割5分=5割。足し算になります。
休日労働+深夜労働は3割5分+2割5分=6割。これも足し算です。
ところが、時間外労働+休日労働は3割5分であって、6割にはなりません。
理由は考えてみれば分かります。法定休日には、そもそも所定労働時間という枠がありません。その日の労働は、最初から最後まですべて休日労働です。だから「休日労働のうち8時間を超えた部分」という概念が成り立たない。
時間外と休日が重なるという事態自体が起きないので、率も休日労働のままなのです。
④ 月60時間超の割増率
1か月に60時間を超える時間外労働については、超えた部分の法定割増賃金率が5割以上となります。
長時間の残業そのものを割高にして抑え込む、という仕組みです。
⑤ 平均賃金
平均賃金とは、原則として、算定すべき事由の発生した日以前3か月間にその労働者に対し支払われた賃金の総額を、その期間の総日数(総暦日数)で除した金額をいいます。
ここで注意したいのは、割る数が労働日数ではなく総暦日数だという点です。土日も含めた暦の日数で割ります。
したがって、平均賃金は1日あたりの賃金より低い額になります。
なお、業務上の傷病による休業期間や産前産後の休業期間等については、その期間およびその期間中の賃金は控除します。
⑥ 平均賃金が使われる場面
平均賃金は、前に見た解雇予告手当や打切補償のほか、休業手当でも用いられます。
休業手当とは、使用者の責めに帰すべき事由によって休業する場合に、休業中の労働者に支払わなければならない平均賃金の100分の60以上の手当のことです。
⑦ 消滅時効
現行の労働基準法では、退職手当以外の賃金の請求権の消滅時効期間は、当分の間3年間とされています。
まとめると次のとおりです。
3つの数字が混ざりやすいので、退職手当が最も長い5年、年休が最も短い2年、その間の3年が普通の賃金、という順で覚えてください。
具体例
時給換算2,000円のSさんの、ある1か月を計算してみます。所定は9時から18時、休憩1時間、所定労働時間8時間。法定休日は日曜です。
ケース1 平日に21時まで勤務
18時から21時までの3時間が法定時間外労働です。
2,000円 × 1.25 × 3時間 = 7,500円
ケース2 平日に24時まで勤務
18時から22時までの4時間 … 時間外労働のみ(1.25)
22時から24時までの2時間 … 時間外+深夜(1.5)
2,000円 × 1.25 × 4 + 2,000円 × 1.5 × 2 = 10,000+6,000 = 16,000円
ケース3 日曜(法定休日)に9時から21時まで勤務
この日は最初から最後まで休日労働です。12時間働いても、8時間を超えた分が「時間外+休日」として6割になることはありません。
2,000円 × 1.35 × 11時間(休憩1時間を除く)= 29,700円
ケース4 日曜の22時から24時まで勤務
休日労働+深夜労働なので6割増しです。
2,000円 × 1.6 × 2時間 = 6,400円
ケース5 この月の時間外労働が合計70時間だった
60時間までは1.25、60時間を超えた10時間分は1.5で計算します。
平均賃金の計算Sさんの直前3か月の賃金総額が96万円、その期間の総暦日数が92日だったとすると、
96万円 ÷ 92日 = 約10,435円
1日8時間×2,000円=16,000円より低くなっているのは、休日も含めた暦の日数で割っているからです。
試験のポイント
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