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プレミアムで見る労働者ひとりでは、会社と対等に交渉できません。第12節で見たとおり、力の差があるからです。
そこで、まとまることで交渉力を得るという道が用意されています。それを支えるのが労働組合法です。
この節では、憲法が保障する労働三権、労働組合の定義、使用者がやってはならない不当労働行為の5類型、そして労使協定と労働協約の違いを扱います。
とくに最後の項目は、ここまでの節で繰り返し出てきた2つの言葉の整理にあたります。似た名前ですが、当事者も効力もまったく違います。
簡単にいうと
まとまる権利、交渉する権利、行動する権利。この3つが憲法で保障されているんだ!
① 労働組合法の目的
労働組合法は、憲法で保障されている労働三権を具体的に規定した法律です。
法律の中身としては、労働組合法の目的や定義、団体交渉の権限、不当労働行為の禁止、正当な労働争議行為に関する損害賠償義務の免除、労働協約、労働委員会について規定しています。
② 労働三権
労働三権とは、次の3つをいいます。
3つは、まとまる、話す、行動するという順に並んでいます。
この順序には意味があります。まとまらなければ交渉の席につけません。交渉しても相手が動かなければ、次の手が要ります。3つがそろって初めて、使用者と釣り合う力になるという設計です。
③ 労働組合とは
労働組合とは、労働者が主体となって、自主的に労働条件の維持・改善その他経済的地位の向上を図ることを主な目的とする団体をいいます。
定義のなかで大事なのは2点です。
労働者が主体
具体例
従業員150名の部品メーカーT社で、労働組合が結成されるまでを追ってみます。
きっかけ残業代の未払いが複数の部署で見つかりました。ひとりで会社に掛け合った社員もいましたが、「検討する」と言われたきり動きません。
団結権の行使40名が集まって労働組合を結成しました。会社の許可は要りません。労働者が主体となり、自主的に作る団体だからです。
団体交渉権の行使組合として、未払い残業代の精算と勤怠管理の見直しを議題に団体交渉を申し入れました。
会社には、正当な理由なくこれを拒む自由はありません(次のテーマで見る団体交渉拒否にあたります)。
団体行動権の行使交渉が3回続いても会社が金額を提示しなかったため、組合は2時間のストライキを行いました。
この間、生産ラインが止まり、T社には納期遅延による損害が出ました。しかし、正当な労働争議行為である限り、組合や組合員が賠償責任を負うことはありません。
3つの権利が順に働いて、ようやく交渉が動いたことが分かります。

労働三権と不当労働行為
試験のポイント
簡単にいうと
使用者が組合活動を邪魔する行為のことだよ。5つの型があって、名前と中身の対応が問われるんだ!
① 不当労働行為とは
不当労働行為とは、労働組合運動に対する使用者の妨害行為のことです。
労働者または労働組合の救済申立てによって、労働委員会の審査が開始されることになっています。
労働委員会とは、労使間の紛争について適切な調整や救済を行う行政機関で、公益、労働者、使用者の3者で構成されます。
労使のどちらか一方に偏らないよう、3者構成としたうえで公益委員を入れている、という設計です。
② 5つの型
使用者が次にあげる行為をした場合には、不当労働行為となります。
ⅰ 不利益な取扱い
簡単にいうと
名前が似てるけど別物だよ。当事者が誰か、そして何のためにあるかが違うんだ。ここで整理しよう!
① 2つの定義
労使協定とは、労働者と使用者の間における、労働条件に関する協定をいいます。
労働協約とは、労働組合と使用者の間における、労働組合の組合員たる労働者の労働条件に関する協定(協約)をいいます。
② 当事者が違う
労使協定の当事者は、労働者の過半数で組織する労働組合、もしくは労働者の過半数を代表する者と使用者です。
労働協約の当事者は、労働組合と使用者です。
ここが決定的な違いです。
労使協定は、労働組合がなくても結べます。過半数代表者を選べばよいからです。
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自主的であること。会社の援助で成り立っている団体も、労働組合とはいえません。
この2点が、次のテーマで見る支配介入と経理上の援助が不当労働行為とされる理由につながっています。
④ 損害賠償義務の免除
正当な労働争議行為については、損害賠償の義務が免除されます。
ストライキを行えば、会社に損害が出ます。本来なら賠償責任が生じるところですが、それを負わせていては団体行動権が絵に描いた餅になります。免除はそのための手当てです。
ただし正当なという限定が付いています。暴力を伴う行為などは、この免除の対象になりません。
労働者が次のことを理由として、労働者を解雇または不利益な取扱い(減俸、昇給停止など)をすることです。
ⅱ 黄犬契約の締結
労働者が労働組合に加入しないこと、または労働組合から脱退することを雇用条件とすることです。
「組合に入らないなら採用する」という条件を付ける形が典型です。団結権を入口で封じてしまうため、禁じられています。
ⅲ 団体交渉拒否
使用者が雇用する労働者の代表者と団体交渉をすることを、正当な理由がなく拒むことです。
ⅳ 支配介入
労働者が労働組合を結成し、運営することを支配し、介入することです。
組合の役員選挙に会社が口を出す、会社寄りの組合を作らせる、といった行為が該当します。労働組合の要件である自主性を損なうからです。
ⅴ 経理上の援助
労働組合の運営のための経費の支払につき、経理上の援助を与えることです。
ただし、最小限の広さの事務所の供与などについては不当労働行為となりません。
③ なぜ援助が禁じられるのか
ここは直感に反するところです。会社が組合にお金を出すのは、親切な話に見えます。
しかし、運営費を会社に頼れば、組合は会社に逆らえなくなります。労働組合の定義にあった自主的にという要件が失われる。だから禁じられているのです。
最小限の広さの事務所の供与が除かれているのは、その程度なら自主性を損なわないと考えられているからです。線引きの理由まで押さえておくと、選択肢を読んだときに判断がつきます。
具体例
先ほどのT社で、会社側が次のような動きを見せたとします。それぞれどの型にあたるかを確かめてみましょう。
組合の委員長を、本社から遠方の営業所へ異動させた組合の正当な行為をしたことを理由とする不利益な取扱いであれば、ⅰ 不利益な取扱いにあたります。
新卒採用の面接で「組合には入らないよね」と確認した組合に加入しないことを雇用条件とするなら、ⅱ 黄犬契約の締結にあたります。
「忙しいので交渉には応じられない」と3か月にわたり断り続けた正当な理由なく団体交渉を拒んでいるので、ⅲ 団体交渉拒否にあたります。
部長が組合員を個別に呼び、「穏健な人を委員長にしたほうがよい」と働きかけた組合の運営に介入しているので、ⅳ 支配介入にあたります。
組合の活動費として月20万円を会社が補助すると申し出た運営のための経費の支払について援助を与えるものなので、ⅴ 経理上の援助にあたります。
組合事務所として会議室を1室貸した最小限の広さの事務所の供与にとどまるなら、不当労働行為とはなりません。
同じ「便宜を図る」でも、現金の補助と最小限の場所の提供では扱いが分かれます。組合の自主性を損なうかどうかが判断の軸です。
試験のポイント
この差が、第15節で見た「現物支給には労働協約が必要」という論点につながります。労働組合がない会社では、そもそも現物支給という選択肢が取れないということです。
③ 義務かどうかが違う
労使協定は、一定の労働条件については労働基準法(等)で締結や届出が義務とされています。
36協定を思い出してください。時間外労働をさせるなら、結ばなければならないものでした。
労働協約は、労働組合法では義務とされていません。結ぶかどうかは労使の判断です。
④ 効力の性質が違う
ここが最も大事な点です。
労働基準法上の労使協定は、その協定に定めるところによって労働させても労働基準法に違反しないという免罰効果(のみ)をもつものであって、それ以上の効力があるわけではありません。
したがって労使協定は、法令や労働協約、就業規則などと性格が異なるため、これらと優先順位を争うものではありません。
第12節で「労使協定は優先順位のどこにも該当しない」と述べたのは、このことです。
⑤ 免罰効果とはどういうことか
36協定を例に考えてみます。
36協定を結んで届け出れば、時間外労働をさせても労働基準法違反として罰せられません。これが免罰効果です。
しかし、36協定を結んだだけでは、実際に社員に残業を命じる根拠にはなりません。命じるには、就業規則や労働契約に残業を命じうる旨の定めが要ります。
労使協定は「罰せられなくなる」だけで、「命じられるようになる」わけではない。この区別が、免罰効果という言葉の意味です。
労働協約はこれと違い、労働条件そのものを定める文書です。だから優先順位のなかに位置を持ち、就業規則より強い効力を持ちます。
具体例
労働組合のないU社と、労働組合のあるV社を比べてみます。
U社(労働組合なし・従業員60名)
時間外労働をさせるため、全従業員の投票で過半数代表者を選び、36協定を結んで労働基準監督署長に届け出ました。労使協定は労働組合がなくても結べるので、これは可能です。
一方、通勤定期券を現物で支給しようとしましたが、こちらは労働協約が必要です。U社には労働組合がないため、労働協約を結ぶ相手がいません。したがって、現物支給という方法は取れません。
V社(労働組合あり・組合員が全従業員の8割)
36協定は、過半数で組織する労働組合と結びました。
さらに、労働組合との交渉で所定労働時間を7時間30分とする労働協約を結びました。就業規則には8時間と書かれていましたが、労働協約のほうが優先するため、V社は就業規則を7時間30分に改めました。
2つの違いが表れた場面
V社が36協定を結んだ後、ある社員が残業命令を拒みました。
会社は「36協定があるのだから残業命令に従う義務がある」と主張しましたが、これは通りません。
36協定は、残業させても罰せられないという効果を持つだけです。残業を命じる根拠は、就業規則や労働契約に求めなければなりません。
V社の就業規則には「業務上の必要がある場合は時間外労働を命じることがある」という条項があったため、結果としては命令が有効となりました。しかし、それは就業規則の効力であって、36協定の効力ではありません。
試験のポイント
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