企業戦略(成長戦略)
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プレミアムで見る会社は「うちは何をする会社なのか」を決めなければなりません。これがドメイン、つまり事業領域です。狭く決めすぎれば顧客のニーズに応えきれず、広く決めすぎれば資源が分散して競争に巻き込まれます。適切な範囲をどう定めるか。そして、その定め方を「モノ」で考えるか「コト」で考えるか。1次試験でも2次試験でも繰り返し問われる、企業戦略の出発点です。
簡単にいうと
ドメイン=生存領域。「うちはこの領域で生きていく」と決めること。狭すぎても広すぎてもダメ、というのが最初のポイント!
① ドメインとは
ドメインとは事業領域のことであり、現在から将来にわたって、企業の事業がいかにあるべきかを明示した生存領域です。
「いまやっていること」を並べたものではなく、これからどこで生きていくのかを示すものだという点が大切です。
② 範囲の決め方
ドメインの設定範囲には、両側に落とし穴があります。
| 設定 | 何が起こるか |
|---|---|
| 狭すぎる | 顧客ニーズに応えきることが難しくなる |
| 広すぎる | 経営資源の分散や、多くの競争に巻き込まれることになる |
そのため、適切な範囲で設定することが重要になります。
③ ドメインを設定する意義(3つ)
ドメインを定めることには、次の3つの意義があります。試験でそのまま問われる部分なので、3つとも押さえてください。
❶ 企業の意思決定者たちの注意の焦点が定まる
その結果、事業展開の発想のベースが提供されることになります。何に注意を向けるべきかが決まることで、新しい事業の種を同じ方向から探せるようになります。
❷ どのような経営資源の蓄積が必要かについての指針となる
第1章で見たとおり、情報的資源は買ってくるものではなく蓄積するものです。どの領域で生きていくかが決まれば、何を何年かけて積み上げるべきかが見えてきます。
❸ 企業全体を1つの組織とする一体感をつくる
部署が違っても「自分たちは同じ領域で戦っている」という共通の認識が生まれます。第1章で学んだ経営理念と同様、組織をひとつにまとめる働きがあります。
④ 設定するときに検討すべきこと
ドメインの設定に際しては、次の2つの面から検討すべきだとされます。
・現在から考える……自社の経営資源を考えて、どのような領域で強みを発揮できるかという点
・将来から考える……自社の将来のあるべき姿を考えて、今後必要な経営資源を蓄積していくためにはどのような領域で活動する必要があるかという点
いまの強みだけで決めると、将来にわたる生存領域になりません。逆に理想だけで決めると、足元の資源とかけ離れてしまいます。現在と将来の両方から挟み撃ちにするのが、ドメイン設定の考え方です。
具体例
創業45年、金属プレス加工を営むA社のドメイン設定を追ってみましょう。
狭すぎた場合 「自動車用ドアヒンジの製造」と定めると、電気自動車化で部品構成が変わったとき、行き場がなくなります。
広すぎた場合 「ものづくりで社会に貢献する」と定めると、何をやってもいいことになり、営業も採用も方向が定まりません。
A社が実際に定めたドメイン 「0.5ミリ以下の薄板を、複雑な形状に精密加工する領域」
この定め方をすると、3つの意義がはっきり効いてきます。
❶ 注意の焦点が定まった 展示会では自動車業界だけでなく、医療機器や電子部品の薄板加工の引き合いにも目が向くようになりました。
❷ 蓄積すべき資源が見えた 「薄板の精密加工」で勝つには、金型の設計技術と測定機器への投資が要ると分かり、5年計画で手を打ちました。
❸ 一体感が生まれた 製造も営業も「うちは薄板屋だ」という共通の認識を持つようになりました。
現在の強み(長年の薄板加工の経験)と将来のあるべき姿(自動車に依存しない構成)の両方から挟み撃ちにして決めた結果です。
試験のポイント
簡単にいうと
「映画の製作」か「エンターテインメント」か。モノで決めるのが物理的定義、コトで決めるのが機能的定義。どちらにも長所と短所があるよ!
① 2つの定義の仕方
ドメインの定義として、物理的定義と機能的定義があります。
❶ 物理的定義
「モノ」を中心にドメインを発想するやり方です。「映画会社が自社の事業領域を『映画の製作』と定義する」というようなことがその例です。
デメリットとして、事業活動の展開範囲が狭くなり、現在の事業領域を超える発想が出にくいという点が挙げられます。
❷ 機能的定義
物理的定義が「モノ」を中心に発想したのに対し、機能的定義は「コト」「顧客のニーズ」を中心に発想します。「映画会社が自社の事業領域を『
簡単にいうと
ドメインは一度決めたら終わりじゃない。環境が変われば変える。しかも、社内だけじゃなく社外とも合意しておくのが大事なんだ!
① ドメインは変化させる必要がある
ドメインは環境変化に応じて変化させる必要があります。
第1章で学んだとおり、企業はオープンシステムであり、外部環境と絶えずやり取りしています。外の世界が変われば、かつて適切だった生存領域が適切でなくなることは当然起こります。
ドメインの見直しを怠ると、前のテーマで見たレンタルビデオ店の例のように、「強みを磨き続けた結果、その強みごと不要になる」という事態を招きます。
② ドメインコンセンサス
ここが試験でよく問われるところです。
ドメインの変更は、組織内部のみならず、組織外部とも合意(コンセンサス)を得ることが望まれます。
この、組織を取り巻くさまざまな相手との合意をドメインコンセンサスといいます。
③ なぜ外部との合意が必要なのか
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メリットは、事業における将来の発展可能性を感じさせる点です。その一方で、ドメインが抽象的になりすぎて、事業(製品)の性格が不明確になりやすいというリスクもあります。
② 比べてみる
| 物理的定義 | 機能的定義 | |
|---|---|---|
| 何を中心に発想するか | モノ | コト、顧客のニーズ |
| 例(映画会社) | 映画の製作 | エンターテインメント |
| 長所 | 事業の性格がはっきりする | 将来の発展可能性を感じさせる |
| 短所 | 現在の事業領域を超える発想が出にくい | 抽象的になりすぎ、事業の性格が不明確になりやすい |
③ どちらが正しいというものではない
試験では機能的定義のほうが「進んだ考え方」として扱われがちですが、機能的定義なら常に良いというわけではありません。
「人々を幸せにする事業」とまで抽象化してしまえば、何をやってもドメインの中に入ってしまい、ドメイン設定の3つの意義(焦点が定まる、資源蓄積の指針、一体感)がいずれも働かなくなります。
発展可能性を確保できる程度には広く、事業の性格が分かる程度には具体的に。この兼ね合いを取ることが、ドメイン設定の勘どころです。
④ 有名な指摘:マーケティング・マイオピア
物理的定義の弊害を指摘したものとして、セオドア・レビットのマーケティング・マイオピア(近視眼的マーケティング)という議論が知られています。
アメリカの鉄道会社が衰退したのは、自社の事業を「鉄道事業」(物理的定義)ととらえ、「輸送事業」(機能的定義)ととらえなかったからだ、という指摘です。顧客が求めていたのは鉄道そのものではなく、人や物を運ぶことだったのに、それを見誤ったというわけです。
具体例
同じ業種でも、定義の仕方でその後の展開がどう変わるかを見てみましょう。
物理的定義にとどまったB社(レンタルビデオ店) 自社を「ビデオやDVDを貸す事業」と定義していました。店舗網と在庫管理の仕組みを磨き続けましたが、動画配信が普及すると、その強みごと不要になりました。
機能的定義に切り替えたC社(同業) 自社を「休日の時間の過ごし方を提案する事業」と定義し直しました。その結果、映像ソフトの貸出だけでなく、書籍やカフェ、地域の暮らしの情報を組み合わせた店づくりへ展開でき、配信サービスの普及後も存続しています。
ただし、抽象化しすぎたD社 同じく機能的定義に切り替えましたが、「豊かな暮らしを提供する事業」としたため、飲食、旅行、保険代理店と手を広げ、いずれも中途半端に終わりました。どこに資源を蓄積すべきかが定まらなかったのです。
機能的定義が有効なのは、その領域で必要な資源が特定できる程度の具体性を保っているときだけ、ということが分かります。

ドメインの物理的定義と機能的定義
試験のポイント
企業は自分ひとりで存在しているわけではありません。顧客、取引先、金融機関、株主、従業員、地域社会といったステークホルダーとの関係のなかで活動しています。
ドメインを変えるということは、これらの相手に対して「自分はこういう存在だ」と示してきた内容を変えるということです。
| 相手 | 合意が得られないと何が起きるか |
|---|---|
| 顧客 | 「あの会社はこういう会社だ」という認識とズレ、離れていく |
| 取引先 | 従来の取引関係の前提が崩れ、協力が得られない |
| 金融機関 | 新しい領域の事業を評価できず、資金が出ない |
| 従業員 | 何のために働いているのかが分からなくなる |
| 株主 | 投資した前提が変わったとして反発する |
つまり、ドメインの変更は社内で決めれば済むものではなく、周囲に受け入れてもらってはじめて実現するということです。
④ 内部と外部、両方が必要
選択肢では「組織内部の合意だけでよい」という形で誤りが作られることがあります。内部のみならず外部とも、という点を正確に押さえてください。
なお、この考え方は第7章で学ぶ組織間関係論、とくに企業が外部の組織に資源を依存しているという資源依存モデルの発想とつながっています。外部と合意しなければならないのは、企業が外部に依存して生きているからにほかなりません。
具体例
老舗の醤油メーカーE社が、ドメインを広げたときの話です。
E社は「醤油の醸造」から「発酵を使った食の提案」へとドメインを広げ、調味料だけでなく発酵飲料や甘酒の商品化に踏み出しました。
内部の合意 全社員向けの説明会を半年かけて9回開きました。「醤油屋をやめるのではなく、醤油屋の技を広く使うのだ」という説明を重ね、製造部門の抵抗を解いていきました。
外部の合意 ここに手間をかけました。
・取引先の問屋には、既存の醤油の供給を減らさないことを先に約束しました
・地元の農協には、原料の調達量が増えることを説明し、契約栽培の枠を広げました
・取引銀行には、新設備の投資計画と回収見込みを数字で示しました
・顧客に対しては、新商品のラベルに創業年と醸造蔵の写真を入れ、「あの醤油屋が作っている」と分かる形にしました
結果として、新商品は3年で売上の18%を占めるまでになりました。E社の社長は「社内を説得するより、外を説得するほうが時間がかかった」と振り返っています。ドメインコンセンサスが単なる建前ではないことが分かる話です。
試験のポイント
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