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テキスト/企業経営理論/ドメインの概要

ドメインの概要

企業戦略(成長戦略)

ドメインとは企業の「生存領域」や「事業展開の範囲」を意味します。物理的定義と機能的定義の違いを押さえ、ドメインの基本的な概念を理解しましょう。

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ドメインの概要

簡単にいうと

「うちの会社は何屋さん?」——この問いに答えるのがドメインの設定です。

ドメインとは事業領域のことで、現在から将来にかけて企業の事業がどこにあるべきかを示した生存領域です。ドメインの設定範囲は、狭すぎると顧客ニーズへの対応が困難になり、広すぎると経営資源が分散して多くの競合に巻き込まれるため、適切な範囲で定めることが不可欠です。

ドメイン設定には大きく3つの意義があります。

①【意思決定の焦点の確立】経営者をはじめとする意思決定者の関心が集中するポイントが明確になり、事業展開のアイデアを生み出す土台が形成されます。

②【経営資源蓄積の方向づけ】どの分野にどのような資源を蓄えるべきかの道しるべとなります。

③【組織の一体感の醸成】企業全体がひとつのまとまりとして機能するための求心力が生まれます。

ドメインを設定する際には、自社の経営資源から見てどの領域で強みを活かせるかという視点と、将来のありたい姿に向けて今後どの領域で活動し資源を蓄積すべきかという視点の両面から検討することが求められます。

具体例

富士フイルムは、もともと「写真フィルムメーカー」という物理的なドメインでしたが、「イメージング&情報」という機能的なドメインに再定義することで、化粧品や医療機器への展開が可能になりました。

試験のポイント

  • ドメイン設定の3つの意義(①意思決定の焦点、②資源蓄積の指針、③組織の一体感)は頻出です
  • また「ドメインは環境変化に応じて変化させる必要がある」「組織内外のコンセンサスが重要」という点も問われます
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物理的定義と機能的定義

簡単にいうと

ドメインの定め方には「モノ中心」と「コト中心」の2タイプがあります。どちらを選ぶかで企業の将来が変わります。

ドメインには物理的定義と機能的定義の2つの定め方があります。

【物理的定義】は「モノ」(製品や技術)を中心にドメインを発想する方法です。たとえば映画会社が自社の事業領域を「映画の製作」と定義するのが典型的な例です。事業の境界が明確で分かりやすいというメリットがありますが、以下のデメリットがあります。

・事業活動の展開範囲が狭くなりやすい

・現在の事業領域を超えた新しい発想が生まれにくい

・環境変化に対して柔軟に対応しにくい

【機能的定義】は「コト」すなわち顧客のニーズを中心にドメインを考える方法です。同じ映画会社であれば「エンターテインメントの提供」と定義するのがこれにあたります。機能的定義のメリットとデメリットは以下のとおりです。

〈メリット〉

・将来の事業発展の可能性が大きく広がる

・環境変化に柔軟に適応できる

〈デメリット〉

・ドメインが抽象的になりすぎる恐れがある

・ターゲットとなる顧客層や製品・サービスの特徴が不明確になりやすい

具体例

鉄道会社が「鉄道事業」と定義するのは物理的定義、「移動・交通サービス」と定義するのは機能的定義です。後者なら、バス、タクシー、MaaSアプリなどへの展開も自然にドメインに含まれます。

物理的定義(製品・技術ベース)と機能的定義(顧客ニーズベース)を比較し、鉄道事業と輸送サービス事業の例を示す図

ドメインの物理的定義と機能的定義

項目
物理的定義
機能的定義
発想の起点
製品・技術(モノ)
顧客ニーズ(コト)
具体例
「映画の製作」「鉄道事業」
「エンターテインメント」「輸送サービス」
メリット
事業の境界が明確で分かりやすい
将来の発展可能性が広がり、環境変化にも柔軟
デメリット
展開範囲が狭まり、新しい発想が出にくい
抽象的になりすぎ、ターゲット顧客・製品が曖昧に
環境変化への対応
変化に弱い
変化に適応しやすい

試験のポイント

  • 物理的定義と機能的定義の違い、それぞれのメリット・デメリットは必須です
  • レビットの「マーケティング近視眼」と結びつけて出題されることもあります
  • 物理的定義のデメリット(展開範囲の狭小化・発想の限定)と機能的定義のデメリット(抽象化によるターゲット不明確)を対比して整理しましょう
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ドメイン変化とドメインコンセンサス

簡単にいうと

ドメインは「決めたら終わり」ではありません。環境が変われば見直しが必要で、しかも社内外の合意形成がカギを握ります。

ドメインは一度決めたら終わりではなく、外部環境の変化に合わせて見直し・再設定していく必要があります。

その際に重要となるのが「ドメインコンセンサス」の概念です。ドメインを変更する場合には、組織の内部メンバーだけでなく、外部のステークホルダー(取引先・顧客・地域社会など)からも合意(コンセンサス)を得ることが望ましいとされています。内部と外部の双方がドメインの方向性を理解・納得していることで、事業転換がスムーズに進み、経営資源の調達や協力関係の維持が円滑になります。

具体例

ある食品メーカーが「加工食品の製造」から「健康な食生活の支援」へドメインを再定義する際、社員だけでなく取引先や顧客にも新しい方向性を共有し、合意を得ることで、スムーズな事業転換が実現しました。

試験のポイント

  • 「ドメインの変更には組織内外のコンセンサスが必要」という論点は試験で問われやすいポイントです
  • 内部だけでなく外部の合意も含まれる点に注意しましょう
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企業ドメインと事業ドメイン

簡単にいうと

ドメインには「会社全体の話」と「個別事業の話」の2つのレベルがあります。エーベルの3次元フレームワークを使えば、事業ドメインを立体的に整理できます。

複数の事業を展開する企業では、ドメインの設定は「企業ドメイン」と「事業ドメイン」の2つの階層で行われます。

【企業ドメイン】は、企業全体として展開していく事業の範囲、すなわち事業の組み合わせ(事業ポートフォリオ)を規定するものです。同時に、企業としてのアイデンティティ(同一性や基本的性格)を定めることでもあります。

【事業ドメイン】は、個々の事業ごとの範囲を規定するもので、具体的にはどのような顧客をターゲットとし、どのようなニーズを満たしていくかを明確にすることです。

事業ドメインを検討する有力なフレームワークとして、エーベル(Abell, D.F.)の3次元枠組みがあります。これは、①どのような顧客(customer)に対して、②どのような機能(function)を、③どのような技術(technology)によって提供するのか、という3つの軸でドメインを立体的に捉える考え方です。

具体例

ソニーは企業ドメインとして「エレクトロニクス・エンタテインメント・金融」を掲げ、各事業ドメインとしてゲーム、音楽、映画、保険などを個別に定義しています。

項目
企業ドメイン
事業ドメイン
対象
企業全体
個別の事業
規定する内容
事業の組み合わせ(ポートフォリオ)
特定事業の顧客・ニーズ・技術
関連概念
アイデンティティ・基本的性格
エーベルの3次元枠組み
視点
どの事業をどう組み合わせるか
誰に・何を・どうやって提供するか

試験のポイント

  • 企業ドメイン=事業ポートフォリオの規定、事業ドメイン=個別事業の範囲規定という違いを明確にしましょう
  • エーベルの3次元(顧客・機能・技術)は頻出論点です
  • また、事業ポートフォリオの決定に影響するのは企業ドメインであり、事業ドメインではない点が引っかけで出題されます

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