組織間関係論
組織構造論
組織が外部環境とどのように関わるかを分析する理論です。資源依存モデルと取引コストアプローチの2つの視点を学びます。
資源依存モデル
簡単にいうと
組織は外部から資源を調達しないと生きていけません。だから外部との「依存関係」をどう上手にコントロールするかが組織の生命線になります。依存度を決める要因と、その対処戦略の体系を押さえましょう。
組織は外部環境から諸資源を獲得し、それらを財やサービスの形に変換して外部環境に提供することで存続しています。このため、資源を提供してくれる外部組織への依存が不可避となり、その依存度が高いほど組織の自律性は低下します。資源依存モデル(J.フェファーとG.サランシックが提唱)は、組織間の資源取引に着目し、焦点組織がどのように資源取引関係を管理していくかを考察する理論です。
資源依存度の決定要因
焦点組織が外部組織に対してどの程度依存しているかは、以下の3つの要因によって決まります。
| 決定要因 | 内容 | 具体例 |
|---|---|---|
| ①資源の重要性 | 焦点組織にとってその資源がどれほど不可欠かという度合い。重要性は「資源の相対的規模」と「資源の必須性」の2つの側面から判断される。 | 木材加工業にとっての木材や原料は相対的規模が大きく重要性が極めて高い。電力は支出に占める割合が小さくても代替不可能なため必須性が高い。 |
| ②資源の配分・使用法に対する自由裁量の程度 | 外部組織がその資源の配分や使い方をどの程度自由にコントロールできるかという度合い。外部組織が取締役会メンバーを送り込める立場にあれば、予算編成を通じて資源配分に大きな影響力を持つ。 | 焦点組織の取締役会に出資者の代表が参加している場合、その出資者は資源配分に対する裁量権が大きくなる。 |
| ③資源コントロールの集中度 | 焦点組織が必要な資源を1つの外部組織からしか入手できない場合、その外部組織への依存度は極めて高くなる。調達先が複数あれば集中度は低下し、依存度も下がる。 | ある部品を1社からしか仕入れられなければ依存度は最大となるが、5社から調達可能なら特定の1社への依存度は大幅に低下する。 |
補足:資源の重要性を測る2つの尺度
- 資源の相対的規模:焦点組織が外部環境と取引する全資源の総量に占める、特定の資源の取引量の比率。石油精製企業にとっての原油など、取引量の大きな資源ほど重要性が高い。
- 資源の必須性:取引量が少なくても、それなしでは組織の活動自体が成り立たない場合、必須性が高いと判断される。例えば電力は支出割合が小さくても操業に不可欠であるため、必須性は高い。
資源依存関係のマネジメント戦略
焦点組織の外部組織に対する資源依存度が高いほど、その外部組織は焦点組織に対してパワーを行使できるようになります。焦点組織は自律性を確保するために、資源依存関係を戦略的に管理する必要があります。マネジメント戦略は大きく2つに体系化されます。
| 戦略分類 | 方針 | 具体的手法 | 内容 |
|---|---|---|---|
| ①資源依存関係そのものを回避する戦略 | 依存構造自体を解消・軽減する | 代替的取引関係の開発 | 特定の供給源に依存している場合、供給元を複数確保したり、同じ機能を果たす代替資源に切り替えたりする(例:天然ガスから石油への転換)。 |
| 多角化 | 異なる事業分野へ進出して新たな資源を活用できるようにし、特定の事業や資源への必要度を相対的に低下させる。 | ||
| ②資源依存を認めつつ他組織からの支配を回避する戦略 | 依存関係は維持しつつ、相手からのコントロールを最小限に抑える | 交渉 | 組織間の財・サービス取引に関して合意を目指した折衝を行い、将来の行動について双方が納得する条件を取り決める。 |
| 包摂(コーオプテーション) | 利害関係者の代表を自社の取締役会等に参加させることで、外部からの脅威を内部に取り込み、支配を和らげる。P.セルズニックが提唱した概念。 | ||
| 結託(コアリション) | 複数の組織が協力関係を結び、共同で外部環境に対応する。業界団体の形成やジョイントベンチャーなどが該当する。 |
具体例
特定の1社にだけ部品を依存していた企業が、リスク分散のために複数の調達先を開拓するのは資源依存関係の回避戦略です。また、取締役会に仕入先の代表者を加える「包摂」も、依存関係をコントロールする代表的な手法です。
試験のポイント
- ・資源依存度の3つの決定要因(重要性=相対的規模+必須性、裁量の程度、集中度)の具体例をセットで覚えましょう
- ・マネジメント戦略は「回避戦略=代替的取引・多角化」と「支配回避戦略=交渉・包摂・結託」の2分類で整理すると得点しやすくなります
- ・包摂(コーオプテーション)はセルズニックの概念として出題されることもあります
取引コストアプローチ
簡単にいうと
取引するには「モノの値段」以外にも、相手探しや交渉、契約後の管理といった隠れたコストがかかります。このコストが大きいなら自社でやったほうがいい?それとも外注?——その判断の枠組みが取引コストアプローチです。
取引コストアプローチは、O.E.ウィリアムソンが体系化した理論で、市場での取引には価格そのもの以外にもさまざまな費用(取引コスト)が発生するという考え方に基づいています。組織の境界を決定する際に、取引コストの大小が重要な判断材料になるとされます。
取引コストの4つの内容
取引コストとは、取引そのものに付随する費用であり、売り手側・買い手側の双方に発生します。具体的には以下の4種類に分類されます。
| 番号 | 取引コストの種類 | 内容 |
|---|---|---|
| ① | 情報収集・分析コスト | 取引に必要な価格情報や品質情報を集め、比較・分析するためにかかる費用 |
| ② | 探索・評価コスト | 適切な取引相手を見つけ出し、その相手の信頼性や能力を評価するための費用 |
| ③ | 交渉・契約コスト | 取引相手との条件交渉から契約締結に至るまでの一連の費用 |
| ④ | 監視・管理コスト | 契約成立後に、取引相手が契約内容を適切に履行しているかを確認・管理するための費用 |
取引コストを上昇させる5つの要因
以下の条件が当てはまるほど、取引コストは増大します。
| 番号 | 上昇要因 | 説明 |
|---|---|---|
| ① | 取引環境の不確実性・複雑性 | 将来の環境変化が予測しにくい場合や、取引内容が複雑な場合、契約で全ての事態を想定することが難しくなり、コストが増加する |
| ② | 情報の非対称性 | 取引当事者間で保有する情報量に格差がある場合、情報劣位の側は追加の調査・確認に費用がかかる |
| ③ | 取引参加者の少なさ(少数性) | 取引可能な相手が限られている場合、競争原理が働きにくくなり、不利な条件を強いられやすくなる |
| ④ | 機会主義的行動 | 取引当事者が自分に有利になるよう駆け引きを行う傾向が強い場合、防衛のためのコストが発生する。ウィリアムソンはこれを「限定された合理性」のもとで生じる行動と位置づけた |
| ⑤ | 関係特殊的投資の多さ | 特定の取引相手との関係のためだけに行われた投資(専用設備や専門人材の育成など)が大きいほど、他の相手に乗り換えるコストが高くなり、依存関係が深まる |
内部化と外部化の選択基準
取引を組織内部で行う(内部化=ヒエラルキー)か、市場を通じて外部の組織と取引する(外部化=マーケット)かの判断基準は、取引コストの大小に基づきます。
| 条件 | 選択 | 理由 |
|---|---|---|
| 取引コストが高い場合 | 内部化(自社内製・垂直統合) | 市場取引では機会主義的行動や交渉コストが膨大になるため、組織内部で管理したほうが効率的 |
| 取引コストが低い場合 | 外部化(市場取引・アウトソーシング) | 市場の競争メカニズムが有効に機能するため、外部から調達するほうが効率的 |
| 取引コストが中程度の場合 | 中間組織の活用 | 完全な内部化でも完全な外部化でもない形態を採用する。関連会社・系列グループ・フランチャイズ・長期契約・合弁事業などがこれに該当する |
注意点:内部化すれば取引コストは削減できますが、代わりに組織内部の管理コスト(内部取引コスト)が発生します。部門間の調整や官僚的手続きなどがこれにあたります。したがって、「取引コストと管理コストの合計」が最小になる組織形態を選択することが合理的とされます。
ウィリアムソンは、市場(マーケット)と組織(ヒエラルキー)を両極端とし、その間に多様な中間的形態が存在するという「市場と組織の連続体」の考え方を示しました。
具体例
特定の部品を供給できる企業が極めて少ない場合、市場で取引すると供給側が強い立場を利用して機会主義的に振る舞う恐れがあります。このとき取引コストは高騰するため、自社で内製化(内部化)するほうが全体として効率的になります。逆に多くのサプライヤーが存在する標準部品であれば、市場取引(外部化)のほうがコストを抑えられます。
試験のポイント
- ・取引コストの4つの内容(情報収集・探索・交渉・監視)と5つの上昇要因(不確実性・情報の非対称性・少数性・機会主義・関係特殊的投資)は数と内容をセットで暗記しましょう
- ・内部化・外部化の判断基準は「取引コストが高ければ内部化、低ければ外部化、中程度なら中間組織」と覚えると整理しやすいです
- ・ウィリアムソンの名前もあわせて押さえてください
独学で診断士合格を目指すなら
過去問演習・AI添削・テキストPDFまで
すべて揃ったプレミアムプランで合格を掴む!
予備校代の1/10以下で、独学の不安をまるごと解決
- 📝1次試験 過去問演習(全7科目・年度別)無制限プレミアム限定
- 🤖2次試験 AI添削(事例I〜IV・無制限)最適なフィードバックで実力アッププレミアム限定
- 📄科目別テキストPDFダウンロード。印刷して好きな使い方で学習できるプレミアム限定
- 🔖ブックマーク機能で苦手分野・何度も確認したい部分を管理プレミアム限定
- 📊学習記録・成績管理で自分の進捗を可視化プレミアム限定
プレミアムプラン
¥9,800(税込)
自動更新なし / 1年間有効
決済は Stripe(PCI-DSS準拠)で安全に処理されます。カード情報は当サービスに保存されません。