組織行動論
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プレミアムで見る組織図に描かれている部署だけが組織ではありません。同期の集まり、喫煙所の顔ぶれ、昼食をともにする仲間。こうした自然に生まれた集団も、実際の仕事に大きく影響します。この節では、公式の組織と非公式の集団、そして組織を小集団の連なりとしてとらえる連結ピン・モデルを押さえます。
簡単にいうと
組織図に載っているのがフォーマル、自然に生まれたのがインフォーマル。「インフォーマルも大事だ」というのが、この節の主張だよ!
① 組織の中の集団
組織を作っているのは、さまざまな個人であり、職場ごとの集団です。人が何人か集まれば、そこには集団ならではの力が働きます。そして個人どうし、あるいは職場集団どうしのあいだには、コンフリクト(葛藤)が必ず生まれます。組織を動かす立場に立つなら、この2つを分かっておく必要があります。
② 2つの組織
経営組織のなかには、フォーマル組織(公式組織)とインフォーマル組織(非公式組織)の両方があります。かつての管理は前者だけを相手にしていましたが、いまは後者の働きも重く見るべきだと言われるようになりました。
| 定義 | |
|---|---|
| フォーマル組織(公式組織) | ルールに基づいて編成され、公に認められた組織 |
| インフォーマル組織(非公式組織) | フォーマル組織の中に自然発生的に生まれた集団 |
定義の違いは、誰が作ったかにあります。
・フォーマル組織……ルールに基づいて編成される(意図的に作られる)
・インフォーマル組織……自然発生的に生まれる(誰も作ろうとしていない)
具体例
従業員230人の食品工場で起きた出来事です。インフォーマル組織の力が、良い方にも悪い方にも働きました。
フォーマル組織 組織図には、製造課、品質保証課、物流課、管理課が並んでいます。ルールに基づいて編成され、公に認められた組織です。
インフォーマル組織 一方、現場では次のような集団が自然にできていました。
・入社年次の近い30代のグループ(部署をまたぐ)
・同じ地区から通勤する相乗りグループ
・工場の喫煙所に集まる顔ぶれ
・子育て中の従業員の情報交換グループ
誰も作ろうとしていません。自然発生的に生まれたものです。
悪い方に働いた場面 新しい生産管理システムの導入が発表されたとき、「入力の手間が倍になるらしい」という話が相乗りグループを通じて1日で全工場に広がりました。
実際には入力項目は減る予定でしたが、誤った情報が公式の説明より速く回ったのです。説明会のときには、すでに反対の空気ができあがっていました。
良い方に働いた場面 工場長はこれを教訓に、やり方を変えました。
・システム導入の検討段階から、各インフォーマル集団に顔の広い人を5名選び、先に情報を伝えて意見を聞くようにした
・その5名が、それぞれの集団の中で正確な情報を伝えていった
結果として、次のシステム更新のときは混乱なく導入できました。

フォーマル組織・インフォーマル組織と連結ピン
試験のポイント
簡単にいうと
組織は小集団の集まり。その集団どうしをつなぐのがリーダー。リーダーは自分の集団のトップであり、上の集団のメンバーでもある。この二重の立場が「連結ピン」だよ!
① 組織を小集団の集合として見る
組織は少人数の職場集団の集合であるととらえることができます。
複数の小集団は、分業化や専門化の原則に従って、より大きな集団にまとめられます。たとえば、係が課になり、課が部となって、それらの総体が組織となります。
第7章で学んだ階層分業を、「小集団が積み上がったもの」として見直した形です。
② 連結ピン・モデル
この組織と職場集団との関係を扱ったものに、リッカートの連結ピン・モデルがあります。
小さな集団を組織の構成単位と見て、その単位どうしを連結ピンでつなぐ。こう考えることで、集団のメンバーが参加する形の意思決定が進む、という主張です。
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③ 第7章とのつながり
第7章第1節で、バーナードによる組織の定義が「2人以上の人々の意識的に調整された活動および諸力の体系」だったことを思い出してください。
厳密には「意識的」に調整が行われる組織のことを公式組織といい、非公式組織と区別されます。第7章では公式組織だけを扱っていましたが、ここでインフォーマル組織が加わることになります。
④ インフォーマル組織が重視されるようになった背景
第1章で学んだメイヨーのホーソン実験を思い出してください。
作業条件よりも、職場の仲間との関係や「注目されている」という感覚のほうが生産性を左右するという結果が出ました。ここで見えたのが、まさにインフォーマル組織の働きです。
従来のフォーマル組織だけを対象にした管理だけでなく、インフォーマル組織の機能を重視した管理の必要性が指摘されているのは、この流れを受けたものです。
⑤ インフォーマル組織の働き
インフォーマル組織は、組織にとって良い面と悪い面の両方を持ちます。
| 良い面 | 悪い面 | |
|---|---|---|
| 情報 | 公式の経路より速く情報が伝わる | 誤った情報も速く広がる |
| 人間関係 | 帰属感が満たされ、定着につながる | 派閥ができ、対立を生む |
| 仕事 | 部署を越えた助け合いが生まれる | 公式の指揮系統を無視した動きが出る |
| 規範 | 望ましい行動が自然に広がる | 生産を抑える規範が広がることもある |
最後の点は実際にホーソン実験で観察されたもので、「頑張りすぎるとノルマを上げられる」という考えから、集団として生産量を抑える規範が生まれていました。
インフォーマル組織を管理の対象として重視するというのは、その存在を認めたうえで、良い面が働くように関わるということを意味します。
インフォーマル組織の機能を重視した管理とは、こういうことです。つぶそうとするのでも、無視するのでもなく、存在を認めたうえで情報の経路として活かしたわけです。
生産を抑える規範が生まれた例 なお、この工場でも以前、「早く終わらせると次の仕事を振られる」という考えから、ある班が意図的にペースを落とす状態がありました。
これもインフォーマル組織の規範です。手が空いた人に仕事を追加するという運用を見直し、早く終わったぶんは早く帰れるようにしたところ、解消しています。
連結ピンは、組織のなかの集団どうしをつなぎ止める役です。上下左右のコミュニケーションセンターとして働きます。これを担うのは、管理者や監督者といったリーダーです。
定義のなかで押さえたいのは次の点です。
・組織内の集団間をつなぎとめる
・上下左右のコミュニケーションセンターとしての役割
・この機能を果たすのは管理者・監督者などのリーダー
上下だけでなく左右も含まれている点に注意してください。縦の連携だけでなく、同じ階層の集団どうしをつなぐ役目も担います。
④ 二重の立場
連結ピンの要は、リーダーが2つの集団に同時に属していることです。
たとえばある課長は、
・課という集団のリーダーである
・同時に、部という集団のメンバーでもある
この二重の立場があるからこそ、課で出た意見を部に持ち上げ、部の決定を課に持ち帰ることができます。
図では、三角形が階層的に重なり、各三角形の頂点が上の三角形の一員として描かれます。矢印が上下左右に伸びているのが連結ピン機能です。
⑤ 何がねらいか
集団のメンバーの参画による意思決定が促進されるというのがねらいです。
上から下への一方的な指示ではなく、各集団の意見が上に届く経路を制度として組み込む、ということです。
第7章第2節で学んだコミュニケーションの3方向(上から下/下から上/横やななめ)を思い出してください。連結ピンは、この3方向すべてを担う仕組みだといえます。
⑥ 管理者に求められるもの
このモデルから導かれるのは、管理者の役割は指示を出すことだけではないということです。
・下の集団の意見を吸い上げ、上に伝える
・上の決定の背景を、下に納得できる形で伝える
・隣の集団と調整する
このコミュニケーションセンターとしての働きが果たされないと、組織は階層ごとに分断されてしまいます。
具体例
従業員400人のメーカーで、連結ピン機能が働いている例と働いていない例を比べてみましょう。
連結ピンが機能していない部署
製造部のZ課長は、部長会で決まったことをそのまま課員に通達していました。
・上から下 「来月から検査項目が3つ増える。以上」
・下から上 課員が「その検査は前工程でやったほうが効率的だ」と言っても、「決まったことだから」と返すだけで、部長会には持ち上げない
・左右 隣の品質保証課とは、必要な連絡以外にやり取りがない
結果として、
・現場は「どうせ言っても変わらない」と発言しなくなった
・非効率な手順がそのまま1年続いた
・部長は現場で何が起きているか把握できなかった
Z課長は、課のリーダーではあっても、連結ピンにはなっていません。
連結ピンが機能している部署
同じ会社の物流部のA課長は、違う動き方をしていました。
下から上 課の朝礼で出た「トラックの待機時間が長い」という声を、データにまとめて部長会に持ち込みました。その結果、入荷の時間割が見直されます。
上から下 部長会で決まったコスト削減方針を伝えるとき、結論だけでなく「なぜそうなったか」という背景まで説明しました。課員は納得したうえで動けます。
左右 隣の製造課の課長と月2回の昼食会を設け、互いの困りごとを共有していました。「製造の段取り替えの時間を10分ずらせば、積み込みが楽になる」という調整が、この場から生まれています。
上下左右のコミュニケーションセンターとしての役割が果たされている姿です。
成果の違い 2年間で、物流部からは17件の改善提案が実行に移されました。製造部はゼロです。
集団のメンバーの参画による意思決定が促進されるとは、こういうことです。そしてそれを決めているのは、制度ではなくリーダーが連結ピンとして機能しているかどうかでした。
試験のポイント
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