組織行動論
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プレミアムで見る人が集まると、一人ひとりのときには現れなかった性質が生まれます。まとまりが強くなるほど同調の圧力が働き、そのまとまりが行きすぎると、集団としての判断がかえって浅くなる。この節では、集団特有の現象と、組織に必ず生じるコンフリクト(葛藤)への対処を押さえます。コンフリクトは悪いものとは限らない、という点が理解の出発点です。
簡単にいうと
まとまりが強いほど、同調の圧力も強くなる。それが行きすぎると、集団で決めたほうがかえって短絡的になる。これが集団浅慮(グループシンク)だよ!
① グループダイナミクスとは
多様な個人が小集団を形成すると、個人や組織には見られない固有の特性が発生します。
たとえば、集団の中では独自の集団基準や集団規範が形成され、各メンバーに対してそれに従うよう圧力が生じたりします。
この集団特有の力学をグループダイナミクス(職場集団の行動様式)といいます。
② 集団の凝集性
集団の凝集性とは、集団の各メンバーが互いに惹き合う程度(集団の団結の度合い)のことです。
集団の中では独自の集団基準や集団規範が形成されますが、集団の凝集性が高いほど、集団メンバーに対してこれらに従うよう圧力が働きます。
凝集性が高いことは、一見よいことのように思えます。実際、まとまりのある職場は働きやすく、離職も少なくなります。
しかし同時に、従うよう圧力が働くという面も強まります。違う意見を言いにくくなる、ということです。
③ 外部からの脅威は凝集性を高める
過去問では、次の記述が正しいものとして出題されています。
『集団に対する外部からの脅威は、集団の凝集性を高め、個人が集団の価値と一体化する可能性を高める』
外から攻められると、内側の結束が強まるということです。これは日常的にもよく見られる現象です。
④ 集団浅慮(グループシンク)
具体例
ある企業の新規事業の検討会議で、集団浅慮が起きた例を見てみましょう。
メンバーの顔ぶれ 社長と、社長が引き上げた役員4名。全員が15年以上同じ会社にいて、互いに気心が知れています。
3つの条件が揃っていた
・外部と隔絶している……社外取締役はおらず、外部のコンサルタントも入れていない
・凝集性が高い……「うちのチームは結束が固い」が自慢だった
・ストレッサーがある……主力事業の売上が2年続けて減少しており、「何かしなければ」という焦りがあった
何が起きたか
・自集団に対する過剰評価……「うちの技術力なら、この分野でも通用する」と根拠なく信じた
・閉鎖的な発想法……「その市場はすでに飽和している」という調査会社の指摘を「業界を分かっていない」と退けた
・画一性や同調への圧力……1人の役員が懸念を述べたが、「せっかく前向きに進んでいるのに」という空気に押されて取り下げた
・挑発的な外部環境の知覚……「競合はもう動いている。我々も急がなければ」
結論がグループシフトした 当初は「まず小さく試す」という案だったのに、議論を重ねるうちに「40億円を投じて一気に参入する」という結論になりました。

コンフリクト対処の5類型
試験のポイント
簡単にいうと
コンフリクトは悪者じゃない。活性化や新しい価値を生むこともある。対処は「自己主張的か」「協力的か」の2軸で5類型。図の位置ごと覚えよう!
① コンフリクトとは
コンフリクトとは、葛藤、対立、紛争などと訳されますが、それは相対立する目標、態度、行動などから生まれる葛藤のことです。
コンフリクトは、個人内、個人間、集団内、集団間、組織間などあらゆるレベルで不可避的に発生します。
個人内のコンフリクトも含まれる点に注意してください。自分の中で2つの気持ちがぶつかる状態も、コンフリクトです。
② コンフリクトは悪いものとは限らない
ここがこの節の最も重要な論点です。
コンフリクトと聞くと、悪い面ばかりが目につきます。しかし組織のなかに違う見方が存在することは、組織を活気づけ、新しい価値を生むことがあります。だから、抑え込むのではなく積極的に使う管理が望まれます。
「コンフリクトをなくすべきだ」という前提で書かれた選択肢は、この記述と食い違うことになります。
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集団浅慮とは、(個人ではなく)集団で意思決定を行うと、かえって短絡的に決定がなされてしまうという現象のことを指します。
「みんなで考えたほうがよい結論が出る」という常識に反して、集団で決めたほうがかえって浅い判断になることがある、というわけです。
⑤ 集団浅慮が起きる条件と要因
起きやすい条件は3つです。
| 条件 | |
|---|---|
| ① | 集団が外部と隔絶している |
| ② | 集団の凝集性が高い |
| ③ | ストレスをもたらす要素(ストレッサー)がある |
そして、集団浅慮は、自集団に対する過剰評価、閉鎖的な発想法、画一性や同調への圧力、挑発的な外部環境の知覚によってもたらされます。
4つの要因を並べると、いずれも外の情報が入らず、内側の意見が一色になるという方向を向いています。
⑥ グループシフトとリスキーシフト
そうして出された結論が極端に振れることをグループシフトと呼びます。振れる向きは2つ。極端にリスクを取る側(リスキーシフト)と、極端に慎重になる側です。
ここが試験でよく問われます。
| 用語 | 中身 |
|---|---|
| グループシフト | 集団で出された結論が極端なものになること |
| リスキーシフト | そのうち極端にリスクの高いものになる場合 |
グループシフトが大きい概念で、リスキーシフトはその一方向です。極端に慎重になる方向(コーシャスシフトと呼ばれます)もあるという点を落とさないでください。
「集団で決めると必ずリスクの高い結論になる」という選択肢は不正確です。極端になるのは確かですが、リスクの高いほうに振れるとは限りません。
⑦ ホーソン効果
1924〜1932年にウェスタン・エレクトリックのホーソン工場において実施されたホーソン研究によって見出されたものです。
さまざまな作業条件のもとで労働者を観察したところ、作業環境を悪くしても生産性が上がるという結果が出ました。ここから導かれたのが、人は注目されたり期待されたりすると成果を上げる、という見方とされます。
第1章で学んだメイヨーの人間関係論の土台になった研究です。作業環境を悪化させても生産性が向上したという点が、当時の常識をくつがえしました。
⑧ ホーソン研究の4つの結論
ホーソン研究では、人は意識的、または無意識的に団結し協力するということが見いだされました。より具体的な要因としては、次の4つが結論づけられています。
| 結論 | |
|---|---|
| ① | 労働者の行動と感情は密接に関連していること |
| ② | 集団は個人の行動に影響を与えること |
| ③ | 集団の基準は個々の労働者の生産性を決定するうえで大きな影響力をもつこと |
| ④ | 労働者の生産性を決定する要因は金よりも集団基準や感情、安心感などであること |
④の「金よりも集団基準や感情、安心感」という結論は、第2節で学んだハーズバーグの「給与は衛生要因」や、第4節の「外的な報酬は内発的動機づけを低下させる」という後の議論につながっていきます。
もし逆方向だったら 同じ会議体でも、過去に大きな失敗を経験していれば、「やはり何もしないのが安全だ」という極端に慎重な結論に振れることもあります。こちらもグループシフトです。
この会社が後に変えたこと
・社外取締役を2名迎えた(外部との隔絶を解く)
・重要な議案では、あえて反対の立場から検討する役を1名決めた
・結論を出す前に、必ず1回持ち帰る運用にした
凝集性が高いこと自体は悪くありません。問題は、凝集性の高さが異論を言えない圧力に変わることです。だから対策は、異論が出る経路を制度として用意することになります。
第7章で学んだローレンス&ローシュを思い出してください。不確実性が高い環境で業績の高い企業ほど分化の程度が高く、分化から生まれるコンフリクトを解消するために高度な統合機能をもっているとされていました。
つまり、コンフリクトが多いこと自体は、環境に適応している証拠でもあるわけです。
③ コンフリクトの発生要因
コンフリクトは、主に次のような場合に発生します。
| 発生要因 | |
|---|---|
| ① | 組織内の限られた資源の配分について関係者間での合意が形成されない場合 |
| ② | 互いが自立性を求めたり、パワー(ある個人や集団に何かをさせたり、何かをさせない力)を確保したりしようと意図した場合 |
| ③ | 組織内の個人や作業集団間で共通の目標を確立するに至らず、協力関係が成立しない場合 |
| ④ | 互いの部門(あるいは担当者)が相互依存的な関係にある場合 |
| ⑤ | タスク不確実性が高い場合 |
④ 統合すればコンフリクトが減るとは限らない
過去問では、次の記述が誤りとして出題されています。
『コンフリクトを解消するには、コンフリクトを起こしている両部門を1つの部門に統合することを通じて、相互依存を認識しなくては意思決定できないようにし、予算や人件費を削減する』
相互依存の度合が高ければ、やり取りが増加し、予算や人件費の削減は獲得競争の原理が働きます。ともにコンフリクトの増加要因です。
発生要因の④(相互依存的な関係)と①(限られた資源の配分)を思い出してください。この記述は、両方の要因をわざわざ強めることを提案していることになります。
⑤ コンフリクトへの対処(5類型)
対処の仕方は、2つの物差しで5つに分けられます。ひとつは自分の利益をどれだけ押し通すか(自己主張的の高低)。もうひとつは相手の利益を認めてどれだけ協力するか(協力的の高低)。この2軸から、回避・競争・協調・妥協・適応の5類型が出てきます。
2軸で整理すると、次のようになります。
| 協力的:低 | 協力的:高 | |
|---|---|---|
| 自己主張的:高 | 競争 | 協調 |
| 自己主張的:低 | 回避 | 適応 |
そして、まん中に「妥協」が位置します。
⑥ 5つの中身
❶ 競争
自分の利益を最大限に主張し、相手の利益は認めないという対処策です。一方的な勝利を目指すため、長期的な関係が損なわれる可能性が高まりますが、それでもよいと考える際に採用されやすくなります。
❷ 回避
自己主張的ではないが、協力的ではない対処策です。問題解決の先延ばしともいえます。
自分も主張せず、相手にも協力しない。何もしない、という対処です。
❸ 妥協
自分の利益も相手の利益も最大化することなく、ある程度ずつ獲得することをねらう対処策です。
対立に対し特別な対策をとらなければ、お互いにある程度ずつの利益を確保し、ある程度ずつの犠牲も払う、という自然解消の形が取られやすくなります。
❹ 協調
自己主張も行うが、相手の利益も尊重する対処策です。
高い職位の人間が弱い職位の人間に、「あなたの利益を最大限に確保するから自分に協力しなさい」というスタンスをとることがあります。
❺ 適応
自分の利益を捨てて、相手の利益を最大限に尊重する対処策です。
⑦ 覚え方
5つの位置は、2軸の組み合わせから導けます。
・競争……自分だけ主張する(自己主張的・高/協力的・低)
・適応……相手だけ立てる(自己主張的・低/協力的・高)
・協調……両方立てる(両方・高)
・回避……どちらも扱わない(両方・低)
・妥協……中間(両方・中)
競争と適応が正反対、協調と回避が正反対。この対角線の関係で覚えると、図を再現しやすくなります。
具体例
製造部と営業部のあいだで起きたコンフリクトに、5つの対処すべてが順番に現れた例です。
対立の中身 大口顧客から「納期を2週間前倒ししてほしい」という要請がありました。
・営業部……受けたい。断れば取引を失う
・製造部……受けられない。他の顧客の納期が崩れ、残業も増える
発生要因を確認すると
・限られた生産能力の配分について合意がない(要因①)
・営業と製造は相互依存的な関係にある(要因④)
・どこまで前倒しできるか誰にも分からない(要因⑤ タスク不確実性)
第1段階:回避 両部長とも、最初の2週間は何も動きませんでした。「そのうち顧客のほうが折れるだろう」問題解決の先延ばしです。その間に状況は悪化しました。
第2段階:競争 営業部長が社長に直訴し、「製造部が非協力的だ」と主張しました。自分の利益を最大限に主張し、相手の利益は認めない対処です。
製造部長との関係は明らかに悪化しました。長期的な関係が損なわれるという典型的な副作用です。
第3段階:適応 社長の裁定で製造部が折れ、前倒しを受け入れました。自分の利益を捨てて、相手の利益を最大限に尊重する形です。
結果として、製造現場では月80時間の残業が発生し、3名が体調を崩しました。他の顧客2社の納期も遅れています。
第4段階:妥協 次に同じ話が出たとき、「10日前倒しで手を打つ」という決着になりました。お互いにある程度ずつの利益を確保し、ある程度ずつの犠牲も払う形です。
悪くはありませんが、根本の問題は残ったままでした。
第5段階:協調 ここでようやく、両部長が本気で向き合いました。
・営業は、受注の見込み情報を2か月前から製造に流すことにした
・製造は、その情報をもとに繁忙期の人員計画を事前に組むことにした
・前倒し要請には、追加料金を設定して顧客に提示することにした
自己主張も行うが、相手の利益も尊重する対処です。
ここが重要 この協調案は、コンフリクトがあったからこそ生まれました。対立がなければ、受注情報の共有という仕組みは作られなかったはずです。
組織内のさまざまな見解の存在は、組織の活性化や新しい価値の創造に貢献することがあるというのは、こういうことです。
試験のポイント
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