組織行動論
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プレミアムで見る報酬がなくても、人が仕事に打ち込むことがあります。仕事そのものが面白い、できるようになるのが嬉しい、自分で決められるのが心地よい。こうした動機は、外から与えられるものではなく内側から湧いてきます。この節では内発的動機づけ理論を扱います。外的な報酬がかえって意欲を下げるという指摘や、職務特性モデルの5つの特性は、近年よく問われる論点です。
簡単にいうと
報酬がなくても動くのはなぜか、を説明する理論。面白いからやる、できるようになるのが嬉しいからやる。しかもお金を出すと、かえってやる気が下がることがあるんだ!
① 内発的動機づけ理論とは
内発的動機づけ理論とは、過程理論では説明できないような、明白な報酬のない、あるいは業績と報酬が明確な対応関係にないような達成行動について説明するものです。
人は目に見える報酬が与えられない仕事にも意欲的に取り組むことがあり、このような場合、報酬に相当するような感覚を自分自身の内部から引き出しています。
前節の過程理論は、いずれも報酬を動機づけの要因としていました。ところが現実には、報酬がなくても人は動きます。過程理論では説明できない部分を説明するのが、この理論です。
② 内発的動機づけ要因
| 内発的動機づけ要因 | |
|---|---|
| ① | 仕事そのものの面白さや楽しさ |
| ② | 仕事に従事することから得られる有能感や満足感 |
| ③ | 自己決定の感覚 |
3つとも、自分の内部から湧いてくるものです。
具体例
地域の図書館で、子ども向けの読み聞かせをしているボランティアの例です。外的な報酬が内発的動機づけを下げるという現象が、実際に起きました。
当初の状態(内発的動機づけ) 12人のボランティアが、毎週土曜に無償で読み聞かせをしていました。
・仕事そのものの面白さや楽しさ……子どもの反応を見るのが楽しい
・有能感や満足感……声の出し方が上達していくのが分かる
・自己決定の感覚……読む本も演出も、自分たちで自由に決められる
参加率は9割を超え、自主的に勉強会まで開くようになっていました。
謝礼を導入した(外的報酬) 図書館が予算を確保し、1回あたり2,000円の謝礼を出すことにしました。善意のつもりでした。
何が起きたか
・「2,000円なら、準備にかける時間はこれくらいでいいか」という会話が出るようになった
・読む本の選定に時間をかけなくなった
・「今月は都合がつかないので」という欠席が増えた
「楽しいからやる」が「2,000円のためにやる」に変わったのです。
決定的だったこと 翌年度、予算が削られて謝礼が1,000円に減額されました。すると、12人のうち5人が辞めてしまいました。
無償のころは誰も辞めなかったのに、です。

内発的動機づけの3つの要因
試験のポイント
簡単にいうと
職務そのものに5つの特性があると、内発的に動機づけられる。技能多様性・タスク完結性・タスク重要性・自律性・フィードバック。フィードバックが「人からではない」のがポイント!
① 職務特性モデルとは
職務特性モデルとは、職務の特性そのものが人の仕事意欲にかかわることを取り上げたものであり、具体的には以下の5つの特性がある場合に、内発的に動機づけられるとしています。
② 5つの特性
| 特性 | 中身 | |
|---|---|---|
| ① | 技能多様性 |
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③ 自己決定の感覚
3つ目の自己決定の感覚は、「自分で決めている」という感覚そのものが動機になる、ということです。
同じ作業でも、
・指示されてやる → 動機づけが弱い
・自分で選んでやる → 動機づけが強い
という違いが生まれます。第7章で学んだエンパワーメントや、前節のマグレガーの目標管理制度(MBO)が効くのは、この感覚を高めるからだと説明できます。
④ 外発的動機づけ要因
金銭に代表される他人(自分自身の外部)からもたらされるものです。
⑤ 外的な報酬は内発的動機づけを下げる
ここが最も重要な論点です。
内発的動機づけ理論では、外的な報酬はむしろ内発的動機づけを低下させるので好ましくないとしています。
面白いからやっていたことに対して報酬を出すと、「報酬のためにやっている」という意味づけに変わってしまうのです。そして報酬がなくなると、やらなくなります。
⑥ ただし言語報酬は例外
ただし、外的な報酬のひとつである言語報酬(賞賛など)についてはそのようなことはないとしています。
言語報酬とは、ほめ言葉のことです。
| 内発的動機づけへの影響 | |
|---|---|
| 金銭などの外的報酬 | 低下させるので好ましくない |
| 言語報酬(賞賛など) | 低下させない |
金銭はダメだが、ほめるのはよい。この例外は選択肢でよく問われます。
⑦ 前節までとのつながり
第1節の対応表を思い出してください。
・内発的動機づけ要因 = ハーズバーグの動機づけ要因 = ERG理論の成長の欲求
・外発的動機づけ要因 = ハーズバーグの衛生要因
ハーズバーグが「給与は衛生要因であり、積極的態度を引き出すにはほとんど効果がない」と言ったのと、内発的動機づけ理論が「外的な報酬は内発的動機づけを低下させる」と言ったのは、同じ現象を別の角度から述べたものだといえます。
過去問では、次の記述が正しいものとして出題されています。
『マズローの欲求段階説における自己実現欲求は、外発的に動機づけられるものではなく、自分自身の理想を追い求め続けることを通じた内発的な動機づけとも考えられる』
マズローの自己実現の欲求が成長動機であり、満たされるほどにいっそう関心が強化されるという性質は、まさに内発的動機づけそのものだということです。
外的な報酬はむしろ内発的動機づけを低下させるので好ましくないという指摘の、そのままの実例です。
言語報酬に切り替えた 図書館はその後、謝礼を廃止し、代わりに次のことを始めました。
・読み聞かせの後、司書が具体的に良かった点を伝える
・年1回、利用者からの感謝の手紙を集めて渡す
・館内の掲示板でボランティアの紹介をする
言語報酬(賞賛など)については、内発的動機づけを低下させないとされています。
2年後、参加者は15人に増えました。お金では下がり、ほめ言葉では上がったわけです。
| ② | タスク完結性 | 社内の業務の流れの多くにかかわっている |
| ③ | タスク重要性 | 業務の出来栄えによる社内外へのインパクトが大きい |
| ④ | 自律性 | 自分なりに工夫してできる程度が高い |
| ⑤ | フィードバック | 業務そのものから得られる手応えが感じられる |
③ フィードバックの意味に注意
ここが最も間違えやすいところです。
※ まわりの人間からのフィードバックではありません。
ここでいうフィードバックとは、業務そのものから得られる手応えのことです。
・上司に「よくやった」と言われること → ここでいうフィードバックではない
・自分が作ったものが動くのを見ること → これがフィードバック
「上司からの評価が明確に伝えられること」と書かれた選択肢は、このモデルのフィードバックの説明としては誤りです。
④ 5つの特性の性格
5つを、前のテーマの内発的動機づけ要因と対応させてみましょう。
| 職務特性 | 対応する内発的動機づけ要因 |
|---|---|
| 技能多様性、タスク完結性 | 仕事そのものの面白さや楽しさ |
| タスク重要性、フィードバック | 有能感や満足感 |
| 自律性 | 自己決定の感覚 |
職務の側にこの5つが備わっていれば、人は自然に内発的に動機づけられるというのが、このモデルの主張です。
⑤ 職務拡大・職務充実とのつながり
第2節で学んだ2つの方法と重ねると、理解が深まります。
| 何を高めるか | |
|---|---|
| 職務拡大(水平的拡大) | 技能多様性、タスク完結性 |
| 職務充実(垂直的拡大) | 自律性、タスク重要性 |
職務拡大は課業の数を増やすので、使うスキルの種類と関わる業務の流れが広がります。
職務充実は計画・準備・統制を加えて責任と権限を広げるので、自分なりに工夫してできる程度が上がります。
⑥ 実務での使い方
このモデルが実務で有用なのは、動機づけの問題を職務の設計の問題として扱えるからです。
「やる気がない」を本人の問題として片づけるのではなく、「この職務には5つの特性のうち何が欠けているか」と問い直せます。
・技能が単一で、同じことの繰り返しになっていないか
・業務の流れのごく一部しか見えていないのではないか
・自分の仕事が誰の役に立っているか分からないのではないか
・工夫の余地がまったくないのではないか
・やった結果が自分で確かめられないのではないか
この問いに答えていけば、打つべき手が見えてきます。
具体例
ソフトウェア会社で、同じ技術者が2つのプロジェクトを経験した例です。職務特性の違いがそのまま意欲の差になりました。
プロジェクトA(5つの特性が低い)
大手企業の基幹システム開発で、この技術者に割り当てられたのは「仕様書どおりに画面を1つずつ実装する」役割でした。
・技能多様性……使うのは1つの言語の決まった書き方だけ。低い
・タスク完結性……全体の業務の流れは知らされず、担当画面だけ。低い
・タスク重要性……この画面が誰にどう使われるか聞いていない。低い
・自律性……設計は上流工程で確定済み。工夫の余地なし。低い
・フィードバック……作ったものが動く姿を見る機会がない。完成したシステムに触れたこともない。低い
この技術者は半年で「転職を考えている」と言い出しました。
プロジェクトB(5つの特性が高い)
同じ会社の、小規模な飲食店向け予約システムの開発です。
・技能多様性……画面もデータベースも、店舗での設置作業まで担当。高い
・タスク完結性……店主への聞き取りから納品後の改善まで一通り関わる。高い
・タスク重要性……予約の取りこぼしが減れば店の売上に直結すると分かっている。高い
・自律性……画面の作りは本人の判断に任されている。高い
・フィードバック……店に行けば、実際に使われている様子が見られる。高い
フィードバックの中身に注目 この技術者が手応えを感じたのは、上司にほめられたからではありません。自分が作った画面を店員が使いこなし、予約の電話が減っていく様子を自分の目で見たからです。
これが業務そのものから得られる手応えであり、まわりの人間からのフィードバックではないという意味です。
結果 この技術者は転職を取りやめ、現在は小規模案件を担当するチームのリーダーになっています。
報酬は変わっていません。変わったのは職務の特性だけです。職務の特性そのものが人の仕事意欲にかかわるとは、こういうことです。
試験のポイント
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