企業の社会的責任(CSR)とコーポレートガバナンス
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プレミアムで見る会社が小さいうちは、お金を出した人がそのまま経営します。ところが会社が大きくなり、株式が多くの人に分散していくと、出資する人と経営する人が別々になっていきます。さらに進むと、経営者が事実上その会社を支配するようになる。この流れを2つの段階に分けて整理したのが、所有と経営の分離、そして所有と支配の分離です。名前が似ているので、違いを正確に押さえましょう。
簡単にいうと
「経営の分離」は経営者が別人になること、「支配の分離」は経営者が事実上その会社を支配すること。分散が進むほど、株主の力は弱くなっていくよ!
① 出発点:株主が経営する会社
企業規模が小さいときには、企業経営は大口出資者である大株主によって経営されることが多くなります。
創業者が自分でお金を出し、自分で経営する。この段階では、株主=経営陣です。誰も監視する必要がありません。自分のお金で自分の会社を経営しているのですから、手を抜けば自分が損をするだけです。
② 第1段階:所有と経営の分離
やがて、株式の分散と同時に企業の大規模化が進み、企業経営の複雑性が増すと、経営者には専門的な能力が求められるようになります。
これを受けて、新たに雇われた専門経営者が経営に携わることになり、大株主は重要な意思決定においてのみ経営に参加するようになります。
このような、株式会社の所有者である株主と経営者が人格的に分離することを「所有と経営の分離」といいます。
ここで大事なのは「人格的に分離する」という点です。株主という立場の人と、経営者という立場の人が、別の人になったということです。
ただしこの段階では、大株主はまだ重要な意思決定に参加しています。経営は任せているが、大事なことは自分が決める、という状態です。
③ 第2段階:所有と支配の分離
株式の分散がさらに進むと、どうなるか。重要な意思決定に口を出せるほどの大株主が、もういなくなります。こうして株主の支配から解き放たれた経営者が、事実上その企業を握ることになる。これが所有と支配の分離です。
株式が細かく分散すると、誰も単独では経営に口を出せるほどの持分を持たなくなります。1%を持つ株主が100人いても、一人ひとりの発言力は小さく、しかも互いに連絡を取り合うことも難しいからです。
その結果、
具体例
ある機械メーカーの100年を、5段階で追ってみましょう。
❶ 株主=経営陣(創業〜1950年代) 創業者が私財を投じて工場を建て、自ら社長を務めました。株式は100%創業者が保有。誰に説明する必要もありません。
❷ 多数の株主が発生、経営の複雑化(1960〜70年代) 工場を増やすために増資を重ね、取引先や金融機関にも株式を持ってもらいました。創業者の持分は45%に下がります。従業員も3,000人を超え、海外にも工場を持つようになりました。
❸ 発言力の低下、専門経営者の必要性(1980年代) 株式を上場し、創業家の持分は18%に。為替、会計、労務、海外事業と、経営に必要な知識が創業家の手に余るようになりました。
❹ 所有と経営の分離(1990年代) 創業家出身ではない専門経営者が社長に就任しました。株主と経営者が人格的に分離した瞬間です。
ただし、創業家は筆頭株主として残り、工場の売却や大型買収といった重要な意思決定には参加していました。
❺ 所有と支配の分離(2000年代以降) 相続と資産の分散により、創業家の持分は3%まで低下。上位10位の株主を合計しても28%で、経営に影響を及ぼせる大株主は存在しなくなりました。
この段階で、社長は誰の顔色も見ずに経営できるようになります。株主の支配から自由になった経営者が、事実上その企業を支配する状態です。
そして何が起きたか 2010年代に、この会社で会計上の不正が発覚しました。調査報告書は「経営トップに対する牽制機能が働いていなかった」と指摘しています。
所有と支配の分離は、ガバナンスの問題の出発点だということが、この会社の歩みに表れています。

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④ 2つの分離の違い
名前が似ているので、違いを表で押さえましょう。
| 所有と経営の分離 | 所有と支配の分離 | |
|---|---|---|
| 何が分かれたか | 株主と経営者が人格的に分離 | 株主の支配から経営者が自由になる |
| 大株主の存在 | まだ存在する | 存在しなくなる |
| 大株主の関与 | 重要な意思決定においてのみ参加 | 参加できない |
| 誰が支配するか | 大株主 | 経営者 |
| きっかけ | 企業の大規模化と経営の複雑化 | 株式のさらなる分散 |
「経営」が分かれるのが先、「支配」が分かれるのが後です。株式の分散が進むほど、株主の力が弱まっていく、という一本の流れで理解してください。
⑤ 変遷の5段階
この流れは、次の5段階として整理できます。
1. 株主(出資者)=経営陣
2. 多数の株主が発生、経営の複雑化
3. 株主1人あたりの発言力の低下、専門経営者の必要性
4. 所有と経営の分離
5. 所有と支配の分離
この順番はそのまま出題されうるので、流れごと覚えておきましょう。
⑥ ガバナンスの話につながる
ここまで読めば、なぜこの節が第6章にあるのかが見えてきます。
所有と支配の分離が起きた状態は、経営者を誰もチェックできない状態にほかなりません。株主は分散して力を持たず、経営者は自由に振る舞える。
だからこそ、株主に代わって経営陣を牽制する取締役のしくみが必要になり、その取締役が機能しないという日本企業の問題点が問われ、社外取締役や指名委員会等設置会社という対応策が出てくるわけです。
この節は、第6章のガバナンスの議論がなぜ必要になったのかを歴史の流れとして説明している、という位置づけになります。
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