組織構造論
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プレミアムで見るここから第2編の組織論に入ります。第1編では「どこで、どう戦うか」を考えてきましたが、戦略を決めただけでは何も動きません。それを実行するのは人の集まり、つまり組織です。この節ではまず、組織とは何かという定義から始めます。分業と統合・調整という2つの言葉を押さえれば、この章のほとんどの話がそこから説明できるようになります。
簡単にいうと
組織のキーワードは2つ。「分業」と「統合・調整」。手分けして働き、それをまとめる。これだけで組織論の骨格ができるよ!
① バーナードによる定義
組織のとらえ方はさまざまですが、その本質は人間行動の集合体であり、バーナードによれば、「2人以上の人々の意識的に調整された活動および諸力の体系」です。
短い定義ですが、含まれている要素が多いので分解しておきましょう。
| 要素 | 意味 |
|---|---|
| 2人以上の人々 | ひとりでは組織ではない |
| 意識的に調整された | 偶然集まっただけでは組織ではない |
| 活動および諸力の体系 | 人そのものではなく、人が提供する活動の集まり |
「人の集まり」ではなく「活動の集まり」という点が、バーナードの定義の特徴です。同じ人でも、会社にいるときの活動と家庭での活動は別のもので、組織に属しているのは前者だけだ、という見方になります。
② 公式組織と非公式組織
厳密には「意識的」に調整が行われる組織のことを公式組織といい、非公式組織と区別されます。
本章では、原則として「組織」と「公式組織」を同義として扱います。非公式組織については、第8章の「フォーマル組織とインフォーマル組織」で扱います。
③ 辞書から読み取れる2つのキーワード
辞書で組織を引くと、おおむね次のように説明されています。ある目的を果たすために、個人や集団へ専門に分かれた役割を割り当て、その活動をまとめて調整する仕組み。あるいは、そうやって成り立っている集団そのもの。
この記述から、「分業」と「統合・調整」の2つを「組織」のキーワードとして読み取ることができます。
④ 分業とは
分業とは、「手分けをして仕事をすること」とか、「生産の過程で、工程の一部を互いに分担して労働する形態」を指す用語です。
組織の中ではさまざまな協働(経営目標の達成という同じ目的のために協力して働くこと)が行われていますが、協働の基本は分業です。
⑤ 調整がなければ分業も無意味になる
ここが大事なところです。
ただし、協働が実を結ぶには、分けた仕事をまとめ直し、調整する手間が要ります。調整を怠れば、協働の効率が落ちるだけでは済みません。分業そのものが足を引っ張ることさえあるのです。
| 組織構造論(第7章) | 組織行動論(第8章) | |
|---|---|---|
| 見るもの | 分業と調整の仕組み | 組織を構成する人々の行動 |
| 関心 | 組織をどう設計するか | 個人行動と小集団に固有の現象 |
| 主なテーマ | 設計原理、組織形態、コンティンジェンシー理論 | モチベーション、グループダイナミクス、リーダーシップ、組織文化、組織学習 |
同じ組織を、器のほうから見るのが組織構造論、中の人のほうから見るのが組織行動論だと理解しておくと、2つの章の関係が見えてきます。
具体例
従業員6人の工房が、30人の会社に育つ過程を追うと、分業と調整の関係がよく見えます。
6人のとき 全員が革の裁断も縫製も接客もしていました。分業はほとんどなく、調整も要りません。誰かが手を止めれば、隣の人が気づいて引き継ぎます。
分業を始める(15人) 裁断班、縫製班、仕上げ班に分けました。同じ作業を繰り返すので手が速くなり、1人あたりの生産量が1.4倍になります。これが専門化のメリットです。
調整を怠ったらどうなったか 裁断班が効率を上げようと、作りやすい型ばかり大量に裁断しました。ところが注文が来ているのは別の型です。「作ってはみたものの全く売れない」という事態が起きました。
同時に、縫製班は材料待ちで手が空き、仕上げ班には仕掛品が山積みに。分業したことで、かえって全体の生産量が落ちたのです。
このとき何を考えたか 工房主は一時、「班分けをやめて、また全員が全工程をやるほうがよいのでは」と本気で考えました。まさに「分業そのものが非効率になる」という状態です。
調整を入れた(30人) ・週次で全班の進捗を突き合わせる会議を設けた
・受注情報を裁断班まで直接届ける仕組みを作った
・班をまたいで動ける多能工を3名育てた
結果として、分業のメリットを保ちながら全体が回るようになりました。
分業だけでは足りず、統合・調整があってはじめて成り立つ。組織の定義にこの2つが入っている理由が、この例に表れています。

組織の概念と官僚制の逆機能
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それが度を越すと、そもそも2つの部門に分ける意味があったのかという話になります。できることなら一人ひとりが営業も製造もやるほうがましだ、という結論にもなりかねません。
とはいえ、分業には専門化のメリットという大きな見返りがあります。だから実際には分業します。そのかわり、統合と調整が同時に要るというわけです。
⑥ 組織構造とは
組織構造とは、端的には「組織の作りや仕組み」という意味ですが、より具体的には「組織における分業と調整の体系(組織の中で、どのような分業を行うか、それをいかにして調整するかについての基本的な枠組み)」ということです。
したがって、単なる「組織」と同じような意味になりますが、より「仕組み」や「枠組み」という面が強調されると思ってもらえばよいでしょう。
⑦ 組織構造論と組織行動論
では、組織を考えるにあたって、組織構造だけ考えればよいかというと、そうではありません。組織は分業化された活動の体系ですが、その活動を提供するのは人々です。
組織を作っている人々、つまり従業員の行動そのものを正面から見る領域が組織行動論です。個人がどう動くか、小さな集団で何が起きるかに関心を向けます。扱うのは、モチベーション理論、グループダイナミクス、リーダーシップ論、そして組織文化や組織学習といったところです。
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