人的資源管理
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プレミアムで見る採った人を、どこに置き、どう動かすか。それを扱うのがこの節の配置・異動管理です。
日本企業では、社内の異動が人材育成の中心を担ってきました。前の節で見たゼネラリストの養成は、まさに異動を重ねることで実現されるものです。そのため、異動の種類と目的、そして異動を計画的に行うための仕組みが問われます。
とくに昇進と昇格の違いは、言葉が似ているぶん取り違えやすく、繰り返し出題されている論点です。第2節の職能資格制度を思い出しながら読み進めてください。
簡単にいうと
「昇進」と「昇格」、似てるけど別物なんだ。役職が上がるのが昇進、資格等級が上がるのが昇格。ここ、必ず出るよ!
① 人事異動は縦と横に分かれる
企業のなかの人事異動は、大きく2つに分けられます。
この節ではまず縦の動きを見ます。
② 垂直的異動の4種類
昇進は、いまの役職より上位の役職へ移ることをいいます。課長から部長へ、といった動きです。
降職は、その逆で、いまの役職より下位の役職へ移ることです。
昇格は、職能資格制度における上位の資格へ移ることをいいます。第2節で見た、人に付く等級のほうが上がる動きです。
降格は、その資格が下位へ移ることです。
③ 昇進と昇格はどこが違うのか
2つが別物である理由は、第2節で扱った職能資格制度の仕組みそのものにあります。
役職の数は、組織のかたちで決まっています。課が10あれば課長は10人、それ以上は置けません。つまり昇進には定員がある。能力が伸びても、空きがなければ上がれません。
一方、資格等級は人に付くものですから、定員という考え方が原則ありません。基準を満たした人は、ポストの空きと関係なく上がれる。これが昇格に定員がない理由です。
具体例
職能資格制度を採る会社で、次の3人を見てみます。
Aさんは資格等級4級で、営業一課の課長。今年、資格等級が5級に上がりました。役職は課長のままです。これが昇格です。等級に応じて基本給は上がりますが、名刺の肩書きは変わりません。
Bさんは資格等級5級で、役職なし。今年、営業二課の課長が退職したため、その後任として課長になりました。これが昇進です。等級は5級のままですが、課長としての役職手当が新たに付きます。
Cさんは資格等級5級で部長でしたが、組織の再編で担当していた部が課に格下げされ、課長になりました。これが降職です。ただし資格等級は5級のまま据え置かれ、基本給は下がりません。組織の都合による役割の変更が、その人の能力の評価まで引き下げることはない、という考え方です。

雇用管理の3段階と配置・異動の施策
試験のポイント
簡単にいうと
横の動きは2つ。同じ会社のなかで動く配置転換と、別の会社へ行く出向。出向は2種類あるから気をつけてね!
① 配置転換
配置転換は、役職や資格を変えずに、担当する仕事や勤務する場所を変える異動です。中身はさらに2つに分かれます。
営業から人事へ移れば職種転換、大阪支店の営業から東京支店の営業へ移れば勤務地転換です。
② 出向
出向とは、企業間の契約または企業の命令に基づいて、他の企業の指揮命令を受けて働くためにその企業へ移ることをいいます。2つの型があり、違いは異動元との雇用関係が残るかどうかです。
在籍出向では、異動元との雇用関係が続いたまま、異動先の指揮命令のもとで働きます。籍は元の会社にあるので、いずれ戻ることが前提です。
簡単にいうと
異動は「人が足りないから動かす」だけじゃないんだ。育てるため、組織をほぐすため、いろんな狙いがあるよ!
① 5つの目的
人事異動が何のために行われるのかを整理しておきます。
ⅰ 教育訓練・能力開発のため
さまざまな職務を経験させることで、幅広い職務遂行能力を育てます。前の節で見たゼネラリストの養成が、まさにこれにあたります。
ⅱ 組織を活性化させるため
同じ人が同じ部署に長くいると、仕事の進め方が固まり、人の関係も動かなくなります。この停滞やマンネリ化を破る手段として異動が使われます。
ⅲ 昇進・降職・昇格・降格に伴うもの
垂直的異動そのものが、異動の一類型です。
ⅳ 事業の変化に応じるため
簡単にいうと
異動を思いつきでやらないための仕組みが3つあるよ。ジョブローテーション、社内公募、CDP。それぞれ誰が主導するかが違うんだ!
① ジョブ・ローテーション制度
ジョブ・ローテーション制度とは、ひとつの職務だけでなく、他のいくつかの職務も定期的・計画的に経験させる方法です。
特徴は3つあります。
ここで注意したいのが、ローテーションが動かす向きです。職務の水平的な拡大を通じて、幅広い能力を持つ人材を育てるのが狙いです。より高度な技能と責任が求められる職務へ移す、つまり垂直的な拡大を通じた専門職の育成ではありません。この取り違えは、そのまま出題されたことがあります。
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安定性にも差が出ます。役職は組織の都合で付け替えるものなので、降職は制度として想定されています。対して、いったん身に付いた能力が消えるわけではないという建前から、降格は原則として行われません。
移籍出向(転籍出向)では、異動元との雇用関係がなくなり、異動先と新たに雇用関係を結びます。実質的には転職に近く、戻ることは前提になりません。
③ どちらかを見分ける手がかり
問題文で迷ったら、異動元との雇用関係がどう書かれているかを探してください。「継続したまま」とあれば在籍出向、「終了して新たに結ぶ」とあれば移籍出向です。労働者にとって不利益の度合いが大きいのは移籍出向のほうで、その分、本人の同意が必要とされます。
具体例
機械メーカーの社員Dさんの経歴を追ってみます。
入社から8年、大阪工場で生産技術を担当していました。9年目に東京工場へ移りましたが、仕事は同じ生産技術。これが勤務地転換です。
12年目に、本社の購買部へ移りました。生産技術から購買へ、職種そのものが変わっています。これが職種転換です。現場を知っている人を購買に置けば、仕入先との交渉で押さえどころが分かる、という狙いがありました。
16年目、この会社が50%出資する部品子会社へ移りました。給与は親会社から支払われ続け、3年後には本社へ戻る話になっています。これが在籍出向です。
もしこのとき、親会社を退職して子会社の社員として新たに雇用契約を結んでいたなら、それは移籍出向にあたります。
試験のポイント
ⅴ 適正配置のため
従業員がいま持っている能力を、最も活きる場所で使うための異動です。
② 目的を分けて捉える意味
ⅰとⅴは似ているようで向きが逆です。
能力開発の異動はこれから育てるためのものなので、本人にとっては未経験の仕事へ動かすことになります。適正配置の異動はいまある力を活かすためのものなので、本人が得意な領域へ動かします。
選択肢でどちらの話をしているかを読み分けられると、細かい引っかけに強くなります。
具体例
ある地方銀行では、入社から10年のあいだに支店の窓口、融資、本部の審査部を必ず一巡させる決まりがあります。これは能力開発を狙った異動です。審査の目を持った人が融資の現場に立てるようになり、現場を知った人が審査に座ることで、判断が噛み合うようになります。
同じ銀行で、支店の融資担当は3年をめどに交代させています。こちらは組織の活性化が主眼ですが、同じ担当者が同じ取引先を長く持ちすぎると関係が濃くなりすぎる、という牽制の意味もあります。
そして、簿記1級を持つ人を経理部へ、外国語に強い人を海外営業部へ配置するのは適正配置です。育てるための異動ではなく、すでにある力をどこで使うかという判断です。
試験のポイント
② 社内公募制度
社内公募制度は、新規事業や新しいプロジェクトなどで人手の確保が必要になったとき、社内に広く募集をかける仕組みです。
この制度の要は、直属の上司を経由せずに直接応募できることです。上司を通す形にすると、手放したくない人材が握り込まれて応募が届かなくなります。それでは制度の意味がありません。
③ キャリア開発制度(CDP)
CDP(Career Development Program)とは、企業の人材ニーズと従業員それぞれのキャリア期待を突き合わせて、長期的なキャリア育成計画を一人ひとりについて作り、その計画に沿った配置転換・昇進を見据えたローテーションと教育訓練を行う制度をいいます。
ここで押さえるべきは、CDPが経営計画の遂行に必要な人材を育てるために設計されるという点です。経営戦略や事業計画は頻繁に変わるのだからCDPはそれとは独立に設計すべきだ、という言い方は誤りとして扱われます。企業の人材ニーズが片方の軸である以上、計画から切り離すことはできません。
④ 3つの違いはどこにあるか
誰が動かすのかが違います。ジョブ・ローテーションは会社が計画的に回すもの、社内公募は本人が手を挙げるもの、CDPは会社と本人の擦り合わせで作るものです。
具体例
総合商社のE社では、3つを組み合わせて使っています。
入社から10年はジョブ・ローテーションの対象で、3年ごとに部門をまたいで異動します。鉄鋼、食料、物流と回るうちに、本人の適性がどこにあるかが見えてきます。
10年目以降は、年1回の面談でCDPを作ります。「10年後に海外現地法人の経営を任せたい」という会社側の期待と、「事業投資の実務を深めたい」という本人の希望を突き合わせ、次の3年で何を経験するかを決めます。
そして、新規に立ち上がる再生可能エネルギー事業には社内公募をかけました。所属部門の上司を通さずに直接応募できる形にしたところ、会社側が想定していなかった部署からも手が挙がり、結果として意欲の高い15名が集まりました。
試験のポイント
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